絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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測定

 

 王都で迎える初めての朝、コルト亭の裏庭で朝の鍛錬を行なってから、井戸の水を浴び、朝ご飯を食べに食堂へ向かう。

 

「おはようコウイチ!随分早いね」

「おはようシャロット。そうかな?」

 狩りを手伝っていた時は朝日と共に起きていたし、夜はすることもないし疲れて寝ていたので、確かに健康的な生活だとは思うが。確かに食堂には俺以外に人の姿は見当たらない。とりあえずシャロットに朝ご飯をお願いする。

 

「はい。どうぞ」

 少し待つとシャロットは俺の前に焼いたパンとスープを出してくれた。

 

「それとこれは朝早い人に特別サービス」

 と言ってリンゴを一つくれた。聞くと朝の市場でサービスで多くもらったそうだ。まぁこんなに可愛い子ならサービスの一つや二つされるだろうなと思いながらスープを啜る。

 

 このスープ美味いな。野菜とミルクで作っているであろうスープは野菜の旨味が染み出しており、パンとの相性もいい。また今度作る機会があれば作ってみようと考えながら、ご飯を堪能していると、そういえばシャロットに聞いてみようと思っていたことを思い出した。

 

 

「シャロット、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「なあに?」

 

 食堂の客はまだ俺一人なので、シャロットを呼んで仕事を探しに王都に来た旨を説明して紹介所の様な所はないか聞いてみる。

 

「なるほどね、ちなみになんだけどコウイチのステータスと適正ってどんな感じなの?」

「ステータスと適正?」

 初めて聞く話でついキョトンとした顔で聞き返す。

 

「え!?コウイチ測定してもらってないの?」

 聞くところによるとこの世界では全ての人にステータスと適正があるらしく、調べる事によってその人に向いている仕事がある程度分かるらしい。

 

「でも私、てっきりコウイチは出稼ぎで探索者になりに王都に来た人だと思ったよ」

「探索者?」

 

 またもや知らない単語。

 

「探索者も知らないの!?コウイチって本当にどこから来たの?」

 こんな会話ガジとも前にしたなぁ。俺はとんでもない田舎から出てきて世の中の事もよく知らないと適当に嘘をついて説明して、探索者とは何か聞いてみる。

 

「探索者っていえば世界の未知の部分を解明したり、ドラゴンとかグリフォンとかを討伐する、世界を股にかけるすごい人達の事だよ〜」

 

 詳しく聞くとシャロットの言った説明は探索者の中でも一握りの上位の人の事で、大半の探索者は街の便利屋さんの様な存在で、街の外に薬草採取や魔獣討伐に出て、それで得た報酬で暮らしているらしい。

 

 外に出る危険を冒すぐらいなら手に職をつけて街の中にいた方がいいから、俺には関係ない話だなと聞きながらスープの皿にスプーンを入れる。いつのまにかスープは空になっていた。俺はデザートのリンゴに手を伸ばす。

 

「それにしても、なんで俺が探索者になりにきたと思ったんだ?」

「だってさっき、裏庭で剣振ったりしてたでしょ?」

「見てたの!?」

「あ、いや?たまたま見かけたっていうかなんていうか…」

 

 シャロットはモジモジしながら恥ずかしそうに答える。

 大した実力もない人間の鍛錬を見られて恥ずかしいのは俺の方なんだが。

 

「出稼ぎに来たってのは間違えてないけど、剣は自衛手段としてちょっとかじった程度だから探索者なんかにはなれないと思うよ」

「そっかー、うちの宿屋からすごい探索者の人が出たら宣伝して人気出るかと思ったのになー」

 

 この子案外強かだな。

 

「それで、そのステータスと適正はどこで調べられるの?」

「それなら探索者ギルドで調べてもらえるよ」

 

 なるほど、ならとりあえず今日はそのギルドでステータスと適正を調べてもらって、雇ってもらえるところを探しにいくか。

 

 俺はリンゴを食べ終えるとシャロットに礼を言い。ギルドのある程度の場所を聞いて、そこに向かった。

 

 

 

 途中で道を聞きながら、コルト亭から歩いて15分ほど歩いたところにギルドはあり、他の建物より一回り程大きい、しっかりとした造りの建物だった。

 

 早速中に入ってみると、すぐ前に受付らしき所が五箇所あり、その一つずつに人が立っている。受付の奥は日本の役所の様に広い空間が広がっており、職員らしき人たちが書類を運んだり何かを書き込んだりしている。

 

「どうぞー」

 受付のうちの一つに立っていたおっとりしてそうな女性に呼ばれたのでそこに向かう。女性の胸には名札らしきものが付いており、[ロゼル]と書かれている。

 

「本日はどうされましたか?」

「あのー、ステータスと適正を調べて欲しいんですけど」

「はい、ステータス測定ですね。では発行手数料として銀貨一枚いただきますがよろしいですか?」

 

 そこそこの値段するな。まぁ自分に合った仕事が分かるなら安いもんか。俺は皮袋から銀貨一枚を取り出し、ロゼルさんに渡す。

 

「ありがとうございます!では測定器をお持ちしますので少々お待ちください」

 

 今から俺のステータスとやらが分かるのか、ゲームみたいでちょっと興奮してきたな。とんでもないステータスを持ってたら、シャロットの言う通りに探索者になって世界を股にかけるのも悪くないかもなと妄想を膨らませていると、ロゼルさんが戻ってきた。

 

 測定器といわれて目の前に置かれたそれはただの箱にしか見えない。木製の箱は全体的に黒色で塗られており、箱の上部に丸い穴が一つ開いているだけの、抽選箱にしか見えなかった。

 

「ではこちらの穴に手を入れてください。紙を掴んだ感覚があれば手を抜いてもらって大丈夫ですので」

「はぁ」

 

 促されて手を穴の中に入れようとした時、

「お客様、紙を掴む感覚があるまでは、絶対に手を抜かないでくださいね。怪我をしたりすることはないので」

 

 えらく慎重な物言いだなと思いながら改めて箱に手を入れる。

 

「ヒョエッ!」

 

 思わず変な声が漏れた。箱に手を入れた瞬間何かが手をヌメッとした何かがまとわりついてきた。

 

「お、お姉さん!?これなんですか!?」

「大丈夫ですよー、そのままでお願いしますねー、途中で抜くともう一度手数料を頂きますので」

 眩しいほどの笑顔で告げるロゼルさん。その間も何かが俺の手に絡みついてくる。

 

「そんなこと言ったって…これマジでなんなんですか」

「精霊ですよ、有名な話じゃないですか。知らないんですか?それにしても判定結果が出るの遅いですね、いつもなら一分ぐらいで終わるんですけど」

 

 

 そんな事を話されながら三分程、手を精霊とやらに弄られた所で紙を掴む感覚があったので素早く箱から手を抜く。

 

「なかなかいい反応でしたよー。私、測定に来た人のあの反応見るの好きなんですよねー」

 

 このお姉さん見た目に反してめちゃくちゃドSなお姉さんだ!

 

「それでは、改めてそちらがステータスカードになりますので確認して下さい」

 

 測定は気持ち悪かったが、自分のステータスを見れる事に少し期待をしながらカードを覗いてみる。

 

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