某妖怪「超有名冒険譚の主人公が目の前にいるんやが」 作:ピコッピコ
「カラカラカラ!お前人間なのに速いんじゃな〜!」
「カカトが高いから走りにくかったでしょう。それで、なんていうの?この靴。」
「妖怪が見える人間に、まだ出会えるとはなぁ……」
ケテ……タスケテ……
ガネラは妖怪に囲まれていた。
上から、から傘おばけ、にんぎょ、けうけげん、である。
他にも、くだんという妖怪と、こえんらという妖怪がいたのだが……
足が遅くて間に合っていない。
こえんらは煙の妖怪だし、くだんは足のリーチが短め。
そろそろ来るだろう。たぶん。
「お主、どこから来たんじゃ?」
「桜ニュータウンよ」
「にゅー……?」
ガネラの言葉に、妖怪は揃って首を傾げた。
おや、と思う。
そもそも、ニュータウンという言葉自体に馴染みが無さそうだ。
嫌な予感がする。
旅をした玄人的な直感が言っていた。
「失礼だけども、今、何年かしら。」
妖怪達は顔を見合わせて、言う。
……え!?60年前!?
ガネラは心の中で、グウと唇を噛んで唸った。
またかよ!こういうの!
「それがどうかしたの?」
「いいえ、特に。ただ気になっただけですわ」
ガネラは旅をしていた頃、同じような目にあったことがある。
過去に飛ばされたことがあるのだ。
その経験上、未来から来たということは言わない方が良いと知っていた。
実験体にされかけるからだ。
だから、ガネラは隠す。
「変わった妖怪に話しかけた後に、飛ばされてしまったの。」
「その妖怪は、うんがいきょうだな。人を遠くまで飛ばせる妖怪だ。」
早速、有益な情報が出てきた。
うんがいきょうとは、ワープをさせることが出来る妖怪である。
うんがいきょう同士が独自のネットワークで繋がっており、それによって何処まで遠くても行くことが出来るのだ。
具体的には、日本からアメリカ。
そして、
うんがい三面鏡という妖怪だ。
進化前は場所の移動しか出来なかった。
が、うんがい三面鏡は
ガネラを過去へ飛ばしたのは、うんがい三面鏡の方。
遠くから飛ばされたと言ってしまったがために、こんなすれ違いが起きている。
「その妖怪、何処にいる?」
「うーん、知らんなぁ。ワシが最後見たのは三ヶ月くらい前じゃ」
「私も知らないわ」
「知らんな」
誰も知らないようだった。
少しばかり残念ではあるが、まぁ、そんなもんだろう。
当面の目標は、うんがいきょうを捕まえる事だな。よし!
「そもそも、うんがいきょうが勝手に人を飛ばすとは思えん。何かしたのか?」
「寝てる時に声をかけてしまったの」
「寝ぼけちゃってたのね……」
同情しているような声色と目線を貰って、ガネラはニッコリと笑った。
「そうだ。困ってるならケイゾウを訪ねたら?」
「……ケイゾウ?」
人の名前だろうか。
訊ね返すガネラに、にんぎょはニコニコ笑う。
「人間のコドモよ!」
「良い子なんじゃ」
「手先も器用でな。」
めいめい楽しそうにケイゾウの話を始めた。聞き取れない。
「そのケイゾウとやらは、お友達なのね。」
気軽に放った言葉に、妖怪達が固まる。
あ、機嫌損ねた。
ガネラの背に冷や汗が伝う。
「……そうね……友達……」
「ワシらはなりたいんじゃがなぁ…」
「うぅむ……」
ん?違いそうだな。
あからさまに気落ちした様子だ。
何があったのかは知らないが、一悶着あったぽい。
「そういうこともあるでしょうね。」
触れないでおこう。
ガネラは無視して、言葉を続ける。
「そのケイゾウとやらにお会いしたいわ。どこにいるの?」
「ケマモト村に居るぞ。探せばすぐ見つかるじゃろ」
さっき駅員に教わった人里だ。
「道は分かる?私たちが連れて行ってあげましょうか?」
断った。
怖いからあまり一緒にいたくない。
ガネラと妖怪達は別れた。
妖怪達はもちろん、反対方向へ行く。
しばらく歩くと、ケマモト村に着いた。
昔懐かしいといった雰囲気──ガネラからしたら真新しいが──の村だ。
現代とはだいぶ違う。
60年前というのは本当だったんだ。
ガネラは、ぼんやり村を見渡して村の中を進む。
あ、女の子がいる。
おさげと、赤いショルダーみたいな服が可愛らしい。
「ねえ、そこの君。」
「なん……」
女の子は驚いた顔でガネラを見る。
白いドレスと、現代的な容貌──具体的には、輝く髪と艶やかな肌が田舎のケマモト村には居ないタイプだったからだ。
ト、都会の人だァ……!
