某妖怪「超有名冒険譚の主人公が目の前にいるんやが」   作:ピコッピコ

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今回もガネラの冒険の話があるよ〜




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「ふふ、逃げられるわね。まるで蜘蛛の子を散らすように……」

「ガ、ガネピッピさん……」

 

ガネピッピさんことガネラは思った。

 

ふぶき姫とやらの妖気の所為で、聞き込み出来ないな……

お前の妖気の所為だぞ。

 

ふぶき姫は思った。

 

この妖怪、なんで妖気を抑えないんだろう……と。

 

ふぶき姫とガネラは聞き込みをしていた。

場所は変わらず、さくら中央シティ。

 

二体は表通りから裏路地までくまなく聞き込みに回っていた。

 

だが、妖怪は一切合切逃げていく。

どう足掻いても聞き込みは出来なかった。

 

ガネラの妖気におっかねえと逃げたり、隠れたりされているのだ。

 

ガネラは()()()チョコボーをツマミながら、ベンチに座った。

 

「まぁ、そもそも。妖怪の見える時計という時点で情報の勝率は低いのだし、あまり聞き込みをしなくとも良いのかもしれないわね。」

「諦めるのなら、もっと早くに諦めて欲しかったです……」

 

ふぶき姫は呆れたように溜息を吐いて、ガネラの隣に座った。

 

ガネラに冷たい妖気が触れた。ふぶき姫の強い冷気だ。

 

目に、青色の頭が目に入る。自身よりも背が低いように思われた。

 

髪を高く留めている白銀の髪留めが、目にとまる。

 

「良い髪留めね。」

「ありがとうございます。」

 

突然褒められて、ふぶき姫は少しばかり呆気に取られたように感謝を述べた。

 

その慣れた様子から、褒めらる事が多いのだろうことは見て取れる。

 

事実、その髪留めは美しかった。

冬の空のように青い髪に対して、雪のような髪留めはよく映える。

 

「とても似合っています。センスが良いのね。」

 

ガネラの言葉を聞いて、ふぶき姫は疑問に思った。

 

ふぶき姫は、元はゆきおんなという妖怪だった。

強大な冷気の力を操作できないBランク妖怪で、進化すると、ふぶき姫となる。

 

進化する条件は、()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

これは妖魔界でも結構有名な話だ。

 

この妖怪は、世間知らずなのだろうか。

 

「そうだ!」

「?」

 

明るい弾むような声に、ふぶき姫は首を傾げた。

 

ガネラは真っ直ぐに、ふぶき姫を見た。

 

「これは私の話になってしまうのだけれど。」

 

涼やかな風が吹いた。

夏のジメリケを奪い取るような、そんな風が、髪を揺らす。

 

そうして、語り出した。

 

世にも恐ろしい妖気を身にまとい、澄んだ瞳を持った、世間知らずで、不思議な妖怪は、こう語り出した──

 

 

 

 

 

 

 

私が若い頃……と言っても、相当歳を重ねていたわね。

 

私と友人は旅の道すがら、とある国に寄りました。

 

華やかな妖怪の国よ。

名前は忘れちゃった。

 

建物は全て、趣向を凝らした芸術的な物だったね。

 

壁は赤く塗られ、所々に彫刻が施されている。

屋根は黒く、それでいて不思議な形をしていました。三角屋根ではなく、塔のような形。

 

道には見たことも無い珍しく美しい花々が植えられ、何処も掃除したばかりのようにキレイ。ゴミ一つありません。

 

また、窓が凄かったの。

色とりどりに輝いていたのよ。

今で言う、ステンドグラスね。

 

当時はステンドグラスなんて、希少な物だったから、私たちはとても驚いたのを覚えてる。

 

その国は一年中気候が穏やかで、ずっと春のようなカラッと乾き、暖かい国でしたから、そんなことが出来たのでしょうね。

 

また人々は明るく、様々な人がいました。

それでいて、大変親切。

 

私たちは、すぐ様この国を気に入りました。

小さいながらも交易が充実していて、潤った国だったから、旅の補給だって容易だったの。

 

その国の妖怪達は楽しいことが好きでね。

 

妖怪に、「楽しい事をしてくれ。そうすればお代はタダだ!」と言われて、私は仕方なく、友人と共に楽しい事をしたのです。

 

「何をしたのですか?」

 

マジックよ。

 

私はマジックをした事で、その国の王室にお呼ばれしました。

 

「王室に!?」

 

ええ、王室に。

 

