某妖怪「超有名冒険譚の主人公が目の前にいるんやが」   作:ピコッピコ

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次の休み上げるって言ってたのに全然過ぎて一週間後だ!ギャハハ!!



5

 

 

 

朝である。

 

サンサンと輝く太陽と、白い雲が青空に浮かび、暖かな光が窓から差し込む、良き朝だ。

 

ガネラこと小鳥は、グイーと伸びをした。

布団から這い出て、畳む。

 

小鳥はカーテンを開けた。眩っ

 

着替えて、扉を開き、階段を降りて顔を洗って歯を磨く。

 

それがこの家に居着いてからのルーティンだった。

 

この家に居候させてもらってから、しばらく経つ。

具体的には一週間程。

 

シャッパリした顔で小鳥は鏡を見た。

己の顔が映る。

 

澄んでいると褒められる瞳と、何処か印象に残る容貌。今は黒い髪。

 

脱衣所から離れ、小鳥は朝の挨拶をした。

 

「おはようございます」

「あら、おはよう。小鳥ちゃん。今日も手伝ってくれるの?」

「ええ。居させてもらってますから。」

「ほんと良い子だわ〜」

 

ケータのお母さんの手伝いをし、料理を完成させる。

我ながら良い出来だ。

 

小鳥は料理が好きだった。

家にある食材でちょうど良い物を作るのが楽しい。

 

もう、全部任せてもらって良いくらいだった。

 

「おっ、今日も早起きだね。」

「おはようございます」

 

丁度ケータのお父さんが階段を降りてきた。

既にスーツを着込んでいる。

 

ケータは夏休みだが、彼は仕事なのだ。

 

ふと、小鳥は思った。

私がこの家に居れるのも、ケータの夏休みの間だけだろうな、と。

 

そう考えると寂しい。

小鳥はこの家が気に入っていた。

 

家に居着く妖怪的な感情ではない。

人間的な感情で、気に入ったのだ。

 

ガタガタ音が立った。

小鳥の友人の、ようやくの目覚めだ。

 

「おはよー……」

 

ふわ、と欠伸をして、ケータは席に着いた。

ケータは大概こうやって目覚める。

きっと、夏休みだからと油断して、夜更かしをしているのだろう。

 

それが可愛らしく思えて、小鳥は微笑んだ。

 

全員が揃った朝食が始まり、終わる。

 

みんなが散った後、小鳥は気になっていたことを聞いた。

 

「ウィスパーとジバニャンはどうなさったの?」

「……?」

 

そう、ケータのトモダチ妖怪である二人がいないのだ。

普段はケータの食事を横取りしたりするのに。

 

そう疑問に思い問いかけた答えは、ケータの不思議そうな顔だった。

 

「……なに?その人たち」

 

えっ

 

えぇーーーーーー!?

 

 

 

 

 

 

 

驚愕!ケータ忘却の事実〜トモダチ妖怪どころか妖怪ウォッチの存在まで!?〜

 

タイトルを付けるならこうだろう。

 

ケータは今朝方から、妖怪の存在を忘れてしまっていた。

妖怪の存在自体までもを、だ。

 

小鳥はビビった。

 

何せ、妖怪ウォッチの姿すらも見えない。

一応ケータの部屋の中をくまなく探させてもらった(嫌がられた)が、姿形も見えなかった。

 

ただ、探す中でジバニャンの好物であるチョコボー(定価80円)の姿は見つけたので、ウィスパーとジバニャンは小鳥の妄想だった説は払拭された。

ケータはチョコボーよりも、うんまい棒の方が好きだからだ。

 

小鳥は泣いた。

ヒィン!と泣いて、また変なことに巻き込まれてると気がついたので、もう一回泣いた。

めちゃくちゃ嫌。

 

小鳥は泣きながら別室に移って、一旦変化を解いた。

 

気色の悪い妖気が溢れ出して、容貌が変わる。

白いドレスがよく似合っていた。

 

ケータの部屋に入る。

 

「うーん、見えなさそうね」

 

小鳥ことガネラが目の前で手を振っても、ケータと目が合うことは無い。

 

「……なんか変な感じする……」

 

うーん?感じ取ってはいるようだ。

 

何故こうなったのか、ガネラには分からない。

ただ、もしかしたら、妖怪ウォッチが無くなったことが要因の一つなのではないだろうか。うん、たぶんそう。

 

よし!

