金田一少年と神津少女の事件簿   作:GZL

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かなり短いです。


File3

碧は気丈に振る舞って戻って来たことにはじめは少し驚く。

全員に鍵を配るために、明るく振る舞い、朝食や夕食の時間、風呂の時間など的確に伝えてくれた。

遅れてやって来た綺世の腕を引っ張り、小さな声で「おい、どうしてあんなに元気なんだ?どう考えてもおかしいだろ」と言う。

 

「私もそう思ったけど、彼女は宝探しツアーを続けるみたいなの。そんなの馬鹿げてるから、はじめちゃん辞めさせて…」

 

「そんなこと出来るか!こっちには大学進学と高校卒業が懸かってるんだぞ!?」

 

はじめの威圧した声に綺世はビクッとする。

 

「はじめちゃん、実はそ…」

 

「金田一様と神津様、こちらがコテージの鍵です。仲が良さそうなので、お隣同士のコテージにしましたよ?」

 

碧の声で綺世の話が遮られる。

はじめは「どうもすみません」と貰い、綺世に投げ渡した。

綺世はバツが悪そうな表情をしながらも、その鍵を受け取った。

これで全員にコテージの鍵が行き届いたと思われたが、おっさん3人組の1人…髪の毛がすっかり後退したおっさんが声を荒げた。

 

「おい!私の鍵がないじゃないか!こんな殺人鬼がいるかもしれん場所に野宿しろと!?」

 

「す、すみません…。岩田さん、まだ空きロッジありますよね?それをお渡ししてください」

 

「分かりました。…しかし変ですねえ、今回の招待客は7人と聞いていたのですが、何もかも1つずつ足りないんですよ」

 

それを聞いた箱を持った女性、茅は「うふ」と少し微笑を漏らして、その謎の答えを言った。

 

「簡単な話ですよ。本当の招待客は『7人』で、『8人目』は招かれざる客…つまり美作オーナーを殺した犯人ということです」

 

茅の答え合わせに矢荻が声を上げた。

 

「どうしてそんなことが分かる?」

 

「だって美作オーナーが死んでしまえば、誰が招待客なのか正確な判断がつかなくなる。更に財宝も独り占めに出来る。一石二鳥ですよ…」

 

茅の返しに一気に場の範囲気が静まり返った。

全員が疑心暗鬼になり、誰が怪しいのか探り合うような形となってしまう。

その中で綺世は(あぁ…来なければよかった…)と早々後悔するのであった。

 

 

 

 

その夜、柿本は手の中に握られている『ある物』を見つつ、ずっと笑い続けていた。

理由はごく単純だ。

 

「やっと…やっと…これであの10年間が報われる…!財宝は俺のもんや…!見つけてしまえばこっちのもんや!」

 

しかし、その独り言が彼の最後の言葉になるとは気付かなかった。

裏でそれを聞く『者』は、ニヤリと笑みを溢し、日本人形を1つ取る。

そして、人形の首に刃を当てがったのだった。

 

 

 

 

 

翌日、不安と後悔で全く眠れなかった綺世は一足早くメインロッジに到着していた。そして中に入るやいなや、とても芳醇な香りがロッジの中を包み込んでいた。その原因は、碧が作ったフライドチキンだった。

はじめや他の男性は喜ぶことだろうが、朝からこんな胃がもたれるような食事を食べなければならないのかと思うと、綺世は溜息を吐くしかなかった。

 

「よう、綺世。寝れたか?」

 

「…逆に寝れるはじめちゃんが羨ましいよ」

 

「…朝からこれか、宝探しを頑張って欲しいってことか」

 

流石のはじめもこの朝食には溜息を吐く。

ぞろぞろと他の参加者も集まって来て、残りは柿本と彼を呼びに行った岩田のみとなった。

文句を言ってもしょうがないと思ったはじめは大人しく席に着くが、ふとあの不気味な半獣像と目が合い、逸らしてしまう。それを見て取ったのか、矢荻がニヤニヤしながら話し出した。

 

「ボウヤ!そんなにあの半獣像が不気味か?」

 

「ええ…不気味かと聞かれたら不気味ですけど、一体何なんですか?これ…」

 

「これか?これはな、あの宝の在処の古文にも書かれていた…『山童』だ」

 

「山童?」

 

矢荻は立ち上がり、山童像の横に立つ。

 

「こいつは鳥取県の民謡に伝わる伝説の怪人だ。半分人間の半分猿のな。それと同時にこの島の宝を守る怪物でもある」

 

最初ははじめに聴かせようと思っていた話だったが、全員が退屈凌ぎに聞くようになっていた。特に綺世ははじめと同じくらいに興味津々だ。

 

「昔、この島は宝が眠る島で『秘宝島』と呼ばれていた。その宝を求めて何十人とトレジャーハンターなどがやって来たが…」

 

「山童に殺されてしまった…と?」

 

「その通り。しかも奴は残忍で凶暴、殺された奴の身体を八つ裂きにして遺棄したと言われている。その証拠にここではバラバラになった白骨死体がたまに出る」

 

それを聞いた綺世は少しだけ背筋にゾクリとした悪寒が走った。

 

「それからさ、この島は『悲しい報せが届く島』…『悲報島』と呼ばれるようになったのは」

 

話がひと段落したところで、はじめはコーヒーを啜り、矢荻に質問してみる。

 

「あんたは…本当にそんな化け物がいると思っているのか?美作オーナーを殺したのも…」

 

「そいつはないね、伝説や伝承よりも生きた人間の方が怖いってもんだ」

 

「…そうですね」

 

話が終わった矢荻は机に手をかけて、反動を付けて席に戻ろうとする。

すると、その山童像の口から再び人形の頭がコトリと落ちたのだ。更に昨日とは異なり、その人形には赤い何かが付着していた。

 

「これは…!」

 

「昨日の美作オーナーと同じ…」

 

「それって血じゃねえか!?」

 

矢荻が叫ぶが、クリスが人形に付いた赤い何かに触れて匂いを嗅ぐと、それは否定される。

 

「違います、ペンキですよ」

 

「ペンキだと?全く人騒がせな…」

 

「人騒がせでもなさそうだぜ…」

 

はじめは真剣な表情で答える。

 

「美作オーナーの時も、この山童像の中にバラバラにされた人形が詰め込まれていた。そして…今日も人形の数が1つ減って、赤いペンキ塗れのバラバラ人形…」

 

「まさか!?誰か殺られたってのかッ!?」

 

今、この場にいないのは岩田と柿本だけだ。

嫌な予感が過りつつも、はじめたちは2人を探そうとした時…岩田の叫び声が彼らの耳に届いた。

 

「大変です…‼︎か、柿本様が…‼︎」

 

 

 

 

 

 

その報せは、突然だった。

先陣を切ったはじめたちが柿本のコテージのドアを開けた途端…空間に漂う血の臭いと強烈な臓物臭に鼻を塞いだ。

彼の部屋は地獄そのものだった。床や壁だけでなく、天井にまで吹き上がった血は雨漏りのようにポタポタと垂れていた。その血の海の中に、柿本のバラバラ死体がゴミのように置かれたいた。

その惨状を見たはじめは呆然と言葉を呟いた。

 

「まさか、この殺人は…あの人形が無くなるまで…もしくは、宝探しをやめない限り…」

 

すぐに綺世が入ろうとしたが、それははじめが必死に止めた。

 

「来るなッ‼︎」

 

ビクッと震える綺世と碧。

はじめは先程食べた朝食が胃から逆流しそうな感覚を抑えながら、綺世にしっかりと言うのだった。

 

「来るな…これは、見てはいけない…。見ては…」

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