某妖怪「超有名冒険譚の主人公が目の前にいるんやが」   作:ピコッピコ

11 / 31
11

 

ケータはめちゃくちゃ疲れていた。

 

変なドアとか、変な人とか妖怪とかに絡まれまくっていたからだ。

 

ガネラを探し出すのも一苦労。

恐らく人間に化けているであろう少女を、このだだっ広い世界で見つけるのは至難の業だった。

 

「もう動けないにゃん……」

「あーもう。そこら辺で寝ないでください……」

 

後ろでウィスパーがジバニャンを引きずる音が聞こえるが、ツッコむ気力もなく。

 

「ただいま〜……」

 

ケータは静かに扉を開いた。

三人一緒に家の中に入る。

 

途端明るい両親の声が聞こえ、ケータは目を丸くした。

 

ガネラが消えてから、二日が経っている。

泊まっている友人が帰らないとなって、二人は酷く心配していたのだ。

 

ケータが今は自分の家にいるらしいよ!と誤魔化してるが……連絡一つ寄越さないのは不信だ。

日に日に疑いは強くなっていった。

 

だから、二人が元気そうな声を出してケータを出迎えたものだから、ケータは驚いた。

靴を脱いで、トタトタとリビングへ入る。

 

扉を開くとそこには──

 

──頭の大きな()()が椅子に座って、両親と談笑していた。

 

「うわぁッ!」

 

ケータはギョッとして、咄嗟に大きな声を出す。

 

クリーム色の肌と、犬みたいな大きな四角い頭が特徴的な妖怪に、見覚えがあったからだ。

 

「さ、さとりちゃん!?」

 

心を読む妖怪、さとりちゃんである。

 

「あら、ケータ知ってたの?」

「まさか小鳥ちゃんの親戚が来てくれるなんてなぁ。小鳥ちゃんが元気そうで安心したよ。」

「そうねえ。今度からはちゃんと連絡するように言わなくっちゃ」

 

え!?え!?

 

ちょっと情報が多すぎて、ケータは狼狽した。

 

このさとりちゃん、ガネラの親戚だって言ってるの?なんで?

 

ていうか、なんでお母さんとお父さんに見えてるの?

いや、見えてるならなんで変に思わないの?

 

なんで???????

 

「ケっケータ!とりあえず上!上の部屋上がってもらうにゃん!パパとママの前だと妖怪の話なんて出来ないにゃん!」

「そ、そうだね……」

「私もそれがいいと思います。」

 

さとりちゃん、全然妖怪の話に入ってくる。

 

一人でに「私もそれがいいと思います」などと言ったから、ケータの両親は不思議そうな顔をした。まずい。

 

この流れで、ケータが妖怪見えることがバレるかもしれない。まずい。

 

「ちょっと二人で話してくる!あ、お茶いらないから!」

「あ、ちょっとケータ」

 

ケータはさとりちゃんの腕を引っ張って二階に上がった。

ドタガタドタ階段がすごい音を立てる。

 

さとりちゃんが部屋に入ったのを確認すると、ケータは勢いよく扉を閉めた。ウィスパーが挟まる。

 

「あ、ごめん。」

 

ウィスパーは奇妙な声を上げて床に落ちていった。

 

無かったことにして、ケータはさとりちゃんに向き直る。

 

三つの目全てと目が合って、ケータはちょっとたじろいだ。

圧がすごい。

 

目が合ったさとりちゃんは、ペコリとお辞儀をする。

 

「この度は御無礼を。」

「あ、どうもどうも……いや、何!?何しに来たの!?」

「何しに、ですか。」

 

頭を下げられたので、ケータはちょっと釣られて目的を忘れそうになった。

 

意味深長な物言いのさとりちゃんに、ケータはゴクリと喉を鳴らす。

変な用事だったらどうしよう。

 

(わたくし)こういう者でございます。」

 

スッと手渡されたのは、名刺だった。

 

貰うのにもルールが必要だった気がしたが、生憎ケータは小学生であるので、そのまま片手で受け取る。

 

「なんですなんで……す……」

「にゃ、にゃっ!?」

 

覗き込んだウィスパーとジバニャンが固まった。

 

ジャーニー出版

編集 さとりちゃん

 

…………ジャーニー出版?

 

「ジャーニー出版って、ガネラの冒険譚を出版してる出版社ですよ!」

「唯一出版が許された出版社にゃん!!」

 

大慌ての様子の二体を尻目に、ケータは問いかけた。

 

「ガネラに用事があるの?」

「はい。ケータ様宅に、私が編集を担当させて頂いている()()()のご友人の、ガネラ様が居候されているとの情報を得まして、ぜひお会いしたく。」

 

その情報、どこで得たの?