 

ガネラは決意した。

 

妖怪ウォッチを探して、ケータの元に返してみせよう。

 

ケータには世話になっている。

恩を返す時だろう。

 

あと、これで恩売って漫画とかいっぱい買ってもらいたい。

行きたいところもあるし。

 

その為にも、まずはウィスパーとジバニャンを探さなくては。

 

ガネラはケータのほっぺをプニプニ弄んだ後、家を飛び出した。

 

素晴らしい朝日が体を照りつける。

 

あっつ!

ガネラは一旦家に引っ込んで、日傘を作ってもっかい飛び出した。

 

行く宛などない。

ただ、ウィスパーとジバニャン、そして妖怪ウォッチを探しに行くのである。

 

 

 

 

 

 

──そもそも妖怪が見当たらないな

 

小鳥ことガネラは思った。

 

いや、一切見かけない訳では無い。

 

たまにコチラと目が合うこともある……が……

 

まるで化け物を見たかのように逃げられてしまうのだ。

 

「困ったわね」

 

ガネラは困り果てて、()()()ジュースをチューと吸った。おいし〜

 

海辺の公園で、可愛いカフェがあるからか人が多い。

 

その様々な人間達を見てると、やはりあの時代──己が生きていた時代とは違うのだと痛感する。

何とも面白おかしい世界だ。

 

ああ、眠っててよかったなぁ。

ブウンと走る車など、まさか見られるとは。

 

そこまで考えて、ガネラは近くに座る人間の少女の頭に、何かが着いているのが見えた。

 

取ったげよ。

そう思って手を伸ばす──

 

強い妖気の気配を感じた。

 

自身よりも、うんと強い妖気だ。

 

「……」

 

気配の正体は、妖怪だった。

青い髪。着物を身につけ、美しい髪飾りをつけた、なんとも麗しい妖怪。

 

ガネラはそっと微笑んで、言った。

 

「何か御用かしら」

 

険しい顔の妖怪は、ガネラの言葉に何も返さない。

ただ1つ言えるのは、手に溜めた妖気を発散されたら死んでしまうということだ。

 

冷や汗たらり。

眉間にシワが寄ってはいけない。無礼をしてはいけないが、思わず……吐きそう……

 

「一体、何が目的なのでしょうか」

 

美しい妖怪は声まで美しい。

 

思わず聞き惚れてしまいそうだった。

妖怪が、敵意を持ってさえいなければ。

 

ガネラはスッと目を細め、

 

一心不乱に逃げ出した。

 

両手足が別の生き物かのように、踊るように上下する。

 

そして道路に躍り出て─

 

──跳ねられた

 

ドォン!と重く鈍い音を立て、体がぶつかる。

ガネラは「ヴッ」と小さいうめき声を上げ、躯体が弧を描くように湾曲した。

 

空を飛ぶように、跳ねる。

 

ドンとコンクリートの地面に身体がぶつかった。

 

「え!?」

 

強そうな妖怪が甲高い声で驚く。

 

一方、ガネラの脳内にはクラシックが流れ始めていた。クライマックス。

 

駆け足でやってきた妖怪はオロオロと右往左往した後、「大丈夫ですか……?」と声をかけてきた。

 

ガネラはのっそりと、大の字になって空を見た。清々しい晴天だ。

 

「現代文明、素晴らしいわ……!!」

「え、ええ……?」

 

 

それは人を乗せ、人の役に立ち、文明として在るのだろう。

物を運び、人を運ぶ。好きなものを好きなように食べられて、遠くにだって行ける。その為の道具。

 

ガネラは感動した。

 

そして妖怪はドン引きした。

 

妖怪は顔を引き攣らせながら、少しばかり距離を取り、ガネラにもう一度「大丈夫ですか?」と問いかけた。

 

「ええ、大丈夫よ。」

 

ガネラは結構大きな声でそう言うと、スクと立ち上がった。

 

頭をぶつけ、服は破れた。

ボロボロの姿は、まるで城から逃げ出したお姫様のようで……

 

改まってガネラを見た妖怪は、思わず、目をゆっくりと瞬いた。

 

きらめく御髪、澄んだ瞳。

 

ジッと見ているから、あ、今、見られている。

その事に妖怪が気づくと、ガネラはニコリと笑った。

 

「何か御用かしら」

「え、ああ……」

 

とはいえども、ガネラの発する妖気は()()だ。

 

警戒に値する。

だというのに、なんか……さっきの交通事故見てたらなんか……ねぇ……?

