関ヶ原の決戦→1600
エベレスト→8848
山の写真→山の日→0811
タラの写真→ポケベル暗号→4191
東京スカイツリー→2012
円周率→3141
今年は?→2024
何問解けたかな?
白煙舞う血生臭い部屋から出た一向だったが、生馬は即座にはじめに突っかかって来た。
「おいお前!お前がママよりも先に出たから…‼︎」
「でも、あの人は自ら…」
「うるさい!ママを…ママを返せぇっ‼︎」
年端の行かない子供のようにはじめに掴みかかる生馬を宝樹が止めた。
「待てよ、彼の言う通りなら…君のお母さんは自らを犠牲にして、人の命を守ったんだぜ?そこまで突っかかることはないだろ」
「そんな……チクショウ…!」
(俺を守ろうとして残った?)
はじめはそれを聞いても全く納得出来なかった。
つい数分前までは鼻息を荒くし、目も血走ってカンニングまでやろうとした彼女が急に態度を豹変させて、部屋に残ったのだ。その変化にはじめは違和感を覚えたが、考える暇もなく…次のゲームが始まった。
『ギャハハ!いやあ1人吹っ飛んでしまいましたねえ!でも嘆いている暇はないよ〜。次のゲーム開始だ!参加者諸君、壁に掛かった仮面を取りたまえ』
突然話し始めた熊のぬいぐるみに全員が驚きながらも指示に従う。
はじめたちはすぐに仮面を取るが、その裏には知恵の輪があった。しかも部屋の鍵を結びつけて…。
『その知恵の輪から鍵を取り出して、脱出するのが今回のゲーム。さっきと同じように1つの鍵で1人しか出ちゃいけないよ。破った場合、毒ガスで全員死んでもらうからね〜。それと…ここに居てもダメだよ?』
同時に喋る熊のぬいぐるみが突然炎上したのだ。
『早く逃げないと黒焦げになっちゃうよ?僕みたいにね〜♪ゲームスター…ガガッ!』
最後に炎上の影響でノイズが走ったと同時に、このゲームは始まった。
後方から迫る炎に焦ってしまい、ほとんどの参加者は手が震えたり、間違えてしまったりと正気ではいられなかった。だが、そんな人たちを横目にはじめはたった5秒ほどで知恵の輪を解いてしまった。
「え!はや!」
「はじめちゃん、早すぎ!」
「そんなツッコミを入れてる場合じゃねえぞ!この部屋、ガソリンが撒かれている。早くしないと焼け死ぬぞ!」
すると今度は宝樹が知恵の輪を外すことに成功する。
我先にと逃げ出す宝樹に続いて、真津本も外す。
残りは綺世を含めて、4人…。
はじめが見る限り、菊川と麦ママと呼ばれる女性は焦っているだけで問題は無さそうに見える。だが、生馬は死の恐怖のせいもあるだろうが、そもそも知恵の輪が苦手なような手付きだった。
「綺世、そこに指を通すんだ。そうすれば…」
「外れた…!」
「先に行け!」
「でも!」
「いいから行け‼︎」
はじめの怒声に綺世は大人しく従って、先に部屋を出て行った。
それからすぐに菊川と麦ママも鍵を取る。残りは生馬だが、はじめも我慢出来ずに生馬を突き飛ばし、自身の鍵を渡した。
「早く行け!毒ガスが出て死ぬぞ‼︎」
「うわあああああああああぁぁっ!?」
(世話の焼ける野郎だ!)
もう既に火ははじめのすぐ後ろにまで迫っていた。
流石のはじめも焦りが生まれ始め、普段ならすぐに解けるであろう簡単な知恵の輪が中々外せない。
「クソッ!」
その時、炎上が原因で天井が落ちる。
「!」
はじめは上を見上げることしか出来なかった。
「はじめちゃん?はじめちゃん!」
いくら綺世が呼んでも、燃え盛る部屋からはじめの返答はない。
綺世は部屋に戻ろうとするが、当然自動ドアのため中に戻ることは出来ない。何度叫んでも返答のないことに、綺世は徐々に涙目になっていく。
それを見ていた生馬が「は、はは…」と小さく笑った。
「さっきママを見捨てた罰だ。僕なんかを助けて正義面するからだ!」
生馬の言葉に綺世の身体が完全に止まった。
「助けて…って、まさかお前自力で知恵の輪を解かなかったのか!?助けてもらってその言い方ねえだろ!」
すかさず真津本が抗議の声を上げたが、生馬は惚けた表情をする。
「悪いけど、僕は助けてなんて一言も…」
その刹那だった。
綺世の細い腕が生馬の首根っこを掴むと地面に叩きつけた。そして、そのまま生馬の頬に拳を叩き込んだのだ。
「ッ‼︎な、何すんだこの暴力おん…ひっ!?」
「この…ゲス野郎…‼︎」
綺世は首を掴む手に力を込め、もう一発拳を打ち込もうとしたところで…。
「お前の悪い癖だぞ、綺世…」
「え?」
扉からはじめが出て来たのだ。
少し煙にやられたのか、服装のあちこちが黒く煤けていたが、怪我は一切していない。
「鍵を取った瞬間に天井が落ちて来て…少し危なかったぜ」
「はじめちゃん…!〜〜〜ッ‼︎」
綺世ははじめの胸に顔を埋めて泣く。
その間にはじめは頬を抑える生馬に視線を向けた。
「な、なんだよ?」
「これからは選ぶ言葉を間違えないことだな。折角生き残ったのに、不用意な発言で死ぬかもしれないぞ?」
生馬は顔面蒼白にしながらも、静かに頷いた。
「どうやら…今回は全員無事だったようだな」
そして彼らがいる部屋、そこはどう見てもおかしな空間だった。
ポット、カップ麺、お茶、そして熱帯魚が入った水槽…。
