王宮からの帰り道、陽は赤く光りジリジリとした暑さが体を刺すロンシャ王国いつもの夕暮れ時の中、ヤクモを横に連れながらヨンのいる道場への道を歩きながら世間話のつもりで気になっていたことを聞いてみることにした。
「それにしても意外でしたよ」
「何がだい?」
「ヤクモさんとスメラギって仲悪いと思ってたんで、一緒にいることに驚きました」
二人と初めて会ったのはクエス王国の探索者ギルドだったが、その時ヤクモさんはスメラギに剣を突き立てられていた。しかし、さっきのスメラギの口ぶりからするにヤクモさんの事をよく知っているようだった。
「あぁ、そういえば初めて会ってから中々会えなかったから説明もしてなかったね。僕とスメラギ君はそれはもうとーーーっても仲良しだよ」
本人がいたら「そんなことはない」とか言いそうな口ぶりだが...
「そうなんですか?じゃあなんで前に剣なんか突き立てられてたんです?」
「僕とスメラギ君の目的は似てるから協力関係を築いてるんだが、クエス王国では僕は犯罪者だと思われているからね。あの国では表向きは敵対関係という体を取ってるんだよ」
確かに、国の英雄とまで言われてる騎士団長と秘密組織のボスが繋がっているとなるとスメラギに謂れのない嫌疑がかけられてもおかしくない。
「二人の目的って?」
その質問にヤクモは後ろで空を眺めながらあくびをして歩いているスイレンをチラリと見た後、少し小さい声で話す。
「それはもちろん。この世界で更生するにあたって科せられた使命だよ。ツガヤマ君も与えられているだろう?」
......そういえばそんなのもあったなぁ。なまじ自分の使命が天寿をまっとうしろとかいう漠然と生きろと言われているだけの内容なだけにその存在すら忘れていた。
「それで、二人の使命ってなんなんです?」
自分のが雑な内容なだけに二人の使命は気になる。
「僕の使命は一人でも多くの助けを求める人を救うことで、スメラギ君の使命は世界平和だよ」
「へー」
............めちゃめちゃ壮大な使命きたーーー。え?この二人そんなとんでもない使命受けてんの?じゃあ俺の天寿全うしろとかいうふざけた使命何?
「ツガヤマ君の使命はなんだい?」
「え?俺の?」
「何か手伝えそうなことなら、僕でよければ力を貸すよ?」
......い、言えねーー!こんなすごい使命与えられてる人に「あ、自分はただ生きてれば大丈夫って使命です」っとか言えねーー!
「ま、まぁ二人と似たような感じですよ?」
つ、つい見栄を張ってしまった。
「ならまた助けて欲しいことがあったらいつでも言ってきてくれていいからね」
「あ、はい。ありがとうございます」
絶対ないと思います。すいません。
「ところでヤクモさんとかスメラギってどんなスキルもらったんですか?俺は『絶対不可避』って奴なんですけど、明らかなデメリットも付いてきたんですよ、二人はどうなんです?」
話題を変えようという思いからスキルについても聞いてみることにした。このまま話し続けてはいつボロが出るか分からん。
「僕のスキルはあんまり使えないと言うか。でも、スメラギ君のは面白いよ。勝手に話したら怒られるだろうけど、ツガヤマ君なら大丈夫かな」
ヤクモさんのスキルも聞きたいが、スメラギのも気になるのでとりあえずは聞いてみよう。
「彼のスキルは『
「よぼうのうつわ?」
「言ってしまえば彼の事を慕っている人や期待や信頼している人。彼に対してなんらかのプラスの感情を持っている者のステータス、スキル、適正なんかが彼のステータス、スキル、適正に上乗せされるスキルなんだ」
「は!?なんだそれ!?」
「そういう反応になるよね。僕も初めて知った時は何かの間違いかと思ったよ」
はははと笑いながら話すヤクモの言葉は信用できるか怪しいところだが、本当にそんなスキルならそりゃあ世界平和なんて無茶苦茶な使命を科せられるわけだ。
「でも、もしそんなすごいスキルならとんでもないデメリットを受けてるんじゃ」
俺が当然の疑問を口にすると、ヤクモは笑いを堪えるように体を震わせた。そう言えば初めてギルドで会った時もスメラギのスキルのことについて話そうとして斬られていた事を思い出す。
「そこが面白いんだよ。彼の受けたデメリットはね...」
そこで言葉を切ったヤクモは今一度後ろのスイレンを気にする素振りを見せたあと、コウイチに近づいてボソボソと耳打ちする。
「あっはっはっはっは!なんだそれ!」
コウイチは、ヤクモからスメラギのデメリットを聞かされた途端、大声で笑ってしまった。
「どうしたコウイチ?」
急に笑い出したコウイチに問いかけてくるスイレンだったが、コウイチはただ「なんでもないなんでもない」と言いながら腹を抱えて笑いを堪えている様子だった。
「ひーっひーっ。それはなんていうか可哀想だな。くっくっく」
「そうだろう?これを聞くと普段あんなに偉そうな態度を取られても許してあげようって気にならないかい?」
「確かに」
笑いすぎて腹が痛いがいい事を聞いた。今度会ったらこのことについてちょっかいでも出してやろう。
スメラギの話で笑いを堪えているうちに道場に到着してしまった。
「ここが『崩山拳』の道場か。立派なものだね」
中には老人が一人住んでいるだけなのだが、その見た目にヤクモが感嘆の声を漏らしている時だった。
「お兄さん達、『崩山拳』の人?」
不意に後ろから声をかけられた。振り返るとそこには真っ赤な髪が印象的な少年が立っていた。
「そうだけど?」
「そっか。ならとりあえず痛い目にあってもらうけど勘弁な」
そう笑顔で話す少年が地面を蹴った次の瞬間、コウイチの隣にいたヤクモの顔に少年の飛び蹴りが炸裂し、門を突き破って吹き飛ばされた。
「ヤクモさん!?」
「まず一人っと」
「何すんだお前!?」
空中でくるりと回転して地面に着地した少年はニヤリと笑って続ける。
「僕はロメロス組のテラス。『崩山拳』のヨンって人に会いにきたんだけど、会わせてくれる?」