 

ケータ達の疑問を置いてきぼりにして。

 

さとりちゃんは「これはほんの気持ちですが」と言い、紙切れを何枚か差し出した。

 

十万円分の商品券である。

人間界用の。

 

ケータは引いた。

 

「こんなに受け取れないよ!」

「ケータ様、これは我が社のせめてもの礼儀なのです。あのワガママかつ冷淡で情熱的、可憐な妖怪の世話をしていただいている。せめてもの。……どうぞ、お受け取りください。」

 

圧がすごい。

 

ケータは負けた。

さとりちゃんの顔圧と歴戦を思わせる編集者オーラに負けた。

 

「先んじて、ケータ様のご両親にもお茶菓子をお渡しいたしました。後で皆様で召し上がってください。」

「あ、ありがとうございます。」

 

ケータは恐る恐る商品券をサイフにしまった。

開く時にベリベリ音がするやつ。

 

「さて、今日はガネラ様はいらっしゃらないようですね。」

「あ〜…それなんだけど……」

 

カクカクシカジカ。

 

ケータは一から十まで説明した。

 

ガネラが消えたこと。

恐らく、ガネラが自分の妖怪ウォッチを盗ってったこと。

 

「なんと解釈一致……っ!」

 

泣いちゃった……

 

「ですが疑問が残ります。」

 

うわっ急に泣き止んだ。

 

「ガネラ様はあくまでも妖怪。ですが、人間、特に人間の子供にはとても優しいお方です。……お世話になったケータ様に恩を仇で返すような真似をするでしょうか。」

「でも、ガネラってそういうもんじゃーないですかね?」

 

ウィスパーの疑問の声に、さとりちゃんは「わかってねーなぁ」みたいな顔で首を振った。

 

「なるほど。()()の皆様はそう思われるでしょう。……私は禁書どころか、未発表の物まで読んでいるので……」

「は????????」

 

この発言がウィスパーとジバニャンとヒキコウモリとうんがいきょうの琴線に触れた!ガルルルル!

 

「やめてよ!ここで戦ったら部屋ぐちゃぐちゃになるじゃん!」

 

ガルルルル!

 

さとりちゃんはニコやかに笑った。

 

「で、なんでガネラに会いたいの?」

「ああ、お伝えし忘れていましたね。」

 

拳をポンとして、さとりちゃんは話し始めた。

 

「私は冒険譚の大ファンなんです。」

「知ってる」

「担当させていただけたのは、私の生涯、最たる幸運。そして、禁書もまだ未発表の作品も、ボツ作品すらも読ませていただける……ああ…どの作品も素晴らしかった……」

 

うっとりしているなぁ、とケータは思った。

 

「私は!!世界中に!!冒険譚を!!!不足なく届けたい!!!!」

「うわっ」

 

急に大声を出されたので、ケータは驚いた。

大丈夫?下に聞こえてない?

 

「その為なら私はなんでもやります。台風の中に放り込まれたっていい!禁書を!!地位の高い者だけの物にしたくないのです!!!」

「こ、声でかいにゃん……」

「おっと、失礼いたしました。」

 

熱意と圧がすごい。

 

そんなに好きなんだね〜とか言ったら長々と語られそうだったので、ケータは口を噤んだ。

 

とにかく。

さとりちゃんがケータの家にやってきたのは、ガネラ目当てだということは分かった。

 

「あ、そうだ。」

 

やけに明るく調子の良い声で言われたので、みんな首を傾げる。

 

「皆様もお手伝いください。」

「え、やだよ。」

「そこをなんとか」

「ええ〜……」

 

ケータは嫌だった。

なんか、面倒くさそう。

 

「手伝ってくださったら、没作品も読めますよ」

「やりまァす!!!!!!」

「ちょっと!?」

 

こうしてケータは(勝手に)新たな頼み事を受けることになったのである。

 

 

 

 

 

たのみごと オススメレベル 79

 

えらい人だけが読める禁書を公開してもらおう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

 

「土蜘蛛さまがお呼びです。」

 

う、うわァァーーーーー!!!!

 

ガネラこと小鳥は絶望していた。

 

小鳥が過去の世界に来てから一週間あまりになる。

 

なんか分からないけど、妖怪からの相談を解決する人になっていた。

なんで?

 

そんなこんなで暮らしてきて、遂に偉い妖怪に目をつけられてしまった。

 

土蜘蛛。

 

古典妖怪─昔ながらの妖怪─でありSランクの、元祖軍大将だ。

 

今、桜町辺りで本家軍と元祖軍の二つに別れて、戦が起きているらしい。

 

その元祖軍だ。

お偉いさんである。

 

調子に乗りすぎたんだ……!

 

「御用は?」

「我が軍の妖怪たちが()()()なったそうで。」

 

含みがすごい

 

これで断れば、たぶんというか、確実に命は無いだろう。

だって妖怪だもん。

 

小鳥は泣いた。

心の中で親友に助けてと叫んだ。

 

小鳥は承諾して、トボトボ目の前の妖怪について行った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。