愛され概念と化しているぼっちはまだ何も知らない   作:烏丸蓮

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時系列的には夏休みが終わって文化祭始まる前ですが、喜多ちゃんはぼっちのことをひとりちゃんと呼んでいます。



第一話 ぼっちと王様ゲーム その1

 

 

 

 

「王様ゲームしましょう!」

 

 

 ここは下北沢市内にあるライブハウス「STARRY」

 ビルの地下1階にあるこの施設は日々、夢を追い求めているバンドマンたちが切磋琢磨し演奏をしている場所である。

 

 本日は土曜日、時刻は12時を少し回ったところ、このライブハウスでよく演奏をしている女子高生バンドこと「結束バンド」のボーカル兼ギターの喜多郁代は同じ円形テーブルに座っているギター担当の後藤ひとり、ドラムの伊地知虹夏、ベースの山田リョウを見回して元気よく提案した。

 

 午前に虹夏の姉で「STARRY」の店長でもある伊地知聖歌の計らいで、ステージでバンド練習をさせてもらい、そして練習が終わり一緒にバンドメンバーで昼食をとり終わった所だった。

 

 

「王様ゲーム? いきなりどうしたの?」

 

 

オレンジジュースを飲もうとしていた虹夏は頭にクエスチョンマークを掲げながら、突然の提案へ虹夏は郁代に聞き返す。

 

 

「はい実は……」

 

 

 どうやら郁代が言うには最近見た恋愛漫画で、王様ゲームを主人公達がしているのを見たと。最初は簡単な命令から次第に大胆な命令になっていく……徐々に急接近する主人公とヒロイン、それを阻止したい幼馴染系のヒロイン、次第に明かされるメンバーの悲しき過去――――――

 

 

「とっても素敵なんですよ! 楽しそうじゃないですか!」

 

 

 両手に手を添えキャーと可愛い声でくねらせている郁代。その郁代の姿を見ながら虹夏とリョウは少しだけ考え、話の展開についていけず「えっ、えっ?」とオロオロする後藤ひとりことあだ名ぼっち。

 三者三葉の反応を見せながら虹夏とリョウは

 

 

「いいね! 面白そう! ぼっちちゃんももちろん参加するよね?」

 

「うん、やろう。ところでぼっちもするよね?」

 

 

 二人は王様ゲームを快く了承、そしてぼっちに参加の有無を同時に聞く

 

 

「あっ、うん…………」

 

「それでは、私くじを作ってきますね!」

 

 

 別にぼっちは参加する気はなかったが曖昧の返事をしたのが運の尽き……了承と郁代に捉えられ席を離れて、レジ横で作業していた聖歌に割りばしとペンを借りに行った。

 

 

「どうでもいいけど、他のスタッフが来るまでには終わらせろよ」

 

「はーい!」

 

 

「いやー、そういえば王様ゲームとかしたことないねー」

 

「酒飲みながらするイメージがある。少し楽しみ」

 

 

 聖歌に道具一式を借りてせっせとくじを作る郁代。

 作られている間、話しながら待っている虹夏とリョウ。そして、

 

 

(どどどどどどどうしよう……! 王様ゲームとか私には無理だよ!)

 

 

 ぼっちは心の中で慌てていた。

 そもそもぼっちはそんな多人数で遊ぶゲームを殆どしたことなく、トランプでさえ家族としか遊んだことがない。第一、王様ゲームは飲み会を毎日している陽気な方々が、嗜む神々の遊びであるとぼっちは認識していた。よくネットの情報で王様の命令で無理やり酒を飲ませてお持ち帰りされたり、理不尽な目にあったりとそんな悪い印象しかなかった。

 

 

(こ、ことわってもいいかな……?)

