某妖怪「超有名冒険譚の主人公が目の前にいるんやが」 作:ピコッピコ
投稿するやつ間違えてたので直しました
追加内容
小鳥(ガネラ)が監督たちに騙されて顔出しさせられて大通り歩いている〜といった旨を追加
監督の言葉に首を縦に振ったのは優しさであったし。そして恐らくきっと、愛情だった。
普段より厚意にされているケータ家や、その友人。
そして心臓のように思っている相棒であり友人である、このドラマの作者。
小鳥の記憶が正しければだが、ドラマになるというのはとても凄いことであったはずだ。
……あとは普通に、めちゃくちゃ巻き込まれて覚悟を決めた。つまりは不可抗力。
「小鳥さん。みなさん貴方に見蕩れていらっしゃいますよ」
「そうね。よくあることよ……」
「まぁ!」
小鳥は目を伏せた。
もう何も見たくねぇ。
間際で薄ら楽しげな声を上げた椿姫が少しばかり鬱陶しく、しようがなくて、美しかったから顔を上げた。
新緑の緑と目が合う。
真夏を思わせた。
逸材なのだろう。
感心するほど美しい妖怪だ。
愛嬌も、近寄り難さもどちらも持ち合わせている。
考えてみれば、オペラ。
当時はただの歌劇の一等星はこのようなヒトだった。
そう考えながら、小鳥は笑みを浮かべた。
「やば、やば!」
「めっちゃ、めちゃくちゃかっこよくない!?」
内心舌打ちをついて辺りを見回した。
めいめいにハシャギ回る妖怪の群れ。数え切れない程の数だ。知ろうすら思えない。
目が合うと顔を真っ赤に赤らめて飛び跳ねている。
──騙された。普通に
確かに依頼をされた時は「出る時は顔を隠して良い」のだと言われた。
出演する時だ。
つまり、
小鳥がバチくそに騙されてしまった。
あんな、妖怪人生全部で騙しまくってたようなものである、小鳥が。こんな単純なものに。
心底腹立たしいが、抵抗は出来なかった。
小鳥は本当に弱いのでいざと言う時に力づくにされそうになると大人しくなる。雑魚だった。
「ドラマって、ヒトが多いのね。知りませんでしたわ」
「そうですね。特にこのドラマは期待が高いので、皆さん気になるのでしょうね。」
「そう……ステキね。」
聞いてた話と違いすぎる。
小鳥はまぁまぁガチ目に動揺していた。
この顔面の露出だけでない。
ドラマの撮影の方法も、小鳥にとっては不測の事態だった。
脳内にて直近の記憶が蘇る──
『ねぇ、ウィスパー』
『ギィヤッ』
『ああ倒れちゃった』
あっ、違うこれじゃない。
これ違うわ。間違えた。
ケータ家に来たばかりの記憶を掘り起こしてしまったようだ。
──そう、確か曇天でありながらも生暖かいお昼時。
小鳥はケータの部屋にいて、ふと思った疑問をウィスパーに尋ねたのだ。
『貴方たちって、よくドラマの話をするじゃない。ドラマって何をする物なのかしら』
『……もちろん存じております! お待ちくださいね。えぇっと何でしたかねッ〜!』
『……
少しの寒さを含んだ眼差しでまろく微笑む。
小鳥は、ウィスパーが隠れて妖怪パッドで検索し始めるのを眺めて待った。
『あっ! 見つけっ……ごほん。ええ〜ドラマとは演劇・芝居という、つまるところ劇であり』
『知ってるわ。何をするのかが気になるの。』
『……スゥ〜……あっ、カメラに芝居を納め放送・公開をする……』
『わざわざ王族と親しくならずとも、テレビで気軽に歌劇を観れるということかしら。』
『そう! そういうことでウィス……王族??』
『劇を収めているの。素晴らしい』
『王族??』
──小鳥はドラマを勘違いしていた。
はるか昔を生きてきた小鳥にとっての
舞台や劇は、限られた特権階級が楽しむ余興のそれ。
稀に庶民に向けた舞台があるが、数の限られたものだった。
閉塞的な娯楽。
小鳥は、その閉塞的な光景をカメラに収めただけの物。
オーディエンスなんざ居ないとばかり思い込んでいたのである。最悪の事態。
「そんなに不安がらないでくださいな。」
「目立つのは慣れていないもの。」
「またまた、ご冗談を」
「あはは」
小鳥は考えるのをやめた。
あれよあれよと、着替えや化粧まで施されてしまったが……
顔を覚えられてしまうだろう。
知らない妖怪たちに。無差別に。
おしまいである。
そういう所属だのなんだのシガラミどうこうを持たない為に、元祖本家とバトったというのに……あんな頑張ったのに……
「…………」
本当にやらかしてしまった。
酷い油断をしたのだ。
正しく調子に乗っていた。
今からでもダッシュで逃げるべきなのだろうか。
しかし、既に対価は頂いてしまっている。
契約違反は確実にバンッ(消滅する音)だ。
小鳥は視線を宙に漂わせる。
遠くを見つめるおぼろさだ。宇宙のことでも考え始めているのかも知れない。
そして、一点に止まった。
フミカだ。
黒い衣装を身につけ、初心な右往左往を見せている。
言うなれば落ち着きがない。
「初々しくて、微笑ましいですね。小鳥さんとは大違いです。」
「……ふふ、そうね。」
最後、余計じゃない?
