絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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ダンジョンアタック

 

 時は遡り、テサボンの街にてお金が無くなり途方にくれていたキーラとクゥは、ロンシャ王国にもあるという探索者ギルドに訪れていたのだが...。

 

「仕事はないですって!?」

 

「はい。採取依頼はそもそもこの不毛の土地に採取するようなものが無いですし、討伐依頼は出ている時もあるのですが、出てもすぐに街の腕自慢の武闘家たちが倒してしまったりするので、探索者の方に依頼するものはない。と言うのが探索者ロンシャ王国支部の現状です」

 

 信じられないと言った表情のキーラに淡々と状況を説明する受付嬢パジルトは、このがらんとしたギルドにいるただ一人の職員である。

 

「探索者本部でも、この国に置く支部は必要ないと判断を下し、近々このギルドは引き払う予定です」

 

 言い切ったところで決めポーズのように眼鏡をくいと掛け直す。ピンでぴっちりと抑えられた前髪から出た白い額。真面目を絵に描いたような見た目のパジルトだが、何故こんな仕事の無いような国に来たのか分からない少女二人を前に困惑しているのは彼女も同じだった。

 

「あ、あの、じゃあこの国でお金を稼ぐ方法って何かありませんか?」

 

 最後の望みを断たれたかのように焦っていたキーラの横からパリスに声をかけたのはクゥだった。

 

「お金を稼ぐ方法━━、ですか」

 

 この国でお金を稼ぐ方法と言われてパジルトが思い浮かぶものは一つしかなかった。

 

「そうなるとやはり迷宮攻略(ダンジョンアタック)━━、ですかね」

 

「ダンジョンアタック、ってなに?」

 

 初めて聞く単語を不思議そうに聞き返すキーラに、パジルトは説明を始めてくれる。

 

「迷宮攻略とは、人工的や自然的に作られた迷宮などを探索することです。ここロンシャ王国の資金源は、この広い砂漠の大地に数多くある大小様々な迷宮から得られる財宝などによるものです」

 

 パジルトの言う通り、このロンシャ王国には、遠い過去から存在するダンジョンが数百とある。その中にはロンシャ王国の歴代国王たちの墓も含まれる。その全てのダンジョンにあるとされる金銀財宝の総額は、金貨にして約一億枚以上あると言われている。

 その中で、現在見つかっている内容はその半分にも満たず、まだ残り半分が各地にあるダンジョンに眠っているとされ、国中のヤクザや一攫千金を狙う者たちがダンジョンアタックを繰り返し、未だ日の目を見ない財宝を探している。

 

「そ、そんな大金が眠ってるんですか」

 

 王都まで行くお金さえ手に入ればと思っていたところに、予想以上の儲け話に驚いてしまうキーラとクゥ。

 

「とは言っても、めぼしいダンジョンはもう探し尽くされてますし、ダンジョンは見つかているものの財宝が見つかっていない場所は我先にと財宝を探す競合相手がいますから、その方々と衝突してしまうかもしれませんのでおすすめはできませんよ?」

 

 提案してみたはいいものの、目の前にいるのは女性二人、しかも片方は見たところ年端もいかぬ少女。そんな人を金を稼ぎたいなら荒くれ者達がいるダンジョンに行けと言うのはあまりにも酷だとパジルトは後悔した。

 

「じゃあ、そこに行くから場所教えてちょうだいよ」

 

「ちょ、私の話聞いてましたか!?」

 

 何がダメなの?と言った顔で場所を聞いてくるキーラに驚きを隠せないパジルトは、助けを求めるようにクゥに目をやるも、その幼い少女までも教えてくれと言った顔で頷くだけだった。パジルトがその二人の瞳から感じたのは、何かの決意満ちた光だった。

 

「〜〜〜ッ!......分かりました。教えます。教えますが、どうなっても知りませんからね!」

 

 こうして、二人の圧に負けたパジルトの口からダンジョンの場所が伝えられる。

 

 探索者ギルドの受付嬢としてのプライドで、探索者を無駄死にさせないためにも、教えたダンジョンは比較的に小さめで危険の少ない場所にしたが。

 

「ありがと。じゃあ今から行くとしましょうかクゥ」

 

「はい!パジルトさんもありがとうございました」

 

 ダンジョンがテサボンの街から歩いて行ける距離にあると知るやいなや、すぐさまギルドから出て行ってしまった二人を見送って、あの二人が無事に帰ってくるかどうか確認するまではこの国を離れるわけにはいかないと心に決めたパジルトだった。

 

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