絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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風雷坊

 

(冗談のつもりだったんだけど、口調まで変わっちゃったように聞こえたけど。ほんとに人間じゃないのか?)

 

 さっき受けた傷の具合を確かめながらもロメロスから視線は外さず、構えをとりなおす。

 

(あの光がなんなのか分からん内は迂闊に近づけないな。ならまずは...)

 

 オニバスが牽制の一撃として稲妻の如く速く相手に踏み込み、まだ光っていない腹部に対して鋭いパンチを打ち込んですぐさまバックステップで引くというシンプルなヒットアンドアウェイだが、一連の動きの速さとインパクトの瞬間の音を聞いたら常人なら一発でノックダウンするだろうというのは明白だった。

 

 実際オニバスが打ち込んだ拳には『風雷坊』のスキルにより電撃が付加されており、例えではなく本当に雷が落ちたようだった。

 

「どうした。怖気付いたか?もっと打ち込んでもよかったものを」

 

 電撃により痺れたのか少しの間が空いてから話し出したロメロスは、一瞬おかしかった口調も元通りの落ち着いたものに戻っており、さっき立っていた場所から少し後ろに押されているもののパンチが打ち込まれた腹をさすりながら余裕の表情で話しかけてくる。

 

「お望みとあらば打ち込んであげよう」

 

 その言葉を皮切りに目にも止まらぬ速さでロメロスの周りでステップを踏むことで翻弄し、打ち込んでは離れを繰り返すオニバス。

 

 その様子はまるで至近距離で雷が閃き、ロメロスに向かって落ち続けるようだった。ロメロスも打ち込まれるままその場を動けないように見えた。

 

(よし。このまま隙を見て決める!)

 

 反撃の素振りを見せないロメロスを見て、オニバスがそう考えた瞬間、

 

「まどろっこしい」

 

 ロメロスがそう呟いて右手を上に振り上げたと同時、その拳に凄まじい殺気が込められたのを感じたオニバスは一瞬攻撃を躊躇して相手との距離を取ることを選んだ。

 

『魔拳』

 

 その言葉と共に水の張った地面に振り下ろされた拳は轟音と共に衝撃波を放ち、くるぶしまで溜まっていた水は弾け飛びその下にあった地面が顔を出す。その地面もロメロスを中心に全方向にひび割れ一部の地面は隆起するほどであった。距離を置いたはずのオニバスの足元の地面も突然隆起したことによってオニバスの体が空中に投げ出される。

 

(これはまともにくらったらマズいな...)

 

 オニバスが衝撃波のせいで直接触れていない建物までもが深刻なダメージを受けているのを見て肝を冷やしていると、背後から殺気を感じる。

 

「空中では避けれるかな?」

 

 振り返るとロメロスがこちらに向かって駆け出してきており、その拳には今しがた放った攻撃の、もしくはそれ以上の殺気が込められていた。

 

(マズい!!)

 

回風(つむじかぜ)』!

 

 拳が当たる寸前、空中にいたオニバスの手から炸裂した風の爆発により、二人とも弾かれたように後方に吹き飛んだ。

 

 ロメロスは両足でしっかりと地面に着地したものの、空中にいたオニバスは投げ飛ばされるように地面に転がって着地した。

 

「危ない危ない」

 

「女神様のスキルだかなんだか知らないが、『風雷坊』ってのはちょこまか戦うのが好きなようだな」

 

 口元についた泥を手で擦りながら息を吐くオニバスに対し、ロメロスはそんな彼を鼻で笑いながら話しかける。

 

「煽っているつもりかな?そんなことしなくてもそろそろ全力で行かせてもらうよ」

 

「ほう。ぜひ見せてもらいたいな。全力のカエン組組長を倒さないと、こっちも国王と戦う前哨戦とは言えんからな」

 

 オニバスの言葉を信じていない様子のロメロスは見下すような視線を送りながら言葉を返す。

 

「わたしもロンシャの人間だから、やっぱり喧嘩が好きみたいだ。久しぶりに全力を出せる相手と出会えてワクワクしているよ」

 

 笑みを浮かべながら立ち上がり、構え直したオニバスの右手からは不規則なリズムで電撃が迸り、左手からは雨を弾くように風が蠢いているのが見えた。

 

「それじゃあ、ここからが本番だね」

 

 今一度、地面をしっかりと踏み込んだ両者が激突する。

 

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