み〜あろっく   作:幽霊部In

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ぼっち・ざ・とーく!-LIVE-は観ましたか?観てない人は現在進行形でアーカイブ観ているわしと一緒に観よう!(生配信で見たかった....)




キミイロアワセ

 

 夕焼け。

 

 夕暮れの西方の空が赤系統の色で染まる現象。 日没のすこし前に始まり、日没後まもなく終わる。

 

 そんな刹那的な短い間の空間が、わたしは好き。

 

 特別になったわけでもないのに、何故だかほんの少しの高揚感が芽生える、この瞬間が好き。

 

 理由は多分、この夕焼けの現象が一時の昂りを感じさせてくれる音楽と、似ているように思えるからだ。

 

 光と闇が入り乱れて一つの音が出来上がる、そんな風にわたしは捉える。良いことも悪いことも全てを包むようなこの夕暮れ空が、今いるわたしの空間を照らす様に輝く。

 

 ……なんて。そんな風に黄昏れていると、決まって隣を歩くその子はゆるりと表情をいたずらっ子みたいに崩して、わたしの一歩前に出て、目を合わせる。

 

 

「______作詞、やってみる?」

 

 

 わたしが?そう問いかけると、その子はうんうんと食い気味で頷いた。

 

「キミが書いた詞をキミが歌うのっ」

 

 嬉しそうな顔でその子はそう言った、その時のわたしは、何でわたしじゃなくて、貴女が喜ぶんだろう?って疑問になった。

 

 わたしは彼女が目立ちたがり屋なのを知っている、別にそれが良いとか悪いとかじゃなくて。

 

 彼女のそういう所は物事を上手く運ぶ力を持っているし、自信過剰なぐらいに自分を信じていて、でもちょっとした事で落ち込んじゃうような、そんな彼女を気に入ってるし。

 

 彼女と出会って三ヶ月ぐらいの間柄だけれど、その短い期間で彼女のことを少しは分かっているつもりだから。

 

 だからてっきり、貴女が歌うんじゃないかって、わたしは思ったんだ。

 

 

「最初はそう思ってたんだ。でも、私はキミに歌って欲しいの」

 

 それはどうして?

 

「ん〜〜〜〜〜……っ内緒!」

 

 にへへ、って笑いながらその子はわたしの前を歩き始めた、少しムキになって、わたしも早歩きしてついていく。

 

 納得できないよ、って言ってもその子は笑って誤魔化してくる。別に歌いたくないわけじゃない、歌うことは好きだし作詞だってきっとたのしい、たのしい事なら幾らでもやれる、やりたい。

 

 でも彼女が歌うのを聴いてるのもたのしい、それを一番近くで、その歌声を支えるのもわたしは好きだ。

 

 彼女が自信満々で書いた、ちょっと明る過ぎるんじゃないか、というかその擬音はなに?この歌詞ってどういう意味?なんて、そんな作詞をわたしはたのしいって思ってる。

 

 だからかな、その時はいつも以上に心がもやもやした、わたしのやりたい事、たのしいこと。それは間違いない。

 

 けど、貴方はそれで良いの?わたしは貴方と一緒にたのしいことをしたいんだ。

 

 

「たのしいよ」

 

 それはどうして?

 

「内緒だって〜」

 

 誤魔化さないで聞かせてよ。

 

「え〜〜〜うーん……キミが、好きだから?」

 

 

 えっ。

 

 そ、そっか。

 

「そうだよ……」

 

 いやあの……そういうのはちょっと困ります、さよなら。

 

 

「ちっちがう!変な意味じゃなくてっ!あ、まって!お、おいてかないで〜〜〜!」

 

 

 懐かしい記憶。

 

 あれから似たような話をした事はあっても、多分あの頃の彼女は、本当の言葉で話していたのかな。

 

 結局、何で彼女がわたしに歌って欲しかったのか、それをちゃんとした言葉で言ってくれたことはなかったけれど。

 

 今になって思えばちょっとだけ、自信はないけれどなんとなく、こう言いたかったのかなって、わたしなりの答えはある。

 

 本当のことは彼女の中でしかわからないけれど、わたしは今でも彼女は親友だって思いたいから。

 

 

 だからさ、ねえ。

 

 聴こえているかな(何処かで見てる?)_______わたしの()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれぇぇぇ〜〜〜みあちゃん〜〜??何でここにいるのぉ、あれぇ〜?幻覚かなぁ〜〜〜あはは!うぇっ!げふぃ、ふぅ……オェ……!」

 

「酔いすぎでは?」

 

