絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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密会

 

「はぁ、気が重いなぁ」

 

 ロンシャ王国王宮にある一室の前にて、肩を落としながらため息をついているオニバスの姿があった。

 

 せっかく愛娘が家に帰ってきたというのに、内乱なんぞが起きているせいでおちおち一緒に過ごすこともできないまま、国王に呼び出されて今に至る。

 

 覚悟を決めて部屋をノックする。

 

「入れ」

 

 一瞬の間があった後、中から返事が聞こえて扉を開ける。

 

「来たかオニバス」

 

 部屋の真ん中には丸テーブルが置かれており、三人の男が座っていた。一人はさっきの声の主でもあるロンシャ王国国王のバルクラヤだったが、他の二人は剣を携えた男とこの国ではあまり見ないスーツを着た男で、オニバスは見たことがない人間だった。

 

「バルクラヤ様、そちらの二人は?」

 

「この二人は俺の知り合いだ。今回の内乱の件で来てくれた」

 

 やはり内乱のことで呼び出されたのは間違いないよようだが、

 

「見たところこの国の者ではないようですが...大丈夫ですか?」

 

 部外者にそんな話をして外部に情報が漏れたりなどしたら取り返しがつかないことだってあり得るが。

 

「安心しろ。この二人は情報を流したりしないし、何より俺より強い」

 

 オニバスは驚いた。このロンシャ王国は何よりも強さを重要視する国である。そのため、この国の王は必然的に国内で最も強い者だ。その王が自分より強いとさらりと言ってしまったことに驚きを隠せなかった。

 

「紹介しないとな、スメラギとヤクモだ」

 

 その言葉と共に剣を携えた男が立ち上がる。

 

「どうも、スメラギです。今回はバルクラヤ様に無理を言って首を突っ込む形になってしまい申し訳ありません」

 

 随分と礼儀正しい男だと感じた。それと同時にスメラギと正面で対峙して分かる。おそらく自分ではこの男に手も足も出せずに負けるだろう。それほどの強者のオーラを感じた。

 

「ヤクモです。どうぞよろしく」

 

 スーツの男の方は立ち上がらず、こちらを向いてその場で頭を少し下げて挨拶する。その笑顔からはどこか胡散臭い感じられた。しかし、もっと気になるのはヤクモからは強者の雰囲気が感じられないことだ。王が言うのだから自分より強いのだろうとは頭では理解しているが、この男になら勝てそうだと長年の戦闘経験から感じられてしまう。

 

「まぁ座れオニバス」

 

 オニバスの警戒を感じてか、席に座るよう促すバルクラヤの指示に従って四人でテーブルを囲むように着席する。

 

「今からする話は他言無用だ。いいか?」

 

 バルクラヤの念押しの言葉と共に密談は始まった。

 

 

 

   ◇◇

 

 

 

「コウイチ。せっかくだし、ちょっとこの辺見て回っていくか?」

 

「お前が行きたいだけじゃないだろうな?」

 

「違うって。サランの雰囲気をコウイチに見せたいんだよ」

 

 ヨン老師なる謎の人物に会いに行く為、サランの街に出た俺とスイレンだったが彼女のその言葉で道草を食うことが確定した。

 

「で、どこ行くんだ?」

 

「特に決めてないな。歩いてれば分かると思うし」

 

 サランの雰囲気って言ったって、ここに来る時に寄ったカカマオの町と特段大した差はないように感じながら歩いていると、一つの店の中から何やら騒がしい声が聞こえてくる。

 

「表出ろやゴラァ!」

 

「なんだぁ?やんのか?」

 

「喧嘩だ喧嘩だ!」

「お、いいぞぉ!やれやれ!」

「お前どっちに賭けるよ?」

 

 酒場らしい店の中からそんな声と共に睨み合った屈強な男が二人と、それを煽るように声を出す他の客がぞろぞろと外に出てきた。

 

「喧嘩か。危なそうだし避けようぜ」

 

 わざわざピリついた場所に近寄ろうと思うはずもなく、違う道を探そうかとスイレンに話しながら踵を返そうとすると服の襟を掴まれた。そのせいで少しえづいてしまう。

 

「何すんだよ!?」

 

「それはこっちのセリフだぞ。まさに探してたのがアレだよ!」

 

 目を輝かせながら話すスイレン。

 

「見せたいものって...喧嘩のことか?」

 

「そうだよ?」

 

 なんで喧嘩なんぞ見ねばいけないのか理解ができない。大体喧嘩なんてクエス王国でも見たことぐらいある。酒が入って気が大きくなった連中が突っかかって暴れ回るなんて大なり小なりどこでも起きることだ。

 

「分かってねぇなぁコウイチ。ここは武の都ロンシャ王国だぜ?」

 

「だからなんだよ?」

 

「その辺で見る喧嘩とは訳が違うってことだよ」

 

 含みのある笑顔でそう話すスイレンに手を引かれるまま、喧嘩がよく見えるように近くまで移動してみると目を疑う光景が飛び込んできた。

 

 

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