そんな椿姫の言葉を聞かなかったことにしつつ、小鳥は安心感を覚えていた。
自分以外に緊張している者を見ると、安堵感を覚える。
人間特有な感じの、仲間意識だった。
「失礼。少し行くわ」
「行ってらっしゃいませ」
小鳥は歩き始めた。
軽いステップのような歩み。
長い真っ赤でフリルの多い、
自然な振る舞いと風体。
「姫様」
却って、真に高貴な生い立ちを持つ者の服装は単純でシンプルだ。
真っ黒で上質で、誰よりも品位のあるドレスとベール。これだけで良い。
元となったあの姫はこれを嫌っていたはずだ。
小鳥も正直言うなら息苦しい。
何よりこの国は、結構、アレだし。
「だ、だれ……」
目をかすかに見開いて困惑している様子のフミカに、小鳥は口元を抑えた。
目と目が合う。
「……ああ、なるほど」
小鳥は微かにそう呟き、別人じみた振る舞いを心掛けて傍に寄った。
「私よ」
「す、すごいね。全然誰だか分からなかった。」
「あら本当に。」
フミカの子どもらしい可愛さのある動揺に笑みを浮かべる。
──気がついてない。
小鳥は少し顔を上げて辺りを見渡した。
言葉に言い表せない、甲高く黄色い悲鳴が響き渡っていた。
その中に一体の妖怪を見つける。
ケータとたまに遊んでいる妖怪だったはずだ。
名を……何だっけ……セミの……セミの侍みたいな……なんだっけな……
何度も会ったことがあったはずだが、全くと気がついた様子が無い。
これってもしかして
「お待たせしてしまい、申し訳ございません。少しあの者と語らうことがあったもので……」
「……」
「ご機嫌ナナメなようですね」
めちゃくちゃ演技してればバレないんじゃない!?
小鳥は確信を持って、心の中で頷いた。
そして口角を上げるようにして笑う。
犬歯が見えるような薄笑い。
笑顔は一種の威嚇である。特に貴族にとっては。
隠れ気味の目元はフミカにだけ見えるのだから、良いのだ。
その浅くたわむ眼と陰るまつげ。
フミカはそれを、挑発と捉えた。
「そうだね。」
たどたどしい気もする声だ。
小生意気さと愛嬌の混在する、幼い口調。そして奥に見える善良さ。
「貴方、遅すぎるよ!」
正しくあの麗しき姫君である。
相棒であり片割れの友人にめちゃくちゃ暴言吐かれて泣いていた、本当は心優しく、かわいい、存外普通の子だ。
「貴方は我が国の宰相なの。つまりは私の物!」
宰相。
この物語のラスボスである。
酷く悲しい過去と劣等感を抱え、強い野望を抱いている男だ。
でも、幼い頃から面倒を見ていた姫君への愛情を捨てられない。そういう男であった……というのは置いておいて。
小鳥は、姫役のフミカの言葉に微笑んだ。
「申し訳ございません。これからは貴方様を一番に考えますわ。手始めに……隣国の王との講談をキャンセルしましょうか」
「ダメに決まってるでしょ!? 相手、王様だよ!?」
「ふふ、冗談ですよ。」
な、懐かしい〜
そうそうこんな感じだった。あの子!
小鳥は懐かしんでいる。
あの監督。なかなかの慧眼だ。
フミカは普通に喋っているだけでも充分過ぎるほどに姫様らしい。
素でツッコミ入れたフミカが慌てて辺りを見回す。
そうして観客の反応に安堵したように、肩の強ばりを解いた。
「ヤバい成仏するかも」
「死ぬな!!! これ何処まで行くのか見よう!!! 一人にするな!!」
「ようかいになっててよかったなぁ。」
「これ撮影どんな感じ? ねぇ、していいの? すいませんこれ撮影OKですか? これ寝る前に毎日見たいんですけど」
「すいません。ボク普通に野次馬です。やめた方が良いと思います。」
やっぱ周りうるさいな……
フミカは見つめていた。
その大きくと丸みを帯びた目を真っ直ぐに。
「フミカさん。」
「は、はい」
背後から声をかけられて、フミカは慌てて振り向いた。
微かばかりに朦朧としていた意識が、瞬にして現実に戻される。
その可愛らしく麗しい声にパッと答えられたのは、一重にフミカがしっかり者の子どもだったからだろう。
赤髪の映える、美しい女性がそこには居た。
白を基調とした動きやすそうな服装が品の良さを引き立てる。
「緊張してらっしゃいますね。なにか、気がかりなことでもおありなのですか?」
椿姫がそう言うと、フミカは少し気まずげに答えた。
「小鳥……ちゃん。今日が初めてなのに堂々としてるなって……」
「貴方も素晴らしい振る舞いでしたよ。まるで姫が城下町へ視察にいらしているかのようでした。」
「……本当?」
「勿論です!」
「やった」
心から嬉しく感じられて、フミカは無邪気に喜んだ。
細くて小さく、か弱い喜声だった。
「にしても、お二人とも素晴らしい役者で助かりました。反応は真反対。上々に、ウエ評判です。」
「……評判」
「はい! 妖ッター、ご覧になられますか?」
フミカは椿姫の手に握られた小型の妖怪パッドを見た。
────?????????
