金田一少年と神津少女の事件簿   作:GZL

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黒焦げになった多間木は担架に乗せられて救急車で運ばれていった。

微かに呼吸をしていたが、あれはもう手遅れだろう。

だが、はじめも綺世もどこか複雑な心境だった。

多間木がやったことにしてみれば…因果応報とも呼べる末路だ。

はじめは頭を振り払って、高級車でやって来た明智と青山刑事に事情を聞く。

 

「火災の原因は?」

「車の下に爆弾付きのラジコンが仕掛けられていた。起爆は遠隔操作だ」

「つまり、犯人は多間木が車に乗るを見て爆発させた…ってことよね」

 

それは間違いなかった。

でなければ、あんなタイミングよく爆破出来るはずがない。

 

「しかし…君たちが巻き込まれなくてよかった」

「…まあね。俺が怒りに飲まれていたら、丸焦げだったろうな」

「…死んで当然だ」

 

再び聞こえた青山の言葉。

3人は青山に視線を向けたが、綺世だけは今回ばかりは強く見ることが出来なかった。多間木が死に際に口走っていた罵詈雑言の数々が頭から離れなかったのだ。

 

『にしても…少年法って便利だねえ!日本で犯罪するのは、20歳(はたち)前ってーか?』

 

「…っ」

 

その表情を読み取ったのか、青山がこんな事を言ってきた。

 

「君も多間木の本性を見たようだね」

「それがどうした?」

「まりなの妹、えりなちゃんも言っていただろう?あんな奴らに生きる資格なんてあるのかと。僕は全くないと思っているけどね」

 

はじめは怪訝な表情を浮かべた。

 

「どうしてアンタが被害者の親族と会っていたことを知っている?」

「…僕は、十神まりなの婚約者だった」

 

衝撃の事実に明智も驚く。

 

「明智警視、申し訳ありません。伝えるべきことでしたが…言ってはこの捜査から外されると思ったので」

「…その始末書はあとで書いてもらいますよ。それより起爆装置などは?」

「…はい。爆心地から少し離れたところにラジコンのコントローラーが落ちていました。周辺の聞き込みですが、現時点では不審人物などの情報はありません」

「そうですか…。金田一くん、神津くん。一旦警察署へ行きましょう」

「ちょっと待ってください」

 

青山は明智に意見した。

 

「またこの高校生たちを連れて行くのですか?前にも言いましたが、彼らは一般人です」

 

明智は面倒そうな表情を作ったが、青井の言うことは最もだった。

しかし今回ばかりははじめが反論した。

 

「アンタも…恋人が死んだ時は死に物狂いで事件に関与してたんじゃないのか?」

「!」

「その時と同じだ。俺と綺世は剣持のオッサンの無実を証明したい。そのために動いているんだ」

 

青山は少しだけ笑って「僕と同じ…か」と呟いた。

少しははじめたちの熱意が伝わったようだ。

 

 

 

 

その足で警察署へ着いた一向だったが、悪い知らせが入る。

リモコンに付いていた指紋だが、剣持警部のものだったのだ。

おまけに最初の事件で魚崎殺害の時に、一緒に入っていく帽子姿の男…。

これは数日前、剣持が学校に来た時に着けていたものと全く同じ格好だったのだ。ここまで来たら明智も私情を挟むことは出来なくなっていた。

即座に重要参考人として、剣持警部は指名手配を受けた。

はじめと綺世も何か言いたかったが、剣持警部が犯人と指す証拠が多く、明智警視の取った行動も理解出来なくなかった。

だが、綺世は最悪の結末を予測した。

 

「刑事の顔写真公開って…下手したら刑事続けられないんじゃないの?」

「…ええ。事件解決が長引けば、ですが」

「マジかよ…。早く犯人を突き止めないと…」

 

その時、110番が鳴った。

電話に出た刑事の顔色がすぐに変わる。

 

「明智警視!毒島から110番です!」

 

