絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

39 / 102
セルカの武具屋

 

「いらっしゃい!【セルカの武具屋】にようこそ!」

 

 シャバラが店のドアを開けるとと活力に溢れた女性の声で迎え入れられる。

 

「ってなんじゃ。シャバラか」

「そんなあからさまに嫌そうな顔しないで下さいよセルカ」

 

 随分とサイズの大きいオーバーオールを着た女性はシャバラの顔を見るなり砕けた口調になり、あからさまにテンションが下げたが、

「ん?」

「ど、ども」

「お客さんじゃ!」

 

 シャバラの陰に隠れた俺と目が合ったので三人で挨拶すると、顔に花が咲いたように明るい笑顔でこっちに近寄ってきた。

 

「いらっしゃい!あたしは セルカ この店の店長兼鍛治師じゃ!ゆっくり見ていってくれ」

 

 セルカはそばかすの下の鼻を手袋で擦ると自慢げに胸を張る。確かに、歳の頃も俺とそう変わらなそうなのに自分の店を持ってるなんて大したもんだ。

 

「皆さん、こちらのセルカは僕の幼馴染でして…腕は確かなので信用して下さい」

 

 感心しているとシャバラはセルカの紹介をしながら一礼する。

 

「いやーシャバラ、ちゃんとお客さん連れてきてえらい!」

 

 わははと笑いながらシャバラの背中をバシバシ叩くセルカ。

 

「ほんとに…腕は確かなんです」

 

「で、お客さん今日は何をご所望じゃ?」

 

 申し訳なさそうな顔をしているシャバラの背中を叩き続けるセルカを見て、【鬼人】の背中をこんなに叩ける人なんて世の中にそんなにいないだろうなぁ、とつまらない考えを巡らせているとセルカが訊ねてくる。

 

「ああ、予算は金貨10枚程で俺達三人の装備を整えたいんだけど…できそうかな?」

「金貨10枚!?」

「やっぱ足りない?」

 三人分ともなるとちゃんとしたもの揃えたらやっぱり高くつくのかな。

 

「いやいや、とんでもない!久しぶりの大仕事でビックリしただけじゃ。安くて質もいいがモットーの【セルカの武具屋】にお任せあれ!」

 

 自信に満ちた表情で胸を一つ叩いたセルカは店の裏に入っていったかと思うと、両手に大量の荷物を抱えて戻ってきた。

 

「まずは、その人に合った武具を探すところからじゃ」

 

 そう言いながら店のカウンターに並べた武器や防具は様々な種類があり、一つ一つ見ていくだけでも丸一日かかりそうな量だ。

 

「じゃあまずは、そこの嬢ちゃんからじゃ。」

「私?」

 

 突然呼ばれたキーラは少し戸惑いの表情を見せながらもセルカの元へと近寄ると、セルカは何も言わずにキーラをじっと見つめ出した。

 

 

「これ、何されてるの?私」

「ふむふむ、なるほどじゃ」

 

 セルカはしばらくキーラの周りを歩きながら全身を舐めるように見たかと思うと、一人で何かに納得したように頷くとカウンターの武器から一つ選んで持ってくる。

 

「これなんかどうじゃ?持ってみ?」

「随分と細い剣ね」

 

 セルカが持って来たのはレイピアの様に細い刀身をした剣だが、刺突に特化している訳ではなく刃が付いているようであった。

 

 キーラは勧められるままその剣を握って感触を確かめてみる。

 

「意外と重いわねコレ」

「そうなんじゃ!これはマジスト鉱石を使って作った特別製でな、この細さだが重さは鉄の二倍はあり、魔法耐性もあるからなんと!魔法も切れる…かもしれんのじゃ。マジスト鉱石は加工が難しくてなぁ、ほんとは普通のレイピアを作るつもりだっ…たんじゃが、偶然刃ができてな」

 

 キーラの反応に食いついて、早口で説明を始めるセルカ。てか今サラッと、かもしれないとか偶然とか怪しい単語口走ってなかった?

 

「キーラ嬢は剣士としても優れとるみたいじゃが、魔法適正もそこそこのもんじゃろ?」

「え、なんで知ってるの?」

 

 キーラの適正を知っているかのように話すセルカだが、彼女の言っていることは的中している。キーラは剣術適正Aを持っていると同時に魔術適正もBある。これはなかなか珍しい事らしいのであまり人に言わないようにしていたのだが、あっさりと見抜かれたことに俺達も驚きを隠せない所に、シャバラが口を開く。

 

「彼女は魔眼保持者なんです」

「魔眼?」

 

 どっかで聞いたことあるなと考えていると、ふと思い出す。そういえば、プリムも魔眼を持ってるって言ってたな。彼女の魔眼は魔力の流れを察知する事に優れており、そのおかげで相手の攻撃を予知できるとか。

 

「じゃあセルカも魔力の流れとか分かるの?」

「魔力の流れ?なんじゃそれ?」

 

 俺の予想は外れたらしく、セルカは小首を傾げて自身の魔眼について説明を始める。

 

「あたしのは『真贋の魔眼』見たものの本質を見抜くことのできる魔眼なんじゃ」

 

 セルカの説明では、その魔眼で人の適正やポテンシャルなんかを見抜けるらしい。

 

「すげー便利じゃん」

「じゃろ?だからキーラ嬢にはこの武器がぴったりと見た訳じゃ」

 

「キーラはその武器どうだ?」

「確かに今まで持った事ない感じだけど、なんかしっくりくるわね」

 

 キーラは剣を何度か振りながらにこりと頷く。

 

「セルカ、この剣はいくらだ?」

「そうじゃなぁ、マジスト鉱石は高いから金貨3枚ってとこじゃな」

 

 武器を買ったことないから高いのか安いのか分からないが、予算から見ればちょうど三分の一だし、キーラも気に入ってるみたいだし、セルカが魔眼で見てこれがいいって言ってくれてるからな。

 

「じゃあこれ買うよ」

「まいどあり!」

 

 ついでにブレストアーマーと関節などに付ける防具を買って、セルカに金貨を渡すと、彼女は次のターゲットにクゥを選んだようである。

 

「じゃあ次はクゥ嬢じゃな」

 

 はたしてクゥに合った武具とはなにになるか。セルカはクゥの全身をまたじっと見つめ出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。