金田一少年と神津少女の事件簿   作:GZL

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File4

陸とあかりは何の説明もなしにはじめと綺世の背中を追う。

だが、業を煮やした陸ははじめに聞く。

 

「おい!どこに向かってるんだ?それと話って…」

 

「そうよ。それに何で私たちだけ…」

 

「それはお前らが1番信用できるからだよ」

 

「信用…?」

 

唐突な展開に2人は困惑する。

 

「ここで言ってしまうが、光太郎を殺した犯人は…俺たちカブスカウトの中にいると俺は考えている」

 

「えぇっ!?」

 

「おい!嘘だろ!何でだよ‼︎」

 

「さっきの光太郎を乗せていたゴムボート、陸とあかり…お前らなら心当たりがあるだろ?」

 

それを言われて漸く気付いた陸は思わず叫んだ。

 

「まさかあれ…‼︎俺たちが川下りで使ったゴムボート…!」

 

「あ‼︎」

 

「なるほどね…だからはじめちゃんは、カブスカウトの中に犯人がいると踏んでいるわけね…」

 

「だけど、動機は全くもって不明だ。6年経って今更殺人を決行する原因が分からない。だから、一緒に川下りしたお前らが信用出来るんだ。なあ、あの後…何があったか、知らないか?」

 

「ううん、私は何も。でも連絡先を交換してた子はいたかも」

 

「俺も同じだ。なんかトラブってたみたいな話は聞いたけど…詳しいことは分からねえな」

 

「…そうか。じゃああかりはいつこっちに来たんだ?凛の家にもいなかったし…」

 

「あートイレ行ってたの!それで遅れちゃって…。私もみんなと同じように凛のところに寄ったよ!話しかけても無言だったけど、右手を振ってくれたよ!」

 

それを聞いた綺世の表情が一瞬変化したが、はじめは気付いていない。

 

「変なこと聞いて悪かったな…。じゃあ、アリバイが唯一ない…()()に話を聞くとしよう」

 

そんな話をしていると、ふと前方に仄かな光が見えてきた。

それは祭りの会場に行く前に寄った、凛が鎮座している社だった。

 

「ね、ねえ…何でここに?」

 

「凛が…光太郎を殺したかもしれないからだよ!」

 

「「なっ!?」」

 

「そうね、あの時にアリバイがないのは彼女だけ…」

 

「…とにかく、俺は彼女に話を聞かないといけない。この胸のモヤモヤを消さないと…落ち着かないんだ」

 

社に入った一向は、あんな騒動があったとも知らずにずっと鎮座している凛の前に立った。はじめたちが姿を見せても凛の身体はピクリとも動かない。

 

「すまない凛、話しかけてはいけないことは重々承知してる!だけど…大変なことが起こったんだ!」

 

「………」

 

(彼女…様子が明らかにおかしい)

 

はじめが話しかけている最中だったが、綺世は彼女の肩に手を置く。

 

「おい綺世!何して……えっ?」

 

すると、凛の身体が崩れ落ちた。

一瞬何が起きたのか分からなかったが、数秒後…はじめは凛がどうなってしまったのか、理解することが出来た。彼女は延髄を後ろから刺されたのか、その箇所だけ血が僅かに滲んでおり、その呼吸は止まっていたのだ。

 

「り…凛!」

 

はじめの静かな悲鳴は…静かな森の中に木霊するだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから先、はじめはあまり口を開かなかった。

警察がやっとやって来ても、凛の家に篭っているばかりだった。その様子にカブスカウト仲間は、「昔の金田一みたいだ」とヒソヒソと話していた。綺世は一旦はじめを1人でそっとさせてあげることにして、寝る準備をしている美咲とあかりに改めて、あの日に何があったのかを聴くことにした。

 

「ねえ美咲さん、はじめちゃんとあかりさんと神小路くんが川を降っている間、何があったの?」

 

「そうね…出来事と言えば…心平と光太郎の喧嘩かな」

 

「喧嘩?」

 

「そう、川下りする前に金田一くんがペットボトルで即席の救命胴衣を作ろうって話になったの。その際に結ぶ紐を靴紐で補うって話になったんだけど…陸だけはどうしても了承しなくて」

 

「なんで神小路くんはそんなことを…」

 

「あーそれなら…」

 

不意にあかりが話に割って入った。

 

「陸、あの頃実はお金の面で凄い困ってたそうなの。今回の合宿も行けるか怪しいくらい…。その際に合宿用に履いてきた靴をそんなことで使われたくなかったらしいの」

 

「へえ、そうだったんだ」

 

美咲はそれを知らなかったようで、意外な表情をした。

 

「でも、そんな態度に茉莉香と光太郎は彼がいない間に悪口を言って…その態度に怒った心平は光太郎に殴りかかったの。結局は仲直りしたけど」

 

「他には?」

 

「そうねえ…あかりが足を折る前だけど、蝉沢が凛にキスしようとして、凛が森の奥まで逃げちゃったの」

 

思春期あるあるの話に綺世は溜め息を吐いて呆れた。

どうして男子はそんなことしか考えられないのか…と。

 

「それで凛を探していたら、途中で大きなスズメバチがいたの。それに凛は腰を抜かして動けなくて、私たちが助けたってわけ」

 

「そういえばそのスズメバチ、確か光太郎が捕まえて駆除してくれたよね!」

 

「そうだったね、ペットボトルの中に餌を入れて捕獲して…まあその後、あかりが怪我して大変だったけどね。…それくらいかな」

 

「そう…ありがとう」

 

その話を終えて、また美咲があの話題を吹っかけてきた。

 