「??????」
「ああ、フミカさんのような方には少し刺激が強すぎてしましたね……」
フミカは宇宙を見た。
「これって、評判がすごく良いってこと?」
「ええ。特に先程のお二人の掛け合い……会話が話題になっております。とても素晴らしいという意味ですよ?」
「苦しんでない?」
「比喩です」
「いっそ殺せって……」
「比喩です」
目をぱちくりと瞬かせる。
……そんなに良いものだったのだろうか?
フミカは確かにあの瞬間。
半ば無理やりに冒険譚を読ませられた時からのファンである。
しかし詳しくは無い。
よって自信も足りない。
「監督なんてあんなに喜ばれて……」
「あれ喜んでるの……?」
フミカの呟きに、椿姫は頷いて「彼は
天邪鬼って、思ってることを言えない人のことだっけ。
「いやぁにしても驚いた。あんなにも高価な衣装を何の気も無しに動かせるとは。本当に王族なのではないのか。」
「この作品に倣ったまでですよ。」
めちゃくちゃ喧嘩してない?
「小鳥さん、最初は本当に嫌がっていたのですよ。」
「監督を?」
「役者を」
突然言われて、フミカは目を見開いた。
「えっ嘘だぁ」
そんなに渋っていたのなら、あまりにも堂に入りすぎている。
立ち振る舞いり口調や声色さえも。
貴族で国の右腕、といった感じなのに。
「先程なんて、やる気なさそうでしたのに。貴方を見て一肌脱いだ様子*1でした。彼女、貴方のことをかなり気にかけていらっしゃいましたもの。」
一肌脱ぐというのは、フミカの為にやる気を出したということだ。
緊張と不安を、和らげるために。
そう聞くと照れくさい気持ちが湧いてくる。
「正直、フミカさんに助けられたような想いです。一生懸命な方がいらっしゃると、こちらまで身が引き締まりますね。」
「そうかな。みんな元々キリッとしてると思うけど。」
「あらまあ。嬉しいです。」
そう言われて、フミカは嬉しそうに思いながら呟く。
「……私も、もっと頑張らなくっちゃ……」
決意がみなぎる。
浮かべた真剣な眼差し、集まった柔らかい眉間のシワ。
どことなく応援をしたくなるような女の子に、椿姫は告げるような穏やかさで言った。
「彼女には演技指導は何もしていません。それが良いのです。あの衣装を使いこなすのには、かなりの習練が必要なはずなのですけれどね。」
その声には言外ながら、羨望的な色が滲んでいる。
目線の先には、火の尾羽根かの如く揺らめきはためく衣装があった。
「彼女なら、きっとガネラだって……」
呟く声はきっと、フミカにも届いたのだろう。
何か意外そうな顔をしたフミカが口を開けようとする。
開けようとして、本人に阻まれた。
「だから楽しいです」
本心なのだろう。
「椿姫……」
「こんな分かり易い天才枠みたいな方がいらっしゃるなんて思いもよりませんでした。私が顔だけの役者であったのなら今頃心が朽ちた木のように粉々に砕け散っていたのでしょうね。ですがあそこまでガネラらしい性格の悪さと品と善良さを持ち合わせている逸材は初めて見ました。参考程度に三週間ほど密着をさせていただきたいくらいです。」
「今なんて言ったの?」
ビックリするくらいの早口だった。
こわい。
困惑して眉を下げるフミカに、椿姫は目を向ける。
「彼女のそんな善意に負ける訳には行きませんね。共に頑張りましょう。」
「……うん。…うん! 頑張ろう!」
フミカは頷く。
真摯で一生懸命な表情に、不安は無い。
そうやって歩き出したフミカを、椿姫は見送る。
そうして、椿姫はその青々しい緑の瞳を閉じた。
──負けてはいられない。
何につけても自身を奮い立たせるのは、役者としてのこの上ない誇りそのもの。
全くもって、美しさばかりでないのだ。
変え難い麗しい妖怪なだけではない。
同時に椿姫は、変え難い役者なのだ。
だからこそ、負けず嫌いであり続ける。
視線に気がついたように、小鳥は椿姫へ笑みを向けた。
ヤンデレや試し行動してくる子は好き?(備考程度の質問)
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嫌い
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好き
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デレや好意が分かり易ければ好き
-
裏でドギマギしまくってたら好き
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上二つがあるなら好き