金田一少年と神津少女の事件簿   作:GZL

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明けましておめでとうございます


File2

突然の事態に流石のはじめも脳が追い付かない。

そんなはじめよりも先に動いたのは、綺世だった。

 

「ちょ、ちょっと‼︎離れなさいよ‼︎」

 

無理矢理はじめから玲香を離すと、牙を向ける狼のように威嚇する。

その綺世の態度をどう取ったか分からないが、玲香はニッコリ笑って「じゃあ、またね!金田一くん!」と健やかに言って、この部屋を後にした。

部屋には剣持、綺世、未だに固まる金田一が取り残された。

そして静寂が訪れるはずもなく、綺世は金田一に噛みついた。

 

「ちょっと!あれどういうこと!?」

 

「いや知らねえよ!彼女が急に…!」

 

「『久しぶり』って言ってたじゃん!どっかで密かに会ってたんでしょ!?」

 

「それこそ無理だろ!玲香ちゃん程のスーパーアイドルに会えるご身分だと俺が見えるか…!?」

 

「…それもそうね」

 

綺世は納得したようにはじめから腕の力を抜いた。

案外チョロいと思っていたはじめだが、確かに玲香の行動は不自然だった。はじめが死ぬ演技の時も、さっきも…まるでずっと会いたかったような行動に思えた。

 

「…分からねえ」

 

はじめの口からは、それだけ小さく漏れ出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ゆっくりと寝ていたはじめたちだったが…突然扉がけたたましく叩かれて、叩き起こされた。目を擦りながら扉を開けると、そこには玲香が立っていた。

ギクッとしつつ、「ど、どうしましたでしょうか?」と問うはじめ。

 

「比留田さんが呼んでるよ!加納さんを置いて、本館へ移動するの!」

 

あの時の話ではなくて安心する内容で、一安心したかと思われた時。

 

「その後…いっぱい話しましょうね?」

 

「え?」

 

玲香はまた屈託のない笑みを浮かべて、先に別館へ行くためのワゴン車へと行った。その様子を陰から伺う綺世の中で、急速な焦りが募っていく。

 

「彼女は…玲香ちゃんって、どうしてはじめちゃんを…」

 

その謎ばかりが膨れ上がるが、その前に仕事だ。

はじめはすぐに着替えると、同じくワゴン車に乗り込んだ。意図したように玲香ははじめの隣に座る。その様子に綺世はまた寂しげな表情を浮かべる。

ワゴン車は加納を除いて全員乗せた後に発進した。この別館と本館の間には激しい川が流れており、ぐるっと回って橋を渡らなければならない。そのため飛ばしても20分は掛かってしまう。

本館へ到着した一向は明石と響が開発したドッキリマシーンを作動させる部屋に全員を入れた。そこには大量のモニターとボタンがあり、作り込まれている印象が目立った。

 

「…ぐっすり寝てますね」

 

1つのモニターには加納が気持ちよく寝息を立てている様子が映されていた。比留田たちはそれを良いことに、遂にこの番組の1番の目玉であるドッキリを始めた。と思ったが、比留田は明石がいないことに気付いた。だが、今更呼びに行くことも出来ないため…代役で響がボタンを押す。すると、加納がいる別館が地震の如く激しく揺れ始めたのだ。

 

『え?きゃああああ!?何何!?』

 

加納は堪らず部屋から飛び出る。

逃さないと、今度は近くの花瓶が派手に割れる。それにまた驚き、悲鳴を上げる加納。その様子を見て笑う比留田たちを他所に、大門や棟方は先に寝るために部屋を出た。だが、退屈したからではなく…あれだけ怯えた加納を見れたことを満足したからだった。

同じく視聴している剣持と明智、そしてはじめたちは『くだらない』という思考だけが脳に展開される。楽しんでいる比留田たちを置いて、自分たちも部屋に戻ろうと思った時、玲香の甲高い声が聞こえた。

 

「ああ!雪夜叉!」

 

その声にはじめはふと振り返る。

画面には白い着物に鬼の面を被った『雪夜叉』がゆっくりと震える加納りえに歩み寄っていたのだ。

雪夜叉とはこの地方に伝わる伝説で、吹雪の中で現れる怒りに塗れた女性…というのが通説らしい。その伝説と同じく、画面越しの雪夜叉もその手には斧を持っていた。最初は誰しもドッキリの人員だと思った。