「で?あの時は蝉沢くんが逸らしたけど、どうなの?金田一のこと、好きなの?」

 

「い、いやだから私は…!」

 

唐突な話題に綺世はまた彼女らの前で顔を赤くする。

 

「それとも…嫉妬してる?私たちに」

 

「えっ?どうして…」

 

「自分では出来なかった金田一の心を解放した私たちに、己の無力感に嫉妬……なわけないよね!」

 

「…ある意味、正解」

 

綺世はポツリと呟いた。

 

「私ははじめちゃんのことを全て知っている()()()だった。ずっと一緒にいて、何が好きで何が嫌いなのかも、全部。でも昨日と今日ではじめちゃんが普段私に見せない姿があって、ちょっと…ね」

 

それを聞いていたあかりと美咲は痰を切ったように笑い上げた。

 

「…え?」

 

「そんなことで思い悩んでいたの!?綺世さんは乙女だね〜」

 

「本当!たったこれだけで…本当に面白い…!」

 

お腹を抑えて笑う2人に怒りよりも先に恥ずかしさが込み上げて来た。

 

(でも確かに…何でこんなことで悩んでたの!?私って…自分が想像するより冷静じゃない?)

 

そんなことを考えていると、家の戸が開く音が聞こえた。

3人はカーテンを開けて外を窺うと、そこにはどこかへ出掛けるはじめの姿があった。

 

「金田一のやつ…こんな夜更けにどこへ…」

 

綺世は寂しげな後ろ姿を見て放っておけず「ちょっと様子見てくる!」と2人に行って、同じく家を飛び出た。

 

 

 

 

 

 

はじめは眠れず、散歩のつもりでこの真っ暗な村の中を歩いていた。

街灯は少しあるが、足元は見えないほどの暗闇で足を踏み外せば田んぼの中に落ちて泥だらけだろう。

それと同時に、今日の夜…乾光太郎が殺された時のメンバーの状況について考えていた。

 

「あの時、確かに俺たちにはアリバイがあった。それに凛の方でも…あかりたちがまだ生きていたと証言しているから、大体のメンバーは犯人から除外出来る。でも…」

 

はじめの心の中は、納得しなかった。

外部から来た犯人なら、わざわざあんな電報を送ることも、光太郎を運ぶことに利用したゴムボートを意図的に使うことは全くない。何度考えても、はじめには犯人はカブスカウト仲間の中に犯人がいるとしか思えなかった。

 

「でもどうやって…?それに何で?どうして6年も経って…。あー畜生!分からねえ!」

 

悩んでいる、みたいだね

 

不意に暗闇の中で、声が聞こえた。

思わず周囲を見渡して「誰だ!?」と大きな声を出してしまう。

そして、暗闇の中に誰かが佇んでいた。身なりからして女性だ。

茶髪ではじめと同じ年くらいだ。

 

「君は……いや、まさか…」

 

茉莉香だった。

6年会っていなくても、はじめには分かった。

 

「茉莉香、お前は…死んだはず…なのに…」

 

今見えている茉莉香は夢か幻だと思った。

はじめ自身、幽霊や呪いといった非科学的なことは一切信じていない。だが、そう思っても暗闇の中に立つ人物は茉莉香だった。

 

金田一くん……()()を、救って

 

「茉莉香?何て言ってるんだ?もう一度…大きな声で…」

 

「………」

 

茉莉香はもう何も言わずに暗闇の中へと消えていく。

 

「おい!茉莉香‼︎」

 

「はじめちゃん!危ないよっ‼︎」

 

その時別の声で我に返ったが、はじめは無意識に足を前に出していて、その先は坂で真っ直ぐに落ちると田園だった。だが、その声に気付いても遅く、はじめはそのまま転げ落ちてしまう。

 

「うわっ!?」

 

バッシャーン‼︎と大きな音を鳴らして、はじめは落ちる。

だが、不幸中の幸いか、田園ではなくその横の小川に身を浸していた。

そして綺世も坂道を降りてくる。

 

「もう!何やってるのよ?」

 

「だって…茉莉香が…」

 

「茉莉香?あそこには誰もいなかったわよ?」

 

「馬鹿な…だって…」

 

寝惚けていたのか、それとも幻覚でも見たのか…はじめは納得行かないまま小川の中から出ようとする。すると、足元に何かが当たった。

拾い上げると、それはサッカーボールだった。

 

「サッカーボールか…」

 

はじめがそれを持って暫く立っていると、不意に思い至った。

 

「なあ、綺世…この小川の先…確か水門があったよな?」

 

「え?あったけど、それがどうし……あっ!」

 

綺世もどうやら気付いたようだ。

 

「あとは…凛が殺された時のアリバイだ」

 

「…はじめちゃん、まさか気付いてないの?」

 

「あ?何がだよ」

 

この次の綺世の発言に、はじめは目を大きく見開いた。

どうしてあの時気付かなかったのか、自分で自分を殴りたい気分になった。だが、そうなると()が犯人ということになる。

 

「バカな…あいつが…あいつが何で…!」

 

「はじめちゃんが塞ぎ込んでいる間に、私が剣持警部に頼んでもらった。多分…これが動機じゃないかな」

 

綺世が見せた携帯の画面にはじめは更に動揺し、再び小川に身を浸しそうになる。それ程のショックがはじめを襲っていた。

 

「はじめちゃ」

「悪い、今は何も言わないでくれ」

 

はじめは携帯を綺世に返すと、漸く小川から出た。

ポタポタと髪から滴り落ちる水は、本当に小川のものなのか、それとも彼の瞳から溢れた涙なのか、綺世には分からなかった。

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