某妖怪「超有名冒険譚の主人公が目の前にいるんやが」 作:ピコッピコ
東急電鉄なら火炙りにされるレベルの遅れしてゴメンな
なんか分からんけど、この回だけが難産だったんや
「……ってことがあったんだ」
ケイゾウがそう説明し終えた途端、ウィスパーやフユニャン等の事情を知る妖怪は転げ回った。
「どっどうした!?」
「ほっといて」
妖怪達は転げた。
思い思いに転がって、集まった。
あまりに"良い"からだ。
良かったのでオタク同士、小声で話し合った。
「ウワーーーやりそう!!ウワやりそう!」
「愉快犯にゃん!人が成長する瞬間が一番好きなガネラがニコニコしてるにゃん!俺っちの中のガネラ、めちゃくちゃニッコニコ!ァ~~!」
「やはりガネラは人が好きなのか……!!小説だと全く明言されていないから解釈の余地があったあの感じも良いがやはり明確になるのもいやでも」
「どういう気持ちなんでしょうか……『青空の港』での人魚姫の話感と『魔法の国』の実は剣豪の男感が混ざっていて考えが悟りきれない……!考察の余地がすごい……!!やっぱり原作読み返して解釈を深めないと今度やる舞台は作者の"私"が最後まで見てくれたと噂ですからアレも何回か見て見解を深」
ヒキコウモリも何故か来ていた。
あまりの事態に、引きこもっている場合では無くなったのである。
極寒の目線。
ケータは見なかったことにした。
「ごめんケイゾウ。いつもああなんだ。」
「いやでもフユニャンまで……」
「妖怪ってああいう所あるんだよ。興奮しすぎると狂うの」
「おっ、俺の話でそんなに……!?」
「才能あるんじゃない?」
ケイゾウはちょっと嬉しくなって、少し耳が赤くなった。
そんな姿を見て、ケータはそっと目を逸らす。
逸らした先にも困惑しているマスターニャーダが居て、ケータは目を閉じた。
「……ほ、ほっほっほ。若い衆は元気じゃなぁ。何を話してるんじゃ?」
「気にしないで。本当に」
「そ、そうか……?」
ケータは思った。
マスターニャーダも妖怪だから、たぶんオタクだわ。
正解である。
マスターニャーダも
細々とグッズを集めてニコニコしているタイプ。便箋とか。
場は混乱した。
密集しすぎて結構大きな声なのに聞き取れない妖怪の囁き声をBGMに、時間ばかりが無常に過ぎていく……
「なあ、ケータ」
「ん、なに?」
ケイゾウに声をかけられて、ケータは首を傾げた。
声をかけた側であるのに、ケイゾウは顔を少し赤らめながら言う。
「お前、
「白い服?持ってるけど……」
「貸してくれ」
「いいよ。何に使うの?」
ケータの素朴な疑問に、ケイゾウは薄く瞬きをした。
「合戦の時に分かるぜ」
ケータとケイゾウは、決戦の日を迎えることとなる。
そして全身白コーデでやってきたケイゾウに、ケータはちょっとビビることとなる。
おじいちゃんが、居候色に染められてしまったのだ。複雑。
「小鳥ちゃん」
声をかけられて、ガネラこと小鳥はゆったりと振り向いた。
土蜘蛛に問題を出した帰り道。
「送って行ってあげる〜」と言われて承諾したから、えんらえんらが着いてきた。
「今日から五日間、桜町に近づいちゃあダメよ」
「なんで?」
「なんでもよ。」
フワフワ煙のように微笑まれて、小鳥は首を傾げた。
──その時のことをよく覚えている。
えんらえんらがそう言ったのは……どうということは無い。
五日後に、平釜平原で元祖本家で戦を行うから危ない。というだけだった。
小鳥は一見人間であるから、遠ざけようとしたのだろう。
小鳥は妖怪の気持ちは分からないが、流石にそれくらいなら理解ができる。
人間の子どもを巻き込みたくないと思う。当たり前のことだ。
だけど、それを元祖の侍女が言うだろうか。
──なんてことを考えながら、小鳥は今、桜町に居た。
えんらえんらが言っていた五日後である。馬鹿野郎
しょうがないのだ。
だって、
十中八九、ケイゾウが何かしているのだろう。
流石に放っておけず、様子を見ようとやってきたのである。
小鳥は
動きやすい服は無いかと聞いたら、快く渡されたのである。
──んで、捕まってた。
終わった。
ガネラは縄でグルグル巻きにされながら、死を悟っていた。
怪魔ァッ!!
