はじめは綺世を連れずに1人…茉莉香が殺された現場である白狐神社の中に入っていた。既に規制線は外されており、はじめでも容易に入れる場所だった。
中には大量の狐の面と狐の嫁入りを描いた古い絵が置かれていた。
しかし中に埃はほとんどなく、かなり綺麗…と思ったが、隅には埃が溜まっていた。掃除が雑に感じる。
更に凛の父によると、ゴムボートはここに置いてあったと言っており、電報で使ったであろう黒電話も置いてある。
「間違いない、ここから全てが始まったんだ」
はじめは白狐神社を出ると、また同じ田んぼの畦道を歩く。
この前は綺世がやって来たが、今回は彼女がいる気配はない。
考えが頭の中を巡ってしまい、はじめはほぼ無意識で畦道を歩いて行く。すると、その畦道の横の水路にサッカーボールが引っ掛かっていた。それを無意識のうちに拾い、はじめは過去の思い出に浸る。同じようにこんな水路ではじめがボロボロのサッカーボールを拾って、みんなとサッカーした思い出を…。
「…待てよ?」
はじめは田んぼを振り返り、水を貯めるための水門に目が行く。
「…なるほど、そういうことか…」
あまりに感情の篭ってない言葉に、はじめ自身も分かっていた。
ここまで使命感に駆られないことはなかったからだ。だが、はじめにはこの真実を見逃すことなど、絶対に出来ない。
はじめはサッカーボールを水路に戻した。そのまま凛の家に戻ると、朝日が昇り始めていた。虚な目で扉を開けると、凛の父親が出勤するところだった。
「金田一くん、こんな夜にどこに?」
「いえ…別に…。それよりも凛のお父さん、お願いがあるんですが…」
はじめの提案を聞いた彼は驚いたが、それを何故かは聞かなかった。
それははじめの表情が…とにかく暗かったからだった。
その日の夕刻を過ぎた頃、神小路陸と鐘本あかりは川の
「金田一!」
「どうしたの?私たちを突然呼び出して…」
「呼んだ理由はこれだよ」
はじめは両手の籠に灯籠を入れて持って来ていた。数は4つだ。
「これを流すんだよ、俺たちで…死んでしまったあいつらを弔うんだ」
「ならみんなでやろうよ!私、呼んでき」「悪いが…それは無理だ」
「はじめはあかりの言葉を遮る。
「あいつらには…言えない」
「なんでだよ金田一…俺たち親友だろ?それに茉莉香たちを弔うのに、何で4つなんだ?数が1つ多いんじゃ…」
「その理由は…お前がよく分かっているんじゃないか?陸」
陸ははじめの言いたいことが分からずに怪訝な表情を作る。
その
「さて…始めようか。この事件の真相を明らかに…。どうやって
それを聞いた陸の表情は流石に動揺する。額から汗が流れ落ちる。
横で聞いているあかりは何のことか、まるで分からずに交互に2人の顔を見る。
「な、何を言ってるの?金田一くん?」
「…茉莉香、光太郎、凛を殺した犯人に言ってるんだよ。そうなんだろ?…陸」
驚きの事実にあかりは目を大きく見開いた。
陸は冷や汗をかいたまま、一言も発することはない。
「まず茉莉香殺害に関してだが、あれは突発的な犯行で、アクシデントがあったせいで彼女を狐の嫁入りの姿にしたんだ」
「どういう理由で…」
「血痕だよ。茉莉香の血じゃない、お前自身の血だ!…あの時、口論かトラブルになったお前は、何らかの拍子にどこかを怪我した。その傷付いたことが引き金かは分からないが、茉莉香を殺害してしまった」
陸は黙ったまま、一言も発することはない。
「だが冷静さを取り戻したお前は、事の状況のまずさに気付いた。茉莉香の服を持ち出したりすれば、その理由を勘繰られる可能性があった。そこで思い付いたのが、【狐の嫁入り】だ。大量にあったお面と白いシーツを着せれば、その不自然を誤魔化せる。おまけに小さな村だ。忽ち、呪いなどといった世迷言に踊らされると考えたんだ」
ここまでの推理に陸は視線をはじめに向けれなかった。
少し後ろで聞くあかりは驚きと困惑の表情を浮かべていた。
「だが…お前は一線を超えてしまったことで、更なる計画を考えた。お前を3人も殺害に至らしめた
