金田一少年と神津少女の事件簿   作:GZL

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綺世がその脅迫状を読み終えると、怯えた口調で用務員が口を開いた。

 

「の、呪いだ…。これはきっと50年前の…!」

「梶間さんッ‼︎」

 

梶間という用務員の声を遮って声を上げる者がいた。

四ノ倉学園の公式HPに載っていた久米学長だ。

 

「呪いなんてそんなものあるわけないでしょう!今回()全て燃やしてしまうんです!生徒は早く教室に戻りなさい‼︎」

 

圧倒的な口調でその場を制圧した久米学長は、最後に浅野を見て小さな声で呟いた。

 

「浅野先生、この授業が終わった後、学長室へ来るように。今後の対応を相談します」

 

「…はい」

 

久米の目は、明らかに浅野を疑っているような視線だった。

綺世はそれが気になりすぎて、その後の授業は全く頭に入って来なかった。

 

 

 

 

 

 

綺世は校舎から帰宅するところで、佐木が合流して来た。

 

「いやはや先輩、とんでもない所に来ちゃいましたね!」

 

「その様子だと、佐木くんはこの場所がいわく付きだって知っていたようね?」

 

「えーえーもちろん!こんな不可思議な場所、僕にとってはビデオを取るための場所みたいなものです!」

 

その好奇心には関心するが、他に気にするものはないのかと半分呆れる綺世。その時、綺世の視線にぐちゃぐちゃにされた園芸が目に入った。

 

「こんなこと、一体誰が…」

 

「室井だよ」

 

背後から聞こえた声に振り向く綺世たち。

そこには綺世とほぼ同じ身長の学ラン姿の男子生徒がスコップとバケツを持って立っていた。

 

「貴方は?」

 

「僕は宮園と言うよ。それよりも退いてくれ、この花壇を直さなくちゃ」

 

「わざわざ予備校の花壇の手入れが趣味とはね」

 

「変わってるって言われるかもしれないけど、君みたいな優秀な人間には分からないことだよ」

 

「…室井って、さっき浅野先生に噛みついていた生徒のことよね?」

 

「なあに?私の話ぃ?」

 

再び驚いて振り向くと、綺世が最も苦手なタイプの室井が立っていた。

 

「まさか宮園、その花壇を荒らしたのが私だって言っているわけ?どこにそんな証拠があんのよ、変態が」

 

先生に対して話す時よりも好戦的で鼻につく態度だが、綺世はポツリと呟いた。

 

「じゃあ、その泥まみれの靴は何なのかしら?」

 

綺世に指摘された室井は思わず足元を見る。

ローファーには明らかに先程付いたばかりの泥が付着していた。

 

「!」

 

「せめてそれを落としてから茶化しに来たらどう?」

 

「こんの…ただのクソ女が‼︎」

 

室井は拳を振るう。

勿論、綺世も相手が来るならやり返そうと思っていたが…その室井の拳を掴んで止める手が出て来た。

黒髪のショートヘアで、きちんとセーラー服を来ている女子高生だった。

 

「おい、毎回何やってんだ?室井ぃ…」

 

その真面目そうな服装とは裏腹に、言葉遣いは最悪と言っても良いだろう。

 

「ひ!ふ、古谷…ちゃん!」

 

室井は顔を真っ青にして、その女子高生の名を口ずさんだ。

 

「何度勝手なマネをするんじゃねえと言わせれば気が済むんだ。このクソが」

 

「ご、ごめんなさい…!」

 

心底怯えている室井の拳を掴んだまま、古谷は綺世と佐木を一瞥する。

絶対零度のような視線に思わず息を飲む2人。

だが、彼女は何もすることはなく、不気味な笑みを見せただけでその場を後にした。

彼らが消え去った後、綺世は土いじりをしている宮園に質問した。

 

「なんで彼らはこんなことを?」

 

「浅野先生がニワトリ殺しの首謀者だって、学園に言いふらさなかったからさ」

 

「アレが?一体何故?」

 

「奴らは学園から先生を追い出したいからだよ、深町充の死の真相を知っているからね!」

 

「深町?」

 

「そう、彼はこ「神津さん‼︎」

 

宮園が何かを言っている途中で、遠方から走って来た浅野の声に遮られた。

 

「浅野先生、どうしたんですか?」

 

「まだ学園内にいると聞いて…少し、相談したいことがあるんだ。時間、空いているかい?喫茶店でコーヒーでも奢るから」

 

生徒にそんなことをして大丈夫なのかと少し不安になったが、切羽詰まった表情に綺世も断りきれない。佐木も連れて行こうとしたが、浅野の表情を見ると、内密な相談に見えたため彼を先に帰した。

そのまま近くの喫茶店に入ると、浅野は早々とコーヒーを2つ頼んで席に持って来てくれた。

 

「それで…相談というのは?」

 

「…例のニワトリの首吊りイタズラ、あれは僕がやったという噂が立っているんだ」

 

「そうですね」

 

綺世は淡々と返答した。あの黒板の文章や学長たちの態度を見れば、誰でも分かるものだった。

 

