「サルビア?あぁ、あの怪しい人ね。今日はまだ見てないけど」
コルト亭に戻ってシャロットにサルビアが来ているか質問してみて返ってきた返事である。
「うーん、…どうしたもんか」
「考えるふりして寝ようとしない!」
「いでっ」
食堂のテーブルについて顔を伏せながら話すと寝ようとしていたのがバレたらしくキーラに後頭部を叩かれる。
昨日の晩から、ろくに寝てないせいでいい加減に眠気が限界である。
「んな事言ったって、サルビアさんがいないんじゃ話にならないだろ?来るのを待つぐらいしかできないじゃん」
「それはそうだけど、サボろうとしないの」
少しでも瞼を閉じようものならすぐにでも鉄拳が飛んできそうなので、大人しく座り直してからシャロットに料理を注文してサルビアを待つ事にした。
「あっちの二人、上手くやってるかしら。クゥって人見知りだしちょっと心配ね」
「大丈夫だろ クゥはああ見えてしっかりしてる子だし、シャバラも変な奴じゃないから」
しばらくはクゥ達の心配をしながらご飯を食べて時間を潰していると、コルト亭の入り口が開いて髪の長い怪しい雰囲気を纏った男が一人入ってくる。
「いやー、待たせちゃったみたいだねコウイチ君」
それは髪のせいで目元は見えないが、口元は笑みを浮かべてこちらに話しかけてくるサルビアだった。
「なんで待ってるって知ってたんだ?」
「なんとなくだよなんとなく」
相変わらず何を考えているのか分からない様子ではぐらかすサルビアだったが、待っていたのを知っていたのなら話は早い。
「早速なんだけどサルビアさん。俺逹『骸狩り』のアジトと幹部の居場所を探してるんだけど、なんか知ってたりしない?」
「もちろん知ってるよ」
「じゃあ…」
さすがというべきか、知っていると言うサルビアに情報を聞こうとすると手の平を突き出されて制止される。
「ただし、教えられるのは『妖香』の二つ名を持つカシュームの居場所だけだね」
「それ以外のやつの情報は?」
「残念ながら持ってないんだよ。すまないね」
残念ながら『骸狩り』全ての情報は手に入らなかったが幹部の一人の居場所は知っているのでそれを聞く事にする。
「報酬はいつも通り、またお酒でもご馳走してくれればいいよ」
「いつも悪い」
「それじゃあ教えるけど、カシュームはもうじきどこかに移動してしまうと思うから場所を聞いてらすぐにでも向かったほうがいいよ」
そう前置きしてから教えられたカシュームの潜伏場所は、ここからギルドとは反対側に位置する場所の路地裏らしい。
確かに王都って入り組んでるから路地裏なんかは潜伏場所に向いてるかもなどと思いつつ、急いだ方がいいらしいのでサルビアに感謝をしながらキーラと一緒に足早にコルト亭を出た。
「聞いた感じだと、この辺りか」
「手分けして探すのも危ないし、一緒に路地裏回っていくわよ」
サルビアに教えられた場所は路地が入り組んでおり、行きたい場所に行こうとしてもどこを通ればいいか分からない程だ。
キーラと路地裏の迷路を探索していると、明らかに悪そうな人相をした連中が屯しているらしい広場を見つける。
「あそこか?」
「どうかしら カシュームって奴を見つけなきゃよね」
少し離れた曲がり角から広場の様子を伺ってみると…
「うーん、みんなちょっと頑張り足りないんじゃなーい?」
「「「す、すみません!」」」
男ばかりの溜まり場で珍しい女性の声がしたと思うと、その女が座って話しているのに対して五人ほどの男達は立ったまま全員頭を下げて謝罪していた。
「……なんだあれ」
「こっちが知りたいわよ」
見たところ女王様と家来といった風に見えるが…
「あいつがカシュームか?」
女王様風の女は体のラインが強調された服を着ており、正直目のやり場に困るが、歳は見たところ二十代後半と言ったところで大人の女性の雰囲気がでている。
「……エロいな」
「は!?あんた、あんなのがいいわけ!?」
「違う違う!ちょっと思っただけです!」
キーラからの軽蔑の眼差しを感じながら、気を背けるように広場の方を見直すと…
「なにか匂うねー。私と違って美しくない匂いがするー」
空中の匂いを嗅ぐ仕草をした後明らかに俺とキーラが隠れている方を向いてきた女と目が合ってしまう。
「見つけたー。みんなあの子達捕まえてきてー」
女の一言で、男達はこちらに向かって一斉に駆け出してきた。
「なんかこっち来た!」
「逃げてどうすんのよ!」
つい逃げ出そうとした所をキーラに襟首を掴まれて止められる。
「さっさとあいつら倒してあの女もとっ捕まえるわよ!」
やる気満々で買ったばかりの剣を抜いて臨戦体勢をとるキーラを止められるわけもなく…
「やるしかねぇか」
俺も拳を構えて走ってくる男達を相手することにした。
もうどうにでもなれってんだ!