金田一少年と神津少女の事件簿   作:GZL

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投稿遅れました。
現在リアルですんごい忙しいので…。


神津少女の殺人
File1


いつも通り窓からの景色を見て、授業をのほほんと聞くはじめ。

そんな彼に教師が矢面を立たせるのも当然で「おい!金田一‼︎」といきなり怒鳴られる。その声に反応するが、呆けた表情は一切変わらずにはじめは「何か?」と惚ける。

 

「授業を聞いていなかっただろ!?」

 

「聞いてましたよ…」

 

「じゃあ、この問題は今すぐに解いてみろ!聞いていたなら出来るはずだ」

 

黒板に書かれているのは、3次関数だ。

この曲線の式を導き出せ、とのことだろうが…はじめにとっては余裕だった。

 

「y=X^3+X^2+7」

 

ものの数秒で答えを言い当てたはじめに、教師は何も言うことが出来なくなった。その姿を見て呆れる綺世、そしてはじめは何事もなかったかのように、再び視線を黒板から逸らすのであった。

 

 

 

 

 

 

その日の帰り、綺世から毎度ながらの注意をはじめ。

 

「授業くらい、真面目に聞いたら?」

 

「あんなことしても脳の無駄使いでしかない」

 

「中には役に立つこともあるかもでしょ?」

 

こういった会話が何十回と繰り広げられる。

不毛な会話の中に割って入る男がいた。

 

「よお、また夫婦喧嘩かい?」

 

振り向くと、悲恋湖リゾートの事件で一緒に巻き込まれたフリーライターのいつき陽介が口に煙草を咥えて立っていた。

 

「夫婦喧嘩ではありません‼︎」

 

一瞬で否定する綺世にいつきは「ガハハハ!」と笑う。

だが、あの悲恋湖の時に見た、狡猾で嫌味で人の弱みに漬け込むような態度は無くなっていた。

 

「で…何の用だ?俺は今から帰宅してやりたいことが…」

 

「立ち話もなんだ、そこの喫茶店に入ってゆっくり話すとするよ!ドリンク代は奢ってやるぜ?」

 

「…じゃあ、お言葉に甘えようかな。ね、はじめちゃん!」

 

「しゃあねえな…」

 

はじめたちは喫茶店に入り、全員コーヒーを頼む。そこに更に1人…見知らぬ顔がはじめたちの前に座った。

 

「突然のご来訪、お許しください。私、音羽出版の鴨下という者です。是非…貴方方の力を貸してもらいたくて…」

 

綺世の表情はともかく、はじめは既に『どうでも良い感』が漂っていた。

鴨下の話に合わせていつきも話し出す。

 

「橘五柳って作家、知ってるか?」

 

何にも興味を持たないはじめであっても、その名前だけは聞いたことがあった。

 

「ああ…有名なノンフィクション作家…だっけか?」

 

「その橘さんが今度新しい本を出すんだよ。で…この鴨下も始め、色々な出版社が版権を得ようと躍起になっているんだ」

 

「…今の所、俺らに頼み込むようなことはないと思うが?」

 

「ここからが本題よ!なあ、鴨下」

 

「はい。先程も話した通り…橘先生の版権争いはいつも烈火を極めます。それを嫌ったのか…その原稿探しの『ゲーム』を先生の別荘がある軽井沢で行うと…」

 

ようやく話が見えて来たことだが、はじめは当たり前として、綺世もさほどやる気は起きなかった。要するに自分たちは原稿探しの『駒』扱いなのだ。

 

「謝礼としては、1人10万円を…」

 

「申し訳ないですが…私はその件に関してはお断りします」

 

「同じくパス。全く興味が湧かねえ」

 

そんな反応をすることをいつきは見越していたのか、突然こんなことを言い出した。

 

「そうかあ、そいつは残念だ。橘さん曰く、()()()()()()()()()()()()()()()()()暗号だって言ってたのになあ、なあ鴨下?」

 

突然の話に鴨下も一瞬驚くが、話を合わせるために「え、ええ!そう豪語しておられました‼︎」と言う。

その瞬間、はじめと綺世は立ち上がり…机を思いっきり叩く。

そして鴨下に顔を近付け、睨みを効かせた表情で聞くのであった。

 

