某妖怪「超有名冒険譚の主人公が目の前にいるんやが」 作:ピコッピコ
「あはは!」
高くて爽やかな笑い声が辺りに響く。
声の主の小鳥は、その目をまろく歪ませた。
「貴方! まだ認められていないのに、御館様が話していたのを隠れて聞いて、真っ白い服を着た娘を探し回っていたの? 焦りすぎよ。」
「う、うるさいですね……!」
この子、かわいい〜子だわ。
ガネラこと小鳥はちょっとホッコリしていた。
この少年。
小鳥に突然突っかかってきた、この色素の薄い美少年。
やはり妖怪だったらしい。
しかもキュウビ。
しかも御館様に認められたい且つ早く一人前
話を聞く度に、その御館様を慕う気持ちが伝わってきてはホッコリとしていた。
余程尊敬しているのだろう。
まあ、その御館様が何故人間のフリをしている小鳥を探すのかが分からずじまいではあるが。
もしかしたら勘違いの可能性もある。
というか、そっちの線が濃厚だ。
「見て。この妖怪ウォッチ貰ったのよ」
「初めて見る型ですね。いつ出たんです?」
「ふふ」
「………?」
小鳥は友達の証を自慢しながら、外に出た。
清々しい太陽が体を照らす。
陽射しの暖かさに目を細めると、小鳥はふと思い出したかのように優しく言った。
「一人前にもなっていないのに、先走るのは良くないわ。」
「貴方に言われるまでもありません! それに僕はほとんど一人前です!」
めちゃくちゃわか〜い
ホッコリした心持ちで、小鳥は愉快そうに笑った。
「あはは」
だがその様が、少年には小馬鹿にしているように見えたようだ。少年は目をキッと鋭くさせる。
「なら見せてあげますよ! ボクが一人前であるとね!」
「楽しみね」
少年は辺りを少し見回すと、近くの少女に目を止めた。
思わず目を止めてしまいそうな美少女だ。
少年は表情を柔らかくさせて、少女に近づく。
「そこのキレイなお嬢さん」
マジで?
目の前で少年がナンパを始めた。
これには流石の小鳥も困惑である。
キュウビが一人前であると認められる方法は唯一。
女子の心をときめかせ、キュン玉という感情の塊を大量にゲットすることだ。
まあまあ由緒正しき儀式なのだが、何も知らない者から見ると遊び人であった。
「なに?」
声をかけられた少女は不思議そうな顔をしながら振り返った。
茶髪のポニーテールの可愛らしい女の子だ。
で、そこから。
小鳥は大人しく少年が女の子を口説く様を見守って、笑いを堪えていた。
「グゥ……ッッッ!」
少年は負けていた。
何にって、女の子にである。
女の子は可愛かった。
そして恐らく、尋常ならざる
まあ、可愛い子に笑顔で凄いね!なんて言われたらキュンとしてしまうだろう。
それを考慮しても余りにもチョロい。
少年から溢れ出した二つくらいのキュン玉とやらを見て、小鳥は更に思った。
何してるの?
「貴方何をしているの……?」
「なっ!? だって貴方が…!」
「一人前ってそういうことなの?」
「キュウビの儀式はこうなんですよ!」
「え、君、キュウリくんって言うの?」
「キュウリくんですって!?」
キュウリ!?
