絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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窮地

 

「しまった、行き止まりじゃない!」

「ど、どうしましょう!」

 

 カシュームの操る騎士達から逃げていたキーラとクゥは庁舎正門から反対に位置する廊下の袋小路に追い込まれていた。

 

「もう追いかけっこは終わりねー」

 

 庁舎を走り回りながら確実に数を増やしていったカシュームに操られた騎士は10人を超えていた。

 

「あんたは次見つけたら殺すって決めてたから丁度いいわ」

 

 キーラに目を向けながら騎士達を差し向けるカシューム。

 

『バインド』!

「うぅ!」

 

 呻き声と共にクゥの魔法で動きを封じられる騎士だが、

「一人止めたくらいじゃもう意味ないわよクゥ」

「で、ですよね〜」

 

「そこの剣士の女は殺さずに捕らえなさい。ガキの方は好きにしていいわよ」

 

 カシュームの一言で、操られた騎士達はじりじりと二人の方へとにじり寄っていく。

 

「こんな数捌ききれないわよ!」

 

 次々と襲い掛かる騎士達に、鞘を付けたままの剣で応戦するキーラとクゥだったが、逃げ場もなく狭い廊下での戦闘に加え、数の暴力で徐々に押されていく。

 

「このままじゃ、まずい。誰か…コウイチ…」 

 

 

「失礼しまーす」

 

 キーラ達が騎士達に服を掴まれるほどの距離まで追い詰められ打つ手が無くなったその時、彼女達から少し横にズレた背後の()が扉のように開きそこからスーツを着た男が顔を出す。男は薄い茶色のレンズが付いた眼鏡をかけており、髪も茶色でセンターで分けられたやや長めの髪型をしている。

 

 その場にいた全員が男の方を向き、一瞬の沈黙が流れる。

 

「お取り込み中みたいっすねー。失礼しましたー」

「待ちなさい待ちなさい!」

 

 キーラは不自然に開いた壁を閉めながら出て行こうとする男に助けを求めるため呼び止める。

 

「どう見ても襲われてるんだから助けなさいよ!」

「えー。なんかめんどくさそうなんすけど。まぁいいっすよー」

 

 男は見るからに嫌そうな顔をしつつも「えい」と一言発して手を振るうと騎士達の横の壁がみるみる形を変えキーラ達以外を包み込むようなドーム状になる。

 

「な、なんですか今の!?」

「ちょーっと壁をイジっただけっすよ」

 

 目の前で起きた不可解な現象に戸惑いを隠せず声が漏れるクゥ。

 

「ちょっとどういうことよ!あんた何者よ!」

 

 戸惑っているのはカシュームも同じようで、突然現れた男のせいで取り巻きがいなくなったことに声を上げる。

 

「あれー?誰かと思えばそこにいるのって『骸狩り』のカシュームじゃないっすかー?」

「私を知ってるみたいだけど、あんたは誰なのよ!」

 

 カシュームに問われると、男は歯を見せて笑みを浮かべた後、仰々しく挨拶を始める。

 

「これはこれは、申し遅れたっす。自分、秘密結社『宵の手』の財政担当メンバー【ガグマ】っす。以後お見知り置きを…」

「なっ、『宵の手』…ですって?…」

 

 自らをガグマと名乗る男が『宵の手』の名前を出したことでカシュームの表情が強張る。

 

「さっきは人がいっぱいで気付かなかったっすけど、都合良く『骸狩り』の幹部に出会えてラッキー」

 

 そう言うとガグマは開いた手を掬うように自分の前に差し出した後、その手を握り締める。するとカシュームの立っていた石でできた床が生き物のように蠢いて触手となって彼女にまとわりつき動きを封じる。

 

「ちょっ!?なんなのよこれ!?」

「すごいっしょ?俺のユニークスキル『即席工作』って言うんすよ」

 

 石でできた触手はカシュームに絡まった後、初めからそういう形だったように固まってしまう。

 

「じゃあうちの組織にちょっかい出してる奴を懲らしめるとしますかー」

 

 ガグマは笑ってカシュームの方へとゆっくり歩き出す。




この投稿とは全く関係ない短編を投稿したのでそちらも読んでいただけると幸いです。
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