「用水路?え…光太郎は川の上流から流されたんじゃ…」
「いいや違う。陸はゴムボートを用水路に浮かせた。事前に水門を開けて水を溜め、一気に門を開けることで、ゴムボートを流したんだ。あの屋台から水門まで歩いて5分…往復10分もあれば十分犯行は可能だ。陸、何か反論はあるか?」
「…ああ、あるぜ?」
陸は汗を拭い取ると、こう言った。
「あくまで今の推理は…俺じゃなくても、カブスカウト仲間なら誰でも出来るってことだよな?何で俺なんだ?それに凛の殺害はどう説明する?俺はあの時、お前と一緒に狐火流しの会場に歩いて、手を振ってくれた凛を見てるんだぞ!?」
「…
はじめの問い返しに思わず陸は目を見開く。
「あれは巧妙な心理トリックだ。お前は俺たちの後ろにいると、
「まさかそれで先に凛を殺したっていうのか?それは無理だ!仮に殺せたとしても、あの花嫁姿の衣装をまた綺麗に戻すのには時間がかかる。つまり…あの時凛は「誰もあの時凛を殺したとは言ってないぞ」
はじめは陸の言葉を遮る。
「凛は俺たちが来るよりも前に殺害されていたんだ。それであの時振っていた真っ白な手…あれは、お前の右手だったんだよ」
「‼︎」
陸の表情に動揺が走った。
「白粉を付けた手を振れば、少し距離の離れた俺たちでも騙せると踏んだ。その企みは成功した。俺たちが消えるのを待ち、その後穴を開けた障子を戻した。…違うか?」
陸は唇を噛み、顔を下へ向ける。
だがここで、あかりが横から口を挟んだ。
「ちょっと待って!金田一くん!言わなかった?私あの時、みんなより少し遅れて行って、私が声をかけたら凛が手を振っていたのを見たって!」
「……」
「もし金田一くんの推理通りなら、あの時凛は…し、死んじゃっていたんでしょ?だから…」
はじめは無言のまま項垂れる陸の前に立ち、ポケットに入れたままの陸の右手を掴んで、自分たちの前に曝け出した。その手には白い粉が付いており、ポケットからもサラサラと零れ落ちた。
「!」
「あ…」
「これでも…そんな詰まらない言い訳をするのか?あかり」
「……」
「今までの話は全て状況証拠だった。あの蔵から陸の血痕が見つかればそれで問題なかったが、半年も経っている。見つからない場合もある。だけど、この白粉を付けた手だけはどうしようもない。公衆の面前で出すわけにもいかず、お前はポケットに突っ込んでいた。それがポケットに付着したんだ。これでお前が犯人だという十分な証拠になる」
「でも…でも…‼︎」
あかりははじめの胸板に顔を押し付けて叫んだ。
「これでいいの?ここで…みんなの友情を金田一くんは壊すの?せめて…せめて外部の人が犯人なら私たちの友情は壊れない‼︎だから…」
はじめはあかりの方を見ていない。
その真っ直ぐな眼差しは陸にだけ向いている。
「確かに…そうなれば、どんなに楽だったかな。だけど、その友情を利用して殺したこいつを野放しにする方が…俺には許せない。それにあかり、お前が庇った理由は、そんな詰まらない綺麗事じゃないだろ?」
「っ!」
ビクッと肩が動くあかり。
「あかり、何故陸が3人を殺したのか知ってるんじゃないか?そして、その動機にあかりも一枚噛んでいる」
それを聞いた陸が反応する。
「どういうことだ?金田一」
「それよりも認めるのか?陸。出来れば…どうしてこんなことになったのか、聞かせてくれよ。俺もお前らを追い詰めるのは辛いんだ」
「…分かったよ。確かに俺があの3人を殺した。とは言っても、金田一のことだ、動機は粗方掴んではいるんだろ?」
「ああ、カブスカウトの後、お前の母親が急死、くらいしか分かってないが…母親の死と3人に何か関係があるのか?」
陸は少し黙り込み、はじめが持って来た灯籠4つ全てに火を付けると、ゆっくりと川に流した。そして最後の灯籠を流した後に、ポツリと呟いた。
「金田一…これは償いだよ」
「償い?」
「……っ」
「ああ、あの3人の悪ふざけが…俺の母さんを、殺した」
また頑張って書いていくので、今後ともよろしくお願いします。