「はー、流石に立派なもんだな」
見上げる先には、白いレンガを基調とした荘厳な構えの騎士団の庁舎が
王都の探索者ギルドも大きい建物の部類だと思っていたが、比べるまでもないほどの大きさなのが一見するだけで分かる。
これ何人ぐらい入れるんだろう。数百人、いや下手したら千人なんて軽く入りそうな大きさだぞ。
シャバラの後を追う形で鉄格子でできた門を開けてもらい、それを潜って庁舎の中へと入って行く。
庁舎の全体像は長方形の中をくり抜いたようになっており、中央には訓練所兼広場のようなスペースで、そこで騎士達は素振りの練習や雑談など、思い思いに過ごしているようである。その広場を囲うように五階建て程の建物は建っている。
「ツガヤマさん、こちらです」
俺がお上りさんのように辺りを見渡していると、それに気付いたシャバラが少し先から声をかけてきた。
誘われるがまま建物の中に入って行き、階段を一番上まで登った後、ある一室の前で止まるよう言われる。
「団長、ツガヤマさんをお連れしました」
ドアをノックしてからよく通る声で呼びかける。
「入っていいぞ」
「失礼します」
ドアの向こうから入室の許可の声が聞こえてくると、ドアを開いて中へ入るよう促されるのでシャバラと部屋に入る。
「来たかツガヤマ 遅かったな」
「いや、ちょっとは寝させてくれよ。ついさっき会ったばっかじゃん」
もう来てしまったからいいけれど、これだけは言っておかないと気が済まないので椅子に座って書類にペンを走らせているスメラギに悪態を吐く。
「事態は急を要する、お前の睡眠を待っている時間などないし、逃げたのはお前だ」
目線は変わらず書類に向けられたまま、淡々と言葉を返してくる。いやまぁ、逃げたのは確かにそうだけど…
俺、この人苦手だ。
スメラギは「ふぅ」と短く息を吐くと、ペンを置いてやっとこちらに目を向けたと思うと、昨晩の質問が始まった。
「ツガヤマ、『骸狩り』に襲われたと言っていたな?」
「だからそうだって言ったじゃん」
喧嘩を吹っかけたのはプリムだが…黙っておこう。
「逃げた奴の名前は知ってるか?」
「確か、ゼルバートって言ったっけな」
「ふむ、ゼルバートか…」
今思い返すと、よくあんなのと戦って骨折だけで済んだな、そこに関してはプリムに感謝だが。
「ツガヤマ、『骸狩り』についてどこまで知ってる?」
ゼルバートとの戦いを思い出していると、不意にそんな事を聞かれた。どこまで知ってると言われても、さっき会ったのが初めてなんだけどな。
「その顔を見るに本当に何も知らないみたいだな」
どうやら間抜けな顔をしていたらしく呆れられた。
「いいか、ゼルバートは『骸狩り』の幹部の一人だ。騎士団が知っている情報では幹部は三人、【魔弾】のゼルバート、【怪腕】のカリム、【妖香】のカシュームと言う。ボスはいないからその三人が実質のボスだな」
「へぇ」
なんで急に『骸狩り』の話なんかしだしたんだ?それにその二つ名みたいなの何?ちょっとカッコいいって思っちゃったじゃん。
「最近急激に勢力を増してきている奴等なんだが、どうやら麻薬を売って稼いでるらしいんだ。こればかりは看過できない」
そういえばそんな事言ってたな、そのおかげで最近金回りもいいってアジトにいたチンピラが言ってたな。
「そこでなんだが、お前とパーティーの仲間達で『骸狩り』のアジト捜索と幹部の捕獲を依頼したい」
「はぁ!?なんで?」
本当になんでだよ。絶対嫌ですけど!
「それともお前は『宵の手』のメンバーだから騎士団には手を貸せないか?」
こいつ、俺の事試してやがるな。暗にヤクモじゃなく俺の下に付いておけと言われている気がする。
「俺は『宵の手』のメンバーじゃないけど、そんな危ない仕事を受けるつもりはないって事だよ」
「ちなみに報酬は前払いで金貨10枚、後払いで30枚だ」
「やらせていただきます」
「それでいい」
しまった。つい金に目が眩んで一瞬で了承してしまった。だってそんなにお金あったら向こう何年か働かなくていいんだもん。
「じゃあ決まりだな。俺は今から急ぎの用事でクエス王国をしばらく離れるから、帰るまでに終わらせておけ。シャバラもツガヤマを手伝ってやれ」
「はい!かしこまりました!」
俺に随分と上からな物言いで命令した後、名を呼ばれたシャバラが元気よく返事をすると、スメラギは「後は頼んだ」とだけ言って部屋から出て行ってしまった。
取り残された俺とシャバラ。
「ツガヤマさん。こちらが前払いの金貨10枚です」
シャバラが巾着袋を渡してきたので、若干の後悔を覚えながら受け取った後、二人で部屋を出る。
「でもアジトの捜索と幹部の捕獲っつっても、騎士団も探して見つからないのに俺が見つけられるのか?」
階段を降りながら至極当たり前の質問を聞いてみる。
「団長はツガヤマさんのことを評価してますから。なんでも同じ国の出身だそうですね?」
「まぁそうだけど…」
変な期待をされても困る。というか多分転生する時に貰ったスキルに期待しているのかも知れないが、スメラギは俺の『絶対不可避』を知らないのに勝手に強いスキルを貰っていると思ってこの依頼出したんじゃあるまいな。
まぁこんな事になったのも、俺を無理矢理連れ出したプリムのせいだからあいつにも手伝わせよう。
「シャバラさん!順位戦お願いします!」
プリムをどうやって道連れにしようかと心の中で画策していると、一人の騎士が随分と真剣な眼差しで横にいるシャバラに何かを申し込んできた。
順位戦ってなに?