都会の人ことガネラは恭しく瞬きをして、ニッコリと笑って見せた。
「ケイゾウ、というコドモを探しているの。」
「ケ、ケイゾウ!?ケイゾウがどうしたんだべ!?」
「別に、とって食べちゃおうなんて思ってないわ。ちょっと困ってしまっていてね。私を手伝って欲しいの。」
困った顔をしていた女の子は、ガネラの言葉に眉間のシワを緩めた。
親近感が湧いたのだろう。
「ケイゾウなら秘密基地だべ。連れて行ってやろうか?」
「あら、助かるわ。」
手招きに付いていく。
「貴方、お名前は?」
「ユキコ」
「良い名前ね」
田んぼを過ぎていくと、森のような場所に入った。
そこを少し進むと、小屋のような物を見つけられる。
そしてガネラは──
「トウ!!」
「キャー!」
──謎の少年に棒で殴られた。
なんかジュッて音を立てて、痛みがやってくる。
のたうち回りそうになって、ガネラはグっと堪えた。
「世界はトモダチ!みんな守るぜ!」
じゃあ私も守って……
ガネラが困惑しながら立ち上がろうとする時、女の子──ユキコの大きな声が聞こえた。
「何してるべ、ケイゾウ!」
「離れろユキコ!コイツなんか嫌な予感がする!」
「そんなん勘だべ!」
勘で叩かれたんだ……
キッと睨みつけてくる謎の少年ことケイゾウの、失礼な発言。
ガネラはちょっと悲しかった。
多少妖気が漏れることもあるが……
ガネラの
だから、ケイゾウの嫌な予感というのは、完全に勘である。
まあ、ただ。
ガネラは長生きだからこそ、悪い妖怪でもあるので、判断は正しいのかもしれない。
「バカ!その人は、困ってるからケイゾウに助けを求めに来たんだべ!」
「……えっ」
ケイゾウは、目を捲りガネラを見る。
立ち上がって、胸に手を当てる。
「私の名は小鳥。道すがら会った貴方のお知り合いに、困っているなら訪ねろと言われ、貴方を訪ねに来ました。貴方がケイゾウでしょう?」
ガネラは礼儀に則って、まず自分の名を言った。
問いかけに、ケイゾウが肯定する。
「私は六十年後から来ました。」
「ろ、六十年後!?」
「うそ……!」
ガネラは説明した。
できる限り分かりやすく、不思議に思わないように。
「だから、私、困ってしまって……知り合いもいないから、一人で……」
ガネラが眉を下げて極力悲しそうにすると、二人は慌てた。
分かりやすく哀れに振舞っている罪悪感が産まれる。
「わ、悪かった。そんな風に困ってるとは思ってなかったんだ。」
「まあ、なら手伝ってくださるのね。」
「ああ、困ってるやつを見過ごしてはおけない!」
「わ、私も手伝うべ!」
やった〜!
妖怪が見える人間の協力者だ!
ガネラはニッコリと微笑んで「ありがとう」と言った。
「だが」
ケイゾウが続ける。
最近、妙な輩がいるらしい。
怪魔を剥がすのは容易ではなく、今のところ、ケイゾウの持つバットでしか剥がせないのだそうだ。
「だから、お前を元の時代に返すのも、怪魔をやっつけるのと並行してやることになる。それでもいいか?」
「もちろんですわ。」
ガネラは思った。
ケイゾウ、私を手伝ってる場合じゃなくない?
怪魔ってなに?強い?
強いなら私、関わりたくないのだけど。
「……ただ、今後はあまり、こっちに近づくな。」
「あら、どうして?」
「お前は怪しいからだ。」
「ちょっとケイゾウ…!確かに怪しいけど……!」
あ、ユキコも同じこと思ってたんだ。
「嘘を吐いてないのは、何となく分かる。うんがいきょう探しは俺の方でもしておく。分かったか?」
「了承しました。」
こうして、ガネラの六十年前生活が始まった。
「そういえば、寝泊まりはどうするべ」
………あっ
次回!ガネラ野宿する!
お楽しみに!
次回は近いうちにや