 

 地面と一体化してると言っても過言ではない廣井ちゃんが目の前にいます。

 

 でも何故かな、新宿歌舞伎町が作ってしまったこのライブハウスとコンビニに、近くのビジネスホテル、そしてこの広い空間で起きる路上飲みは、少し目を別に向けても、廣井ちゃん程でないにしても同じような光景が広がってる。

 

 流石路上飲みの聖地、久しぶりだけど相変わらずだ。*1

 

 しかし廣井ちゃんはいつも通り酔っ払ってるだめだめでかわいい大人とはいえ、いざこうして観察すると、よく生きていけてるなあって思う。

 

 いや本当に、お医者さんに診てもらったらどんなこと言われるんだろう、付き添ってあげようかな、気になるし。まあ絶対行かないー!って言うだろうけど。

 

「まぁいっかぁ!みあちゃんも飲もう!」

 

「はいはい、家に帰ろうね」

 

「や〜〜だ〜〜〜!」

 

 

 さて何故わたしが新宿に居るかと言われると、電話が来たからだ。もちろん廣井ちゃんから電話が来たわけじゃない、だってこの酔いどれベーシスト、携帯止まってるらしいし。

 

 じゃあ誰から?新宿FOLTの店長の銀ちゃんから「ごめんね〜〜急に、今外出中かしら?」って聞かれて、六本木の行列の出来る美味しいラーメン屋さんで夜ご飯食べ終えた所って言うと「新宿に来れたりするかしら?」って言われ。

 

 どうしたの?って聞いてみると「あのバカが飲み代払わずどっか行きやがったから探すの手伝って欲しいの〜〜☆」とめちゃくちゃにキレてるなあって声で言われたのが発端だ。

 

 銀ちゃんはわたしがこういうの(たのしそうなの)に参加したがる人だって知ってるから、電話掛けてきたのかな。

 

 当たり、それに廣井ちゃんを観察するの、ツチノコひとりちゃんを観察するのと同じぐらいにはおもしろいし、たのしい。

 

 

「飲みたりない飲みたい飲むぅ〜〜!」

 

「わあ、成人女性の地団駄」

 

「ほらほら〜みあちゃんも飲もうよぉ〜奢るからさ〜!」

 

「わたしに奢るより銀ちゃんに飲み代払いなよ」

 

「あぇぇ……?ん〜〜〜〜〜……???______あっ」

 

 わあ、ほんの少しだけ廣井ちゃんの酔いが覚めた、忘れてたんだね。ついでにって言って良いのか言葉に困るけどまたベースも何処かに忘れてるし。

 

「ほら、わたしも付いてくから」

 

「み、みあちゃん……っ!」

 

 

 廣井ちゃんが銀ちゃんにこれでもかってぐらい(自業自得)に怒られて、今にも泣き出してしまいそうなぐらい弱まってるのを至近距離で観察したいからね。

 

「なんか酷いこと考えてないみあちゃん?」

 

「ん?そんなわけないよ」

 

 

 

 

 

 

 新宿の夜はキラキラしていて、眠らない街って言われるのも納得なぐらい煌びやかだ。

 

 それが良いようにも悪いようにも、新宿って言う街を作っている。光が強いほど闇も強くなるけれど、ここに生きる人たちはそんな闇も飼い慣らせちゃうような人なのかな。

 

「ねえねえ、みあちゃん」

 

「なに?」

 

 

 一人で歩けない廣井ちゃんの肩を担ぎながら歩いていると、急に廣井ちゃんが、なんだかいつもとは違うような声色でわたしに話しかけてきた。

 

 

「みあちゃんが良ければさ______」

 

 

 そう言って、続いた言葉を聞いて。

 

 わたしは思わず、足を止めて廣井ちゃんの顔を見た。分かりやすく驚いた顔を見せたのは多分初めてだからか、それとも別の理由か、顔を合わせた時の廣井ちゃんの表情はいたずらっ子みたいに笑ってた。

 

 その笑い方が、最近の夢の記憶にある彼女の表情と重なる。

 

 あぁこれは、これはだめだよ。

 

 

「どう?」

 

「いいよ」

 

 断れないよ、だって廣井ちゃんはあの子じゃないけれど、でもわたしはあの子のあの時のような表情をされちゃったら、もうわたしの心は止められない。

 

 あの表情を浮かべた後の先の光景をわたしは知っている、そしてそれはいつだって、どんな時だってどんな結果になってもたのしいことなのを知っている。

 

 だから廣井ちゃんのその誘いにわたしは手を取った。

 

