絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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vs.チンピラ

 

「おい嬢ちゃん、なにしに来た?」

 

 男たちは立ち上がり、プリムを威圧するように近づいて行く。

 

「なにしに来たですって?決まってるでしょ。あんたらをぶちのめ…むぐっ!?」

「いやー、すいませんすいません。ちょっとこの子酔っ払ってるんで勘弁してやって下さい」

 

 今にも啖呵を切って男共に襲いかかりそうなプリムの口を後ろから塞いで入れ替わるように会話に割って入る。

 

「じゃあこれで失礼しますね〜」

「ちょっと待て」

 

 そそくさと出ようとすると後ろから黒髪に肩を掴んで止められる。

 

「さっき、そこの嬢ちゃん、私の仲間…とか言ってなかったか?もしかしてお前ら、『宵の手』のメンバーだったりしねぇよな?」

 

 まずいまずい、はちゃめちゃに怪しまれてるって。情報収集だけって話だったのに、なぜこんなことに…

 

 なんて悔やんでる場合じゃないな、ここは適当に誤魔化して見逃してもらおう。

 

「なんですかその ヨイ、ノテ?劇団かなんかの名前ですか?」

 あくまで笑顔は崩さず、本当に心当たりがないよう取り繕って話す。

 

「なんか怪しいな、お前ら」

 黒髪はまだ疑惑の念が消えないらしく俺に顔を近づけてじっと見つめてくる。DQN怖いよぅ。

 

 どうしようかと目を泳がせていると、黒髪に後ろからわざとらしく口角を上げて話しかける茶髪。

 

「でも先輩、いくら『宵の手』の奴らがまぬけって言ってもこんな奴らじゃないでしょ?」

 

 いかん、両手で必死に押さえつけているプリムが怒りで小刻みに震えているのが伝わってくる。殺気を感じるとはこういうのを言うんだろうな。

 

「そんな事よりお姉さんなかなかの美人だね。どう?そんななよなよしてる男より俺達と遊ばね?」

 

 そう言ってプリムの方へと手を伸ばしてくる茶髪…の顔を前蹴りで豪快に蹴りつけるプリム。

 

「私にはもうボスっていう心に決めた人がいるのよ!あなた達みたいなゴミに興味ないわ!」

 予想もしない攻撃をもらった茶髪は、黒髪と金髪の間を抜けて頭から勢いよく壁に叩きつけられる。

 

 あれ死んでないよな?

 

「このアマ何しやがる!」

 部下がやられた事で当然殴り掛かってくる黒髪。

 

 プリムは勢いよく突き出された腕を側面から掴むと体を相手の方へ回転させながら勢いを殺さずに投げ飛ばす。

 

「ぐはっ!?クソ!」

 床に転がるように倒された黒髪はすぐに体勢を立て直すと今度は右足で蹴りを放つ。

 

「誰に足技を挑んでるのか分かってるの?」

 プリムは嘲笑うように言い放つと黒髪のキックに対して真正面からキックを合わせる。

 

 お互いの脛がぶつかる、ゴキンと鈍い音が響くと同時に黒髪の体が中空に舞う。

 

「ゴハァ!?」

 背中から受け身も取れず床に叩きつけられた黒髪は、息ができないのか過呼吸のように悶えている。そんな彼の右足は、本来足が向いている方ではない方に曲がっていた。

 

 絶対痛い!あれ絶対痛い!

 

「て、てめぇ!!」

 

 仲間がやられたのを目の当たりにして、何かに押し出されるように金髪がプリムの後ろから襲い掛かる。その手にはギラリと光るナイフが握られていた。

 

「プリム危ない!」

 

 咄嗟にプリムを庇うように前に出てしまった。どうする?短剣はあるが抜いてる暇はなさそうだ。『正拳突き』を撃っても拳がナイフと衝突しそうだし…

 

 もうどうにでもなれ!ここは一か八か、刺されたら刺された時考える!

 

 

三日月蹴り(ムーンシュート)』!

「ぐぶっ!?」

 

 咄嗟に放った俺の渾身の後ろ回し蹴りは、ナイフが刺さる前に見事側頭部とまではいかなかったが金髪の頬に直撃、金髪は錐揉み回転して床に伏す。

 

「で、出来た…よかったー」

「良くないわよ!」

 

 命の危機を乗り越え、安堵で胸を撫で下ろしているとプリムから横槍を入れられる。

 

「なにあなたが『三日月蹴り』使ってんのよ!?それは私が編み出したオリジナルスキルなのよ!」

「いや、まぁ一応掛け声みたいな感じで言ってみただけで、今のはただの後ろ回し蹴りだろ」

「パクリよパクリ!二度と使わないでね!」

「何がパクリだよ!元はといえばお前がこいつらに喧嘩売ったからだろうが!」

「はぁ!?あなた『宵の手』が馬鹿にされてるのに黙ってるメンバーがいる訳ないでしょ!」

 

 それに俺を巻き込むなって言ってんだよ…駄目だ、狂信者に何を言っても仕方ない。こいつはヤクモと『宵の手』が好きすぎてそれ以外が見えてないようだ。

 

「もういいよ。それより情報も手に入ったし、こいつらが起きる前にさっさと帰ろう」

「それもそうね、長居してたら見つかるかもだし。ほんとは他のアジトの場所も聞き出したかったけど」

 

 お前のせいで聞く前にこんなことになったんですよ?

 

 溜息をついてから、盲目的狂信者を連れて家を出ようとしたその時…

 

「君達、何してるのかな?」

 突然後ろから声をかけられる。振り返ると家の奥、おそらく地下へと続く扉の前に眼鏡をかけた痩せ男が一人立っていた。

 

「この状況を見るに、客人…というわけではなさそうだね」

 男は眼鏡のずれを直しながら床に倒れている男達を見て、おもむろに右手をこちらに向けてくる。

 

 

「コウイチ!避けなさい!」

「へ?」

 

 プリムの声とほぼ同時に轟音と共に玄関のドアとそれに接した壁が通りに弾け飛ぶ。

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