金田一少年と神津少女の事件簿   作:GZL

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学園七不思議の呪い
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男子生徒は雨の中、傘を片手に急いで校舎の中へと戻っていく。

木造の校舎であるため…何気なく湿った感じが校舎の中にまで感じ取れ、気分は良くない。今すぐにでも帰りたい男子生徒だったが、財布を教室に落としてしまったからには、帰るに帰れない。

『生物準備室』と書かれた教室に入り、電灯を付けようとするが…消灯された時間であったため、仕方なく懐中電灯で財布を探す。

 

「あったあった!」

 

男子生徒は安心し、無事帰路に就こうとした時…不意に背後に『何か』あると感じた。ゆっくりと振り返ると…女子生徒が()()()()()()()()

思わず男子生徒は高々と悲鳴を上げ、尻餅を着く。

女子生徒はスカーフが電灯に引っ掛かり、首を吊った状態となっていたのだ。恐怖で固まり…何も出来ずにいると…突然教室の灯りがついた。

しかし、灯りがついた時には…首を吊った女子生徒の死体は…跡形もなく消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っていうのが、この高校に伝わる七不思議の一つなの‼︎」

 

「ふーん…」

 

綺世は興味なさげに物理の教科書に目を移しつつ、弁当の卵焼きを口に入れる。

 

「ちょっと!少しは興味を示しなさいよ‼︎今学校で流行りに流行ってるんだから‼︎」

 

「どうせチンケな噂話でしょ?私…確証のない噂話や非現実的な話は全く興味ないの」

 

「全く…頭がお堅いこと…」

 

綺世は更にもう一つ卵焼きを頬張ると、不意に「神津綺世さんはいるかしら?」と声を掛けられた。名前を呼ばれた綺世が教室の外を見ると、そこには誰もが美人と豪語する桜樹るい子が立っていたのだ。

まあ、当の綺世はその事を知らないが…。

綺世は弁当箱を閉まって、桜樹のところへと足を進めた。

 

「神津綺世は私ですけど…何か?」

 

「私は桜樹るい子、よろしくね。貴女と…金田一はじめくんにお願いがあって来たの。金田一くんはどこにいるの?」

 

「ああ…彼なら…」

 

その時「キャアアアアアァァッ‼︎‼︎」と黄色い声が学園に響いた。

声のした方を見ると、そこでは複数の男子がバスケットコートで遊んでいた。勿論、中には金田一はじめが…と、はじめを視認した綺世は思わず窓から身を乗り出す。

 

「な…何ではじめちゃんがバスケを!?」

 

彼は今までだって自らスポーツを行ったことはない。

何故なら彼は何もかも面倒だと言わんばかりに、全てを放り投げている超が付く面倒臭がり屋だからだ。

先程の黄色い声援は、はじめがゴールを決めたことによるものだろう。

しかもはじめはニコリと笑って、ハイタッチを決めている。

 

「あれが金田一くんね…春の事件で見事解決に導いた天才」

 

それを聞いた綺世は視線を桜樹に戻した。

 

「どうしてそれを…」

 

「さあ?どうしてかしらね?」

 

全く読み取れない瞳に綺世は思わず唾を飲み込む。

すると桜樹は本題を切り出した。

 

「貴女と金田一くんにミステリー研究部に入ってほしいの。それで手伝って欲しいこともあるの」

 

「ミステリー研究部…?」

 

聞いたことはある部活だったが、綺世には何故自分たちをそこに入れさせたいのか、桜樹の意図が読めなかった。

 

「まあ、今は時間もないし…放課後にまた来るわ。金田一くんにもよろしく伝えておいて」

 

妖艶に笑う桜樹に圧倒されて、綺世は何も言えなかった。

そのままクルリと背を向けて消える桜樹を見届ける綺世だったが、今度は背後からポンと叩かれ、思わず驚愕の表情で振り返る。

 

「何突っ立ってんだ?綺世」

 

「はじめちゃんかあ…びっくりさせないで!それで…どうしてバスケなんてやっていたの?」

 

いきなりの質問にはじめは溜息を吐きつつ、教室に入る。

汗を軽く拭いながらも、はじめは質問に答えた。

 

「これだよ…」

 

はじめがポケットから取り出したのは、手書きで書かれたチケットみたいなものだった。そこには『学園祭何もしなくていい券』と…。

無意識に綺世は「…は?」と呟いた。

 

「いや何…さっきのバスケで勝ったチームにはこれが配られてな…。学園祭なんていう何の生産性もない行事に参加なんてクソ面倒でさ…。けど、これさえあれば…」

 