私のマジックが気になった王族が、私を招いたの。

 

宮は、それはそれは華やかだったわ。

 

天窓は完全に透明で、そこから入る月明かりで、広い部屋全体が照らされていたの。

そうやって見える部屋は、彫刻、絵、絨毯。全てが煌びやかだったわ。

 

そこで私たちは王族にマジックを披露しました。

いろいろしたわ……ゾウを呼び出したりね。

 

もちろん、妖力は全く使いませんでした。

 

「なら、どうやって?」

 

布を使ったの。

布に影を映す……いわゆる、影絵ね。

 

それをしたの。

昔から影絵は人気だったけれど、その国では未だ普及していなかった。

 

だから、その国の人達は「本当にある」のだと思い込んでしまったのね。

 

その国の一人娘、王女がはしゃいで、布の裏を見たんです。

 

そしたらね、ふふ、そしたら……

 

「……そしたら?」

 

死刑になりました。

 

「えっ!?」

 

驚くでしょう?

 

その国の王と王妃は、大層娘を溺愛されていらして、娘のワガママは何でも聞いてあげていたの。

 

その娘が「ゾウいないじゃん!嘘つき!死刑だ!」と言えば……もう分かるでしょう?

 

「で、でも、そんなの、その妖怪達を倒してしまえば……」

 

貴方結構、力強い考え方なのね。

 

出来たら良いのだけど、私と友人は、ただの旅人ですから。

 

国家転覆なんて出来ませんわ。

 

「なら、どうしたんですか!?」

 

ふふ、それを今から話すのよ。

 

まず、私たちは王に懇願しました。

 

最初に我が友が命乞いしたわ。

その時のことを、私は一言一句喋れます。

 

貴様ら王族がそのような愚行を起こすから、世の中は良くならない!見ろ!貴様の娘を!よく肥え脂肪で目が見えていない!次代を担う王女が──

 

「い、命乞いなんですよね……!?」

 

驚きよね。

当然、友人は牢屋にぶち込まれました。ボコボコにされて。

 

「ええ……」

 

今度は私の番。

 

とは言えども。

私はあまり命乞いをした事がありませんから、上手く出来なくてね。

 

王女の願いを聞く代わりに、解放して貰えることになった。

 

「結構上手くいってますね……」

 

ありがとう。

 

王女はこう願ったわ。

 

我が友の身につける、美しい首飾りが欲しい!とね。

 

私は焦ったわ。

だって、それは出来ないの。

 

「何故ですか?」

 

その首飾りは、世界に唯一。

 

我が友の婚約者が、丹精込めて作り上げた首飾りなのですから。

とてもじゃないけど、渡せない。

 

でも、王女の気持ちはよく分かるわ。

 

その首飾りは()()で、ただ色とりどりに煌めき、明かりで透き通る()が、ただ辺りに輝く。

 

そんな首飾りです。

 

そして、それは我が友の婚約者のみが作ることが出来たの。

 

だから、私は「分かった」と言い。

三日頂きました。

 

そうして、私達は首飾りを失うことなく国を出たのよ。

 

おしまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ!?どういうことですか!?」

 

ふぶき姫は大きな声を出した。

余程疑問だったらしい。

 

「ふふ、何故だと思う?」

 

ガネラはニコニコ笑って言った。

 

「え?」

「私達はどうやって、「我が友の首飾りを失うことなく、国を出たのでしょう」?」

 

イタズラっぽいガネラの笑みに、ふぶき姫はパチクリ、瞬きをする。

 

クイズだ。

そう悟り、ふぶき姫は頬に人差し指を触れさせながら悩んだ。

 

「影絵で、騙した?」

「一体どうやって?」

「えーっと、布の後ろに首飾りを置いたことにして、「そこにあるから取ってください」って言って……」

「それでは自ずとバレてしまうでしょうね。」

 

うーん

 

「なら……牢屋から我が友さんを連れ出して逃げた?」

「牢屋の周りには兵が常駐していたわ。当然、私などでは突破できないでしょうね。」

 

ぐるぐる思考を回転させても、やっぱり分からない。

 

「そもそも!情報が少なすぎます!」

「なら、聞いてくだされば何でも答えますわ」

 

そう言われ、ふぶき姫は思考を数巡させると、すぐさま質問を始めた。

 

「宮は何処にあったんですか?」

「宮は山奥よ。あの国は山を尊ぶ慣習があってね。国の中でも、一際大きな山に宮殿を置いていたの。」

「なるほど……」

「だから、山の中では彼らに分があるわ。彼らは山に関しては、旅人の私達よりも詳しかった。」

「なら、逃げ出せても山の中で捕まってしまう……と?」

「ええ。きっと、そうでしょうね。」

 