しかも、捕らえてきたのは怪魔である。
小鳥は心の中で、己を捕らえた怪魔共を罵る。
「離してちょうだい」
「…………」
無視されながらエッサホイサと、小鳥は工場に運び込まれた。
「お前が妖怪を助けようとしている人間かい?」
誰?そして知らん妖怪の前で降ろされた。
髪を沢山のカンザシで結わえた、老婆のような妖怪だ。
「誰かしら、貴方。」
「フン!人間に教える名前は無いよ。このトキヲ・ウバウネのね!」
教えてるな……小鳥は引き気味に思った。
何となくコミカルな妖怪だが、油断してはならない。
怪魔に小鳥を攫うように言ったのは、絶対この妖怪なのだ。
トキヲ・ウバウネは小鳥を攫った。
間違えようのない事実。
怪魔を率いているのだから、コイツが黒幕であることは間違いないだろう。
「貴方、黒幕ね?怪魔とやらを先導して、妖怪と人間を混乱させていた。」
「おやおや、よくそこまで気がついたねぇ。」
「少し考えれば分かることだもの」
随分演技がかった雰囲気で、トキヲ・ウバウネは言う。
「そう、アタクシは妖怪と人間をいがみ合わせて、ゆくゆくは滅ぼそうとした……元祖本家の戦だって、アタクシが仕組んだことさ!」
ちょっとそこまでは考えてなかったかも
「名付けて「妖怪と人間にとり憑いて、いがみ合わせて、ゆくゆくは滅ぼしちゃおう」作戦ダッヨ〜ン!」
小鳥は聞いちゃいけないことを聞いた気がした。やばいやばい
「だから、妖怪に頼りにされているお前を攫ったんダッヨ〜ン!」
頼りにされている……?
私が……?
小鳥の脳裏に妖怪たちの姿が蘇る。
結構な確率で逃げられていたような気がする。
「怪魔を倒し、元祖本家の戦を止めようとしているんだろう?」
「……?」
止めようとしている……?
小鳥の脳裏に己の行動の数々が蘇る。
全然逃げようとしていた覚えしかない。
私が……?
「残念だったね。お前はここで倒れ、頼りにされている妖怪達から「ああ!なんで
おい!
この黒幕、ケイゾウと間違えてるぞ!
小鳥は戦慄した。
私とケイゾウを間違えることある?
でも実際起きているのだから、あるのだろう。
確かに妖怪からしたら性別とか気にならないのかも……
私も傍から見たら人間だし……若いし……妖怪と普通に関わってるし……
だいぶ似てるな。
小鳥は納得した。
「今頃、私の怪魔五人衆が人間も!妖怪も!この街も!めっちゃくちゃにしてやってるのさ!」
「あら、大変」
軽い口調の小鳥に、トキヲ・ウバウネは片眉を釣り上げた。
「なんだい。つまらない反応だね」
「世界はよくめちゃくちゃになるの。」
小鳥はジッとトキヲ・ウバウネを見た。
歪んだ表情と言い、随分と恨み深そうな面構えだ。
「一緒に眺める?ワインは無いのかしら」
小鳥がそう言うと、トキヲ・ウバウネは目を見開いた。
ワイン片手に眺めていようかしらを訳すと、 交渉しよう になる。
ワインを飲みながら
古代の偉い人とかには伝わるが、残念なことに現代は現代である。
伝わらなかった。
「なぜ、私がケイゾウだと?」
「戦場にいる私の怪魔が聞いたのさ。真っ白い服を着ているのが、本家と元祖に喧嘩売った馬鹿な娘だから、ケイゾウは──」
そこまで言って、トキヲ・ウバウネは口を閉じた。
ギロリと大きな目が、小鳥を射抜く。
「話と違いすぎる。」
独り言のように零すと、更に語り始めた。
「ケイゾウは妖怪想いの人間だと言うのに、お前はまるで無関係であるかのように振る舞う……」
変に曲がった右目を見開き、両目を細め、目尻を釣り上げた。
「お前、ケイゾウじゃないね」
「ふふ」
