金田一少年と神津少女の事件簿   作:GZL

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月江茉莉香の死に様を聞いた一行は静まり返ったが、すぐに綺世が疑問に思ったことを聞いた。

 

「その…狐の嫁入りってなんですか?」

 

ガクッと身体を傾けそうになるはじめ。呆れながら説明しようと思ったが、亮が代わりに説明を始めた。

 

「通常ではあり得ないようなことを指す言葉だよ。例えば…日が照っているのに雨が降っていたりとか…。あとは言葉のまま、狐たちが花嫁衣装で行列を作っていること。その時に行灯の火が行列を作っていることもあるんだ」

 

「この白狐村にもそにような伝説が残っていて…村では、祟りだとか狐様が来たとか…半分パニックみたいになっていたの」

 

綺世は「なるほど…」と呟く。

が、ここで全員カブスカウトと全く関係ない綺世の存在に気付いた。

 

「ところで…貴女は?」

 

美咲が問うと、心平が答えた。

 

「ああ、金田一の幼馴染みだそうだよ。名前は…確か…」

 

「神津綺世です、今日は…大変な時だと分かっていますが、ついて来ました」

 

「へえ〜!金田一くんの幼馴染みさん?彼女じゃなくて?」

 

「ち、違います!私は…!」

 

「そう、こいつは()()()幼馴染みのバカです」

 

(バカ?)

 

「勝手について来て、遭難組のみんなに会いたいと我が儘言う俺よりも成績悪くて短期的な行動を取るアホです。気にする必要ないからな」

 

悪口のオンパレードに綺世は拳を振り上げるが、仏壇の前でそんな蛮行は許されない。綺世はグッと怒りを押し込んで、震える口でどうにか笑う。

その姿を見た全員は、プッと笑った。

 

「お前…本当に変わらないな!」

 

「その言い方…全然変わってない!」

 

はじめは恥ずかしかったのか、少し視線を逸らす。

 

「…でも、私もお父さんもお義母さんもやっと落ち着いて来たわ。みんなも線香お願いね」

 

「…ああ」

 

はじめも含めた遭難組、そして綺世…全員が線香に火をつけて、彼女の冥福を祈った。そうやっている内に陽は傾き始めていた。時刻は既に15時を過ぎており、今から帰ろうにも終電に間に合いそうにない。

それを分かってうたのか、凛がこんな提案をする。

 

「折角みんな集まったんだし、ここに泊まっていったら?」

 

「え?良いの!?」

 

「うん、もう終電に間に合わないし…布団も全員分あるよ。それに今日は祭りの日だから、楽しんで」

 

「祭り?」

 

「さっき言った狐の嫁入りに見立てたお祭りなの。狐火流しもするし、それで死者を弔う。…茉莉香のためにも、やって欲しいな」

 

「当然だよ、凛!な!みんな!」

 

「そうだな…どうせどこかで泊まらないと帰れなかったし、少しお世話になるよ」

 

「だなだな!夜はみんなでトランプしたり…」

 

「ありがとう!でも私は狐の嫁入り役でみんなと参加出来ないけど、楽しんでいってね!」

 

「えー!凛〜それはないよ〜!」

 

綺世はやはり置いてきぼりだ。

話の輪に入れない綺世はゆっくりと部屋から出て、外に出た。

 

「…やっぱりついて来なきゃ良かったなあ」

 

そう呟く綺世をよそに、家の中から楽しげな会話が響いてくるのだった。

 

 

 

その後、久しぶりに訪れたこの白狐村を回ろうということになった。

綺世は知らなかったが、はじめたちは8年前ここでカブスカウトのキャンプをしていたらしい。ここの空気は非常に澄み渡っている。キャンプをするなら最高の場所だろう。

 

「お!覚えてるか?ここ、俺たちがサッカーした空き地じゃね?」

 

「そうそう!蝉沢!お前が下手すぎて、心平とかキレてなかったか?」

 

「そ、そんなことないよな?心平〜?」

 

「そうだなぁ?」

 

嫌な笑みを浮かべる心平に蝉沢は冷や汗を流す。

すると、乾が川原でサッカーボールを拾って来た。

 

「サッカーボール落ちてたぞー!汚いやつだけど」

 

「よし!それ寄越せ、光太郎!金田一たちも勿論やるよな?」

 

綺世は普段のはじめなら断ると思った。

自分に得にならないことはやらない、それがはじめの性格だからだ。

だが…。

 

「仕方ねえな…」

 

「え……」

 

思わず声を漏らしてしまった綺世。それほど、意外だった。

はじめは土手から空き地へ一直線に降りていくと、心平や光太郎たちとサッカーを始めた。その光景に綺世は唖然としていた。

 

「どうしたの?綺世さん」

 

不意に鐘本あかりに声をかけられ、「えっ!?いや、何でもない…わよ?」と余裕のない返答をしてしまう。

 

「そんな驚かなくても…いや、もしかして金田一くんの行動に驚いてるの?」

 