ふぶき姫は考える。

 

頭の中で、その山が築き上げられた。

 

大きく、雄大な山だ。

尊ぶと言っているのだから、森は鬱蒼としているのだろう。

 

その中でなら、確かに、国の妖怪達の方がうんと動くのも速いのも頷ける。

 

きっと、ガネラ達が自分だけに分かる目印があったとしても、極めて難しいだろう。

 

「……でも、抜け出したのですよね。」

「何故そう思うの?」

「え?だって、首飾りを渡さずに……」

「私と我が友は、あの王と王妃と和解して、快く、出国を見守ってくだったわ。」

「首飾りを渡さずに?」

「ええ、渡さずに。」

 

まるきり有り得ないことを、言われたような気がする。

 

じっとり目を細めると、ふぶき姫は、「これは嘘なんじゃないだろうか」と思い始めた。

 

そもそも作り話だ。たぶん。

だから辻褄は合ってなくて、答えはめちゃくちゃなんだろう。

 

目を合わせると、ガネラはニコリと笑った。

 

「事実は小説よりも奇なり、でしてよ。」

 

事実は小説よりも奇なり。

 

作り話なんかより、事実の方が突飛なのはよくあることだ。

 

妖怪なんて人間にとっては作り話。

だから、妖怪であるふぶき姫はよく理解出来る。

 

「騙したのは確かなんですよね?」

「ええ、騙しました。完璧に。()()()()()からね。」

 

やけに強調して言われた。

口が上手いのが重要なのだろう。

 

口車に乗せて何とかしたのか?

なら、何でもアリじゃないか。

 

「分かりません!」

「あらあら」

 

ふぶき姫は思い切り良く、音を上げた。

 

ガネラはニコニコ笑って、ふぶき姫を見る。

 

「めちゃくちゃでも文句は言わないでちょうだいね。」

「…………」

「約束は出来なさそうね。」

 

あははと軽やかに笑って、ガネラはネタばらしをする。

 

「あの国は、国中の窓がステンドグラスだったと言ったでしょう?」

「はい」

「あれを砕いて、影絵の布の上に置き、天窓の上に乗せたの。」

「……」

「それであの首飾り特有の、()()を演出しました。それで私は「これが本物ですわ」と言って、王女が気に入ったのよ。」

 

……え!終わり!?

 

ふぶき姫は呆気に取られて、次に頬を膨らませた。

 

何とも呆気ない終わりだ。

それだけでなく、何と言うか……

 

いや!めちゃくちゃじゃない!?

 

ふぶき姫の姿を見て、ガネラは口に手を当て、また笑い声を上げた。ふふふ。

 

「首飾りを渡してないじゃないですか!」

「渡すなどとは一言も言っていないわ」

「でも、そんな光だけで首飾りだと騙せるわけがありません!」

 

首飾りは色とりどりにキラキラする。

ステンドグラスも同じだが、やはり、首飾りだと分かる形がない限り……

 

「私は言った筈よ。首飾りは()()だとね。」

 

──その首飾りは()()で、ただ色とりどりに煌めき、明かりで透き通る()が、ただ辺りに輝く。

 

「た、確かに言ってました!」

「首飾りは丸っきり透明だったの。形も姿も無く、ただ美しい色を反射する。とある妖怪の一族だけが作ることの出来る、特別な首飾り。」

 

なら、何故、王女はそれを首飾りと評したのか。

 

気になったのを見透かしたように、ガネラは話す。

 

「首周りが光ってたら、首飾りだと思うものよ。」

 

そう言われても、ふぶき姫はあまり納得出来なかった。

 

「でも、首飾りでは無いと直ぐに分かってしまうのでは無いのでしょうか。天窓は月明かりが入る。ならば、月が動けば必然的に、光の形も変わります。」

 

天窓から入るのは自然光。

 

空に浮かぶ月を操作するのは、高名な妖怪でも困難だ。

強い妖怪に文句言われるから。

 

だから、いくら首飾りと同じ見た目に輝いても姿は変わってしまうだろう。

 

その場で早急に国を離れるなら、まだしも……ガネラは王と王妃に見送られたのだと言う。

 

「重要なのは、それを王女が気に入るかどうかよ。」

 

気に入るかどうか、だと?