小鳥は戦いた。
真相に至るのが早すぎる。
ここまで小鳥は何も言っていない。
まるで快速列車のごとき速さだ。
目的の真実まで真っ直ぐに……
「ケイゾウを庇ったか。アイツに白い服を着せて、お前は赤い派手な服を着ることで、自分をケイゾウだと思わせようとした。ケイゾウがどんな服を着ているかなんて、こっちは知らないからね。」
至りすぎている。
真っ直ぐに行き過ぎている。
「そんなことをして私に何の得があるのかしら……」
「知ったこっちゃないよ」
こっちも知らないよ。
小鳥は諦めたように笑って、口元を覆った。
困惑している場合では無い。
兎にも角にも、何か話し合いをしなくては。
戦って勝てる相手ではないだろう。
なら、怪我などをしない為に身を守る発言をしなくてはならない。
「聞きたいことは沢山あるわ」
まず世間話から入って……
「動機、怪魔、色々。怪魔なんて昔は無かったもの」
クスクス笑い声が聞こえる。
「ああでも── なら
まるでノイズが走ったように、そこだけ聞き取れなかった。
違う言語のように思える。
だが、言葉ですら無いようにも感じた。
背筋が粟立つような感覚がして、トキヲ・ウバウネは腕を振り上げ、まるで切りつけるように下ろした。
その瞬間、黒ずみのような衝撃が走った。
稲妻のようにも見える。
だが一つ違うのは、確かな質量を持っていることだ。
小鳥の首を落とさんと走ったソレは、頭を下げられて避けられた。
見切ったのか。
その考えも放置して、トキヲ・ウバウネは言う。
「お前がナニかは、もうどうでもいい。──今ここで死んでもらうよ!」
手に持った杖を一回しすると、睨みつける。
一触即発。
小鳥は全然クシャミした勢いで頭を下げただけなので、何が起きたのか全く分からなかった。
ただ分かる。
死んだわこれ
「──ガネラ!」
悲鳴のような男児の声が響く。
視界に映るのは、たった一人。
普段と全く違う赤色のワンピースを身につけた少女は、コンクリートの上に倒れている。
「ガネラ。そうかい。そんな名なのかい」
ケータの叫びに、沢山のカンザシを結わえた妖怪は杖を一回し。
「アタシはトキヲ・ウバウネ。」
「か、怪魔達の言っていた……」
「そう黒幕。この桜町に蔓延する怪魔も、本家元祖の戦いも、おかしくなった妖怪や人も、ぜ〜んぶアタシの仕業ダッヨ〜ン!」
特徴的な語尾が静かな工場内を蔓延して、反響する。
ケータは人知れず唾を飲んだ。
「にしても、馬鹿だねえ。」
トキヲ・ウバウネは邪悪そうに笑う。
「碌に戦う術も持っていないのに、ケイゾウとかいう子どもを庇う為に私に挑んだ。」
「ケイゾウを庇おうとした?ガネラが?」
「そうさ。信じられないかい?」
「信じられない……」
今は嘘でも否定してやれよ
傍に居たウィスパーとジバニャンはそう思った。
ケータは倒れるガネラを──人間形態のガネラを見る。
そうすると、何だか胸がキュッとなって、トキヲ・ウバウネを許せない気持ちになるのだ。
「──どうせ勝てないのに」
ケータは妖怪ウォッチをかかげた。
メダルは六つ。
「出てこい、俺のトモダチ──!」
ええ……気を失ってる隙に倒されてる……
ガネラこと小鳥は絶句した。
なんか、トキヲ・ウバウネとの戦い、終わったらしい。
これから宴だってさ。
…………私が参加していいの?それ。
え?影で暗躍してただろ?
いやいやそんなことしてない……いや、冗談じゃなくて。
何?そのニヤニヤした顔?……馬鹿にされてる?
いや……え〜……参加しなきゃ……ダメなの……?
ちょっと、こわいかな……