某妖怪「超有名冒険譚の主人公が目の前にいるんやが」   作:ピコッピコ

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「い゛た゛た゛た゛た゛!!」

「ジッとしてね!」

 

可哀想に…………

 

ガネラこと小鳥は哀れんでいた。

 

目の前のキズナメコなる妖怪に治療されている、から傘おばけを哀れんでいた。

 

キズナメコの舌だか唾液だかは消毒作用があるらしく、舐めることで傷を治すことが出来る。

 

ただ今回は、から傘おばけの傷が()()()()()()()()()為、ちょっと抉って治療する運びとなった。

 

抉れた傷を舐められるのは、痛いらしい。

自身も幾度となく経験があるが、こういう治療はだいぶ嫌な部類に入る。

 

小鳥は立ち上がり、治療に使った器具を洗いに行った。

決して、から傘おばけから逃げた訳では無い。無いったら無い。

 

小鳥が水場でシャカシャカ洗う。

洗剤があれば、もっと清潔に出来るのだが……

 

「君が小鳥か?」

 

めちゃくちゃ凛々しい声が聞こえてきて、小鳥は振り向いた。

 

ネコがいる。

フワフワ浮いていて、マントを着けた、青くて可愛いネコちゃんだ。

ジバニャンの系列だろうか。

 

…………声掛けてきたやつ、何処?

 

「から傘おばけを助けてくれてありがとう。」

 

ネコちゃんからカッコイイ声が聞こえた。

なるほどなぁ……小鳥は納得した。

 

「礼には及ばないわ。それに、一番の功労者はキズナメコよ。」

「謙遜することは無い。君が傷に言及しなかったら、俺たちは、から傘おばけを埋葬してしまっていただろう。」

「あら」

 

火葬飛んで埋葬かぁ……

 

妖怪に葬式は必要なのかどうかは知らないが、きっと要らないだろうな。

小鳥はそう思った。

 

「冗談だ」

 

冗談かぁ……

小鳥は考えることをやめた。

 

「ジョークがお好きなのね。私も好きよ。布団が吹っ飛んだ、とか。」

「そうかそうか!」

 

どことなく嬉しそうなネコちゃんを見ながら、小鳥は器具の水分を拭った。

 

「それは何だ?ギザギザしているが……」

「これは治療に使う道具。さっき、から傘おばけに使ったわ」

「そ、そうか……」

 

あからさまに引き気味……というか、痛そ〜という感じの顔をしたネコちゃんに、小鳥はニッコリと笑いかけた。

 

「傷が汚染されていたからね。」

「……汚染?」

「ええ、から傘おばけを襲った妖怪の妖力が原因だと思うの。見てみる?」

 

付いてきて、と囁くように言って、ネコちゃんを連れて室内に入る。

 

「あっ!フユニャン!」

 

キズナメコの元気な声に、小鳥は隣のネコちゃんを見た。

 

「ん?…ああ、すまない。自己紹介をしていなかったな。」

 

そう言うとマントを翻し、言った。

 

「俺はフユニャン!」

「……私は小鳥。人間よ。」

 

小鳥は流れるように嘘を吐いた。

 

フユニャンはニカッと笑うと、キズナメコに目を向けた。

 

二人で込み入る話がありそうなので、小鳥は、から傘おばけの様子を見る。

 

心配だったからだ。

 

「大丈夫?」

「あ、ああ、大丈夫じゃ……何とかな……」

「傷口に違和感は無い?」

「めちゃくちゃ痛い……」

「大丈夫そうね。もしダメだったら、傷口に塩を塗らなくちゃならないところだったわ。」

「ヒェ……」

 

縮こまっちゃった……

 

ガネラは困った顔で笑った。

知っている中で最も良い方法がこれだからだったからだ。

 

旅人の知恵

呪われたりした傷口には塩。

 

後はね、妖力込めて……

 

「なるほど!そういうことか!」

 

何?どうした?