 

ふぶき姫は今一度ピンと来ず、また首を傾げる。

 

「別に王女は首飾りに思い入れがある訳では無いわ。そんな中で、同じような見た目の光があれば……寧ろ、もっと大きく光る物があれば、そちらの方を気に入るの。」

「ええ……」

 

随分と移り気でワガママな王女だ。

 

ふぶき姫は理解して、その会ったこともない王女に目を向けた。

 

きっと王政には向いていないだろうな……

 

「気に入って頂けたかしら」

 

ふぶき姫はコクリ頷いた。

 

気づけば、日の位置も変わっている。

長い間聞き入っていたのだ。

 

ふぶき姫には、この妖怪が面白くて仕方なかった。

こんな変な話を聞かせてくれるなんて、思ってもみなかったのだ。

 

そう思って、思い出す。

 

「それが私の髪飾りと、何か関係があるのでしょうか?」

 

聞く限り、話の中に出てきたのは首飾り一つ。

 

頭上に白く、美しく存在する白銀の髪飾りと一体何が関係するのだろう。

 

至極不思議そうに、キョトンとする顔が可愛らしくて、ガネラは笑った。

 

ガネラは突然、目の前に握りこぶしを差し出した。

 

「私、その時に贈り物を頂いたの。」

「贈り物、ですか?」

「そう、贈り物。貴方も気に入ってくださるといいのだけれど。」

 

そう言って軽やかに手を開く。

 

ふぶき姫は驚いた。

 

そこには、白と青の、艶やかで、それはそれは美麗なカンザシが有った。

 

「これは……!」

 

それにふぶき姫は見覚えがあった。

 

昔、本で読んだ伝説の代物。

 

はるか昔に栄えていた栄華を極めた国にあったとされる、ただ一人の職人か仕上げたという、あの。

 

まだ、ゆきおんなだった頃。

心から憧れた逸品だ。

 

「な、何故貴方がこれを!?」

「頂いたのよ。」

 

それは知っています!

 

そう叫びそうになって、ふぶき姫は声が出ない。

ワナワナ口を震わせ、そして、ゴクリと息をのみ、見蕩れる。

 

本で見たより、ずっとずっと、ずっと、ずっっと……!

 

「欲しくなっちゃった?」

「えっ!?い、いやいやそんな!」

「宜しければ差し上げますわ」

「え!?え!?」

 

ふぶき姫は錯乱した。

何を考えれば良いのか分からなくなったのだ。

 

何故それをこの妖怪が持っているのかとか、そんな貴重な物をすんなり!?とか。

 

色々な考えが頭を巡る。

 

「私の目的が達成されましたら、どうぞ、その髪に飾ってちょうだい。私が持っていたって腐らせるだけだわ。」

「は、はわわ」

 

ガネラはカンザシを、ふぶき姫の頭に当てた。

 

うーん、とても良く似合う。

付けたらまた別の妖怪に進化しそうだが、まあ良いだろう。

 

「だから、私に尽くして下さらない?」

 

美しいお嬢さん

 

透明無色でありながら柔らかな色を含んだ、冬国の春みたいな声で、ガネラはそういった。

 

キュウと、喉奥で声がする。

 

その様があまりにも、()()()()()()()()()()()()()()()

 

ふぶき姫の好きな某超有名冒険譚の中で、主人公は男装をして執事として貴族の家に潜入する。

 

その可憐な手練手管の数々や、蠱惑的なまでのカッコ良さに、ふぶき姫は大分夢見ていた。

 

話が上手くて、笑顔が素敵で、ちょっと色っぽい。

 

そのまんま!

あ!これもうそのまんま!やば!!

 

ふぶき姫は顔を真っ赤にして手を取った。

 

 

 

 

 

ガネラは思った。

 

やっぱこの子、コレで釣れたな。

 

ガネラ的にはただのカンザシであるソレに物語の付加価値を付けてプレゼントしたら、めちゃくちゃ手伝ってくれそうだなって思っていたのだ。

クソ野郎か?長生きの損。

 

事実、手伝いをめちゃくちゃしてくれるだろうし、もっと他の感情も釣れた。

 

ガネラはこうして、一人の助っ人(強力)を得たのである。

 

 

 






因みに、ガネピッピが語った話は伝記?冒険譚?に記載されてます。

一時しか売られてなくて(相当昔)、持っている妖怪が少ないので、知ってる妖怪は殆ど居ません。

でも、めちゃくちゃ権力あると持ってます。王様とか大将とか。

次の冒険譚も楽しみにしててくれよな!
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