絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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スイレン

 

「さぁ、さっさとカリムの居場所を教えな」

 

 突如現れ『骸狩り』のカリムを探しているという謎の少女の出現に、路地裏にいた全員が動揺を隠せないでいた。

 

「テメー、よくも俺のダチを!!」

「当て身ッ!」

「ごほッ!?」

 

 先程、少女に殴り顔された男の友人らしい男が激昂して殴りかかるも、少女は涼しい顔のままパンチをひらりと躱しながら首に手刀を入れると男はそのまま地面に伏してしまう。

 

「あいつはあんたらの仲間か?」

 

 先程までの一連の騒動を見て私達が情報を聞こうとしていた男の人が敵意に満ちた目でこちらを見て聞いてくる。

 

「ちち、違います!知りません!」

「そんなに動揺してるところを見るにますます怪しいなぁ!?」

「待って下さい!私達は本当に彼女の事は知りません」

「おいお前ら!こいつらもその女のグルだぞ!」

「あわわわっ」

 

 私が取り乱したせいで、シャバラさんの説得虚しく私達もあの少女の仲間だと思われてしまったようで、あっという間に5人の不良に取り囲まれてしまう。

 

「これは、戦うしかないみたい、ですね」

「は、はい!」

 

 腹を括ったらしく、腰の剣を鞘に差したまま構えるシャバラさんの後ろに付いて、さっきコウイチさんに買ってもらったマジックロッドをキューブ状態から展開して私も構える。

 

 覚悟はしてたつもりですけど、やっぱり怖いです!私、実はまだ攻撃魔法覚えてる途中なんです!

 

「みんなやっちまえ!」

「はぁ!」

 

 一人目がナイフを取り出して走ってくるとシャバラの剣は滑るように相手の首を直撃して、男は空中で一回転して地面に落ちる。

 

「テメー!やりやがったな!」

「おらぁ!」

 今度は二人がかりでシャバラさんに襲い掛かる不良達。片方は鉄の棒を持ち、もう片方はナイフを持っている。

 

「ふっ!」

 シャバラは振り下ろされた鉄の棒を素早く受け止めると、もう一人に蹴りを入れて退かせた後鉄の棒を押し返して胴に横振りを入れる。

 

「チッ、先にこっちのガキやるぞ」

「ひっ!」

 

 シャバラを倒すのは厳しいと判断した不良二人ががクゥに標的を変え向かってくる。

 

 『バインド』!

「がっ!?何だこれ!」

 

 このマジックロッド凄い。今の『バインド』発動からほとんどタイムラグがなく出た。

 

「ガキが舐めやがって!」

 クゥがマジックロッドに関心している間、拘束魔法で一人は身動きが取れなくなりその場で止まるがもう一人はクゥに向かって猛然と駆け寄ってくる。

 

「とうっ!」

「ふん!」

 

「ごはぁ!?」

 

 クゥまで後一歩の所で紫髪の少女の飛び膝蹴りとシャバラの一閃が不良の顔と胴に直撃し、男は空中で数回転して落ちる。

 

「大丈夫ですかクゥさん!」

「はい。ちょっとびっくりしましたけど、それよりあの子…」

 心配そうに聞いてくるシャバラさんに返事をしながら少女の方に目をやる。

 

「あんたらはこいつらの仲間じゃないみたいだけど、なんなんだ?」

「なんなんだじゃないですよ。あなたのせいで貴重な情報を聞き損ねたでしょう!一般人も巻き込んで!」

 

 随分と気の抜けた言い方で話す少女に大人しそうだと思っていたシャバラさんも少し声を荒げる。

 

「うるせーなー。別に誰も怪我してないんだからいいだろ?なぁ?そこのガキンチョ」

「はい!?私ですか?」

 

 ガ、ガキンチョって言われた。見たところそんなに歳に差はなさそうなのに…やっぱりわたし子供っぽいのかなぁ、ショックです。

 

「怪我がなければいいというものじゃありません。それよりなんであなたは『骸狩り』を探してるんですか?」

「ああ、そういえば自己紹介もしてねーな。あたしは【スイレン】ロンシャ王国から来たんだ」

 

 ロンシャ王国というと確か大陸の東の端にある国で武術が盛んだと何かの本で読んだ気がする。

 

「ロンシャ王国なんて遠いところからどうしてクエス王国に?」

「師匠に言われてうちの流派の後継者探しで世界中旅してんだ。たまたまこの国で『怪腕』って二つ名で呼ばれてる強い奴がいるって聞いてさ。そいつを追ってたら『骸狩り』って組織に辿り着いたってわけよ」

 

 一人でそこまで調べるなんて、この子案外凄い子なんじゃ。

 

「どうやって調べたんです?」

 シャバラさんが当然の質問を投げると、スイレンは満面の笑みで答える。

「こういう路地裏片っ端から回って、全員ぶっ飛ばして聞いてきた」

 

 前言撤回です。この子危ない子です。その殺伐とした説明を笑顔でしているのが余計怖さを増幅させてます。

 

「今すぐにでも庁舎に引っ張って事情聴取したいところですが、今はあなたのような暴力犯にかまっている時間はありません」

「誰が暴力犯だよ!あたしが殴ってるのは先に殴ってきた奴だけだ!」

 

 それでも十分駄目だとは本人に言える筈もなく、ただ二人の口論を眺めることしかできない自分が嫌になります。

 

「それより、今はあいつです」

 

 シャバラは、突っかかってくるスイレンに黙るように言うと、拘束魔法を外そうともがく力も無くなったらしくぐったりとしたまま直立で縛り上げられている不良に目を向ける。

 

「たしかに、こいつならカリムの居場所も知ってそうだな」

「部外者は入ってこないで下さい」

 

「テメーらこんな事してタダで済むと思うなよ!」

 こちらが見ている事に気付き、また暴れ出した男を尋問という名の暴力を振るう気満々のスイレンにシャバラは厳しく告げると、男に近づいていき朝コウイチにした時とは全く別の、見る者に恐怖を覚えさせるほど嘘っぽい笑顔で話しかける。

 

「少しお話を聞きたいのでご同行願えますか?」

「………はい」

 

 シャバラの顔を見たクゥは、この人も怒らせないようにしようと思って震えていた。

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