金田一少年と神津少女の事件簿   作:GZL

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勢いのままにミステリー研究部の部室に入ったはじめと綺世だったが…その事を即座に後悔した。2人は桜樹に勧められて椅子に座ったが、正面には高校生推理作家と評される真壁誠、斜め右にはビデオカメラを常時持った男がじーっとはじめと綺世を写している。

 

「…気にしないで…続けてください」

 

佐木竜太と言うそうだが…どう見ても変な奴だ。

そして斜め左にははじめたちと同学年の尾ノ上が座っていた。いつも空気みたいな存在で、小太りなのが玉に瑕な男だ。そしてはじめの左には寡黙で眼鏡を掛けた女性…鷹島友代が座っている。しかし、それ以上に不自然なのは着けている手術用の手袋だ。趣味なのか、潔癖症なのか分からないが…どっちにしろ、あまり友好的に話したい相手ではない。

 

「…悪い綺世…早くも帰りたくなってきた…」

 

「私も…同じく…」

 

そんな小声で話していると、目の前の真壁が急に話しかけて来た。

 

「それで…どうして君らは呼ばれたんだい?」

 

「さあ…?俺はいつも桜樹先輩に来てくれとしつこく言われてたけど…綺世は知ってるか?」

 

「ううん…何にも…」

 

それを聞いた真壁はフンと鼻を鳴らし、はじめたちを見下げるかのように言葉を紡ぎ始める。

 

「あの桜樹くんのオファーだから、どんな奴が来るかと思っていたが…まるで推理とは無関係で面倒臭がりな男に、観察力が欠如していそうな女だな」

 

それを聞いた2人は即座に不愉快な思いをした。

 

(嫌な男…)

(綺世の嫌いなタイプだな…)

 

そんなことを思っていると、桜樹はミステリー研究部の顧問担当である的場勇一朗先生が入ってきた。その手には全員分の書類が握られており、その一部をはじめたちの前に置く。そして、真壁のところに書類を置いた時…桜樹は小さな声で耳打ちした。

 

「彼は…あの金田一耕助の孫で、IQ180の天才的頭脳の持ち主よ?口には気を付けることね」

 

それを聞いた真壁は思わず桜樹、はじめと順に顔を振り向かせた。

 

(あんな奴がIQ180!?まさか…)

 

桜樹の冗談だと思い、真壁は溜息を吐く。

そして、部会は始まった。早速桜樹は議題を言い出す。

 

「今、噂になっているこの高校の旧校舎にまつわる七不思議に関してよ」

 

「七不思議全てを知ってしまうと、『放課後の魔術師』に殺されるっていう…アレかい?」

 

尾ノ上の発言にはじめも綺世も眉をひそめた。

2人とも七不思議というものがあるのは知っていたが、その先にそんな噂話があるとは知らなかったのだ。

桜樹は頷き、更に続ける。

 

「その放課後の魔術師から…校長宛に脅迫状が届いたの」

 

この言葉に全員の表情が一気に硬くなった。

 

「脅迫状…?」

 

「学校は、この旧校舎を取り壊す予定なんだけど、そうした場合…7つの呪いが降りかかると脅してきてるのよ。我々は近々迫った学園祭に向けて、その脅迫状を送った者、更にその目的を調べ上げるの。もちろん、七不思議の最後も突き止めるわ。何か質問は?」

 

思わずはじめは手を上げた。

 

「その七不思議ってのは…一体いつから流行ったんだ?」

 

「それも今は調査中。分かっていることは、目の前の書類に全て書いてあるわ」

 

はじめは頷き、その書類に目を通そうとした時、的場が桜樹に声をかけた。

 

「い、一応…顧問として1つだけ、良いかね?」

 

「はい、的場先生」

 

「昔…同じように七不思議のことを調べて…失踪した生徒がいるそうだ。もし君たちに何かあったら私は…」

 

桜樹は溜息を吐きつつ、的場先生に反論した。

 

「物理教師で、科学を追求する人間としては()()()()()言葉ですね」

 

「しかし…問題が起きては…」

 

「責任を請け負うのは私だ…ということでしょう?的場先生」

 

的場先生は責任逃れをするためにこの件には関わってほしくないように見えた。

しかし、桜樹は構うことなく「ご心配なく、調査には細心の注意を払います」とだけ言って、的場先生の発言を途中で切り上げた。

 

「気を付けてね、みんなも」

 

そこで部会を終えたが、桜樹からはじめと綺世は残るように言われた。

先に真壁、佐木、鷹島、的場が部室を出ると、桜樹は2人にあるものを見せた。

 

「ミステリー研究部の会報…10年前の?どうしてそれを…」

 

「この部室の奥底で見つけたんだけど、この会報には例の七不思議に関して書いてあったの」

 

「…よくこんなことに時間を使えますね、桜樹先輩」

 

皮肉気に呟く綺世だったが、桜樹は全く意に介してなかった。むしろ、綺世のことを嘲り笑っているかのように、妖艶に笑みを浮かべた。

 

「私は誰かと違って、成績はきちんと1位を取ってるの」

 