「そのクソジジイが開くパーティーはいつだ?」

「そのクソジジイが開くっていうパーティーはいつ?」

 

内心いつきが(チョロい…)と思っていたのは内緒である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その週の土曜日、はじめたちはいつきが運転する車で軽井沢へと赴いた。2人とも挑発されたことでやる気は十分だった。しかし…車中で長い時間だと言うのにははじめはしきりにスマホを弄り、何かをやっていた。普段こういう時はずっと寝ていることが殆どなはじめなので、綺世は興味を持ったように見てしまう。

 

「何だよ?」

 

「いや…今日は寝ていないんだなあ…って」

 

「俺だって眠たくない日もあるよ…」

 

そのまま再びはじめはスマホに目を向けてしまう。

 

(何やってるんだろう?)

 

気にはなったが、どうせはじめの性格上教えてくれないことは分かっていた。綺世は変に深く聞き込むことよりも、軽井沢の景色を楽しむことにした。

 

「着いたぜ、あれが橘先生の別荘だ!」

 

車窓から見えた豪邸に2人は息を飲んだ。

別荘を通り越して、館に近いものだった。既に駐車場には数多の車が止まっている。はじめでも知っている超有名人だ。その原稿は相当な値打ちなのだろう。

 

「おーおー…欲の皮が突っ張った奴らばかりだねえ」

 

「いつきさんもその1人だろ?」

 

「いやいや…俺はどうせ版権を貰えない。鴨下と組んでいるだけで、その利益は殆ど貰えないも同然さ」

 

すると、部屋から怒号と共に追い出される人影が目に入った。

 

「この橘を女で釣ろうなんて…ふざけるな‼︎」

 

「そんなつもりでは…!」

 

2人の争いを見ていると、いつきが追い出される1人に声を上げた。

 

「都築さんじゃないですか‼︎」

 

「…!」

 

見苦しいところを見られた都築は唇を噛んでこの場を後にする。

そこに苛立ちを露わにした橘が出て来たが、いつきを見るなりその表情をニヤケさせた。

 

「お!いつきくんも来てくれたか!」

 

「はい先生!ご無沙汰してます」

 

同じように鴨下もぺこぺこと頭を下げる。

その様子を興味なく見ているはじめと綺世に、橘の視線が刺さる。

 

「彼らは何だ?まだ高校生にしか見えないが…」

 

「彼らは暗号解読の助っ人ですよ!話したでしょ?かの有名な…」

 

「ああ、金田一耕介の孫と神津恭介の孫娘…だったね?」

 

(いつきさんめ…そこまで話していたのか)

 

「まあ、今日は私のパーティーを楽しむといい。だが…お祖父様の名を汚さないことだな!ガッハッハッハ‼︎」

 

はじめたちの第一印象は、橘が消えると同時に呟かれる。

 

「クソジジイだな」

「クソジジイね」

 

それを聞いたいつきはすぐに彼らの頭に拳骨を叩き込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーティーはその夜、すぐに始まった。

はじめも綺世もきちんとした正装に着替え、卓上に出される料理を手に取るが…居心地はあまり良くなかった。一見仲良さそうに話す出版者たちだが、その瞳の奥には橘の原稿を逃すまいと、執念の炎が燃えていた。息苦しさにも似た2人は耐えきれずベランダに移動する。大きく息を吐くと、はじめは綺世が着ているドレスについて話し始める。

 

「ファッションに疎いお前がそんなドレスを持っていたとはな…」

 

「一言余計!…これはお母さんが持っていたの!こういう…その…スカートが短いのは好きではないんだけど、仕方なく…」

 

はじめは思わず綺世の足元に視線を落とす。膝上2.5cmくらいのスカートは、綺世が恐らく生涯履いたことがないものだった。

 

「はじめちゃんこそ、そんな一張羅よく持っていたね。お父様のかしら?」

 

「いいや、ジッちゃんのだよ」

 

「えっ!?」

 

「そんな驚くような物でもないよ…ほら見ろよ…」

 