だが、綺世は妙なことに気付く。

 

「あれ…誰がやってるの?」

 

「綾辻さんでしょ」

 

玲香は暢気にそう答えるが、綺世は否定した。

 

「それはないわよ。だって綾辻さんは本館から出てまだ5分くらいしか経ってない。彼女が到着してるはずがないわ」

 

それを聞いた比留田が動揺したように響に「おい!あんなやつの登場はあったか!」と問い正す。しかし響は首を横に振る。

 

「じゃ、じゃあ…あの雪夜叉は…」

 

その瞬間、加納は背後から忍び寄る雪夜叉に気付いた。

そして奴を見た途端、怯えながらも笑いを浮かべた。

 

「何よ!そのわざとらしい格好!どうせドッキリなんでしょ!?その…気味の悪い仮面を取りなさいよ!」

 

だが雪夜叉は何も話さずに、ただ…加納りえに歩み寄る。

まだ恐れが抜け切らない加納は口でも強がるも、身体はどんどん壁の方に追い詰められていく。雪夜叉も同じく壁に追い詰めると、斧を振り上げた。

それを見たはじめは焦って叫んだ。

 

「あいつ!加納りえを本気で殺す気だ‼︎」

 

「な、なんだって!?響!綾辻を急がせるんだ!」

 

「無駄だ」

 

明智は冷酷に言い放つ。

 

「仮に今から急がせても、別館まで10分はかかる」

 

そう…はじめたちは何も出来ずに、モニターを見ることしか出来ないのだ。その間も加納は雪夜叉に罵詈雑言を浴びせているが、雪夜叉は何も思わないのか…その振り上げた斧を、加納の頭に振り下ろした。

 

「キャアアアアアアアアアアアァッ‼︎」

 

玲香は悲鳴を上げて、綺世の胸に顔を埋める。

加納の頭部からは血飛沫が上がり、周囲の壁や廊下に飛び散る。一撃受けただけでも致命傷のはずなのに、雪夜叉の凶行は終わらない。その斧を何度も振り上げて加納の頭に直撃させたのだ。見ているカメラにもその音声は届き、肉が潰れ…骨が砕ける音の後にグチュ…と不快な音が響いた。何度と斧をぶつけた雪夜叉は満足したのか、血塗れになった斧を取り、カメラに背を向けた。

今までの光景に全員が静まり返っていると、不意に雪夜叉は足を止めて立ち尽くすと…振り返ってカメラを握り潰した。

 

「カメラが…やられた」

 

茫然としていると、今なおずっと連絡を取ろうとしていた綾辻のトランシーバーから彼女の声が聞こえた。

 

『どうしました?』

 

はじめは響の手からトランシーバーを奪い取ると、鬼気迫った声で叫んだ。

 

「綾辻さん!加納さんが襲われたんだ!急いで中に入って彼女の安否を……!」

 

そこまで言ったところで、今度は明智がはじめの手からトランシーバーを奪った。

 

「いや逆です。そのまま戻って来てください!」

 

それから明智はトランシーバーを切り、全員に告げる。

 

「現場を荒らされては困るのでね…。ここからは我々の管轄です。全員…綾辻さんの車が戻り次第…別館に赴きましょう」

 

明智の提案に、誰も反対することはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別館に到着した彼らを襲ったのは、血生臭い殺害現場だった。

はじめも少し喉まで迫り上がるものがあったが、どうにか抑える。綺世は玲香と共に本館に残っていたが、逆に来なくて良かったと思える程悲惨だった。

はじめは周囲を伺うが、どこか違和感を覚えた。

 

「ん?」

 

「どうした?金田一?」

 

「いや…どこか、変だな…って」

 

はじめはじっとこの通路を凝視するが、結局違和感の正体ははっきりせずに、再び本館へと戻った。

 

 

 

朝となり…明智と剣持ははじめを含めて、全員のアリバイを確認した。

加納りえの殺害シーンを見たはじめ、綺世、玲香、比留田、響を除外として、聞かれたには大門、棟方、綾辻、氷室の4人だった。だが、いくら探しても明石の姿はなく…朝の段階では、彼が最も怪しいとなった。因みに警察だが、この吹雪では当分来られないとのことだった。

アリバイ検証をする明智と剣持を他所に、はじめは再び別館を訪れていた。何度も廊下を往復し、どこが違うかを突き止めようとするが…やはりはっきりしない。

 

