━━━ロンシャ王国内某所、ロメロス組の根城にて、
「最近の兄貴、顔も出さなくなっちまったな」
机に突っ伏しながら顔だけをロメロスがいる部屋に向けてぼやいている赤髪の少年。彼の名前はテラス。ロメロスを兄貴と慕うロメロス組の幹部である。
「この間なんか部屋の中から苦しそうな呻き声が聞こえたよー?心配だから声かけたけど、大丈夫だしか帰ってこなかったし...大丈夫かなー?」
少年に同調したのはラキズン、その大きすぎる体のせいで椅子が小さく見えてしまうため、遠くから見たら錯覚を起こしそうなほどである。
「人の心配をしてる場合かラキズン?テサボンの件はどうなってる。何回も行っているのに毎回負けて帰ってきていると聞いているが?」
「そ、それはー...」
ロメロスの事ばかりの二人に釘を刺すような冷たい口調の男 フォルト に睨まれて言葉を詰まらせるラキズン。
「魔法を使う奴がいるんだよねー。そいつが周りの奴らを強化してくるせいで厄介なんだよー。あの魔法使いさえいなければあんな奴ら全員踏み殺してやるのにねー」
「言葉だけならなんとでも言える。さっさとテサボンを落としてから言え。ロメロス様がバルクラヤとの戦いに集中できるようにするのが我々の役目だろう」
「わ、分かってるよー。すぐにすませるから怒らないでよフォルトー」
「ははっ、ラキズン怒られてやんのー」
ラキズンとフォルトのやりとりを見て無邪気に笑うテラスは椅子から立ち上がるとラキズンに近寄る。
「なんなら僕が手伝おっか?」
「テラスが来たら手伝うじゃなくて全部テラスがやっちゃうからダメだよー。俺がいく意味無くなっちゃうだろー?」
「ちぇっ、僕の方は歯応えある奴いなくてつまんないんだよなぁ」
「それはいいことだろう。その調子で組を潰して回れば国王が出てこらざるを得ない状況になるからな」
フォルトがつまらなさそうにぼやくテラスを睨みつけるように注意していると、突然部屋の中に気配が一人増えたことに気付く三人。
「誰だ!」
「やぁやぁ、三人ともご機嫌いかがかな?」
フォルトの声で陰から姿を表したのは全身をローブで覆った姿の人影が姿を表した。
「なんだ先生か」
ローブ姿の者の素性は三人も知らない。声を聞いても男なのか女なのかも分からないしローブのせいで身体的特徴も見ることはできない。何やらロメロスと二人で何かをしているらしいが、その事についてはロメロスも教えてくれない。
「ロメロスの調子は良くなりつつあるよ」
「ほんと!?」
「それはよかったよー」
そんな医者の口からロメロスの容体を聞かされほっとする三人。
「あ、それと今日は三人に話があって来たんだ」
わざとらしく何かを思い出したように手を叩いた医者はゴソゴソとローブの中から手袋をした手を出して三人の前に出す。
「これはなんだ?」
フォルトの言葉の通り、医者の手には紫色の丸い小さな固形物が三つあるだけだった。
「ロンシャ王国攻略の助けになるかと思って作ったんだ。名前はないけど、つけるなら身体強化薬ってとこかな」
「そんなものが作れるのー?」
「もちろんだよラキズン君。実際これはロメロスに投与している薬を改良して作った薬だからね」
「兄貴も飲んでるならっ」
「おいテラス!」
テラスはそう言うと、医者の手から薬を一つ摘んで口に投げ入れた。
「うっ...」
「大丈夫か!」
薬を飲んだ途端、苦しそうにかがみ込むテラスに駆け寄るラキズンとフォルト。
「何を飲ませた!」
すごい剣幕で医者を睨みつけるフォルトだが、医者は意に介さない様子で話す。
「大丈夫だよ。副作用とかないから」
「くそッ、テラス!大丈夫か!?」
「にっがーーー」
顔を上げたテラスは舌を出しながら顔を歪ませていた。
「兄貴こんな苦いの飲んでるなんてすげーなぁ。いてっ!」
ロメロスに感心していたテラスの頭にフォルトの拳骨が落ちる。
「変な反応をするな!」
「ごめんごめん。でもすげー苦かったからさ......ん?」
テラスは話の途中で何かに気づいたように自分の手を確認し出す。
「今度はなんだ?」
「いや、なんか、すげー力が湧いてきたっていうか。俺、ちょっと出かけてくる!」
突然走り出して部屋を出て行ってしまったテラスを見て、何が起きているのか分からなかったラキズンとフォルトは振り返って医者に話を聞こうと思ったが、そこに医者はもうおらず机の上に二つの薬が置かれているだけだった。