「う〜ん、『骸狩り』…ですか〜聞いたことないですね〜」
受付嬢のロゼルさんに「力になれずすいません」と謝られたが、ダメもとで聞いたことなので気にしないでくださいという旨を伝えてから今度はギルドの食堂に顔を出すことにした。
探索者仲間のシェイクに何か知っていたりしないか聞きたかったのだが…
「いないなぁ」
どうやらタイミングが悪かったらしく不在らしい。普段なら昼間っから酒でも飲んでるのに。
「キーラとクゥは誰か探索者に知り合いいたりするか?」
「いないわね」
「いないですね。すいません」
キーラに続いてクゥも知り合いはいないらしい。うーん、なんという人見知りパーティー。
「ていうかキーラはよく話しかけられるんだから普段からもうちょっと愛想よくしてろよ」
「なんであたしが言い寄ってくる有象無象に愛想良くしなきゃならないのよ」
「有象無象て…」
なんともお高くとまった元お嬢様である。
「話しかけてももらえなくてすいません」
「いやいや、クゥは悪くないんだぞ?」
申し訳なさそうに俯いて謝るクゥを宥める。クゥの場合、話しかける奴がいたらそいつはもれなくロリコン認定されるから誰も話しかけないだけどと思うが。
「あたしの時と全然態度違うじゃない!ロリコン!」
「ロリコンじゃねーよ!それに態度が違うのはあれだよ…」
「なによ?」
キーラは今にも殴りかかりそうなほど目を吊り上げて俺に言葉の先を話すように促す。これは間違ったこと言ったら殺されるやつだな。よし、ここは覚悟を決めて。
「日頃の行い、とか?」
「あんた殺すわ」
「ちょっと待ってキーラさん!?僕は試し斬りをする為の道具じゃありませんよ!」
さっき買ったばかりの剣に手を伸ばして襲いかかってくるキーラをシャバラとクゥが抑えてくれている間、椅子の影に隠れてガタガタと震えることしかできない自分が嫌になった。
「やはり足を使って聞き込むしかないですかね」
キーラをなんとか落ち着かせた後、少し肩を落としながらそう呟くシャバラに同意しつつ、これからどうするか考えを巡らせていると…
「あの、コウイチさん。サルビアさんに聞いてみるのはどうですか?」
クゥのその言葉で思わず膝を打つ。そういえばこういう情報を知ってそうな奴を俺は知っていることを思い出す、どこから仕入れてきているのか分からないが信用できる情報屋サルビアを。
「その手があった。さすがクゥ天才か?」
「えへへ」
頭を掻きながら照れ隠しをするクゥを褒めちぎって、シャバラ、それとキーラも会ったことがないので二人に俺が個人的に情報を教えてもらっているサルビアの事を説明した。
「なるほど、その方なら期待できるかもしれませんね」
「ああ、だからもう一度コルト亭に戻ってサルビアが来てるか見に行こう」
俺の提案にシャバラは「ですが」と横槍を入れて続ける。
「これ以上四人で行動して無駄足になるのも非効率ですし、ここは二手に分かれましょう」
「二手?」
「はい。コウイチさんとキーラさんでそのサルビアさんに会いに行っている間、私とクゥさんで街の方に聞き込みをしておけばいいかと」
なるほど。それはいい考えである。しかし一つ気掛かりなのは、
「その分け方には何か意図が?」
「いえ別に、適当に決めました」
まぁ、これ以上とやかく言うとまたキーラに襲いかかられんしな。
「分かった。じゃあその二手に分かれよう」
ということで、サルビアに会いに行く俺・キーラ班と街で聞き込みのシャバラ・クゥ班で三時間後に探索者ギルド前集合と相なった。
「それじゃあ三時間後にな」
「あ、コウイチさん」
「ん?」
シャバラ班に別れを告げようとした時、シャバラが近寄ってきて耳元で囁く。
「さっきは適当に決めたと言いましたが、あれは嘘です。キーラさんのご機嫌を取ってあげて下さいね」
そう言って、爽やかにウインクまでして去っていくシャバラ。いらん気を使いおって、この元お嬢様は扱いが難しいからクゥに任せておいた方が丸く収まるのに、と内心毒づきながらキーラと二人コルト亭へと向かう。
しかし、シャバラの言うことにも一理ある。ここは一つご機嫌取りしておくか。コルト亭への道中、キーラに話しかけてみる。
「キーラ、いやキーラ様」
「なによ。急に畏まって」
「怒ってます?」
「………怒ってないわよ」
ホッ。良かった〜。なんだあんまり怒ってないじゃん。ただの取り越し苦労だったか。
「怒ってないけど、一つ約束しなさい」
「はっ!なんなりと」
「これからはあたしにもクゥと同じような態度で接しなさい」
なんだそれは?よく分からんが、
「あれか?クゥにしてるみたいに頭なでなでとかして欲しいってこと?」
「あんたやっぱり死にたい?」
「嘘です嘘です!だから剣に手を伸ばすのやめてください!」
「もういいわ。あんたに期待したあたしが馬鹿だわ」
キーラは少し抜いた剣を鞘に納めながらため息をつく。なんか俺勝手に失望されてる?
「あのー、結局私はどうしたらよいので?」
「どうもしなくていいわよ。馬鹿はいつも通り馬鹿でいればいいの」
そう言うと彼女は呆れたように微笑を零す。
女の子が考えてることは、よく分からんが機嫌は良くなったみたいで一安心だな。
そうこうしているうちに、コルト亭はもう目の前に迫ってきていた。