「全く…何だんだよ!この違和感は…」

 

そこに綺世がやって来る。

 

「またここにいたの?剣持警部が探しに来たわよ」

 

遅れて剣持が別館にやって来る。頭に雪を被せて…。

 

「おい、金田一!ここの村人から重要な証言が聞けたんだ。お前も一緒に…」

 

「なりませんね」

 

すると凛とした声が別館に響く。

 

「剣持くん、そういった情報はまず私に報告するのが鉄則でしょう?そんな子供に教えるとはどういうことですか?」

 

「し、しかし明智警視。彼の洞察力は我々よりも凌駕しています!捜査の協力を得た方がプラスになるかと!」

 

「いい加減にしなさい。確かにそこのお2人が事件を2つ解決したのはご存知です。ですが…これはお遊びじゃないんです。一般人が突っ込むと余計に面倒です」

 

確かに明智の言う通りだ。

普通に考えて、殺人事件に高校生を巻き込むなんて出来るはずがない。

それに関しては、はじめも綺世も分かっており、すぐに明智の言う通りに事件には突っ込まないと言うつもりだった。

だが…この次の発言で彼らの気を変える。

 

「まあ…君のように体力と根性で捜査する古い刑事は、彼ら()()の洞察力に脱帽するんでしょうがね」

 

この発言にまず噛みついたのは、綺世だった。

 

「ちょっと!いくら剣持警部の上司だからって…言っていいことと悪いことがあるんじゃないでしょうか?」

 

「私は事実を述べただけです。何か問題でしたか?」

 

あまりに気位が高い明智に綺世の表情がイラつきから怒りのものへと変わっていく。人を見下し…自分は1番偉いと思い込んでいる、そんな奴が綺世は最も嫌っていた。

 

「…とにかく!素人の君たちが首を突っ込むことは許さない」

 

明智は剣持を連れてそのまま別館から出る。

先に本館へと戻っていく明智たちに、綺世は完全に怒っていた。

 

「何なんですか!?あの男…自分より頭の悪い奴は、()()扱いなわけ!?」

 

「落ち着けよ、綺世」

 

はじめは頭を掻きながら、同じく別館を出る。

 

「どうするつもり?」

 

静かに歩くはじめに綺世は不安になって問う。

 

「別に…」

 

はじめは明智の後を追う形で、同じく本館に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

明智と剣持は背氷村の住人に話を聞いていた。

剣持はこの村の住人が犯人の可能性も考えており、それらに関する質問をするが…明智は溜息を吐く。

その姿を見たはじめは扉に背中を預けて、明智の考えていることを代弁する。

もちろん、そこにはじめがいたことに、2人は驚く。

 

「カメラの位置が分かっているんだ、犯人は俺たちの中にいる…と言いたいんだろう?明智警視」

 

一瞬はじめに驚愕の表情を向けたが、すぐにそれは好敵手が現れたと思わせるような笑みに変わる。

 

「その通りだよ、金田一くん。君もかけたまえ。この老人の話を聞きたいのだろう?」

 

「ああ、あんなこと言われてはな…」

 

椅子に座っている老人は、怯えたように語り始めた。

 

(わし)…“鬼火”を見たんじゃ…」

 

「鬼火?」

 

「ああ、あれはきっと雪夜叉の灯篭じゃ…」

 

その話を聞いた剣持と明智はくだらないと思わせる表情を浮かべた。

だが…はじめの脳裏にはその『鬼火』が錆びのようにこびり付いた。

はじめは剣持と共に部屋を出た瞬間、綾辻の悲鳴が外から響いた。

 

「いやあああああああああああぁっ!?」

 

玄関に飛び出したはじめたちの視線に入った『もの』に、一瞬はじめは言葉を失った。

玄関に置かれていた雪だるまから見えた腕…更に風で崩れ落ちて見えた顔は、昨晩から行方が分からなかった明石だった。明石の死体は、雪だるまに隠され…今の今まで見つからずにいたのだ。

 

(…雪夜叉は、吹雪が収まらない限り、殺人が続くのか?)

 

はじめは吹雪が荒れ狂う空を眺めつつ、そんなことを思うのであった。

 




話の区切り方が雑すぎぃ!
自分でもそう思える(というか、この事件は区切りがめちゃくちゃ難しく感じる)。
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