某妖怪「超有名冒険譚の主人公が目の前にいるんやが」   作:ピコッピコ

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妖怪ウォッチ捏造オリエピ
ガネラのドラマ編スタートです


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出オチで申し訳ないが、修羅場である。

 

「どういうことですか! わ、私が……降板だなんて!!」

「伝えた通りだぞ。お前には姫役を降りてもらう!」

「………!!」

 

そう言われた椿()()は歯を食いしばるようにして、監督に掴みかかろうとした。

 

それをキュウリとガネラこと小鳥が止める。コマさんが端っこで震える。

 

監督のあまのじゃくは、冷めた目でそれらを見ていた。

 

そう、監督のあまのじゃく。

 

小鳥は勘違いしていた。

フミカを連れ去った犯人は、あまのじゃくであったのだ。

 

そして連れ去ったフミカを、()()()ドラマへ出演させようとしている。

 

現場は混沌としていた。

 

制作陣でさえ。

ワガママな監督であったが、人間の子どもを連れ去って役者変更をさせようとする程だとは思っていなかったのだ。

 

「この作品に人間を出演、あまつさえ姫様役という物語の根幹であるキャラクターをさせるなんて! 製作中止どころの話では無くなってしまいます!」

 

椿姫が言い募り、それを監督は一蹴するように鼻を鳴らす。

 

「ねえ。」

「……なんです?」

「人間を出演させてはならないなんて、初めて聞いたのだけど……普通なの?」

「……………いえ、僕も初めて聞きましたね」

「コマさんは?」

「聞いた事ないずら……」

 

数秒ばかり思考を巡らせたであろうキュウリは、たっぷり溜めてそう言った。

コマさんは若干困惑しつつ即答した。

 

「基本、妖怪の映画は娯楽です。ですから人間が出ているくらい気にしない者が多い。ですが例外は……もしかして……」

 

口元に手を当てたキュウリから目を逸らす。

 

ヒートアップしつつある椿姫。

威圧的な監督とアワアワしている役者制作陣。

マジで巻き込まれただけの小鳥ご一行とフミカ。

 

「ねえ」

 

小鳥は少しばかりの勇気を持って問いかける。

 

「この女の子は貴方達に関係ないと思うのだけれど。」

「ある!大いにあるぞ!ここまでイメージにピッタリな子どもは初めて見た!」

 

いやそれは貴方だけじゃ……

 

小鳥はチラリとフミカを見た。

さっさと逃がしてあげたいが、この監督かなり執念深そうだ。

 

隙を突いて逃げるだけだと、後日また同じようなことが起こるだろう。

 

とにかく、自身が説得をして納得させなくては……

 

小鳥が最年長としての覚悟を決めた時、椿姫が言った。

 

「せっかく公式でドラマを作れる許可を得たのに……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

小鳥はむせそうになった。

 

え?今名前呼ばれた?

 

「やはり……! ガネラの冒険譚は最古の物語! ファンには古臭い考え方の妖怪も多いし、しかも過激派ばかりですからね……!」

 

そうなの??

 

「お前……ッッ! 口を慎め! いくら大人気女優であるからと言って許されないことがあるぞ……ッッ!!」

「本当のことを言ったまでです!」

 

そんなことある?

 

小鳥は思い出していた。

 

結構前に、ウィスパーの妖怪パッドをまさぐっていた所見つけた伝記群。

 

己と親友の旅路を綴ったというそれを。

 

あの時はシリーズ物の伝記なのだろうと考えていた訳だが。

 

ふーんドラマ化するくらい人気になったんだ……ふーん……

 

小鳥は少しばかり、口角に笑みを浮かべる。

 

ただの旅人であったのに大出世であると思ったのだ。

 

実際には大出世どころでは無い。

ガネラの冒険譚のシリーズは文化となっていた。知らないが。

 

「いや! 私やるって言ってないけど!?」

 

フミカの大きな声に小鳥は目を向ける。

己の背後から、女の子は目を吊り上げていた。

 

「いーや君はやる!やらねばならない!」

「私ドラマなんて出たくない!」

「なぜ!? あの冒険譚の、姫君の役だぞ!?」

「さっきから冒険譚冒険譚って言うけど! 私、そんなの知らないよ!」

「も、もんげー!?」

 

フミカがそう叫んだ瞬間、明らかに場がザワついた。

あと普通にコマさんが叫んだ。

 

信じられないことを聞いた。

もしくは禁忌に触れたかのような空気感ですらある。

 

その様を見て、フミカは少し目を丸めた。

 

そして小鳥も思った。なにごと?