 

フユニャンが大きな声を出すと、その場を一回転し、小鳥に向き直った。

 

「傷口を抉ったのは、妖力の残骸を使って犯人を探すためか……!」

 

フユニャンが治療に使ったハンカチを持って何か言っていた。

 

え、知らない。

 

小鳥は何か言いたかったが、妖力を込めるのに必死で無理だった。

 

「猟奇的な方法だと思ってたが、こんな理由があったとはな……」

「ほ、ほぉ……」

「ぺ、ぺろぉ……」

 

から傘おばけとキズナメコ、ドン引きしてる。

 

そりゃそうだ。

小鳥は二体に、治療の為に抉ったのではなく、犯人探しのために抉ったのだと思われている。

 

フユニャンはどちらも兼ねていると思っているが。

 

「ありがとう。これのお陰で、探すのに手間取らなさそうだ。」

「……いやそんなことは……」

「謙遜するのか……君はケイゾウの考えるような人では無さそうだ。伝えておこう。」

 

謙遜じゃなくて、否定なんだよなぁ。

 

訂正しようとした瞬間、ドロン!と消えてしまった。

小鳥は口をモゴモゴさせて、まあいっかと楽観視する。

 

「フユニャン、探しに行くつもりかな……心配……」

「大丈夫よ。きっとね。」

 

そうそう変なこと、しないだろうし。

 

「じゃ、今から少し痛くなると思うけど」

「エ」

「耐えられないことは無いわ。すぐに楽にしてあげる」

「いやそれって今からコロいたたたたたたたた」

 

可哀想に……

すぐに楽にしてやるからな……

 

小鳥は慈悲の心で、さっきの倍の妖力を込めた。

 

 

 

 

 

 

 

「ケイゾウ?あの森の方入っていったよ」

 

まーた移動してるわ

 

小鳥はちょっとウンザリしていた。

 

から傘おばけの怪我が治ったことをケイゾウに伝えようと探しているのに、肝心の本人は場所を転々としているのである。

 

さっきから妖怪や人間に聞いては、違う場所を言われるのだ。

 

小鳥はステキな笑みでありがとう、と言うと、森の中へ入った。

 

結構乾いた森だなぁ、と思いながら、道らしい道を進んでいく。

 

………………ここ、どこだ?

 

そして迷子になった。

 

しくじった。

旅をしていた時はこんなミスは(たぶん)しなかったのに。

 

小鳥はいつの間にか、切り立った崖の上に立っていた。

結構な高さである。落ちないようにしなくては。

 

「───!」

「───!!」

 

言い争う声が聞こえる。

激しさの割には小さい。

 

……下?

 

気がついて、小鳥は崖の下を見た。

 

ケイゾウとフユニャンがいた。

その事実に、小鳥は少しばかり顔色を明るくさせて、すぐに暗くなる。

 

なんか、争ってるな。

 

よくよく見ると、二人は争っていることに気がつく。

 

一体の黒ずんだ妖怪が鋭い爪を振り回して威嚇するが、間をすり抜けてフユニャンが妖力を纏ったパンチを打った。

そして怯んた瞬間にケイゾウがバットで殴る。

 

うわっ……重そう……

 

小鳥はそっと身を引いた。

どのタイミングで話しかけるべきなんだ、これは。

 

上から静かに見守っていると、突然、黒ずんだ妖怪が妖力を発散させた。

瞬間、目に見える衝撃波発生し、ケイゾウとフユニャンをなぎ飛ばす。

 

小鳥はビビった。

このままだと、あの二人死んでしまわないか?

 

慌てて、小鳥は不可抗力コレクションズの一つ、必中の弓矢を取り出そうとし──

 

──崖が崩れた。

 

小鳥の足元が崩れ、身体が宙を舞う。

白いドレスが、蝶の羽のように広がった。

 

ワ゛ーーーーーー!!!

 

「な!小鳥!?」

「危ないから退いて!!」

 

子どもに当たったら大惨事であるから叫び、小鳥は目を瞑った。

 

フユニャンは妖怪だから助けて!!!!!

