庁舎内の広場に響く魔弾と拳の衝突する炸裂音。
「これじゃ近付けないぞ!」
秒単位で飛んでくる数十の魔弾を処理するのにスイレンはその場で動きを封じられていた。
「これなら...どうだ!」
『山嵐』!!
無数に飛び交う魔弾の一瞬の隙をついて放った一発の拳が、眼前の障害を全てかき消す。
言葉も発さず踏み込みゼルバートとの距離を詰めようとするスイレンだったが、あと一歩進めば拳の届くところで急ブレーキをかける。
次の瞬間、スイレンの目の前の地面が弾け飛ぶ。それに反応して身構えた彼女の隙をついてゼルバートは彼女から距離をとる。
「まさか今のを避けるとは、少し驚来ました」
「怪しい臭いがプンプンしてたぞ?」
下から出てきた魔弾の跡は、一文字の形に地面を抉り、人に当たれば容易に二つに切れてしまう威力なのが見てとれる。
スイレンは間近でそれを見た事でにやりと笑いながらも背中に汗が伝うのを感じた。
「手以外から出せるならそう言っとけよ」
「別に手からしか出さないとは言ってなかったと思いますけど?」
ゼルバートの『魔弾』の真骨頂は範囲内ならどこからでも出せる事と、魔弾の形状変化による攻撃の属性変化による変幻自在な戦法にある。
『魔弾』
奇襲が失敗し、魔弾の手の内が看破されたと感じたゼルバートは、出し惜しみせずに全方向から球状の打撃特化の魔弾、薄く弧を描く形の斬撃特化の魔弾、先を細く尖らせた円錐形の刺突特化の魔弾を放つ。
「これは、やばいな…」
さっきまでの前方からしか飛んでこない魔弾とは違い、スイレンを取り囲むように飛んでくる魔弾に、拳で応戦することは無意味であると察した彼女の顔から笑顔は消え、全力で回避することに集中した。
彼女に当たらず地面に激突する魔弾は、地面を抉り、切りつけ、貫き破壊する。
「これでもまだ粘りますか」
神経を張り巡らせ、紙一重の所で魔弾を躱し続けるスイレンを見てそう呟いたゼルバートは、魔弾により一層の魔力を込めると、魔弾はそれに反応し数を増やし、威力も増してスイレンに襲いかかる。
躱す。
弾く。
受け流す。
躱す。
受け流す。
波の様に押し寄せる種類の違う魔弾は、確実にスイレンの集中力をすり減らし…
「がっ…!?」
ついに、処理しきれなかったスイレンの脇腹に球状の魔弾が直撃する。スイレンの体は、投げられた人形の様にぐるんと宙を舞うとコウイチの近くに落ちる。
「スイレン!?大丈夫か!」
「ちょっと…まずった」
力無く声を発するスイレンは、糸が切れた様に気を失ってしまった。
「さて、邪魔者も消えた事ですし」
離れたところからゼルバートがゆっくりとコウイチに近寄る。
二人の戦いを間近で見ていたコウイチは、絶対に勝てないの悟りその場から動けなかった。
まずい。俺、死ぬじゃん。
コウイチに、ゆっくりとゼルバートの手が差し伸ばされる。