「ちょっと遅れるかもな」
「しょうがないでしょ。幹部を捕まえたんだし遅刻ぐらい許してくれるわよ」
地理的な関係からカシュームを庁舎の騎士達に渡した後にギルドに向かうと集合時間には間に合わないと考えられる為、ぼやきながらずり落ちそうなカシュームを抱え直す。
「三人のうち一人が案外簡単に捕まえられたし、あっという間に三人捕まえれるかもね」
さっきまで泣いていたのは無かったかの様に気持ちを切り替えたのか、すっかり普段通りに戻ったキーラは呑気なことを呟く。
本当によく分からんやつだなぁと口に出さずに歩いていると、騎士団庁舎が見えてくる。
騎士団の人に事情を説明してカシュームを預けた後、庁舎を出ようとした時、
「あ」
「おや?」
庁舎前に着くとそこにはクゥとシャバラ、と知らない女の子と縄で縛られてシャバラに引き摺られている知らない大男が庁舎に入ろうとしている所に鉢合わせた。見るに大男の方は左腕が随分とボロボロに傷ついているようだが。
「コウイチさん!」
「なんでクゥ達もここにいるんだ?それにその人達…」
「こいつは『骸狩り』幹部のカリムです。捕らえれたので一旦庁舎に預けようと思いまして」
状況が理解できていない俺に説明する為、話し始めたシャバラ。
「こっちはついでに捕まえた暴力犯です」
「まだあたしのこと犯罪者呼ばわりかよ!あたしはただの通りすがりの武闘家スイレン様だって」
年齢は俺と変わらなさそうなのに随分と自信家な女の子らしい。でもシャバラに犯罪者って言われてるけどどういうこと?
「スイレンさんは凄いんですよコウイチさん。このおっきい男の人を一撃でやっつけちゃったんです」
「よせやいクゥ。照れちゃうじゃん」
未だに理解できないままいると、スイレンという名前らしい女の子を褒めるクゥと仲が良さそうに返事をするスイレン。
「こいつがクゥの言ってたコウイチか?武術が得意そうには見えないが」
「え、はい?」
顔が付きそうなほど近くまで寄って、ジロジロと品定めでもするように俺の顔を見つめるスイレンに照れておどおどとしてしまう。
近い近い!女の子にこんなに近づかれると恥ずかしいって!
「ちょっと離れなさい」
俺とスイレンの間に手を入れて、スイレンを押して引き剥がすキーラ。
「なにー?こいつの彼女か?」
「そんなんじゃないから」
茶化すようににやけ顔で話すスイレンに冷たく一言で返すキーラだったがそんな彼女を見てスイレンはさっきより密着するように俺の腕に組み付いてくる。
「じゃああたしがもらおうかな」
「はぁ!?」
「えぇ!?」
悪戯っぽく笑いながらそう言うスイレンにキーラとクゥが驚いたような声を上げる。
「だってもしこいつが武術得意なら婿として捕まえれば絶対逃げられないっしょ。そうすれば後継者問題も解決してあたしも結婚して幸せで一石二鳥じゃん?」
「絶対無理よ!」
「絶対無理です!」
冗談であろうスイレンの言葉に全力で否定の言葉をかける二人。そこは無理じゃなくてダメとか言って欲しかったが…無理とか言われるとちょっと傷つくぞ。
「コウイチが結婚なんて無理に決まってるでしょ?大体自分から誘っておいて先にパーティー抜けるなんて許さないし」
「そうですよ!コウイチさんに結婚はまだ早過ぎます!しなくていいです!」
スイレンは何も言ってないのに続ける二人。そんなに言われたら俺泣いちゃうかも。
「分かってるって。冗談よ冗談。君随分大事にされてるねぇ」
俺の腕を離して二人に謝るスイレンは俺にそんな事を言って微笑む。今のは大事にされてると言うよりか蔑まれているように感じたんですが。
「まぁ冗談はさておき、カリムを牢屋に入れてくるので四人共私の仕事部屋で待っていてもらえますか?スイレンは捕まえはしませんが今度こそ大人しく待っていて下さいね。聞くことは山ほどあるんですから」
「へーい」
俺達のやりとりに少し笑みを零すとカリムを縛っている縄を掴んで庁舎の中へと入っていくシャバラを見送り、クゥ達に案内されてシャバラの仕事部屋へと向かう。