絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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対峙

 

 王宮内闘技場にて──、

 

「ヴァッハッハ、さぁコウイチ!殺す気でかかってこーい!」

 

 目を爛々と輝かせながら両手を広げてコウイチを誘う、がっしりとした体つきの中にそれ以上の質量を感じさせるオーラを放つこの男は、ロンシャ王国国王のバルクラヤその人である。

 

「なんでこんなことに...」

 

 コウイチは、笑いながらこちらを見つめてくるバルクラヤと対峙しながらほんの数十分前のヤクモと再会した時のことを思い返す。

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりですねツガヤマ君」

 

 世間話でも話すような軽いノリで話しかけてくるヤクモに対し、コウイチはいまだに何が起きているのか理解できなかった。

 

「なんでヤクモさんがここに?」

 

「んー。話せば長くなりますし、ちょうど彼もいますしこちらで話しませんか?お連れの方もご一緒に」

 

 そう話しながら今自分が出てきたドアを開けて入るように促してくるヤクモ。

 

 彼とは誰のことだろう?と考えながら部屋に入ると、すぐに誰のことを言っているのか分かった。

 

「ん?ツガヤマじゃないか。それにスイレンも。なんでお前らがこんなところにいるんだ」

 

「それはこっちのセリフだろ!スメラギこそなんでこんなところにいるんだよ!?」

 

 部屋の中はテーブルと椅子だけが置かれたシンプルな空間でテーブルを囲むように椅子が五つ置かれており、その一つに座ったままこちらに話しかけてきたのはクエス王国騎士団長にして異世界更生者であるスメラギだった。

 

「俺は仕事だ。それより、誘拐されたみたいだったが、案外元気そうにやってるじゃないか。誘拐犯とも仲が良さそうだしな」

 

「その説はどうもだな」

 

 返事をしたのはスイレンだった。

 

「あたしが誘拐してあげたおかげでコウイチも立派になったぞ」

 

「なんでお前が誇らしそうにしてんだよ...。それにスメラギも俺が誘拐されたって知ってたんなら助けに来てくれよ。あんた仮にも騎士だろ?」

 

「俺は忙しい身なんでな。それにお前の誘拐は危険性が少ないと分かっていたし、お仲間が息巻いて追いかけていったから大丈夫だろうと判断したまでだ」

 

 スメラギの言葉でコウイチの顔つきが変わる。

 

「キーラとクゥが!?あいつら今どこにいるんだ?」

 

「どこにいるかまでは知らん。順調に来れていればロンシャ王国にはとっくに着いてるはずだとは思うが...そんなに揺するな!」

 

「そっか...すまん」

 

 スメラギが肩を掴んで強く揺すってくるコウイチを払いながらため息まじりに返すと、コウイチはがっかりしたように肩を落とした。

 

「挨拶は済んだようですし、そろそろ本題に入りましょうか」

 

 先に着席したヤクモに促されてコウイチとスイレンも椅子に腰掛ける。

 

「まさかツガヤマ君がカエン組のお嬢様と一緒だとは思いませんでしたが、これも好都合かも知れませんね」

 

「ヤクモさん知ってたの?」

 

 スイレンの素性を知っているらしいヤクモに驚いた。

 

「ロンシャ王国一の組であるカエン組の一人娘といえば知りたくなくとも耳に入ってくるほど有名ですからね」

 

「あたしってそんな有名だったっけ?」

 

 ヤクモの発言に首を傾げながら反応するスイレンにスメラギが答える。

 

「気にするな。こいつの発言は八割適当だ。いちいち真に受けてたら話が進まん」

 

「あはは、まぁ冗談はこのぐらいで。本題というのは現在この国で起こっているロメロス一派による内乱についてです」

 

 ヤクモの口から内乱が出てくるとは思わなかった。

 

「僕とスメラギ君はバルクラヤ王とはちょっとした知り合いでして、今回の一件に首を突っ込ませてもらっています」

 

 一国の主とちょっとした知り合いという部分も気になるが、話の続きを聞くことに専念する。

 

「今回の一件。どうやら外部の何者かが関わっていると僕とスメラギ君は睨んでいます。そこで、コウイチ君とスイレンさんにも是非我々に力を貸して欲しいのですが、どうでしょう?」

 

「どうでしょうって。いきなりそんな事言われても...それに外部の何者かって誰なんです?」

 

「それはまだ確かなことは言えないのでなんとも...、それを調べるためにも二人に協力していただきたいんです」

 

 突然の誘いにどう返答しようか悩んでいると、

 

「あたしはやってもいいよ」

 

 横にいたスイレンがあっさりと返事をしてしまった。

 

「お前、そんな簡単に返事していいのかよ?」

 

「だって暇だし。修行ばっかじゃ飽きてきちゃうしさ。たまには実践形式でやた方がいいこともあるぞ」

 

 随分と悠長な考え方だな。スイレンはロンシャ王国の人間でカエン組の関係者でもあるから内乱に首を突っ込むのも理解できる。が、俺は言ってしまえば全くの無関係な第三者なわけだし、そんな簡単には返事できない。

 

 そんな思いで考え込んでいたその時、突然ドアが開け放たれて明朗快活な声が部屋に響き渡った。

 

「ここか!スイレン久しぶりだなぁ!」

 

「バルクラヤのおっちゃん!久しぶり!」

 

 その人を見るなり顔を明るくし、駆け寄っていき頭を撫でられているスイレンがおっちゃんと言う相手の想像は容易にできた。

 

 この身長こそ俺と同じぐらいだが、体の肉付きや纏う雰囲気は比べ物にならないほどの存在感を放つ、少し長めの髪を頭の上らへんでくくって小さな(まげ)を生やし、口周りには立派な髭を蓄えているこの人こそ、ロンシャ王国国王であるバルクラヤなのだろうと。

 

「聞いたぞスイレン。最近ヨン先生んとこで修行してるらしいな!」

 

「そうなんだよ。そこにいるコウイチと一緒にな!」

 

 スイレンがコウイチを指差すと、バルクラヤの視線はコウイチに移る。

 

「おぉ、君がコウイチか!オニバスから話は聞いてるぞ。ヨン先生が認めたのだから相当有望なんだろうな!」

 

「ど、どうも」

 

 ハキハキとした声で話すバルクラヤに圧倒されながらも会釈を交えながら返事をする。

 

「ちょうどいいところに来られましたねバルクラヤ様。僕たちもコウイチ君とは知り合いでして、我々の仕事を手伝ってもらおうかと話していたところです」

 

「なるほど。詳しい話はヤクモ殿たちに一任しておるし、好きにしてくれ」

 

 ヤクモの言葉には思ったより淡白な返事をしたバルクラヤはすぐさまコウイチに向き直り、

 

「せっかくここまで来たんだ。コウイチ、どうだ?一戦?」

 

「へ?」

 

 一瞬、子供のような眼差しで話すバルクラヤが、何を言っているのか理解できなかった。

 

「さぁ()ろう!疾く戦ろう!」

 

 そんなバルクラヤに素早く腕を掴まれ、引っ張られるがまま王宮内の闘技場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「ヴァッハッハ!さぁ喧嘩じゃ喧嘩じゃ!」

 

 嬉々とした表情のバルクラヤを見ながら王宮に来たことを後悔する。

 

「ほんとになんでこんなことに...」

 

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