「それだけのために普段絶対やらないバスケをしたと?」

 

「ああ…もう2度としないけどな…。いや、こういう券が出たら、またやろうかな…」

 

はじめの思考に呆れに呆れ、それを超えて怒りや何の感情か分からなくなった綺世はその券をはじめの手からもぎ取った。

 

「ちょ…おい!」

 

それをビリビリに破くと、窓から捨てた。

 

「おい‼︎綺世…!何やって…」

 

「こんなくだらないことのために好奇の目に自分を晒さないでよ‼︎信じられない‼︎」

 

教室全体に響いた怒声に静寂が訪れる。

綺世は震えながら教室から出て行った。

はじめは頭を掻きながら、「何怒ってんだ?あいつ…」と呟く。

綺世は廊下の曲がり角まで行くと足を止めた。

 

「…もう…バカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー放課後ー

はじめは屋上で考え事をしていた。

昼休みに綺世に何故あそこまで怒られたのかよく分からないまま、授業を終えてしまい、綺世自身もはじめと顔を合わせないままどこかへ行ってしまった。

 

「全く…落ち着かない日だぜ…」

 

「なら、その頭を落ち着かせる良いところへ案内するわ」

 

そこに現れたのは紙束を持った桜樹だった。

はじめは何度目になる彼女の顔を見て、溜息を吐いた。

 

「また来たのか…しつこいな」

 

「私はしつこいところが長所なの」

 

「短所の間違いだろ…」

 

「まあいいわ。それよりも神津さんから聞いたかしら?」

 

「綺世から?何も聞いてないぞ…」

 

はじめは相変わらず桜樹と顔を合わせようとしない。

 

「そう…じゃあ、私から直接お願いするわ。金田一くん、神津さんと一緒にミステリー研究部に入ってくれないかしら?」

 

いつもの勧誘だと思ったはじめだったが、今回は少し内容が違い、思わず上体を上げた。

 

「俺だけじゃなくて、綺世もって…どういうことだ?」

 

「私だけが…貴方と彼女の特性を知ってる。それだけよ?」

 

「…何を狙っている?」

 

「何も…いえ、そうね。強いて言えば、この高校にまつわる『七不思議』について解き明かして欲しい…ってことくらいかしら?」

 

「七不思議?例の噂か?」

 

「ええ」

 

はじめは別に七不思議になんて興味はない。

しかし、桜樹の意図が分からずに、多少なり困惑している。はじめ自身はまだしも、綺世もとは…。そんなことを考えていると…不意に屋上に通ずるドアが激しい音を立てた。

そこからは顔を俯かせた綺世がずんずんと迫って来ていた。

 

「あや…」

 

はじめが彼女の名前を呼ぶ前に、綺世ははじめの腕を取り、桜樹と距離を取らせる。

 

「申し訳ないですが、その勧誘はお断りします!私もはじめちゃんも…!」

 

突然の事態にはじめは困惑する。

 

「どうしてかしら?」

 

「私はまだしも、はじめちゃんの頭脳ではミステリー研究部の皆さんに迷惑をかけてしまうと判断したからです!」

 

「…は?」

 

はじめは一瞬、綺世が何を言っているのか分からなかった。

 

「それに彼は超が付くド級の面倒臭がり屋です!とても役に立つとは思えません‼︎」

 

綺世の言葉ははじめにとって、少し棘のあるものだった。

 

「だからお断りします!…はじめちゃん、行こう」

 

だが…この綺世の言葉が、はじめの心に火を付けてしまった。

綺世の手を振り払い、少し間を置いてから桜樹に向かって言った。

 

「やってやるよ…桜樹先輩、今回は手伝いますよ」

 

「ちょっ…はじめちゃん!?」

 

「綺世にあそこまで言われてオメオメ引き下がれるかよ!お前もだ‼︎行くぞ‼︎」

 

今度ははじめが綺世の手を掴む。

それは怒りなのか、悔しさなのか分からないが…綺世本人が痛いと感じる程だった。

それを見た桜樹はまた妖艶に笑い、『計画通り』といった感じの表情を浮かべる。

 

「ふふっ…そう来なくっちゃ。案内するわ」

 

はじめに連れて行かれる綺世は心の中で思っていた。

 

(今日の私変だ…。桜樹先輩についても…はじめちゃんについても…。自分が嫌になるくらい、なんか毒舌で…。どうしちゃったんだろ…)

 

はじめの顔を見ようとするが、彼がこちらの方を見ようとしない。

綺世は複雑な心境のまま…はじめと共にミステリー研究部がある旧校舎へと向かっていくのだった。

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