 

「その、不審者が居ると聞いたのです。……それで……」

「なるほど。巡回ですね?お疲れ様です。」

「あっはい。ありがとうございます……?」

 

妖怪は思った。

なんか礼儀正しいな……

 

ガネラは思った。

この妖怪、離れないな……怖すぎ……

 

ガネラは考える。

 

不審者、か。

見当たらなかったが、そんなやつがいたのか……それを聞きに私に訪ねたんだ〜へぇ〜

 

実際はガネラが不審者なのだが、ガネラは全く気づかなかった。

 

「失礼しましたわね。そんな時に、ご無礼を。」

「い、良いんです!私が急に声をかけてしまったので……」

「許してくださるの?ありがとう」

 

ガネラが口元に手を当てて、カラコロ笑った時、妖怪はふと正気に戻った。

 

「って、いやいや!」

 

頭を振って、妖怪は思い直す

 

「貴方!何者なんですか!?」

 

声でか

 

ガネラは引いた。

 

何者ってなに?妖怪社会は身分証明が必須になったのかな……

 

まあ、自己紹介くらいするか

 

「私は──」

 

ガネラと申します。

そう言おうとして、考え直した。

 

今の私、後ろ盾……ないんだよな

そう、無いのである。後ろ盾が。

 

旅をしていた頃は親友という、肉壁兼頭脳担当かつ戦闘要因であり、守ってくれた親友が居たが、今はどうだろう?

 

誰がいるかな……

 

妖気ウォッチの持ち主であり、妖怪のトモダチの多いケータ……がいるけど……

 

うーん。

 

確かにトモダチだが、彼はまだ小学生である。

流石に色々守ってもらうには、良心が痛む。だって守られる側じゃん……

 

ちなみにガネラは知らないが……

彼は過去、妖魔界と人間界両方を一遍に救っている。妖怪を指揮して。

ちなみに犯人はイカカモネ議長。

許すな。

 

守ってもらうこと自体は悪い選択では無さそうだ。ガネラは知らないが。

 

話を戻す。

 

ガネラは後ろ盾がない。

ので真名を話してしまうと、後々大変そうだ。呪いかけられたり。

問題起こした時に庇って貰えないし。

 

「失礼ながら、先に貴方のお名前を教えてくださる?」

「ああ、失礼しました。ふぶき姫です。」

 

ふぶき姫、Sランク妖怪である。

強大な冷気の力を操れる、強大な妖怪だ。

 

そんなことつゆ知らず、良い名前ね、と言って、ガネラは悩んだ。

 

悩んだ結果……

 

「ガネピッピです」

「ガッ、ガネピッピ……?」

 

ガネラは満足して、頷いた。

奇しくも、妖怪の疑問の声に答えるような形になった。

 

ふぶき姫は思った。

聞いたことも無い妖怪の名だ…と。

 

普通、妖怪は名前を共有している。

ぶっちゃけてしまえば、種族的な名前しかないのだ。

 

ニックネームがある時もある。

 

だが基本。一個人として妖怪の名を表すことは無い。

 

ふぶき姫も他に何体かいる。

だから、ふぶき姫〜とデカい声で呼ぶとめちゃくちゃ振り返られる可能性があったり

 

余程強く重要な妖怪─エンマ大王であったりすると話は別だ。

 

だが、大概、妖怪は人間っぽい()()を持たない。

 

ふぶき姫は思った。

 

ガネピッピという妖怪を聞いたことがないな……と。

 

因みにガネラは()()だ。

理由はあるが長いので省略する。

 

「何者かと仰ったでしょう?」

 

瞳を覗き込むように微笑まれたと、ふぶき姫は感じた。

 

実際は近づいてきてすらいないのに、まるで、何処までも深くを覗かれたような、瞳から入り込まれそうになったような気分。

 

「今、探し物をしているの。」

「いったい何を?」

「時計」

 

存外普通の()()を言われて、ふぶき姫は目をパチクリさせて、首を傾げる。

 

それを見て、また笑まれて、ふぶき姫は「この妖怪はよく笑う」と思った。

 

