「ってーなぁ!!やるじゃねーか!」
怒りながらシャバラを称賛して立ち上がるカリム。そんな彼は内心不安に駆られていた。
カリムが『怪腕』という二つ名で呼ばれる理由はその腕に関するスキルにある。
一つは右腕の『硬腕』。これは右腕を硬化させることのできるスキルで、カリム程の使い手になると鋼鉄以上の硬さにすることができ、攻守共に扱いやすいスキルである。
もう一つは左腕のスキルだが、こちらは攻撃特化のスキルで使い勝手が悪いのであまり使うことはない。
なにより、カリムにとって戦闘で右腕に傷が付けられるというのははじめての経験で異常事態であった。
「……ッつ!?」
カリムが様子を伺いながらどう戦うか思案しているところに、一直線に突進してきたシャバラの渾身の振り下ろし攻撃が地面を抉る。
「どうした?『骸狩り』の幹部はこの程度か?」
「さっきまでのお上品な感じはどこいったよ兄ちゃん」
明らかに威力の上がっているシャバラの剣撃と彼の明らかに変わった目つきを見てうっすらと冷や汗が出るのを感じる。
「言ったはずだぞ。さっきまでとは違うと」
(ガキの方は支援魔法やらで妨害してくるから先に潰したかったが、それどころじゃなさそうだな)
「どうした、びびって動けないか?ならこっちから行ってやるぞ」
「なめんなよ!!」
挑発しながら、もう一度正面から突進してくるシャバラを迎え撃つ。
『
『硬腕』!
「ぐっ!?」
シャバラの放つ首目掛けて飛んでくる剣を右腕を出して防ごうとするも先ほど斬られた所と同じ場所に剣を当てられ傷が深くなるのを感じる。
「死ねや!!」
カリムは傷を抉られるのを感じながら右腕ごと剣を押し退け左腕を突き出す。
『巨腕』!!
スキルの発動と同時にカリムの左腕はみるみる大きくなり、一瞬のうちに拳だけで人一人分はある程の大きさにまで膨れ上がる。近くで見れば最早壁のようなそれは、吸い込まれるシャバラに向かって降り落ちる。
『アトラクト』
クゥの唱えた言葉と同時にシャバラの体が何かに引っ張られるようにクゥのいる後ろに飛ぶ。標的を失った左腕はそのまま地面に激突し、小さい隕石でもぶつかったかのようにクレーターを作る。
「ガキがぁ!!邪魔しやがって!」
「はひっ、ごめんなさい!」
完全に虚を衝く必殺の一撃を無駄にされた事で鬼気迫る形相で怒鳴るカリムについ謝りながら小さくなってしまうクゥを見て余計に苛立ちが増すカリム。
こんなガキが一丁前に戦闘に割り込みやがって。うっとうしい。こうなったら…
「まとめて潰す!」
地面に突き刺さった腕を引き抜いて二人に向かって走り出す。
「クゥさん逃げて下さい!」
「遅ぇよ!」
大きくなった腕は物理的に距離を縮める。拳が二人に到達するのには一秒も要さない。
『スリップ』!
「ぐがぁ!?」
クゥの咄嗟に出した魔法で足を滑らせて顔から地面にこけた事で拳は二人に届く前に勢いを無くす。
「さっきからうっとうしい魔法でちまちまちまちまとぉ!!」
「あっはっはっは。めちゃくちゃダサいじゃん!」
「あぁん!?」
「ここだよここ〜」
どこからか聞こえる笑い声に怒りを露わにして立ち上がりながら声の主を探すカリムを嘲笑うように上から呼びかける人影。
「スイレンちゃん登場!!」
屋根の上からジャンプしてクゥとシャバラの前に優しく着地する彼女はくるりとカリムの方に向き直り指を差す。
「あんたがカリムだろ?失望したぞ!」
「はぁ?誰だよおめぇは!」
「あたしは『崩山拳』伝承者の一人、スイレン様だ!」
「聞いても誰か知らねぇよ!」
「別にあんたにもう興味ないから知らなくていいよ」
ふぅと息を吐きながらやる気無さげに首を振るスイレンに苛立ちが頂点に達したカリムは体をわなわなと震わせて巨大な左の拳に一層の力を込める。
「もうお前らまとめて死ねや」
力強く地面を蹴って高く飛び上がったカリムは落ちる勢いそのままに更に一回り大きくなった左腕を三人目掛けて振り下ろす。
『
「おいスイレン、ここにはクゥさんもいるんだぞ!?どうするつもりだあんなの!」
「まかせなって」
クゥとシャバラに目もくれず、拳の親指だけを立てて返事をすると、飛んでくるカリムの拳に照準を合わせて構えるスイレン。
崩山拳奥義『
腰を落とした姿勢から、回転を加えて放たれたスイレンの拳とカリムの拳が真正面から衝突する!