明智はそれにすぐに応える。

 

「明智です。どうしました?」

『おい!早く助けに来い‼︎殺される!』

 

その口調は鬼気迫るものだった。

 

『アンタらの病院から逃げ出して、ネカフェを転々としてたら、帽子を被った男に追われたんだ!絶対あの刑事だって分かって、よく分からない廃ビルに逃げ込んだんだ‼︎いいから助けに来い!このままじゃ俺もアイツらみたいに…!』

「落ち着きなさい‼︎どこか分かりますか?」

『言ったろ‼︎どっかの廃ビルだって‼︎早くこ、もごっ!?むぐぐぐ‼︎』

 

ここで電話が切れる。

最後の苦しむ声から犯人に捕まったことは明白だった。

 

「おい、まずいんじゃないのか!?」

「逆探知は?」

「一応できましたが、範囲が広すぎます!この中から特定の廃ビルを見つけるのは…」

「さっきの電話、もう一度聞かせて」

 

綺世はヘッドホンを付けて、先程の毒島の電話を再び聞く。

文句を垂れ流す毒島の焦る声の背後から規則的な金属音が聞こえる。

 

「ん?」

 

そこを再び繰り返しで聞き続ける。

カーン、カーンと聞こえた瞬間、綺世はこれが何か分かった。

 

「金属バットの音だわ!どこか野球場も近く…」

「いいや、そんな規則的な間隔で聞こえるはずがない。野球場ではなく…バッティングセンターだ!」

 

そして逆探知で見つけた範囲から、近くにあるバッティングセンターは1つしかなかった。すぐにはじめたちはパトカーに乗って、その場所へと急行する。

監禁に適していたのは、バッティングセンター横のビルの中だった。

あまり使われていないらしく、鍵は開いていた。

中に続々と警官が雪崩れ込んで行き、同じようにはじめと綺世も入る。

先頭を切った青山が3階の扉を押して開けようとしたが、何かにつっかえて開かなかった。

 

「なんだ?」

「…奥に何かでバリケードを作っているんだ。力づくで押して入ろう」

 

男性数人で力を込めて押すと、椅子やテーブルがガタガタと音を立てて崩れた。これが扉が開かない原因だった。

そして奥へ進むと…。

 

「ぶ、毒島…!」

 

天井から首を吊った毒島の姿があった。

すぐに下ろして脈を確認したが、既になかった。それでもはじめたちは諦めなかった。心臓マッサージで蘇生を試みる。幸い体温がまだ残っており、首を吊られて数分くらいだったのだろう。

そして最後にAEDによって、毒島の心臓が再び動いた。

 

「ぶはっ!?」

 

毒島は荒くも弱々しい呼吸を取り戻した。

はじめたちは「ふう」と息を吐いて、3人目の被害者を出さなかったことを安堵した。

しかし…綺世はその奥で立っている人物に絶句した。

 

「け、剣持警部…!」

 

ずっと行方不明だった剣持が、帽子とコートを着て立っていたのだ。

 

「か、神津くん…ここで何を?というか…なんで毒島が…」

 

明智は毒島を他の警察官に任せて、腰から手錠を取り出した。

 

「詳しい話は、署で聞くとしましょう。剣持くん」

 

そのまま手錠をかけた。

それと同時に剣持の意識が遠のいていく。

 

「オッサン!」

 

何故こんなところに剣持がいたのか…。

そしてどうして意識を失ってしまったのか…。

だが、はじめと綺世はそんなことどうでもよかった。

剣持はこの閉じられた空間に首を吊った毒島と一緒にいたのだ。つまり…毒島を殺したのは…。

 

「…いいや、そんなわけない」

「はじめちゃん…」

「どんなクズな野郎でも、オッサンは決して人殺しだけはしない。…この事件の真犯人は、俺が見つけ出してやる。ジッちゃんの、名にかけて…」

 

綺世ははじめの決意を、静かに見つめているのであった。

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