はじめがスーツの後ろを見せると、そこには長い間放置されたことで出来た虫食いが僅かに見えた。

 

「あらら…」

 

「こんな虫食いスーツ着てることが恥ずかしいくらいだぜ…」

 

はじめは思わず溜め息を吐いた。

やはりこんなところに来なければ良かったと。

するとそこに…聞き慣れた声が響いた。

 

「先輩!」

 

横を振り向くと、ビデオカメラを片手にこちらを見てくるいかにも怪しい男がいた。

 

「おい、お前何だ?」

 

「あれ?先輩!僕を忘れました?」

 

ビデオから顔を離して見せて来た顔に2人とも見覚えがあった。

 

「あーーーっ!お前は!」

「あーーーっ!貴方は!」

 

「「佐木‼︎」」

 

同じ学校でミステリー研究部の後輩、佐木竜太がそこには立っていたのだ。

 

「…何でお前が?」

 

「お父さんの仕事の付き添いです!ほら!あそこ‼︎」

 

今現在、パーティー会場では落語家の桂横平が話している最中で、そのすぐ横でカメラで撮影している男がいた。あれが佐木の父親だと言うのだ。その付き添いで今回のパーティーに入れた、と言うらしい。

 

「いやあ先輩たちの『デート』を邪魔したようで…失礼しました!」

 

「「デートじゃない‼︎」」

 

2人の怒声がベランダに響く。

そうこうしている内に、橘が壇上に上がると…(おもむろ)に話し始めた。

 

「いやはや、今日は私が主催したパーティーに出席して頂き、有り難く感じておりますが…そろそろ『本題』に入るとしましょう」

 

それを聞いたパーティー出席者の表情が全員硬くなる。

 

「どうやら、ここからは俺たちの出番か」

 

「くだらない謎じゃなきゃ良いけど」

 

「分かっていると思うが、今回集まってもらったのは私が書いた新たな原稿の版権を争ってもらうためだ」

 

(自分から争ってもらうとか言うのかよ…)

(悪趣味なジジイ…)

 

「今回は『ある社会悪』を書いたノンフィクションだ。実はだな…このパーティー出席者の中に、実名で書いてあるのだ!」

 

それを聞いた途端、全員の表情が動揺する。

 

「この原稿が世に出れば、間違いなく檻の中だ。精々頑張ることだな。では、謎を発表しよう‼︎」

 

橘が指を鳴らすと同時に舞台袖の女性2人が後ろの幕を落とす。

するとそこには奇怪な文章が1つだけ書かれていた。

 

 

 

《裏川辺奇々なる藻を》

 

 

 

その文章に全員が頭を掻く。

それはいつきも同じで早速金田一たちに助言を求めようとしたのだが…何と2人とも暗号を眺めることもせずに暢気に食事を摂っていたのだ。

思わずいつきは2人に歩み寄る。

 

「おい!2人とも!真面目にやってくれよ!」

 

いつきの声に、2人は同時に言った。

 

「「あの暗号なら解けたけど?」」

 

「…へ?」

 

「簡単すぎて欠伸が出たぜ、なあ綺世?」

 

「そうね、見た瞬間に分かったわ」

 

同じくそれを聞いた鴨下もすぐに謎の答えを聞こうと迫ってくる。

 

「こ、答えは何なんですか!?」

 

「慌てるなよ…それにあんたは編集長様に()()()()()()()()()版権を手に入れました、とでも言うつもりか?」

 

「そ、それは…」

 

「まだ誰も解けていないように見えるし、少しは考えたらどうです?」

 

はじめと綺世の冷たい態度に鴨下は何も言えなくなる。

 

「…まあヒントくらいはやるよ」

 

「ヒント!?」

 

「あの暗号はな、秋はイカという意味で、意味は意味のまま変わらない…という風な感じなんだよ」

 

それを聞いても鴨下といつきは頭の中でハテナが何十個と巡るだけだった。それだけ伝えたはじめと綺世は同時に欠伸をする。

 

「眠いし…今日は寝るわ…」

 

「ええ、私も…おやすみなさい、いつきさん」

 

2人はそのまま会場を後にするのだった。

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