何故か自身の心情が見透かされていることに更に動揺してしまう。

 

「金田一くんと一緒にいる綺世さんなら…驚くかもね。どうせ金田一くん、向こうではずっと1人か何もせずに寝ているんでしょ?」

 

「ずっと…ではないですが、まあ大半は…」

 

否定しきれないことに綺世は恥ずかしく感じる。

 

「本当に変わらないな〜金田一くん。懐かしいな、あの頃の金田一くんの冷めっぷり」

 

「あの…気になるんですけど、どうやってはじめちゃんを手懐けたんですか?」

 

「手懐けたって…綺世さんにとって金田一くんは動物?」

 

笑いながら聞いてくる美咲、勿論綺世は即座に否定する。

 

「違いますよ!はじめちゃんは…まあ、あのような性格だから向こうでは取り扱いが大変で…」

 

「そうよね〜。私たちも大変だったよ、ねえ凛?」

 

「うん…当時の私も口数少ない方だったけど、金田一くんは…何だろう…。本当の一匹狼って感じ」

 

(やっぱり…)

 

綺世が想定していたような感じだと、改めて分かった。

 

「初対面では名前を言うだけ。趣味も生年月日も何にも言わない。最初は顔がかなり格好良くてクールなタイプかなと思ったけど、全く違ったね」

 

「そうだね〜とにかく人と関わろうとしない…無関心の塊だったね。初日は凛ちゃんのお父さんもかなり困惑していたよね?」

 

「うん…あそこまで可愛げのない小学生は初めてって言ってた気がする」

 

(…これは酷い)

 

「本当に…迷惑ばかりかけてすいませんでした」

 

「良いのよ、過去の話だし!今はきちんと溶け合っているし」

 

「それで…どうやってあの堅物を…」

 

「確か心平と陸がまず必死に話したのよ。それで多少返答くれるようになったのが最初の方。その後…ちょっと山でキャンプ中に遭難しちゃってね、その途中であかりが足を折ってしまったのよ」

 

「足を挫いただけだったんだけど、当時は痛くて…テヘ♪」

 

「そこで最初に動いたのが金田一くんだったね。あかりを病院まで連れて行く方法を全て1人で考えたの。それをみんなで褒めてから…変わったかなあ。サッカーにも嫌々ながらも行くようになったし、自分から食事のお手伝いとか…」

 

それを聞いて綺世は思い出した。

はじめは小学生5年の秋を過ぎた頃から、面倒な顔をしながらも多少は先生の言うことを聞いたり、手伝うようになったことを。何があったのか、当時は気になったが…このカブスカウトのお陰だったのだと判明した。

 

「さ!私たちは話したんだし…綺世さんの番よ?」

 

「え?私の番…って…」

 

「金田一くんのことよ!どう想ってるの?好きなの?」

 

どストレートに聞いてくる美咲とあかり。

綺世はどうにか話題を逸らそうと思ったが、2人の眼力にそれは無理だと悟った。

 

「私は…その……」

 

その先を言おうとした時、空き地から声が響いた。

 

「あっ!蝉沢‼︎どこ投げてんだ!?」

 

陸の声だった。

思わず4人とも空き地を見ると、蝉沢が蹴ったサッカーボールが柵を越えて、田んぼの中に落ちていった。それを見て陸は「あーもう!取ってくる…」と言って田んぼに向かおうとするが…。

 

「ダメよ!この時期に田んぼ入るとすんごい怒られるんだから!」

 

「マジ?全く下手なのは変わってないな、忍」

 

「るっせ!」

 

そして、陽も落ちて来たので一行は一旦凛の家へと戻り、祭りの準備を手伝うことにした。綺世はどうにかこの場をやり過ごせたと思い、深い息を吐く。

 

「あー動いた。少し運動不足かもな」

 

「お疲れ、どうだった?」

 

「楽しかったよ」

 

「…そう」

 

「ん?お前、なんか顔赤くねえか?熱か?」

 

「ッ!?そ、そんなことないよ!ゆ、夕陽のせいじゃないかな…///」

 

綺世の言葉にはじめは納得してないが「ま、いいか」と言って、心平たちと一緒に戻って行く。綺世は落ち着かない心を必死に止めて、彼らの後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数時間後、乾光太郎と()()は薄暗い森の中で話していた。会話の内容に光太郎は一瞬呆気に取られたが、すぐに笑みを戻してこう返した。

 

「そんな前のこと…いちいち覚えてないよ」

 

「………」

 

「そんなことは蒸し返さないで…今日は楽しく……ッ!?」

 

突然、乾の腹に焼け付くような痛みが走った。

視線を自身の腹部に向ければ、そこにはナイフが突き刺さっていた。誰が刺したかは一目瞭然だ。

 

「お前……!なん……で…?」

 

ずっと盟友だと思っていた乾は驚愕の表情を浮かべたが、すぐに前のめりに倒れて…そのまま動かなくなった。

乾を刺し殺した者は、彼の死体を運び出すのだった。

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