金田一少年と神津少女の事件簿   作:GZL

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謎の部屋に閉じ込められ、声を出すことも出来ないはじめたちは額から嫌な汗を流していた。横では男性が扉の取っ手を掴んで引っ張り、蹴ったりを繰り返しているが、全く開く気配はない。

そんな様子をどこかで監視しているのか、テレビの中のマスクは含み笑いを溢す。

 

『そのドアは開きません。これから私が出すクイズに答えないとね…』

 

(クイズ?)

 

『これから私が問題を出します。制限時間内にその答えを扉にある4つの暗証キーに入力してください。もちろん、他の人と相談は禁止。同時に出るのもダメ。一言でも何か話せば、ここにいる全員が…ドカン、です。…では、ゲームスタート。頑張って生き残ってねえ〜』

 

笑いながら手を振る映像が終わると、早速問題が出てくる。

難しいのか、簡単なのかも分からないはじめたちと他の参加者は固唾を飲んで画面に見入る。そして…最初に出された問題に、はじめたちは驚愕した。

 

【関ヶ原の決戦はいつだ?】

 

(な、なにこれ?めっちゃ簡単…)

 

思わず全員が固まってしまう。

あまりに簡単すぎて…。

思わずはじめは綺世と顔を合わせてしまう。自分の目が間違っていないかを確かめるために、はじめはアイコンタクトを行う。すると綺世も同じような反応を受け取れた。

しかし、そんなことをしている間に1人の参加者が扉に駆けていき、この部屋から脱出した。

 

『さーて、次の問題だよー』

【エベレストの高さはいくつだ?】

 

今度の問題も簡単だった。

はじめは下らなく思い始めて、先に出ようかと思ったが…なんと隣で綺世がマスクに手を置いて頭を抱えていたのだ。

 

(はあ〜!?こんな簡単なことを覚えていないのかよ!?)

 

その頃…綺世の思考は混沌と化していた。

 

(えーと…3776mは富士山で…モンブランは4807m…槍ヶ岳は……)

 

と…覚えている数が多すぎて、混乱していた。

そんな彼女の姿を見てしまったはじめは出たくてもこれからの問題に綺世が解けないのではないかと思ってしまい、その足を止めてしまった。

その隙にまた別の参加者が1人、脱出してしまう。

 

『さて…次はちょーっと難しいかもね〜』

 

そう言って出て来たのは山の写真それだけだった。

流石にこれは難しく、他の参加者たちは悩んでいた。

だがはじめは…。

 

(ちょっとした連想ゲームだ。【山】ってことから、想定される4桁は()()()しかない。まあ綺世はこれくらい…)

 

と思い、また綺世の方を見たが…完全に茫然自失していた。

 

(分からねえのかよ…)

 

(は?山のこの情報だけから4桁?意味が分からない!)

 

(…本当にこいつ、学力2位で神津恭介の孫娘なのか?)

 

綺世の血筋に疑いを持ち始めてしまうはじめだが、またその隙に1人部屋から出て行ってしまう。

残り5人。

 

『さあーどんどん行きますよ〜』

 

また写真だけで、今度は魚のタラだった。

 

(!?今度は難しいな。タラの全国漁獲量か?それともこの画像から長さを予測?いや…待てよ…)

 

(なんだ簡単じゃん。私が先に出ちゃおうかな…)

 

一瞬綺世は先に出ようとしたが、途端に不安に襲われた。

はじめは先程まで確実に問題を解いていたはずなのに、綺世を置かずにその場に残っていた。仮にこの先の問題がはじめでも解けなかった場合、彼は爆破によって木っ端微塵だろう。

そう思うと、自身が死ぬよりも怖くなり…動かしかけていた足は地面に接着剤でくっ付いたように止まってしまった。

そうして、また別の参加者が部屋から出て行き…残ったのははじめと綺世を含めて4人。

 

『部屋が寂しくなって来ましたねえ〜。はい次!』

 

続いて画面に映ったのは、東京スカイツリーだった。

 

(スカイツリーから想定される4桁の数字は…)

(これが建設が完成した年!)

 

2人は顔を合わせて、お互いに答えが分かったことを把握した。

するとはじめは先に行け、と表情で伝える。だが綺世は断る。

 

(残り2問が解けなかったら…はじめちゃんは…!)

 

(俺なら何とかする!とにかく行け!)

 

しかしそんな心の中での口論でまた1人、先を越されてしまい、とうとう残ったのははじめと綺世ともう1人だけ…。今度こそ綺世を脱出させようと思っていると、不意に参加者の女性に肩をポンポンと叩かれた。思わず振り向くと、はじめの手を取ってその手のひらに指で文字を書く。

 

(【次の答え、私に教えろ…?】は!?こいつ、何言って…)

 

女性は構わず続ける。

 

(【ここから出したら、1億円やる】!?要らねえよ‼︎)

 

はじめは彼女を振り払うが、その時マスクから見えたその瞳は…酷く怯えていた。手のひらで踊っていた指も細かに震えており、今にも死の恐怖に負けてしまいそうだった。

しかし、はじめはいくらお金を貰ったとしても綺世だけは助けると決めていたのだ。

 

