金田一少年と神津少女の事件簿   作:GZL

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お久しぶりです。
普通に忙しかったです。申し訳ないです。


File5

その日の夕方、仕事に全く集中出来ないいつきは気分転換にタバコを咥え、ニュースをつけた。そのままライターでシュッと火を付け、勢いよく吸う。だが、ニュースから流れてきた続報にいつきは驚愕した。

 

『今日の昼頃、飛躍社社長の大村紺さんが殺害されました。警察は橘五柳氏殺害の重要参考人かつ逃走中の17歳の男女が犯人と見られ…』

 

「なっ、なにぃ!?」

 

 

 

 

 

大きく出ているビルのモニターで、はじめたちも大村殺害の報道を見ていた。はじめたちが大村の死体を見つけて、すぐに警察がやって来た。恐らく…真犯人がはじめたちに罪を着せるために呼んだのだろう。

 

「…クソ、またハメられた」

 

「はじめちゃん…」

 

はじめたちは人目を避けて、路地裏へと入り込む。

そして、泣けなしの食糧を綺世に渡した。それはコンビニで万引きしたメロンパンなのだが、はじめは分けることもせずに綺世に全て渡した。

 

「はじめちゃんの分は…」

 

「いいからお前が食べろ。体力がないお前が、1番食べないとまずいからな」

 

そうは言っているものの、はじめも空腹だった。

いくら強がっても綺世にはお見通しだった。綺世は一瞬、やはり自首すべきかと思い悩んでしまう。このまま逃走生活も長くは続けられない。未成年だから顔写真など公開されていないが、そんなものが出たら逃げ切るのは不可能だろう。何より…はじめをこんなことに真似した自分自身が許せなかった。更に今は…そのはじめに何もかも助けてもらっている。悔しさと申し訳なさで涙が溢れる。

 

「…お前は気にするなって言っただろ?」

 

するとはじめは綺世の心を見透かしたような発言をする。

 

「お前のせいじゃない。俺の意志で動いているからな…」

 

「はじめ…ちゃん」

 

綺世は渡されたメロンパンを半分に千切り、はじめに渡す。

 

「……」

 

「私に出来るのは、これくらいだから」

 

「…じゃあ、有り難く頂こうか」

 

2人は細々と今日の晩御飯を終わらせる。

そしてはじめは、再びいつきへと電話をかけた。

コール音が1回しただけで、いつきは電話に応対した。

 

『おい!金田一!どうなってんだ!?』

 

「どうしたもこうもねえよ…。犯人は俺たちに罪を被せたいそうだ」

 

『しっかし、犯人も原稿狙いだったとはな…。だとしても何故大村を…』

 

「分からないことだらけだよ…。それで?何か分かったか?」

 

『ああ、そうだった。今回の橘先生の原稿だが…相当に奥が深いようだぜ?』

 

「と、言うと?」

 

『針生の話じゃ密輸、鴨下の話では医学会、そして野中によると中央アジアにコンタクトを取っていたらしい』

 

「…何ともバラバラな話題だな。まあそれが原稿の内容だと言うのは間違いない…か」

 

『それと…都築さんの情報なんだが…どうやら警察も本気で動くそうだぜ?何とも警視庁エリート警視が直々に動くようだ』

 

(エリート警視?)

 

何とも言えない嫌な悪寒がはじめの背中を突き抜けたが、今回はこれでいつきとの通話を終えた。はじめが元の路地に戻ると、すぐに綺世を連れて、次の目的地に向かう。

 

「どこ行くの?」

 

「神田川出版だよ。犯人も俺たちの通話を聞いていたはずだ。奴なら原稿を狙って、時任さんを襲う可能性は高い」

 

「でも、そんな簡単に話を聞けるの?」

 

「…どうにかするさ」

 

はじめたちはノープランで神田川出版社の前に到着した。既に日は落ちているが、繁華街が近くにあるため人通りはまだある。迂闊に近付くのは怪しまれる。

このまま待っている訳もいかず、一か八かで出版社に突入しようと思った時。

 

「はじめちゃん!あれ!」

 

綺世が指差す先には出版社から出てくる時任の姿があった。

携帯を見て、すぐ近くの建築予定地の中に入って行く。

 

「こんな時間にどうしてここに…」

 

「分からない。だが、話を聞くには丁度いい」

 

はじめは誰かと待ち合わせをしている時任に声をかけた。

 

「時任さん!」

 

時任は驚いて振り返る。そしてはじめたちを視認すると、怯えたように声を上げた。

 

「お、お前らは!?ま、まさか…俺を呼び出したのは貴様らか!?」

 

「呼び出した?俺たちは…」

 

「黙れ‼︎俺も殺す気なんだろう!?俺は…大村のように油断はしねえぞ‼︎」

 

時任はそこらの鉄パイプを拾い上げて振り被った。

しかし直情的で適当に振り下ろした鉄パイプは空を切り、逆にはじめは時任の足を引っ掛けて転ばさせる。そして、先程のように襲われないように鉄パイプを奪う。

 

「時任さん!私たちは貴方から1つ、聞きたいことがあるだけなんです‼︎」

 

綺世の強い口調に時任はすっかり怯えて、「殺さないでくれ…」と壊れた人形のように繰り返す。

 

「貴方は橘さんから何か…伝言のようなものを預かっていませんか?」

 

「で、伝言…?」

 

「思い出してください。これは…私たちにとって重要なことなんです!」

 

綺世の言葉に大村は暫し考え込んだ後に、話し出した。

 

「そ、そうだ!パーティの途中で橘さんに呼ばれて…。げ、原稿に関して誰かに聞かれたら、桂に聞けって!」

 

