騎士団庁舎の正門を少し入った敷地内は現在、押入ってきた『骸狩り』の構成員とそれを阻止する騎士とで、
ギルバートの指示の下、準備をして攻め込んで来た『骸狩り』陣営と違い、急襲された騎士団がやや押され気味の戦況の中、族の侵入をあと一歩の所で抑え込めているのは騎士達の日々の鍛錬と駆けつけたシャバラの指揮によるものに他ならない。
「全員盾で壁を作り囲むように押し込め!これ以上の侵入を許すなよ!」
「「「はい!」」」
シャバラが穏やかな普段と違う大きく通る声で号令を出すと、一糸乱れぬ動きで盾の壁が作られみるみる『骸狩り』を壁へと押し込んでいく。
「クッソ!押し返せ!」
声を上げながら抵抗するも、じりじりと壁際へと追い込まれた族を一斉に捕らえようかといったその時、シャバラだけが背後からの殺気を感じた。
「ふん!!」
さっきに気付くと同時に振り返り、飛んで来た魔力の塊に剣を叩きつけて相殺させる。
「まさか自分から捕まりに来てくれるとはな『魔弾』ゼルバート…。後ろの連中はお前の手下か?」
「まさかまだ自分達が有利な立場にいると思ってるんですか?本当に騎士団ってのは団長以外は愚図の集まりみたいですねぇ?」
「あ?」
『魔連弾』
ゼルバートの言葉にシャバラが苛立ちを感じ踏み込もうと考えた瞬間、両手を前に出したゼルバートの手から無数の『魔弾』が放出される。
「クソっ!?」
凄まじい勢いと数で飛んでくる魔弾を剣撃でいくつか潰すも一人で全て対処できず、いくつかの魔弾はシャバラの後方、つまりは『骸狩り』を抑え込んでいる部下達の方へと飛んでいく。
シャバラの横を抜けていった魔弾は背を向けた騎士達に直撃して盾の壁が崩壊してしまう。
「ゼルバートさんが来てくれたぞ!俺らも続け!」
活路が開けたことでそこから一斉に雪崩れ込む『骸狩り』の部下達を止めることが出来ず庁舎内への侵入を許してしまう。
「行かせるか!」
「こっちの台詞ですよ?」
抜け出してきた『骸狩り』を阻止する為、部下達の方へと駆けつけようとするも、ゼルバートの魔弾に邪魔されてしまう。
「別に放っておいてくれてもいいんですが…」
ゼルバートはそう呟くと、今度は両手を庁舎に向けて魔弾を放ち建物を破壊し始める。
「厄介極まりないな」
再度対峙するシャバラとゼルバート、二人の間に静寂が流れる。
◇◇
「おー、遠くから見てもデカいですねー騎士団庁舎はー。盛り上がってるみたいだし、そろそろ行こっかなー」
庁舎から少し離れた民家の屋根の上に、呑気な声を出しながら庁舎の様子を伺うスーツの男が一人いた。
◇◇
「さぁ、可愛い私の下僕達。あの小娘共をやっちゃってー」
「ちょっともー!なんなのよあいつら!」
「分かりませんが、とりあえず逃げるましょう!」
息を切らしながら庁舎の廊下を走るキーラとクゥ。後ろからは目が虚な騎士達とカシュームが迫ってきていた。
コウイチと会話をした直後のこと、シャバラの部屋で待機していた彼女たちの元に押し掛けてきた騎士達の様子がおかしかった事と後ろにキーラが対峙したカシュームがいた事でいち早く危険を察知したことで、スイレンが壊した壁から逃げ出せたのだが…
『スリップ』!
クゥの魔術で床を滑らせることで騎士達を足止めして逃げる事で中々捕まらない彼女達に、カシュームは苛立ちを隠せずにいた。
「何やってるのよ小娘二人に!」
カシュームのスキルにより、彼女の虜になっていく騎士達は増え続け、徐々に彼女たちの距離は狭まって行く。
庁舎内は現在大混乱である。