金田一少年と神津少女の事件簿   作:GZL

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File5

はじめ、綺世、剣持は衝撃を受けた表情のまま…顔を硬直させていた。

彼らが通う旧校舎の裏には大きなイチョウの木があり、そこには『卍』が刻まれいる。誰がいつ刻んだかは分からないが、昔…このイチョウの木に受験失敗を悔やんで、自殺した生徒がいたのだ。そしていつしか、この木の前を通ると、その首吊り死体が見える…という、どこの学校でもありそうな怪談、通称【首吊り大イチョウ】が七不思議の1つとして語られているのだ。

そのイチョウの木の横…そこに、首を吊られた尾ノ上の死体がぶら下がっていた。

ただ首を吊られたならまだしも、頭は陥没し…目は半開き、鼻や口からは涙、涎、血が流れ、枯れ切っていた。その姿は酷く、綺世は吐き気を起こして、逃げ帰ってしまう程だった。

 

「ひでえことを…」

 

剣持は思わずこう呟いた。

すぐに尾ノ上の死体は降ろされ、死因などの見聞が始まる。

それから分かったことは、殺されたのははじめたちが旧校舎を出てすぐ、死因は鈍器で何度も頭を殴られたことによる脳挫傷、そしてすぐに吊るされたということだった。

 

「警部、遺体にこんなものが…!」

 

鑑識が剣持に1つの鍵を差し出してきた。

これが尾ノ上の遺体に握られていたらしい。それを見た立花が驚愕の表情を見せた。

 

「それは…!?」

 

「あんた…知ってるのか?」

 

「知ってるも何も…開かずの生物室の鍵だ!ずっと前に無くなったはずなのにどうして!?」

 

突然の報告だったが、はじめは静かに彼が吊るされた木を見詰めていた。

そこに漸く吐き気が収まった綺世が戻ってきて、はじめに話しかける。

 

「どうしたの?そんな見詰めて…」

 

「…妙だとは思わないか?」

 

「何が?」

 

「尾ノ上も間違いなく、七不思議に見立てて殺されたのは間違いない。だけど、彼が吊るされたイチョウの木は隣だ!これはただの木でしかない」

 

それに気付いた綺世はハッとした。

しかし、後ろで聞いていた剣持は「バカバカしい」と言った。

 

「吊るされたのは暗い夕刻だ。犯人がただ間違えただけだろ」

 

「本当に、そうだろうか?」

 

はじめはそこに関しては懐疑的だった。

最初の桜樹るい子の開かずの生物室での殺人劇はかなりのものだったのに、次の尾ノ上の遺体を吊るすときに些細なミスをするとは到底思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから先は急転直下だった。

桜樹、尾ノ上と立て続けに殺人が起きてしまったことで、はじめたちの学校の校長は脅迫状に従って、旧校舎の取り壊しを中止にした。これでもう殺人は起きない…と信じたいはじめたちだが、そんな呑気にもしていられない。

はじめは屋上でいつものように考え事をしている。

そこに剣持を連れて綺世がやって来た。

 

「はじめちゃん、剣持警部が話あるって」

 

「ん?暇だな、警察も…。俺なんか頼って…」

 

「うるせえ!折角情報持って来てやったのに、このまま帰っていいのか?」

 

「はいはい、それで?」

 

生意気なはじめに拳骨の1発で落としたい剣持だったが、今は争っている場合ではない。

ゴホンと息を吐き、懐から手帳を取り出す。

 

「今回の容疑者の中で、立花についてだけ妙なことが分かった」

 

「立花さん?彼がどうしたんだ?」

 

「あいつは8年前にこの学校にやって来たんだが、その前の履歴書は全てデタラメだった。要するに…奴がどうして身元を隠してまでここに来たのかは、全くの不明というわけだ。それと…」

 

剣持は一瞬、言葉を曇らせた。

 

「お前らも気を付けろ」

 

「は?」

 

「実はな、この学園で青山ちひろという女子生徒が10年前に行方不明になっとるんだ」

 

「ああ、的場先生から聞いた。…大丈夫だよ?俺たちがやられると思ってるのか?」

 

「万が一の時のために言ってるんだ!これ以上犠牲者を出すわけにはいかん」

 

「…分かってる。ありがとう、オッサン」

 

剣持から貰った情報を貰い、はじめと綺世は屋上から降りる。

その後ろで剣持は静かに彼らを見詰めているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめは即座に部室の倉庫に潜り込んだ。

