絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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漢のロマンのマジックロッド

 

「ふむ…」

 

 セルカはクゥをしばらく眺めた後、キーラの時と同じくカウンターに並べた数多ある武具の中から一つを取り出して戻ってくる。

 

「これなんかどうじゃ」

「これ、なんですか?」

 

 クゥが戸惑うのも無理はない、セルカが持ってきてクゥに渡したのは、何かの金属でできていると思われる手のひらサイズの立方体だった。

 

「こいつは、あたし特製マジックロッドじゃ」

「ロッド…ですか?」

 

 どう見ても杖には見えないが、どういうことだ?

 

「ふっふっふ、まぁ物は試しじゃ。クゥ嬢、このキューブに魔力を流してみ」

 

 キューブって言っちゃってるじゃん。というツッコミは口には出さず、クゥが言われた通り魔力を流し込むのを見守ることにすると。

 

「わっ!」

 

 クゥの驚く声と同時に、キューブがカタカタと小刻みに震えたかと思うと、ロボットアニメの変形シーンのようにみるみる形を変え、クゥの背丈と同じ程の長さの杖に変形したではないか。

 

「なにそれかっこいい!」

「じゃろ?」

 

 俺が思わず漏らした感嘆の声にセルカは満悦したようで、無邪気な笑顔で鼻高々である。

 

「す、すごいですねこれ」

 

 クゥもこの物珍しい物に感動したようで、杖を高く上げて眺めてみたり、少し振ってみたりして関心を示している。その姿は、子供用の魔法少女おもちゃで遊ぶ女児にしか見えないが、かわいいから黙っていよう。

 

「これはな、中に液体魔晶が入ってるんじゃ」

「液体魔晶?初めて聞きます」

 

 疑問の声に反応し、セルカは待ってましたと言わんばかりに早口で話し出す。

 

「よくぞ聞いてくれた!魔晶は本来マジックロッドの先に付けることで魔力の伝導率を高める効果があるんじゃが、いかんせんロッドの先にあるせいでロッドを通す時にいくらか魔力がロスしてしまうんじゃ、そこであたしが偶然発明したのがこの液体魔晶じゃ。こいつは普通の魔晶と魔力の伝導率は変わらいなに液体であるという優れものじゃ。それにより本来ロッドを伝って魔晶に魔力を注ぐ工程を無視し、てロッドの中にある液体魔晶に直接魔力を注ぐ事ができる奇跡の一品じゃ!それにな…」

 

 

 この子は、あれだな。武具のことになると話が止まらないタイプのオタクだな。というかあんなに勢いよく熱弁してるのに、それを真剣な顔で聞いてるクゥも真面目だなぁ。

 

「セルカ、また悪い癖出てますよ」

「おっと、すまんすまん」

 

 話が止まりそうにないのを傍から見ていると、またシャバラが助け舟を出してくれた。

 

「でもセルカ、凄いのは分かりましたが、なぜ初めからロッドの形をせずにキューブの形なんですか?」

 

 今度は単純に気になったらしく、シャバラが質問する。

 

「それはな…」

「それは?」

 

「かっこいいからに決まっとるじゃろ!」

 今日一番の渾身のキメ顔で言い放つセルカを呆れた顔で見るシャバラキーラ。

 だが、これに関しては申し訳ないのだが俺はセルカぬ全くの同感であった。いいじゃない、不必要な変形にこそロマンが詰まってるんじゃないか。

 

「そんな理由で一手間付けないでください。だからお客さん増えないんですよ?」

「でもでも、このキューブ状態から魔力を流すことによって、その人に合った長さのロッドに変形する様に設計するの大変だったんじゃぞ?」

 

 無駄にクオリティ高いな。

 

「そんな所にこだわるならもう少し、量産できるような武具を作れといつも言ってるでしょう?」

「……はい」

 

 叱られた犬のように落ち込むセルカに、心の中で「俺は分かるぞ」と同意の念を送りつつ、クゥの方に視線を向ける。

 

「私もこれ、なんだか気に入っちゃいました」

「お、クゥ嬢!分かってくれたか」

「でも、ちなみにこのロッド、おいくらなんですか?」

 

 値段は確かに大事だ、さっきのキーラの剣は金貨3枚の値段だったが、

「そうじゃな、金貨2枚ってとこじゃな」

「えっ!さっきの剣より安いの!?」

 

 俺とクゥの声が同時に出る。

 

「これってすごいものなんじゃ?」

「そうだよ、こんなにかっこいいのに」

「かっこいい?」 

 

 つい口から出た「かっこいい」に反応してキーラに冷ややかな目線が注がれる。そんな目で見るなよ。男の子はああいうの好きなんだよ。

 

「いやー、実はその武具は多分二度と作れないんじゃ」

「作れない?なんで?」

「いやー、それは、そのーなんというか」

「それについては私から説明します」

 

 歯切れの悪いセルカを見ていられなくなったのかシャバラが割って入ってくる。

 

「皆さんには説明が遅れてしまいましたが。この子(セルカ)は基本武具製作の過程でできる偶然の産物で武具を作ってるんです」

 

 なんだそれは、つまりは毎回奇跡的にこういう武具が作られる訳か?ギャンブルが過ぎねぇ?

 

「その為、性能はいいんですが、再現性のない一点物の武具ばかりが出来上がる訳です」

「それは、なんというか」

「はい、商売としては破滅的ですね」

 

 そうだろう、それが本当ならたとえいい商品ができたとして、複数の人が同じ武具が欲しいと言っても買えないのでは商売にはならない。

 

「ですが!本当に性能は確かなんです、その証拠に私の剣もセルカが作った物ですし…この子がポンコツなだけなんです」

「おい!誰がポンコツじゃ失礼な!」

 

「いや、別に疑ってる訳じゃないから大丈夫だよ」

 酷い言われように憤慨するセルカを片手で制止しながらも、彼女の事を思って弁明するシャバラを見て、これは幼馴染というよりお兄ちゃんみたいだなと思いつつ、心配する必要がない旨を伝える。

 

「それに、俺はセルカの作る武具結構好きだし」

「ほんとか!?コウイチは分かってくれると思っとったんじゃ!」

「あなたは社交辞令という言葉を知らないんですか」

 

 二人のコントのようなやり取りを見て和みつつ、クゥのマジックロッドの会計を済ませていよいよ俺の武具選びを始めようとセルカに体を見てもらっていると、

「ん?なんじゃこれ?」

「どうかしたか?」

 セルカが何やら気になったような声を出したので聞いてみる。

 

「コウイチ、変な事を聞くようじゃが…お前さん神様と知り合いだったりするか?」

「へぇ!?」

 

 心当たりしかない事を急に問われて思わず変な声がでてしまった。

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