フミの言葉に小鳥は苦笑いを溢した。
「いい名前ね、キュウリくん。」
「やめてください!」
「ふふ」
小鳥は笑って、ふと女の子の髪にゴミが着いていることに気がついた。
口説くなら取れば良いのに。
そう思いながら、特にやましい気持ちも無く。
女の子に対して「ちょっと持ってて」と言って
片手に買い物袋、もう片手に自慢していた妖怪ウォッチを持っていたので誰かに預けなくてならなかったのだ。
小鳥の瞳と女の子の目がかち合う。
少し目を丸めている女の子に、小鳥は目を細めて笑いかけた。
そっと手を伸ばすと、反射的に女の子が目を瞑る。
指先が柔らかく髪に触れ、離れていった。
「ゴミが着いてたの。ごめんなさいね、嫌だった?」
「う、ううん…」
「それは良かった。でも気がつけて良かったわ。キレイな髪だもの、ね」
冗談っぽく悪戯な笑みを浮かべたのを見て、少しばかり女の子の頬が紅潮する。
そしてキュン玉が出てきた。
小鳥は気が付かなかったが、少年ことキュウリは速攻で気がついた。
気がついて歯噛みした。
キュウビみたいなイケメン妖怪はモテモテなのが必須なので。
「行きますよ!」
「待たせてるものね。……迷惑かけちゃってごめんね。今度会えたら良いところ案内してあげる」
「う、うん。」
そうして小鳥とキュウリは去っていった。
残されたのは女の子だけである。
女の子は──木霊フミカは少しばかり惚けた後、突然正気に戻った。
そして右手に残った、フシギな時計に気がつく。
「変な時計。……大きいし、あっ! 蓋壊れてる。」
ちょっと触るとすぐに蓋が開いた。
なんだか妙に覗き込みたくなる衝動に駆られる。
「……変な人だったな。」
ボソりと呟いて、フミカはなんの気に無しに覗き込んだ。
「────えっ? だれ?」
「は? 子どもが妖怪に誘拐された? このご時世に? 」
キュウリの圧にEランクの小さな妖怪は震えていた。
本人が意図していなくとも、圧がすごいのだ。キュウリは。
そして小鳥は怖がっていた。
圧がすごいし、
なにより……妙なことを口走っていた怪しい妖怪が、女の子を連れ去ったのだという。
小鳥は女の子に覚えがあった。
さっきの子だ。キュウリを撃退していた子ども。
そして、
どうにも「最悪だ!!!なんて普通に可憐じゃない娘がいる!!!こんなの役にピッタリじゃない!!」と叫んでいたらしい。大きく要約すると。
あからさまにヤベェ妖怪である。
どうやらその犯人は、何かしらのモデルを必要としているようだった。
ところで
──小鳥には旅をしてきた友人がいる。
苦楽を共にし、かなり変わっていて可愛らしい、割と性格の悪い妖怪だ。
小鳥の親友は今、二人の旅路を本に記して出版しているのだと聞いた。
とても拘りが強く、プライドも高い。
そんな妖怪が小説なんかを書いたのなら……きっと自分が納得するまで
……………
……………………
………友人……
……友人じゃないかな……その感じ……
違うかもしれないが、なんというか、この面倒くささといい奇妙な感じといい……
小鳥は額を抑えた。
大変既視感があった。
どうしよう。関わりたくない。
小鳥は、絶対に友人の連帯責任を取らされる自信があった。
あの女の子には申し訳ないが、まあ、丁重に扱ってくれるだろう。
小鳥は無視をすることにした。
後で会いに行こう。
「うわぁ、これは御館様に伝えなくては……」
「伝えるの」
「ええ、まあ。街を守る、守り神ですから。こうした事案は伝えなくては。」
「へえ」
前言撤回!
小鳥は冷や汗を流した。
守り神とは古来より、守る対象以外には非常に暴力的なことが多い。
このままだと、あの子ヤバい……!
「なら、迎えに行きましょうか。早い方が良いでしょう?」
「……そうですね。御館様のお手を煩わせるまでもない。」
キュウリは平然とした様子でそう言った。
そこには失敗を恐れる緊張感は無い。
失敗するほど己は弱くないと知っているからだ。
小鳥は、御館様を出させずに解決させなくてははならない。
失敗を恐れる緊張感しかなかった。
ネタバレ
誘拐した妖怪はあまのじゃく
奇跡的に語り手との性格が一致していただけ。
ヤンデレや試し行動してくる子は好き?(備考程度の質問)
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嫌い
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好き
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デレや好意が分かり易ければ好き
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裏でドギマギしまくってたら好き
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上二つがあるなら好き