絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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路地裏

 

 コウイチ達がコルト亭へ向かっている時、探索者ギルド前にて、

 

 

「さて、では我々も聞き込みに行くとしましょうか。クゥさん」

 

 コウイチさん達と別れた後シャバラさんに言われるまま、私達は街へ聞き込みをしに歩き始めた。

 

 いつもお話しはコウイチさんに頼りきっているせいで、あまり知らない人と行動するのは初めてで緊張するけど、頑張らなければ!

 

「どこから行きますか?」

「そうですね。まずは街の人に最近何かなかったか聞いてみますか」

 

 シャバラさんが言うには、どんな些細なことから事件に繋がるか分からないから、騎士団は普段から街の人と会話して情報を集めているらしい。

 

 そのおかげで街の方からあんなに慕われているんですね。素晴らしい取り組みです、きっと騎士団長さんはこの王都を大事に思ってらっしゃるのでしょう。この間ギルドで会った時は、少し怖い人かと思いましたが…

 

 

 騎士団の方達の日頃の行いに感心しつつ、シャバラさんについて行き街の方達に話を聞いて回ってみたが目ぼしい情報は手に入らなかった。

 

「やっぱり簡単には分からないですね」

 ため息混じりに悩むように中空を見つめるシャバラ。

「すみません。わたしも大した役に立たず」

「いえいえ、私もダメでしたし、クゥさんのせいではないですよ。こういうのは根気が大事ですし、何もないということは平和ということですからね」

 

 慰めるようにそう言ってくれるシャバラさんは、少し考えるように俯いた後、「あそこならもしかすると」と呟く。

 

「あそこってどこですか?」

「街の各所にある路地裏です。そこならよからぬ事を企む連中も集まりやすい場所なので、ですがあそこは…」

「何か問題があるんですか?」

「はい、言ったとおり不良の溜まり場となっているので、女の子が行くにはいささか危ない場所かと。我々騎士団も嫌われているので…」

 

 私の質問に、少し言いづらそうに危ない場所だと告げるシャバラさん。

 ここクエス王都には多くの民家や商店が建ち並ぶ、その為その建物の間だったりには路地裏が数多く存在する。

 だけど、私が一緒だから行けないなんて迷惑はかけられません!

 

「私なら大丈夫です!これでも探索者ですから危険は慣れっこです!」

 

 出来る限りの自信に満ち溢れた表情でシャバラさんに問題がない事を伝える。本当は普段、コウイチさんが私やキーラちゃんを心配して薬草採取しかしていないので危ない依頼なんてやった事ないですが…

 

「では行きましょうか、くれぐれも私の傍を離れないで下さいね」

「はい」

 

 私の言葉で納得してくれたのか、シャバラさんは「こっちです」と言って路地裏へと向かって歩き出す。おそらく人が屯している場所を把握しているだろうシャバラさんについて行くと、しばらく歩いた所でふと立ち止まる。

 

「ここから行ってみますか」

 

 シャバラさんが見る先には民家の間から入って行く路地裏へと続く入り口がひっそりとあった。ただ道を通って行くだけの人は目も向けない。そんな表の通りからは別世界へ繋がっているような感じがした。

 

「では、行きましょうか」

「…はい」

 

 路地を進んで行くと少し開けた空間に出た、どこを見ても家の裏側である壁に囲まれたその場所にはいくつかのグループがそれぞれ違う場所で話したり、何かを受け渡してお金を貰ったりと思い思いに過ごしているようである。

 

「おい、あいつ」

「騎士団様がこんな所に何のようだ?」

「なんだあのガキ?」

 

 そんなあからさまに怪しい人達が集まる所に騎士団の服を着た人物と子供が一人入ってこようものなら、彼らは当然警戒と疑いの色の濃い目を向けてくるわけで。

 

 すっごい見られてる。こ、怖い。

 

「おい、ここはおめーらみたいな奴らが来る所じゃねーぞ?道間違えたんなら帰んな」

 

 こちらを見ていた人の一人が、私達に敵意剥き出しに話しかけてくる。

 

「私達は何も君達を捕らえにきたわけじゃないですよ。そんなに邪険にしないで下さい」

「ああん?じゃあ何しにきたんだよ」

 

 ガタイのいい男はシャバラに鼻がつきそうになる程顔を近づけて詰め寄る。

 

「誰か『骸狩り』についての情報を持っている方がいたら教えていただきたいんです」

 

 笑顔を崩さずに淡々と喋り続けるシャバラさん。この人よく変えずにいられるんだろう。私は怖くてついシャバラさんの後ろに隠れてしまった。

 

「知らねえなあ『骸狩り』なんて、知ってたとしても騎士団なんかに教えるわけねえだろ。失せろ」

「まあまあそう言わずに、教えていただければ多少は何かお返しできると思うのですが…」

 

 シャバラはポケットから巾着袋を取り出して軽く振ってみせる。袋は動くたびにジャラジャラと音を鳴らして男に少なからずの金銭が入っている事を伝える。

 

「……で、何が知りたいんだ?」

 

 金の魔力に眩んだ男は鼻をならしてシャバラに質問を続けるよう促す。

 

「ありがとうございます。聞きたいのは『骸狩り』のアジトの場所と幹部が根城にしている場所なんですが…」

 

 

 

「たのもーーー!!!!!」

 

 シャバラが男に質問をしようとした時、突然路地裏の空間に透き通る高い声が響き渡る。

 

 誰もが突然の大きな声に驚き、声のした方に目を向ける。

 

 そこにいたのは、淡い紫の色をしたミディアムロングの髪をおさげにしてくりっとした目が特徴的な女の子が腰に手を当てて堂々と立っていた。

 

「なんだテメー!でけー声で喋ってんじゃねーぞ!」

 

 不良の一人が彼女に向かって近づいて啖呵を切る。

 

「やかましいのはお前だ!」

「げぇっ!」

 

 近づいてきた男の鳩尾に、彼女は迷う事なくパンチを打ち込み、男は腹を押さえてその場にうずくまってしまう。

 

「誰か『骸狩り』のカリムって奴に会いたいんだが、誰か知ってるかー?」

 

 紫髪の女の子は、路地裏にいる全員に聞こえるように大声で質問する。

 

 突如現れた女の子が私達と同じ『骸狩り』を探している事に驚きつつ、仲間がやられた事で路地裏全体に緊張感が増すのを感じた。

 

 これ、まずい雰囲気じゃないですか?

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