そしてすぐにゲームマスターの声が部屋中に響いた。
『さて、次のゲームは簡単。そこにあるカップ麺を食べ切ってこの部屋から脱出してください。食べないと…絶対出られませんからね?』
「腹減ってるからさっさと食ってやるよ!この野郎!」
真津本は無作為にカップ麺を手に取るが、はじめはすぐにその行動を制した。
「待った!投げやりに食うのは危険だ!」
「なんだよ!高校生が出しゃばってんじゃねえよ!」
やはり真津本はこの死のゲームにより、かなりストレスが溜まってるようだ。はじめの言葉なんて聞くつもりは全くなさそうだった。
「良いのかしら?はじめちゃんは、
「…は?」
綺世の一言で、全員の視線がはじめに集中する。
はじめも同様に言う。
「ついでに言うと、この女は神津恭介の孫娘だ。…さっきはあんな簡単な問題にも苦戦してたようだけど」
「っ!」
場を和ませようと、はじめは敢えて綺世を馬鹿にしたような表現を使った。しかし、綺世にはそう捉えられなかったようで、思いっきりはじめの耳を引っ張った。
「なんだって〜〜!?」
「いててて‼︎やめろよこんな時に…!…とにかく、不用意に奴の言うことを聞くのは危険だ。これもゲームなら、何かしら意味があるはずだ」
「でも、これだけで何が…」
「あの水槽の魚、こんな場所には合わないと思わないか?」
はじめは置かれている数個の水槽を指差す。
「あれは恐らく…毒見だ」
「毒!?」
「だから、カップ麺にお湯を入れたら少しこいつらにあげて、毒の有無を確かめるんだ。それが狙いだと、俺は思う」
「なるほど…頭いいわね!流石金田一耕介の孫」
はじめの言った通り、カップ麺を各々が取り、お湯を注いで少し時間が経ったら一部を熱帯魚に与えた。順番に与えたが、どの魚も異変はない。
「よし、じゃあ食べていいな」
こんな状況下でカップ麺を食べていることに違和感を覚えるが、これから先まともな食事があるとも思えないため、全員黙々と食べる。
しかし、何故か菊川だけお湯も注がずに生馬のカップ麺を見ていた。
「…なんだよ」
「いやあ、君のが美味しそうだなって。私、辛いのもしょっぱいのも苦手で、君のやつが1番食べられそうだなって」
「…あのオバさんから渡されたものだけど、やるよ」
端正な顔の菊川に言われては、ただの一大学生でしかない生馬には刺激が強くて断れなかった。
「ありがとう!優しいね!」
「いや…実は僕、ワインについて学んでいるんだ!ここから出れたら、美味しいワインをご馳走するよ!」
呑気な話をしている生馬に呆れているはじめたちだったが、逆に真津本は警告した。
「おい、お金持ちのボンボン!気をつけろよ、その女…とんでもない額の借金持ってるんだからな」
その言葉に笑顔だった菊川の表情が変わる。
「免責も出来ないレベルの借金だ。もし連帯保証人にでもなったら、一気に地獄行きだぜ?」
「そういう真津本くんこそ、大量の借金があるくせに」
「お前よりはマシだっつーの」
そんな会話が続いていると、不意に宝樹が今度は声を上げた。
「うるさいな、下らない張り合いをしてるんじゃねえよ。不味いラーメンがもっと不味くなるじゃねえか。それにお前ら…オーナーが麦ママってことは、スナックとかの酒を取り扱う店だろ?大嫌いなんだよ、酒も…それを扱う奴らもな」
宝樹の発言は間違いなく一言多かった。
真津本は「あ?」と怒りの声を漏らした。だが、今度は生馬が口を開いた。
「酒が嫌いなのは、昔付き合ってた女優のせいでしょ?」
「!」
「その女優さんがとんでもない大酒食らいで、下戸だったあんたはそれ以来酒を見るのも嫌になったんでしょ?SNSで見たから知ってるんだよ?」
はじめと綺世は静かにそんな彼らの話を聞いていながらも、カップ麺にお湯を注いで5分が経っていた。それぞれが食べようと思ったが、不意に麦ママが言った。
「この置いてあった箸…大丈夫なの?」
それにははじめも少し動揺した。
既に食べてしまっていたはじめは一瞬自分の身体に違和感がないかを抱いたが、何ともなく安堵した。それは綺世、宝樹、真津本、生馬、麦ママと同様だ。食べていないのは、菊川梢だけだ。
「まさか…ね」
菊川は再び熱帯魚の水槽に毒味をさせた。
すると、今度は熱帯魚が水中でのたうち回り、そのまま水面に浮かび上がった。
「いやああっ!?」
思わず菊川は持っていたカップ麺を床へと落とす。
「やっぱり…箸に毒があったのか!?」
「あのまま食べていたら…私…!」
部屋が静寂に包まれていると、不意に綺世が声を上げた。
「あっ!カップ麺の底に鍵が…!」
「何?ほ、本当だ!」
菊川を除いたメンバーが食べ終えたカップ麺から鍵を取る。
「ねえ、私…どうしたらいいかな?」
「別に問題ないだろ、不安なら残ったカップ麺の底から鍵取っちまえば?」
真津本の助言に従い、菊川は余ったカップ麺から鍵を取り出して部屋から出て行った。最後に残ったはじめと綺世も彼らの後を行こうと思ったが、ふと綺世が菊川が落としたカップ麺の中を見た。
そこには鍵がなく、空っぽだった。
「………」
「綺世?何してるんだ?」
「…別に、今行くわ」
綺世は何とも言えない違和感を感じていた。