「桂さんに?」

 

それを聞いた瞬間だった。

ブチッと何かが千切れる音と共に、時任と綺世の頭上から鉄骨が降り注いで来たのだ。

 

「!」

 

「え?」

 

「あ…ぎゃああああああああァ!?」

 

時任は悲鳴を上げるだけで、動けず…鉄骨に飲み込まれた。

綺世は間一髪で避けた…と言うよりは、はじめが引っ張ってくれたお陰で助かった。しかし、腕には鉄骨が擦れた、またはぶつかって出来た傷が残っていた。

 

「はじめちゃん!?」

 

「…これくらいどうということはない。さっさと逃げるぞ、じゃないと…」

 

その時、女性の悲鳴が辺りに響いた。

はじめたちの姿を見た通行人が悲鳴をあげ、はじめたちを指差して「人殺しぃ‼︎」と叫ぶ。休む間もなく、はじめは綺世の手を取って建設予定地から離れる。

そしてやけに早く警察のサイレンが2人の耳に入って来た。

 

「犯人め!俺たちが話している間に警察を呼びやがったな‼︎」

 

「どうするの!?前からもパトカーが!」

 

綺世の声にはじめは思わず足を止めた。

前後方とやって来るパトカーを前に立ち尽くしてしまう。

ここまでかと思われた時、不意に背中を引っ張られる2人。

 

「な、なんだ!?」

「誰!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

それと同時に集合するパトカーの大群。

彼らは車外へ出ると、剣持に報告する。

 

「目撃者の情報によると、犯人は例の2人の高校生と思われます!」

 

「まだそうは決まっとらん‼︎この周辺にいる怪しい奴は片っ端からしょっ引くんだ!」

 

剣持の怒鳴り声にはじめと綺世はホッとする。

今はどうにか隠れてやり過ごしているが、ここまで近距離だといつ見つかるか…2人ともヒヤヒヤしていた。

そして剣持の命令で警官たちが散らばる寸前…澄んだ声が2人の耳に入った。

 

「待ちたまえ!」

 

(この声…)

(なんか聞いたことがあるような…)

 

「犯人は現場から離れる…そういった常識を逆手に逃げようとすると思いますよ、金田一くんたちは…」

 

「………」

 

剣持は黙ったまま、そう発言する『奴』を睨んでいた。

 

(この嫌味ったらしい、ムカつく声は…)

 

はじめは綺世と顔を合わせて、ゆっくりと車内から外を見る。

パトカーの団体の中に見えたのは…あの明智警視だった。

不敵な笑みを浮かべつつ、周囲を見渡す明智に寒気がしたのは、言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

パトカーと警察の中を掻い潜りながら、はじめたちは漸く車から降りることが出来た。はじめたちを無理矢理乗せた人物は鍵を開けて、自らの自宅へと招いた。そして、水と救急箱を持って戻ってきた。

 

「すみません…お世話になります。都築さん」

 

「いやなに…この辺でパトカーが集まっていてね。スクープかと思ったら、君たちを発見しただけだ」

 

綺世はその話が本当なのか怪しんでいたが、はじめはすっかりお世話になってしまっている。

 

「拙いが食事と救急箱だ。左腕の傷を手当てしなさい」

 

「いや…これくらい…」

 

都築ははじめの左腕を掴むと、服を思いっきりたくし上げてその傷を見る。それを見た綺世は目を丸くする。打撲や擦り傷ではなく、深く抉られたような切り傷に…。はじめは言い訳出来ないのか、らしくない表情を浮かべる。

 

「こんな大怪我を音を上げずに黙っていたのは大した根性だが…私の目は誤魔化せないぞ。さ、神津さん…」

 

綺世は頷き、はじめの傷口に薬を塗り込む。

思わず顔を歪めるはじめに、都築が更なるものを持ってくる。

 

「これは…」

 

「君の友人が撮影していたビデオカメラの映像だ。私の局が独断入手したんだ。それを見れば、君たちの無罪が晴れるキッカケを掴めるかもしれない」

 

「本当に…ありがとうございます。…今更ですけど、私たちを匿って大丈夫なんですか?」

 

「友人であるいつきくんの頼みだ。夜が明けるまでここに居るといい」

 

最初は警戒していた綺世も、漸く心の底から安心出来る時間が来た。

はじめは佐木のビデオの中身をすぐに確認する。佐木のビデオにはパーティーの始めから橘が綺世に殴られ…遺体が発見されるまでが残っていた。

 

「今になって思うと、殺されるとは予想もしなかったわね」

 

「ああ…だけど、犯人も計画的にやったわけじゃない。衝動的な殺人だ。それは綺世に罪を重ねた時点で丸分かりだ」

 

「…でも本当に、私以外の足跡は皆無ね」

 

「だけど、どこかにあるはずなんだ。犯人だけが知っている…魔法の道が」

 

はじめは何度もビデオを巻き返しては見てを繰り返す。

休むと良いと言われた2人だったが、休んでいられる程余裕はない。

今回は運良く難を逃れたが、そんな幸運は2度も起きないだろう。

しかし、はじめは腕の傷もあってか…徐々に頭を無意識に振り始める。

 

「寝ちゃ…ダメだ…綺世を…」

 

そんなはじめを見た綺世は少し顔を背けながら、彼の頭を自らの膝の上に置く。すると速攻ではじめは寝てしまう。

 

「全く、そんな虚な目じゃ、何も見えな…」

 

綺世ははじめの行動を見て、再びビデオを巻き戻す。

そして、とある発見をする。

 

「これは……」

 

はじめが寝息を立てる中、綺世は漸く一筋の光を見つけた。

 

「これが本当なら…犯人は…」

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