朝、窓から差し込む光で目が覚めた。どうやらゴートはベッドのある二階まで俺を運んでくれたらしい。一階に降りてみるがゴートの姿は見当たらない。
辺りを見渡していると、外から物音が聞こえる。
外に出てみると、ゴートが斧で薪割りをしていた。
「おお、起きたかコウイチ。おはよう」
ゴートは昨日の事は無かったように話しかけてくれた。
「おはようゴート、昨日は急に泣いたりしてごめん」
「気にするな、その若さで知らない土地に一人で出てきて不安だったんだろう。気持ちは分かる。すぐに朝飯にしよう」
「なにか手伝う事ある?」
「薪割りはしたことあるか?」
「ないけど、やってみてもいい?」
「おお、じゃあ手伝ってもらおうかな」
その後は、薪割りのコツを教えてもらいながらやってみたり、朝ご飯の用意を手伝ったりして時間を過ごした。俺のおぼつかない手つきで、きっと手伝いにもなってないし、時間的にはロスになっているはずなのに、そんな俺にゴートは優しく教えながら朝ごはんを作った。
「うん、美味く作れたな!」
ゴートは俺が作った、ほぼスクランブルエッグになってしまった目玉焼きを食べながら褒めてくれた。
食事が終わり、ゆっくりとした時間が過ぎた後、ゴートが尋ねてきた。
「コウイチ、お前さんこれからどうするかあてはあるのか?」
「実は俺無一文でさ、仕事を探そうと思うんだけどこの村で何か仕事あるかな?」
「そうか、そいつはいい、しかしこの村は基本みんな農家だし、人は今足りてるだろうなぁ。王都なら仕事もあるだろうが。」
どうやらこの村は日本と違い、少子化の波がきていないらしく、人手が十分だそうだ。
「ゴートさえ良ければ、俺に狩りの手伝いをさせてくれない?」
俺の提案はゴートの顔を曇らせた。
「ふむ、確かに俺は一人でやってるし、手伝いがいればいくらか助かる部分はあるが、狩りは森に入ることになるし、命を落とす危険だってあるぞ?」
昨日、デカいウサギを見たり、魔獣の話を聞いたことで、この世界は危険が多い事は薄々気づいていた。しかし、それならなおのこと生き残る術を身に付けなければならない。
そしてなにより、俺みたいな人間に優しくしてくれたゴートに少しでも恩返しがしたい。
「危険なのは分かってるつもりだよ。でもせめて一宿一飯の恩は返したいし、これから生き残る術を覚えたいんだ」
ゴートは黙り込んでしまった。やはり甘い考えだったか。
「分かった」
まさかの了承に俺は驚いた。
「ほんとにいいの?」
「ああ、男の言葉だ、嘘はない。」
しかし、一瞬間を置いて、
「ただし!一宿一飯の恩なんていらん。俺が勝手に泊めて飯を食わせただけだ。俺の為に働くなんて理由はいらん、生き残る術を身につけたいっていう、お前さん自身の為にやるんだ。」
嬉しくてまた泣きそうになってしまった。涙腺が弱くなってしまっているな。
「ありがとう!」
俺は頭を机にぶつけるぐらいの勢いで下げた。
「よし!そうと決まれば今日から忙しくなるぞ!容赦なくこき使うから覚悟しろよコウイチ!」
「分かった!なんでもやるから任せてよ!」
こうして俺はゴートの狩りの手伝いをすることになった。
―そしてあっという間に1年と半年の時が過ぎた。