 

 

「大丈夫だよぼっちちゃん! 無理な命令とかしないから!」

 

「比較的健全でアットホームな王様ゲームを我々は心がけています」

 

 

 参加拒否の思考を読まれたのか虹夏とリョウはぼっちをけん制する。

 

 

「あう……」

 

 

 すでに参加するしかなくなったぼっちはすごすごと引き下がるしかなくなった。

 

 

 

 

 

 

「皆さん作ってきました! では始めましょう!」

 

 

 郁代が戻ってきて席に着くと同時に開戦の火ぶたが切られた。

 

 ただ、ぼっちは知らなかった。この王様ゲームが平和でキャッキャウフフな可愛らしいものではなく……もっと欲望に正直になるゲームだとは後藤ひとり唯一人だけ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、ルールを説明しますね!」

 

 

 郁代が皆を見渡しルール説明に入る。

 

 

① 割りばしの先端は一つだけ赤く塗られ、他は番号が書いてある。

赤いインクは王様であり番号を指名して、番号の人は王様の命令を実行する。ただし、王様は自分にしてもらうことを命令しないといけない。また、必ず王様がいなければならない。番号同士でやる命令はダメということ。

 

② 王様は複数番号選んでいいが、全員は指名してはならない。例えば1番と2番を選んで王様に何かさせることは可能である。

 

③ 過剰な身体的接触はなし。例えば、軽いデコピンはいいがお尻を強く叩いたり、キスとかそういうもの。

 

④ 店長とPAさん以外の人が来たらお開き

 

⑤ それではみんなで楽しくやっていきましょー!

 

 

(これならうまくやれそう……)

 

 

 ぼっちは安堵した。無茶な命令はできないようなルールであり、そもそもバンド内に不和を起こすようなことは誰もしないと考える。ただ、唯一気掛かりなのが王様は受け身であること。例えば、デコピンをする場合このルールでは王様は番号の人に対してできないのである。普段聞いているルールとは違うぼっちだったが

 

 

(ま、まあ……いいか……)

 

 

 考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 ルール説明が終わり、郁代は4本の割りばしが入った長方形型の箱をテーブルの中央に置いた。

 ぼっちは箱を凝視している中、他の3人がそれぞれ見合って

 

 

「「王様だーれだ!」」「だれだ」「だ、だれだ……」

 

 

 多様な掛け声と同時に割りばしを持ち上げる。

 

 

 

 

「やったー! 私が王様よ!」

 

「あちゃー、最初はだめっだったかー」

 

「くっ……負けた……」

 

(あっ、3番だ……)

 

 

 初めの王様は郁代になった。虹夏とリョウはほんの少しだけ残念がり、ぼっちは初めての王様ゲームに少しだけ胸を躍らせていた。そんな反応を見ながら郁代は発言する。

 

 

「それでは……1番の人が王様に肩もみお願いします!」

 

「よーし! 任されたー!」

 

 

 郁代の命令を受け、虹夏は郁代の後ろまで来て肩をもみ始める。

 

 

(あっ、こういうのでいいんだ)

 

 

 気持ちよさそうにしている郁代を見ながら、ぼっちは自分が王様になった時の命令を参考にしていた。

 やがて、一分間のマーサージを終えた虹夏は「終了だよ!」と言って自分の席に戻る。

 ありがとうございますと郁代は声をかけ、

 

 

「「「「王様だーれだ」」」」

 

 

 と次のゲームが始まっていった。

 

 

 

 その後の展開としては特にいうこともなく進んでいった。

 郁代がリョウに好きな漫画の名シーンを言わせたり、ぼっちが郁代に最近楽しかったことを言わせたり、虹夏がぼっちにおすすめの店を言わせたり、リョウが虹夏とぼっちに漫才をして王様を笑わせるように指示したり(ただし、難易度が高くかつぼっちがやばい顔をしていたのでノーカンになった)と、楽しい時間を過ごした。

 

 

 ゲームを初めて一時間が経過した。

 王様ゲームに慣れてきたぼっちは、次に王様になったときどんな命令をしようかと考える余裕も出てきた。

 そんな時に次のゲームが始まり、掛け声と同時に4人は割りばしを引いた。

 

 

 

 

「次は私の番かー!そうだねーーー」

 

 

 虹夏は少しだけ考え込み、そして決心した顔つきで

 

 

「2番の人が王様の好きなとこを言うで!」

 

「………………」

 

「………………」

 

(………………!?!?!?!?!?!)

 

 

 何時もと変わらない眩しい笑顔で命令する虹夏。

 その命令を聞いて先ほどまでの和やかな笑顔から真剣な面付きになる郁代。

 表情は変わらない山田。

 その王の命令で場の空気が変わったことに気づき慌てるぼっち。

 

 

 

 

 

 突如開催された王様ゲームwith結束バンドは和やかな雰囲気から、やがて危険な領域へと突入していく――――――

 

 

 

 

 





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