 

小鳥は「どうしたのこれ?」と喋りかけようとキュウリの方を向く。

 

めちゃくちゃ狼狽していた。

瞬きを三倍に増やして、どもりながら言った。

 

「えっ……なっ…………なぜ…?」

「なんでって……知らないから知らないよ?」

 

キュウリが全員を代弁するように、言葉を絞り出す。

 

「もっ、もったいない……!!」

 

この言葉が全てであった。

 

瞬間フミカに集まる妖怪たち。

 

「貴方は読んだことありますよね!」

「内容知ってるわ」

 

キュウリたちはヨシ!としてフミカへの布教に集中し始める。

 

内容を知っているのは間違いでは無い。

小鳥は主人公のモデルなので……たぶん

 

小鳥は引き気味に、遠くから妖怪団子を見つめる。

 

「冒険譚シリーズというのは語り手の"私"が、友人の妖怪ガネラとの旅を記したとされている小説です! 主人公はガネラなのですが語り手のキャラも良くて! このフタリの掛け合い等で感じる絆が売りなんです!」

「ちょっと待ってくださいまし! 冒険譚シリーズの売りはやはりトンチの聞き、思わず「なるほど!」と膝を打ってしまいそうになる知的な問題解決では無いでしょうか!?」

「いーや! 一番はキャラクターだな! 話ごとに変わる妖怪や人間の性格生き様が濃く色鮮やかで、一冊読めば必ず心の師が見つかるとすら言われている! そしてなんと言っても言葉だけで説明せず情景や表情で読み取らせてくる雰囲気だ!」

「コマさんは、読むだけで知らない場所に行ったみたいになるところが好きずら! それをガネラ達と見てるって考えるのがすっごく楽しいずら!」

「へ、へえ……ガネラ…………ガネラってどんな人なの?」

「よく聞いてく」

 

省略させてもらう。

 

小鳥は彼らが言っている意味が全く理解できなかった。

 

というか話を聞くことを早々に諦めたし、なんか、聞いてて面白いのかそれは……という困惑の気持ちが生まれる。

 

そうして冒険譚を読ませられたフミカは……

 

「やります! やらせてください!」

「俺は厳しいぞ!」

「ッ、はい!」

 

やる気に燃えていた。なぜ

 

小鳥は困惑していた。

フミカは冒険譚に感動して、ドラマへの出演を認めたようだ。

 

何故か最初キレていた椿姫も達成感に満ちた表情をしている。

 

小鳥は少しばかり眉を顰めながら尋ねる。

 

「…………妖怪の映画に人間が出るのはよろしくないのでしょう? 一体どうするの?」

「ん?ああ、そういえばそうだったぞ。俺は凡庸なヤツら等気にしないが作者の反応は気になる……」

 

ひどい言い草

 

「丁度いい。白いのとクリーム色なの。お前たちやってくれ」

「やります!」

 

ええ……?

小鳥は即答したキュウリに引いた。

 

正直断りたい。

が、この作品は親友の物みたいなもんである。

 

己の生涯の友は手伝いたい。

だけど先程キュウリは、人間嫌いの過激派が多いという旨の話をしていた。

 

危険なことは避けたい。

 

だが……断って良いのか……?

 

友人への想いがガネラの頭の回転を鈍らせる。

上手い断り文句が浮かばなかった。

 

「名義貸しくらいなら……」

「は?」

 

絞り出たのはそれだけだった。

 

キュウリや監督が怪訝そうな顔をする。

 

「あまり矢張に立っては行動出来ないけれど、名前を貸すくらいなら良いわよ。あとは出来て交渉くらいね」

「いや貴方が何できるんですか」

「白いの、お前何なんだ?」

 

小鳥の服装よりも白けた目線に心が痛む。

そんなことを言われても、これくらいしか出来ない。

 

「手伝ってくださるというのなら、それに越したことはありません」

 

椿姫のヒトの良い鶴の一声に、監督は「それもそうか」と言っているも同然の表情になる。言いはしなかった。

 

「期待など全くしていないが、いないよりは随分とマシだろうな!」

「僕が関わるからには、ぜっっったい大成功に決まっています!」

「コマさん、私の代わりにお願いね」

「え!?オラも!?」

 