「白くて、時を刻まず、妖怪の見えるようになる時計です。」

「妖怪が見えるようになる、時計?」

「そう。もちろん、人間にね。」

 

聞いたことすらない。

 

人間が妖怪を見ることが出来るようになる事ですら特異なのに、更に時計。

 

妄言か。

だけども、そう断定するには堂々とし過ぎている。

あまりにも、事実然とし過ぎている。

 

「それを見つけて、貴方はどうするおつもりですか。」

 

ふぶき姫は、また眼差しをキッとした。

 

人間が妖怪を見れても、良い事など無い。

 

少し前まで妖魔界のトップだったイカカモネ議長は、人間と妖怪を完全に断絶することを目標としていた。

その実、全てを掌握しようとしていたらしいが。

 

彼が退治されてからも、その考えは残っている。

結構いるのだ。そういう考えの妖怪。

 

……ん?退治?

 

……誰に?

 

深みにハマりそうな思考が表れ出て、ふぶき姫は目を回した。

 

誰かわからない。

だけど、退治されたことは知っているのだ。

 

考えても、モヤがかかったよう。

 

「回収するわ。必要だから」

 

その言葉に、ふぶき姫は、ハッと思考を戻した。言葉が霧散する。

 

「必要?人間に妖怪が見えて、いったい何があると言うのでしょうか。」

「知りません」

 

何ともアバウトな発言だ。

 

感情が読めぬから、真意が分からない。

隠した何かがあるような気がしてしまう。

 

「でも必要ですわ。誰にとってもね。」

 

人差し指をピンと立てて、にっこり笑う。

 

誰にとっても?

 

……不思議だ。

そんなことは無いはずなのに、そんな気がしてくる。

 

こんな気持ち悪すぎる妖気を漂わせながら、言葉は清涼で。

 

つまるところ、善良なことを言われている、と思えた。

 

その時計を使って、妖怪と人間を繋げるのだろうか。

そうやって妖魔界を支える、何か大きな事を成そうとしているのだろうか。

 

(ケータのトモダチ妖怪の)誰にとってもね。である。

 

ちょっとすれ違っていた。

 

「貴方も、人が好きでしょう?」

「え……?」

 

見透かすように言われた。

ふぶき姫は言葉に詰まる。

 

別に、()()()()という妖怪は人を好きな妖怪ではない。

古典妖怪のから傘おばけみたいに、子どもに好意的であったりとか、しないのだ。

 

でも、()()()()()()()としてはどうだろう。

 

ガネラと会話するふぶき姫は。

このふぶき姫は、どうだろう。

 

あまり人と関わってはいないはずなのに、誰か、大切な人がいたような……

 

自分よりも背が高いけれど、齢は小さい。

無邪気さもあって、優しくて、割とシビアで辛辣。

 

そんなチョー()()な子どもの、()()が……

 

ケータである。

ふぶき姫は忘れているが。

 

「存じ上げないなら、私はもう行くわ。」

「え、ああ……はい。」

 

フワフワした雰囲気のふぶき姫に言い、ガネラはその場を離れた。

 

ガネラは思った。

 

なんか分かんないけど何とかなったぞ!ごまかせた!

I WIN!なんで誤魔化せたか、明日までに考えていてください。

 

「お待ちください!」

 

ガネラは怯えた。

全然追いかけてきたからだ。

 

「私にも、手伝わせてください!」

 

ええ……?なんでぇ……?

 

ガネラは考えた。

 

断る。……それも良いだろう。

だって怖いし、ふぶき姫。

 

でも……二人で探すのか……

 

うーん、便利だなぁ

 

悩んで、悩んで

 

「それは貴方の意思?」

「……は、はい!私の意思です!」

「貴方が自分で、私を手伝いたいと思ってくださったの?」

「ええ、手伝いたいと思いました。」

 

この感じ……

問題起きても自己責任に出来そうだな。

 

ガネラは決めた。

手伝ってもらおう。

 

強そうだし、妖怪への牽制になる。

 

「貴方が他の妖怪に聞き込みしてください。」

「はっはい!」

 

この妖怪、ちょっと善良そうだから罪悪感あるな。

 

その罪悪感を無視して、ガネラは引き連れて進んだ。ふぶき姫を。

 

 




気に食わなくなると書き直すから覚悟しといてくれよな
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