絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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謝罪

 

 クゥ達がカリムと戦っている丁度その頃、コウイチ達は…

 

 

「ねぇなんで!?また俺キーラに斬られてるんですけどなんで!?」

 

 

 カシュームの精神操作が解け、我に返ったコウイチは体に走る痛みに叫んでいた。

 

「おいおい、暴れるなコウイチ。傷が開く」

「元はと言えばあんたがあの女に操られるのが悪いんでしょうが」

「痛い痛い!死ぬ死ぬ!」

 

 騒ぐコウイチを落ち着かせようとするカシュームを脇に抱えたグレゴリと我関せずとそっぽを向いて冷たくあしらうキーラとでカオスな空間になっていた。

 

「これだけ騒いでれば大丈夫だろうが、一応これを飲め」

「んむっ!」

 

 グレゴリは空いた手で腰のポーチから取り出した小瓶の中身をコウイチの口に流し込むと体の傷がみるみる治っていく。

 

「治ったーー!生きてるーーー!」

「そのまま死んでも良かったのよ?」

「お前何回俺のこと斬れば気が済むんだよ!命いくつあっても足んねーよ!」

「まぁまぁ、二人ともそう騒ぐな。彼女はこれでも命に別状が無い程度に浅く斬ってくれてたんだぞ?」

「斬られてるんですけど!?浅い深いじゃなく!」

「まぁそれは事実だがな、今はそんなことよりこの女の話をしよう」

 

 コウイチの軽口を笑って流して脇に抱えたカシュームについて話を始めるグレゴリ。カシュームはグレゴリの攻撃で完全に伸びており、体は力無くだらんとグレゴリの腕に引っかかっている。

 

「どうするって言われても、騎士団に連れて行って捕まえてもらうだろ」

「そうなるだろうが、『宵の手』としては迷惑をかけられた相手だからなぁ、連れて帰ってちょいと痛い目を見てもらいたいんだが」

 

 頬をぽりぽりと掻きながら、さらりとカシュームを私刑にかけると言うグレゴリを見て、そういえばこの人優しい口調だから忘れそうになるけど馬鹿みたいに体の大きい秘密結社のメンバーだったと思い出すコウイチ。

 

「駄目に決まってるでしょ?」

 

 答えに困っているコウイチの横から声を出したのはキーラだった。体を一歩前に出してグレゴリを見上げたまま続けて、

 

「あんた達が私の事誘拐して殺そうとしたの許してあげたんだから今回は見逃しなさい。それでチャラよ」

 

 凛とした表情を変えず、グレゴリ相手に物怖じもせずそう言うキーラを見て、また一つ笑いを零すグレゴリ。

 

「それもそうだな、キーラお嬢さんが一枚上手だったか。この女は持っていくといい。じゃあ私はこれで失礼するとしよう。さっきのポーション代はいらんから気にするな」

 

 それだけ言った後コウイチの方に近づいて「彼女に謝っとけよ」と囁いた後、転移魔法で姿を消してしまった。

 

「なんかあっさり帰っていったな」

 

 取り残されたコウイチがさっきまでグレゴリがいた場所を見ながら呟く。

 

「借りを残しておきたくなかっただけでしょ?前に謝られた時からそんな感じだったし」

 

 吐き捨てるように言いながら、カシュームを縄で縛り始めるキーラの背中を見ながら、どこか機嫌が悪い感じがしてどうしようかと悩んだ末、

 

「あの、キーラさん?」

「なによ」

 

 こちらを振り返りもしないキーラの背中に話し続ける。

 

「さっきグレゴリが言ってたけど。死なないように加減して斬って下さったんですよね?」

「それが?」

「えーとですね、なんと言いますか、助かりました。ありがとうございます?」

「………」

 

 返事がない。しかばねではないからただの無視のようだ。近づいて顔色を伺おう。

 

「あのー。キーラさん?」

「うぅ…」

「えぇ!?」

 

 キーラの前に出て顔を覗くと、そこには目に涙をいっぱいに溜めて顔を歪めた彼女と目が合う。

 

「別にあたしだって斬りたくて斬ってるわけじゃないのにぃ」

「で、ですよね!もちろん存じておりますとも!」

「クゥもいないからどうしたらいいか分かんなかったから。でも斬らないとあんた止めれなかったからぁ」

 

 普段つんけんしているキーラがこんな表情をしているのを初めて見たせいか、女の子を泣かせた罪悪感からくるのか、どうしていいか分からずとりあえず全肯定することにする。

 

「だよね!でも死なない程度に斬ってくれたんだもんね!流石キーラだなぁ!俺、キーラになら何回斬られてもいいって思っちゃうなー!」

「斬りたくないって言ってんでしょー!うわーん!」

「斬りたくないよねー!だよねー!」

「嫌われたくてやってる訳じゃないのにー!」

 

 わんわん泣き出すキーラにどう言葉をかけていいか分からず泣いてる子供をあやすような言葉遣いになってしまう。

 

 

 

「…泣いたらすっきりした」

 

 しばらく泣いた後、目の周りを赤くして鼻をすすりながら呟いたキーラの言葉を聞いて少しホッとする。

 

「さっさとこの女連れて行きましょ。それと、さっき見た事聞いた事は記憶から消しなさい」

「はい」

「誰かに言ったら斬るから」

「はい」

 

 結局斬るんかい。などという言葉をぐっと飲み込み。泣き疲れたせいかいつもより弱々しい口調で釘を刺すキーラを見て、これ以上怒らせる訳にはいけないと軽口を挟まずただただ黙って首を縦に振るコウイチだった。

 

 その後、カシュームを騎士団に渡す為コウイチとキーラは集合場所のギルド前に行く前に庁舎へと向かった。

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