 

ドン!と鈍く大きな音が聞こえた後、肘に尋常ならざる痛みを感じ、小鳥は目を開いた。

 

「………」

「………」

「………」

 

黒ずんだ妖怪が沈んでいた。

 

小鳥の肘鉄で。

 

シンと静まり返った森の中で、小鳥の枯葉を踏みしめる音だけが響いた。

 

……なんか

 

…………どうにかなったな!

 

 

 

 

 

「やはりな」

「フユニャン?」

 

去っていく小鳥の背中を眺めながら、フユニャンは呟くように言った。

 

ケイゾウが名を呼ぶ。

不思議に思う気持ちが、ありありと浮かんでいた。

 

「ケイゾウ。不思議には思わなかったか?こう都合よく、必要な物が集まるなど。」

「どういうことだ?」

「俺たちは踊らされていた……いや、導かれていたんだ」

 

不穏な物言いだ。

 

ケイゾウは眉をひそめて、それでも話を聞く。

 

聡明な子どもであるから、無意識のうちにでも仲間と認めている者の言葉は聞くのだ。

 

それが、地に足ついてるフユニャンであれば尚更。

 

「ハンカチーフの血……まるで、から傘おばけの傷が、後で襲う為のマークだったと知っているようだ。」

「なんでそう思うんだよ。」

 

犯人は怪魔だった。

 

怪魔は妖怪や人間に取り憑く、謎に満ちた存在。

 

目の前の潰されて伸びている妖怪から、怪魔は離れていっているが……

 

さっきまで、この妖怪は怪魔に取り憑かれていたのだ。

 

そして今回の怪魔は、その次に取り憑く相手にマークを付けていた。

 

から傘おばけの傷だ。

傷口に妖力を混ぜ、マークにしていた。

 

だが、から傘おばけは傷を抉られ、マークの妖力は取れた。

 

そのマークが何処に移ったかと言うと

 

フユニャンの言う通り、小鳥のハンカチだ。

 

「普通は抉ろうなどと思わないさ。乾いて塞ぎ始めた傷跡を、な。」

「アイツ、傷を抉ったのか!?」

「今はそれは関係ない。重要なのは、何故抉ったのかということだ。」

 

ケイゾウはギョッとして叫ぶように言うが、フユニャンは気にした様子も無い。

 

「傷口に怪魔の妖力を混ぜていたのだと気づいていない限り、そんなことはしないだろう。」

「ってことは、奴のマークがハンカチに変わってたのは……」

「奴の策略さ」

 

()()()()()()()()()()

 

そうとしか思えない行動の数々だ。

 

フユニャンの言葉に、ケイゾウは静かに言う。

 

「それのお陰で見つけられたのは確かにそうだ。だけど、それの所為で襲われたとも言い換えられる。……囮にされたのか」

 

ケイゾウは今度こそ眉をひそめた。

気分の良い話では無い。

 

助けを求めてきた人に囮にされたなどと。

 

「ああそうだ。……だがな、ケイゾウ。ガッツ仮面の第三十二話を思い出せ。」

 

ケイゾウはハッとした。

 

ガッツ仮面の第三十二話と言えば、修行だ。

 

悪の前に倒れてしまったガッツ仮面が、師匠によって修行を付けられる。

 

そうして、更なる大パワーアップを遂げて、打ち勝つのだ。

 

そして、その修行の内容は……

 

「ガッツ仮面を鍛えるために、敵の中へ放り込む……」

「ああ」

 

全くもって同じ状況だった。

 

「なるほどな……小鳥は俺たちを鍛えようとしたってことか。」

 

これなら、ピンチになった時に助けに来たのも納得がいく。

 

二人は目配せをしあって頷いた。

 

まだ、何故、小鳥がそんなことをしたのかという疑問は残る。

 

だがしかし、思った。

もっと強くならなくてはいけないな……と。

 

だがきっと、いつか分かる。

気まぐれに、楽しく、教えてくれるような気が──

 

 

まぁ、全部間違いである。

 

 

 





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