監督はそれを聞いて良しとすると、声を張り上げて言った。

 

「準備しろ椿姫! お前は今日から()()()()だ!」

 

椿姫は泣き崩れた。

 

こうしてガネラ、半人前のキュウリ、完全に巻き込まれただけのコマさんは、ドラマの騒動に巻き込まれていくこととなった。

 

『どう考えてもどう見ても「このヒトしかいない!」と思うことは、監督であれば誰でもあります。ええ、本当に。ですが、それが人間であるのは……あまりにも危険では? 編集者としては……え? 小鳥?』

 

『え? いらっしゃるんですか? 本当に??……あっ 失礼いたしました。なるほど。彼女がそう仰るなら私に口出せることなど一つたりともありません。』

 

()()()には私から話を通しておきますので、どうぞお気になさらず。ドラマの成功を心から願っています。それでは失礼。』

 

これらは編集者のさとりちゃんへ電話をかけた監督が聞いた言葉である。

 

監督は困惑した。

普段はクソみたいなワガママで大変困惑させる側であるのに、今日に限ってはかなりビビった。

 

名前を出したら一発で通った。

通ったどころか、かなり好意的。

 

てっきり提案が通るまで、一週間は作者と口論をすることとなるだろうと思っていたのだ。漢方も買った。

 

だというのに、これだ。

 

監督は興奮した。

こりゃあ良い人材だ!

 

そして思いつく。

 

この娘になんとかしてもらおうか──

 

──この、大炎上を。

 

今、妖魔界では、このドラマに人間が出演することへの賛否で大騒動と化していた。

 

具体的には襲撃にあっている。

 

 

 

 

 

キュウビは溜息を吐いた。

黄金の毛並みの美しい、九つの尾を揺らし、不機嫌そうに瞬きをする。

 

その身から感じる妖力は強い。

 

Sランクであり、町の守り神であるキュウビだからこその強烈さだった。

 

「なんでこんな時に、こんな面倒起こすのかな」

 

心底呆れた冷たい声だった。

 

キュウビが視線を落としているのは、一つの書類。

 

今の妖魔界の騒動のコトだった。

 

「作者公認のドラマに対する、過激派のデモねぇ……」

 

妖怪の中で最も影響力の強い作品がある。

凡そ千年は前の時代、キュウビですら知らない世界を見てきた妖怪の旅路を綴った冒険譚だ。

 

これがスピンオフのスピンオフなら良かった。

 

「まあそういうこともあるよね」と流されるだけで済む。

あるいは気にもされなかっただろう。

 

だがこれだけはダメだ。

 

有名なだけあって、()()()()()()()()()()()()()

 

人間と妖怪の関係を絶たせたい者は数しれず。

それらがなりを潜めているのは、一重に風潮がそれを許していないからだった。

 

人間に友好的な現代王の前で表立って声高に叫ぶことなどできない。

 

──だがこの作品は余りにも人気すぎる。

 

人気すぎる故に、何でも出来てしまう。

 

目が集まる、気持ちが理解される、同情すらされる。

 

「ただでさえ、ムゲン地獄の結界が緩んできてるってのに」

 

ガネピッピとか言ったか。

 

気持ち悪い邪悪そうな妖気を持った妖怪だそうだ。

最近頻発する報告の特徴と一致する。

 

何か鍵を握っていることは確かだ。

 

なんせ、ガネラが持っていたとされている道具を持っているという。

 

ふぶき姫は様子が大変、とても、めちゃくちゃおかしかったが、信頼の置ける妖怪である。

 

封印が解けたとされる妖怪の可能性があった。

 

キュウビは書類を置いて、深く溜息を吐く。

書類の写真と書かれた説明には

 

──自分のトコのキュウビと、ケータの家にいた娘が書いてある。

 

この娘、他の大妖怪も反応していた所と服装から見て──

 

確実に、ガネピッピとやらと関わりがあるだろう。

 

悪意を持ってドラマと関わっている可能性が高い。

もし、人間が関われば騒動になると理解していたのなら……

 

キュウビは無い眉間を揉んで、深く溜息を吐いた。

 

面倒なことになったものだ。

ヤンデレや試し行動してくる子は好き?(備考程度の質問)

  • 嫌い
  • 好き
  • デレや好意が分かり易ければ好き
  • 裏でドギマギしまくってたら好き
  • 上二つがあるなら好き
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