絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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波及

 

 コウイチ達がテラスと対峙してから数日後━━━、

 

「何だか道場が少し壊れている気もするが、まぁまた直せば良かろう」

 

 『崩山拳』の道場にて、いつも通り修行が始まるのかと思っていたが、どうやら雰囲気が違うようだった。

 

「コウイチも基本はしっかりできるようになってきておるし。そろそろ発展系の修行を始めようと思う」

 

「発展系?」

 

「そうじゃ。言っておらんかったが『崩山拳』は基本の型にすぎん。そこからどう発展させていくかは本人のスキルや得意分野によって様々じゃ」

 

「なるほどね」

 

「例を上げるならバルクラヤは一撃の威力に特化させた型。オニバスは自分のスキルと組み合わせたテクニカルな型だったりじゃな」

 

「スイレンは?」

 

「あたし?あたしはー...」

 

 話の流れで気になったのでスイレンに振ってみたが、どうにもはっきりとした返事が帰ってこない。

 

「スイレンはコウイチと同じでまだ自分の型が決まっとらん」

 

「え?そうなの?」

 

「実はそうなんだよねー。なかなかいいのが考えらんなくてさ」

 

「そんな難しいのか?発展系の習得って」

 

「難しいと言うことはないが、自分でこれだと思ったものを極めていく訳じゃからしっかり考えなければいけないのは事実じゃな」

 

 なるほどな。確かにこれからどういう風に鍛えていくか考えないといけないなら慎重にならざるを得ないか。

 

「と言う訳じゃから。今日からは今までの修行をしながら各自これから自分の発展系についても考えるように。それが決まればそれに特化した修行をつけてやろう」

 

 こうして『崩山拳』の発展系について考える日々が始まった。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 時を同じくして━━━、

 

「すいませーん。これの査定お願いしていいっすか?」

 

「この依頼受けたいんだけどー」

 

「新しい依頼持ってきましたー」

 

 テサボンの街にある引き上げ予定だったはずの探索者ギルドの中は人で溢れかえっていた。

 

「ちょっと待って下さい!順番に伺いますから!」

 

 本来ならギルド職員が横に並んで受付をするカウンターの中には現在ここの職員として一人で働いているパジルトが慌ただしく動いていた。

 

「わぁ、今日も大盛況ですね」

 

「パジルトも忙しくなって嬉しいんじゃない?」

 

 そこに現れたのはクゥとその後ろで眠そうにしているキーラである。

 

「お、二人共おはよう」

 

「あ、おはようございますバンさん」

 

 人混みの中から二人を見つけた男が一人駆け寄ってくる。彼の名はバン。槍術に長けた武術家である。キーラとクゥがダンジョンアタックに向かった時、ダンジョンに先に入っていたところ、偶然居合わせたロメロス組のラキズンに襲われて負傷していたところを二人に助けられ、協力してラキズンを撃退したことから彼女達を命の恩人として慕っている。

 

「それにしても賑わってるわね」

 

「ええ、二人が探索者だと聞いた後、ロンシャ王国支部のここが潰れそうだと分かったからみんなに言って仕事を回すようにしてもらって探索者としての登録もさせたからな。これで潰れる心配は無くなるだろう」

 

「限度ってものがあるんですよ!限度ってものが!」

 

 三人が会話をしているところに山積みの書類を抱えて今にも倒れそうになっているパジルトが通りかかる。

 

「探索者と依頼を増やしていただくのは助かりますが、職員は私一人しかいないんですからねっ!」

 

「よかったじゃない。パジルト暇だったでしょ?」

 

「そりゃあギルドとしては仕事が増えてありがたい話ですけど、如何せん人手が足りなさすぎてこのままじゃ私が死んじゃいますよ」

 

 複雑な気持ちのままとぼとぼとした足取りで仕事に戻るパジルトを見送った後、キーラとクゥが食事でも取りに行こうかと考えていたところ、息を切らせた青年が一人ギルドに駆け込んできた。

 

「はぁ、あっキーラの姉さんっ!クゥお嬢にバンの兄貴もっ!大変です!またラキズンがやってきました!」

 

「その姉さんってやつやめてって言ってるでしょ。はぁ、また来たのあいつ?」

 

 ラキズンが攻め込んできたと言われているのに、大きく息を吐きながら体を動かす準備を始めるキーラの落ち着いた態度には訳がある。バン達と共にラキズンと対峙して撃退した後、ラキズンは度々テサボンの街に襲撃を仕掛けてきているのだが、そのことごとくをキーラやクゥ達の助けによって返り討ちにしている。その頻度は徐々に数を増し、今では二日に一回は襲撃を受けている状況のため街の人間ですら見慣れた光景になりつつあった。

 

「それにしても今日はえらく焦っているようだがどうした?」

 

 いつもと雰囲気の違う報告に違和感を感じたバンが問いかけると、やっと息を整えた青年は話だす。

 

「それが、ラキズンの様子がいつもと違うんです。何だか足も変に光ってるみたいで...」

 

「足が光ってる?なんだそりゃ?」

 

 話を聞いてもよく分からないが事態が切迫していることは伝わってきたので、三人は現場へと急ぐことにした。

 

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