「ッ!」

 

綺世自身も分かるくらいに頭に血が上っていく。

それを無視して、はじめは会報を受け取ろうとするが、寸でのところで桜樹が取られないように懐にしまいこんだ。

 

「何勝手に取ろうとしてるの?これは私のものよ?」

 

「それは失礼しました…。で、俺は何をすればいいわけ?」

 

「それを考えるのも、あなたの仕事よ。金田一くん。…先に言っておくけど、私は貴方の才能に一番期待してるの。貴方ならきっと、謎の解明に貢献してくれると信じてる。…頼んだわよ」

 

そこまで言われたはじめも流石に満更でもないのか、少しばかり頬を赤くする。

明らかに照れているはじめに綺世は少し焦りを感じてしまう。

だが、桜樹は大胆にも更にこんなことを言い出す。

 

「もし…この謎を解明してくれたら…一緒にお食事なんてどうかしら?」

 

「お食事…ですか?」

 

そして…はじめの耳元に小さく囁いた。

 

「私はね…頭の良い男が好きなの…」

 

その発言にはじめはごくりとするが、すぐに言い返した。

はじめの言葉は綺世に聞こえないが、彼女の顔は現在とんでもない程に睨んだものとなっていた。

ある程度話を終えたはじめと桜樹は最後に「…そう、分かったわ」とだけ綺世の耳に入った。

桜樹はまだ調べ物があるようで、そのまま部室に残るが、はじめと綺世は先に部室を出た。

はじめは綺世に今回の七不思議に関して聞こうと思ったが、彼女はそそくさと距離を取った。

 

「…なんだあいつ」

 

はじめは落ち着かない気持ちのまま…久しぶりに綺世と別々に帰路に就くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜樹ははじめたちが帰宅した後も、ずっとパソコンの前に座り、過去のミステリー研究部の資料を読み漁っていた。だが、どこを調べても最後の1つの不思議に関する記載は一切見つけられず、溜息を吐いた。

こうなることを見越して、桜樹ははじめと綺世をこの調査に招き入れたのだが…学園祭までに間に合うかは正直間に合うかは怪しい限りだった。

 

「でも、彼と彼女ならやってくれる。信じてる」

 

しかし、桜樹が2人に対する信頼度は凄まじいものだった。

その理由は当たり前だが、他の人とは一線を画すIQを持つ彼らなら、桜樹が想像しているものとは別視点で真実を見抜いてくれる、と思っているからだ。

だとしても、今日はこれ以上調べても成果は無いと思えた桜樹が鞄を肩に掛けた、その時だった。

 

「…?」

 

カタカタと周りの物が小刻みに揺れ始めたのだ。

その揺れは徐々に大きくなり、一瞬だったが大きな振動を引き起こしたのだ。

 

「地震!?」

 

桜樹はたまらず机に下に避難したが、周囲の物はがたがたと音を立てて落ちてきた。

地震は5秒程度で収まり、彼女は揺れが収まったことを確認すると机から這い出た。

 

「全く…本当にぼろいんだから!この校舎!棚や机のものが全て…」

 

ふと桜樹が視線を適当な箇所に向けた途端、悪寒と戦慄が背筋を駆け抜けた。

ガタンと机に臀部(でんぶ)がぶつかり、口に手を当ててしまう。

今にも吐いてしまいそうな衝撃に桜樹の瞳は揺れるに揺れるが、それと同時に脳内でパズルのピースがピタッとハマった。

 

「そうか…分かった…七不思議の謎が…!」

 

桜樹はすぐさま携帯を取り出し、金田一はじめに連絡を取る。

数回のコールの後、はじめが『はい』と出た。

 

「金田一くん!?聞こえる!?」

 

『聞こえますよ…。どうしたんですか、そんなに慌てて…』

 

桜樹は自らが見つけた『発見』に興奮していた。電話越しでもはじめは明らかに興奮しきった桜樹に大丈夫かと思えるほどだった。

 

「分かったのよ!七不思議の謎が‼」

 

『七不思議の謎?…本当ですか?疑ってる訳ではないですが、いくら何でも早すぎませんか?』

 

そうは言っているが、はじめは疑心暗鬼ではあった。

だが、桜樹ははじめの言葉を全否定する。

 

「ウソじゃないわ!その証拠を見せてあげる、今すぐ学校に来なさい」

 

『今から!?』

 

流石のはじめも桜樹の無茶苦茶っぷりに声を荒げた。

しかし、目上の人の言うことを拒否する気にもなれず、はじめは『分かりました…』とだけ言って通話を終えた。

桜樹も息を整えながら、携帯を机に置く。

そして、顎に手を置いて「ふふふ…」と笑う。

 

「何もかも…私の推理通りだったわ。だけど…『あんなもの』を隠すためだったなんて…」

 

自身の推理力の高さ、そして謎を解明したことに対する余韻に浸る彼女。

 

 

しかし…その背後に…誰かが近付く。

その手に…ビニール紐を持って…。

 

 

“その者”は桜樹が気付く前に…手をかけるのだった。

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