彼の目的は会報だ。桜樹が持っていた10年前、同じように七不思議に関してレポートした物が入っている。同じように綺世も探すが、どうしても10年前の会報だけが抜かれたように無くなっている。

 

「…まあ、犯人からすれば七不思議を勘ぐられたくないはずだ。そんなものをいつまでも放っておくわけないか」

 

「じゃあ、別の箇所から探してみようよ」

 

「そうするしかないかあ」

 

はじめは頭を掻きながら部室に戻ろうとすると、何かを持った立花が部室に入ってすぐに出て行く姿が見えた。

何かを置いていった。

直感的に感じたはじめが早足で部室に戻ると、机の上には先程までずっと探していた会報が置かれていたのだ。つまり…立花がここに返したということになる。

 

「立花さんがどうして…」

 

「…とにかく中を見よう」

 

はじめが会報を開くと、最初にこれだけ書かれていた。

 

『今年、ミステリー研究部はこの高校にまつわる六不思議について調査しようとしたが、担当の青山ちひろが行方不明になったことで中断となりました』

 

だが、はじめも綺世もこの文章に違和感を感じた。

 

「ねえはじめちゃん…『六不思議』ってどういうこと?私たちが調査してたのは『七不思議』でしょ?」

 

「ああ…この10年間で不思議が1つ増えたってわけだ。…少し分かってきたぞ、恐らくこの増えた不思議は…」

 

だがそこではじめは気付く。印刷機からはみ出た1つの紙に。

思わず会報を無鉄砲に綺世に預けると、その紙を手に取る。

そこには訳の分からない1文が印刷されていた。

 

『のち恋い身に暗み生き血の血の名と血吸い貝に砂』

 

「何これ?不気味な1文…」

 

「暗号だよ…。それにこの紙の端を見ろ」

 

印刷紙の角には僅かだが、赤インクを垂らしたみたいな跡が残っていた。

 

「血じゃない!」

 

「ああ、尾ノ上はここで殺されたって訳だ」

 

「じゃあ…尾ノ上さんはここで殺された。そしてその暗号を印刷した。だけど…それを犯人に見られて殺された…と言った感じ?」

 

「そんなところだろうな…」

 

はじめは印刷した紙を少し眺めると、何か分かったかのように周囲に目を凝らす。

 

「はじめちゃん…?」

 

「…綺世、黙ってくれ」

 

そして…はじめがとある一点を見詰める。

そこに同じく綺世も視線を向けようとした時。

 

『2年3組の神津綺世さん、職員室までお越しください』

 

こんな放送が入った。

綺世は溜息を吐きつつ、どうしようかと思ったが、はじめは「さっさと行けよ。ここから先は見ない方が良い」と静かに言った。

何を伝えたいのか、綺世には分からない。もっと詳しく知りたい綺世だが、先生から呼び出しがあったのならすぐに行かざるを得ない。

 

「すぐに戻るから…あとでその暗号の答えを教えてよ!」

 

「ああ!分かってるよ!」

 

綺世は旧校舎を出て、新校舎に突然の要件を片付けに行く。

はじめは1人、部室に残るが…すぐに壁の方に歩みを進める。壁には色んなポスターや今までのミステリー研究部の実績、規則などが貼ってある。それに1枚ずつ触れて、どうなっているか確認していく。

 

「あの暗号の答えが正しいなら…どこかにあるはず」

 

そして、最後に残ったのは、ムカつく笑みを浮かべた真壁が受賞した小説の宣伝ポスターだった。

 

「……」

 

生唾を飲み込み、ゆっくりとポスターの端に手をかけるはじめ。

ゆっくりとポスターを剥がそうとした…その瞬間だった。

 

「ッ!?」

 

後頭部に強烈な衝撃…そして、痛みが走った。

すぐ横の棚にぶつかって地面に倒れるはじめは、殴られた頭部に手を当てる。そこからは温かい血が漏れていた。

 

「だ…誰だ!?」

 

犯人を見ようとしたが、そこには仮面と黒マントを羽織った何者かが目に入った。

 

(こいつが…魔術師!?)