「しかし僕は決してやっていない。いくらあのばら撒かれた答案用紙が僕の担当講義だったとしても…!」

 

「…それで、私に何を?」

 

「貴女の推理力は知っています。そこでお願いです、この事件の犯人を突き止めて欲しいんです‼︎」

 

浅野は頭を下げた。

濡れ衣を着せられるのは、綺世自身経験したことがあるため気持ちは分かっていた。だが…。

 

「すいません、私はあの予備校で【勉強】するために来ているのであって、【犯人探し】をするつもりは…」

 

「…そう、ですよね。こんなことをただの一学生に頼むのは変な話です。でも、僕には君しか頼れる人がいない」

 

その切なる願いに綺世も少し心が揺れ動く。

 

(本来の目的を忘れるな…。私は、はじめちゃんを励ますために…)

 

そこで綺世は条件を提示した。

 

「じゃあ…私だけに特別講義を開いてください。1番苦手な数学の講義を」

 

「え?それだけで?」

 

「さっきも言ったでしょ?私があそこへ行く目的は、【勉強】のためだって」

 

「分かりました。それくらいお安い御用です」

 

「交渉成立ね」

 

綺世は浅野の手を握った。

浅野はやっと心の置き所が出来たのか、表情を和らげた。

しかし、その次の日…綺世にも想定出来ない事態が起きることを、この時は分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、綺世は同じように佐木と合流し、四ノ倉学園へと足を踏み入れた。すると、そこでは何故だか生徒が数学の教科書を睨んでいるように凝視していた。

 

「あれ?どうしてみんな今日はいつも以上に…」

 

「佐木くん、忘れたの?今日は数学の試験よ」

 

「げっ!?本当ですか!?あわわわ、どうしよう」

 

「なら、頑張ることだね。皆さん、席について!」

 

佐木の後方から浅野が問題用紙と解答用紙を持って、この教室に入る。すぐに始まると思った試験だが、最初にくじ引きを始めた。これはカンニング対策のために、どこの机に座るのかはランダムになっているものだ。

絶望していた佐木だったが、綺世の後ろに自身が座るという奇跡が起きる。

 

「じゃあ、これ。綺世さん」

 

「はい、ありがとうございます」

 

そして試験が始まる。多少難しい問題であったが、綺世はスラスラと綺世は別に自分の実力を試したいだけで、佐木がカンニングしようがどうでも良かった。綺世は可哀想な佐木に同情して、わざと解答用紙を見えるようにして、寝る体勢を作った。それを見た佐木は(先輩!先輩は神です‼︎)と思いながら、その試験を書き写していく。だが…同じカンニングを行っている者が、もう1人いたのだ。それが佐木の右隣に座っていた室井だった。綺世がわざと見せているとは気付くはずもなく、彼女も綺世の解答を書き写していく。

そして1回目のNo.15の数学の試験が終わり、2回目のNo.16、3回目のNo.17と終わっていき、綺世の疲労も少し顕著になり始めた頃…()()は聞こえた。

 

・ねん・・おこ・・・・よ〜・・

 

その音、歌詞を綺世の耳は一度聞いたことがあった。

あの鶏が首を吊った時に流れていた…不気味な子守唄だ。

それは次第に綺世だけでなく、他の生徒も気付き始める。同時に試験中だった1人の生徒が叫びを上げた。

 

「うわああああああああぁっ!?あいつだ…深町が僕をぉ‼︎」

 

机に突っ伏して、頭を抱えながら叫ぶ男子生徒に綺世は動揺する。

それでも綺世はすぐに冷静さを取り戻し、試験中であるにも関わらず子守唄が聞こえる部屋へと駆ける。

教室から出て1番奥の部屋から響いていることは明らかだったが、鍵が閉められており中に入れない。

 

「鍵が掛かっている…。中で誰かが流しているの?」

 

「先輩ー!」

 

「佐木くん、丁度良かった。この部屋をぶち破るのよ!」

 

「え?でも合鍵を待った方が…」

 

「それじゃあイタズラの犯人が逃げちゃうかもしれないでしょ?さあ早く!」

 

綺世は佐木を促して、同時に扉に体当たりした。

建て付けが悪かったのか、扉はたったの一撃で破壊された。

中には前回同様、血で汚れた解答用紙がばら撒かれており、その上に浅野が倒れていたのだ。

 

「浅野先生!どうしたんですか!?」

 

綺世は浅野の身体を揺すると、すぐに目を覚ましたことで、彼の無事を確認した。

だが、後ろにいるはずの佐木は顔を真っ青にして前方を向いたまま固まっていた。

 

「佐木くん…?」

 

綺世の問いに佐木は答えない。

何があるのかと思って綺世も視界を浅野と佐木から変える。

どうせ今回も鶏が首を吊ったものだろうと思い込んでいたが、そんな生優しいものではなかった。

ポタポタと血が滴り、()()の足元には大きな血溜まりが出来ていた。それは首に切り傷を入れられたことによるものだった。

ゆっくりと視線を上へ上へと上げると、そこには昨日…綺世たちに睨みを入れて恐ろしさを垣間見せた古谷が、無惨な姿で首を吊っていたのだった。

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