『はい、次は簡単にしてあげたよ〜』

【円周率は?】

 

これを見た瞬間、はじめは動いていた。

綺世の手を握り、暗唱キーを素早く押して扉を開けると、彼女を突き飛ばした。部屋から出したはじめは即座に扉を閉めて、荒い息を整える。扉の外からはドンドンと叩く音が聞こえる。

 

(あいつ…泣いてドアを叩いてるのかな…)

 

そんなことを考えるはじめは、自分自身でも案外余裕だなと思えた。

しかし、実際は違う。こんな簡単に自分の命は終わろうとしていることに…恐怖によって冷静になっていたのだ。

 

(次の問題…解けなければ、俺は…)

 

『さあ!ラストの問題!どっちが生き残るのでしょうねえ?』

 

そして出された問題、それは…。

 

【今日は何年だ?】

 

(な、なんだこれ?お遊びにも程がある問題だろ?)

 

あまりに簡単すぎて拍子抜けしたはじめは一気に緊張の糸が解けた。

もしかしたらこれはまだあの遊園地のアトラクションか、もしくは何かの番組のドッキリなのかもしれない。実際、扉の外から叩く音はもうしない。はじめはゆっくりと邪険に扱った女性に(どうぞ、お先に)と手を向けた。

しかし、女性は何故かニヤリと笑った。

そして逆にはじめに向けて先に出て良いとジェスチャーしたのだ。

この変容ぶりにははじめも驚いた。

 

(さっきまであそこまで必死だったのに…どうしたんだ?急に…。まああの調子だとすぐに出られるだろう)

 

はじめはそうして悠然と部屋から出た。

それと同時に綺世がはじめに抱きついてきた。

 

「はじめちゃん!良かった…!」

 

「あれ?お前、マスクは?」

 

「あ、この鍵で外せるよ!」

 

綺世ははじめの首元の錠前を外すと、スルリと顔を圧迫していたマスクも簡単に外れた。

 

「いやー何なんだろうな、このゲームは」

 

「貴方は?」

 

突然話しかけて来たのは、40代前後の茶髪男性だった。

 

「俺は宝樹って言うんだ。まあ…ゲームクリエイターだよ」

 

「知ってるよ、あの有名なゲームを作ったプログラマーの1人だよね」

 

今度口を開いたのは、金髪の男性。服装からして一般庶民には見えない。

 

「そういうあんたは誰だ?」

 

「僕?霜村生馬だよ。ほぼ大学行ってない大学生だよー。まあお金があるから卒業は余裕だけどねー」

 

((なんだこいつ…))

 

はじめと綺世は同時にそう思った。

更にその発言に反応したのが、若い女性だった。

 

「へえ、君金持ちなんだ!良いなあ。あ、私は菊川梢って言います!スナックで働いてます!」

 

「おいおい、呑気に自己紹介してる場合かよ。なあ麦ママ」

 

 

「その通りよ、これは一体何なの?」

 

『麦ママ』と呼ばれた50代の女性と、背が高い黒髪の男性がそう言う。

 

「本当だよ。あのテレビの上の爆発見て、俺マジで小便チビりそうになったよ」

 

「ぷっ!失禁しそうだったの!?ダッさーい!真津本くん!」

 

「う、うっせえ!」

 

内輪の話をしている3人をただ見ているはじめたちだったが、不意に霜村生馬が周囲を見てから声を上げた。

 

「ねえ!ママはどこ!?」

 

「ママ?」

 

「霜村志保だよ!まさかまだ中に!?」

 

「ああ、あの女性ならまだ中にいるけど…」

 

「うそ!ママがラスト!?」

 

それから生馬は金属のドアをドンドンと叩く。

はじめは時計を見て、あの画面にあった制限時間のタイムリミットが残り30秒であることに気付いた。

 

「ま、大丈夫だろ。確かに最初のインパクトは凄かったが、後の問題が簡単すぎる。ゲームとしてはイマイチだな」

 

「そうだぞ、お坊ちゃん。どうせ爆発なんてしねえよ」

 

「うるさい!ママー‼︎」

 

残り10秒になった時、シューという音がはじめの耳に入った。

その途端、はじめは駆けていた。

 

「ドアから離れろッ‼︎」

 

はじめは生馬の脇腹にタックルして、金属のドアから離れる。

そして制限時間に到達した瞬間…凄まじい爆音と揺れがこの部屋を襲った。衝撃で金属製のドアは吹き飛び、中から白煙が上がった。

 

「ま、ママ!ママァ‼︎」

 

生馬は脇腹を抑えながら、すぐに部屋の中に入っていく。

鼻を突く火薬の臭いと煙に喉がやられそうになるが…そこで、はじめたちは見てしまう。

 

「ひっ!」

 

「う、嘘だろ!?」

 

「ママ…ママァァッ‼︎

 

その床には、頭部どころか、上半身が完全に吹き飛んだ霜村志保の遺体が転がっていたのだ。

そして、はじめたちはここで漸く分かったのだ。

これは遊びでも何でもない、ただの殺人ゲームだってことを。




今回出した問題、皆さんも頑張って解いてみてください。
解答は次回の前書きに記しておきます。
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