 

はじめはすぐに逃げようとしたが、殴られた痛みがはじめの判断力を鈍らせる。犯人の横を突っ切って逃げ切ろうと考えたが、それは逆効果だった。足を引っ掛けられ、もう一度地面を転倒する。

そこで再び…犯人の一撃を頭部に受けてしまう。

 

「ぐあッ!」

 

今度の一撃ではじめの頭蓋骨が陥没する。

それと同時に意識が急激に遠のいていく。

はじめの視界には、ゆっくりと出来上がる血溜まりだけが見える。

 

(綺世……来る…な…)

 

すぐに戻ると言っていた綺世…。

彼女が今ここで戻れば、間違いなく襲われることだろう。

そうならないことを願うはじめだったが、頭部の痛みが彼を暗黒の世界へと連れて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綺世が呼ばれた理由は、ただ単に落ちていた財布が届けられた…というものだった。落としたつもりはなかったが、尾ノ上の死体を見た時は錯乱していたので、その時に落としてしまったのかもしれない。

とにかく、用が済んだ綺世は急いで旧校舎に戻ろうとしたのだが…突然腕を引っ張られる。思わず悲鳴を上げかけた時、目の前に入ったのは真壁だった。ニヤニヤと笑う真壁に不快感しか感じてない綺世だが、奴はそれに気付いてか気付くことなく勝手に話し始めた。

 

「今度さあ…僕の小説出版記念でホームパーティーがあるんだが…そこで私のパートナーとして出てくれないかな?」

 

「……」

 

「どうだい?金田一(あんな奴)よりも…僕の方が優秀で、一緒にいる方が楽しいと思うけどなあ」

 

真壁の目は綺世の目ではなく、身体を見ていた。

それに気付いた綺世は彼の腕を払い、蔑視の言葉を漏らした。

 

「私をただの都合の良い女としか見ていない貴方に、私がついて行くと思って?少しはその間抜けな脳味噌を直すことね」

 

それだけ言って、さっさと駆け出した。

はじめと早く合流したいという気持ちもあったが、無意識に真壁が暴徒と化すかもと思っていたのだろう。当然、後ろでは真壁が歯を噛み締めて、悔しそうにしていた。

 

「はじめちゃん!遅くなってごめ…」

 

そこで綺世は言葉を失った。

部室の棚は派手に倒れ、壁や地面には先程まで無かったはずの血が拭き取られた跡が残っていたのだ。

 

「どうなっているの?一体誰が…」

 

その時、この血の持ち主が誰なのか…すぐに想像が付いた。

 

(まさかはじめちゃん…?)

 

綺世の心臓が一気に早急になる。

それと同時にすぐ様PCの電源を点けると七不思議レポートを開く。ここには7つの内6つまで不思議が細かに書かれており、どこでどういう事件があったのか分かるのだ。

 

(もし犯人が次に犯行を行うとしたら、また七不思議に見立てるはず…!それなら…!)

 

「『血に染まる井戸』…女性生徒が落ちて井戸が真っ赤に…。違う‼︎これじゃない‼︎」

 

時間がかかることで、綺世の焦燥は募っていくばかり。

するとそこに佐木が部室に入って来て、この惨状に声を上げた。

 

「うわっ!?何ですか先輩!」

 

佐木が目に入った綺世は彼の胸ぐらを掴むと、鬼気迫る表情で聞く。

 

「『知恵の女神』ってどういう話!?」

 

「え?」

 

「いいから早く答えて‼︎時間がないの‼︎」

 

「こ…校庭の隅にある女神像に…男子生徒が、押し潰されて…」

 

「そこだ…!」

 

綺世は佐木を突き飛ばして、校庭へと出る。

既に部活を終えて、全員下校時間に差し掛かる時間帯だった。

そして…校庭の隅に置かれている女神像に駆ける綺世の目に…考えたくもなかった光景が入った。

 

「あ……」

 

女神像の横に、倒れた男性生徒がいたのだ。

それが『はじめではない、違う』と自分に言い聞かせる綺世だったが、急いでその生徒の顔を見た時…彼女の顔から血の気が引いた。

 

「嘘…」

 

頭から血を流して倒れる男子生徒は紛う事なき、金田一はじめだった。

綺世は救急車を呼ぶことも忘れて、彼を抱きかかえて名前を何度も叫ぶ。手や制服に彼の頭から流れ…落ちた血が付いても、構うことなく叫び続ける。

 

「はじめちゃん…!はじめちゃん‼︎起きてよ‼︎」

 

突き飛ばされて遅れた佐木がはじめの惨状を見て、すぐに救急車を呼ぶ。

綺世がいくら呼びかけても…彼の目が開くことがない。

 

「はじめちゃん…‼︎何で…何で…!」

 

綺世の悲痛な声だけが…暗くなりゆく校庭に虚しく響くのだった。




今回、なんか雑な文章だった気がする…。
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