「ならさ、ならさ!」

 

「その話の前に銀ちゃんにお金返しにいこーね」

 

「あっ、はい……」

 

 

 先ほどの勢いはどこへやら、廣井ちゃんはしょぼくれて手に持っている鬼ころをストローでちゅうちゅうし始めた。

 

 さっき全部飲んでた筈では?まだポケットに入っていたのか、なんてやつだ。

 

 なるほど……これが酔いどれベーシスト、対酔っ払い耐性の高いわたしも少しムカッてしてきたぞ。

 

「まだある?鬼ころ」

 

「もうな〜〜〜い!」

 

「じゃあ廣井ちゃんの飲んでるやつでいいや」

 

「えっちょ、奪われる?!」

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ星歌ちゃん、なんか変な人きたよ?」

 

「あん?また酒カスでも……じゃあなさそうだな」

 

 

 今のところ多分、結束バンドのライブは欠かさず見ている……いやごめん、何回かは予定は合ってないかも。

 

 でも「ひとり顔あげて♡」のうちわをひとりちゃんのファンの子と作ろうって話をするぐらいには、まあ来ている。

 

 ライブ中は比較的後ろの方でわたしは見ているけれど、ライブ終わりにひとりちゃんのファン一号ちゃんと二号ちゃん(そう呼んでくださいって言われた)とは、普通に話す。

 

 最初の頃はひとりちゃんの画角がズレたり時折スライムみたいになったりするのに驚いていたけど最近は、そういう所も推せるようになってきたらしい。

 

 わたしの最近のお気に入りのひとりちゃんは、今日初披露の「パカつむり」だ。喜多ちゃん曰く「塩をかけたら死ぬ」らしい、なるほどね。

 

 ギャップ萌えって言ってたけど、なんかちょっと違う気がする。いや正しいのかな、うーん?

 

 そんでもって今日もスターリーに来た、ちょっとした用事もあったけれど、それはもう済んだし。

 

 

「すいませんうちでの迷惑行為はやめてもらえま_____」

 

「ふぇ……ごめんなさい……うゅ」

 

 

 星歌ちゃんがぞぞぉ〜!って効果音が背後から流れ始めるぐらいにドン引きして撃沈してしまった。

 

 ふぇ〜〜〜うゅ!なんて久しぶりに聞いたな、KAWAII系の身長と顔をしたそこそこ有名になった地雷系シャウトボイス使う先輩女の子☆アーティストみたいだ。

 

 地雷系ファッションしてるし身長も低身長だけれどあの子成人済みなんだろうなあ……。

 

 その人が結束バンドの子たちに話しかけているの、少しは耳に入ってた。バンド批判サイトの音楽ライターみたいだ。

 

 話題性目的だろうな、ライターが求めているのは大抵それだ。というかそういうの以外、はっきり名の売れている有名どころのライターを除いて、稼げないって話を聞いたことがある。

 

 例えばこの前の文化祭の時のひとりちゃんのダイブとかが、ネットで少し広まったのか。

 

「……皆そろそろ、ライブの準備しなきゃ!」

 

「あっそうですね」

 

「ぼっちちゃんも行こう!すいません後はライブ後で良いですか?」

 

 

 虹夏ちゃんがライターの子を警戒するようにひとりちゃんを連れて行った、うんうん。それで良い、この手のお話は何事も警戒していこうね。

 

 パッと見た感じそこまで悪質そうでは無いと思うけれど、でも人は見た目じゃ判断出来ないし、そういった悪意はやっぱり現実問題、付いてくる。

 

 でもそれは今結束バンドの皆が体験するようなことじゃ無いのは確かだ、何か起きる前にあのライターの子に話かけてみるかとも思ったけれど、一先ずは今じゃない。

 

 

 今は結束バンドの音が聴きたい、ここに来ているわたしは、誰が何と言おうと彼女達のファンだからね。

 

 

 

 

 

 

 

「あなたギターヒーローさんですよねッ!」

 

 

 そんな声が少し離れていたわたしにも届いた。

 

 興奮しながらライターの子はひとりちゃんのことを指差しながら、ひとりちゃんは超凄腕高校生ギタリストで、それでいて男女関わらず学校中の人気者で、ロインの友達数は1000人越えで、バスケ部のエースの彼氏がいる超リア充女子だって語る。

 

 

 人違いじゃないかな?

 

「人違いじゃないですか?」

 

「即答!?」

 

 

 何言ってるんだろうこの人って顔で喜多ちゃんがわたしが思ったことをそのまんまライターの子に言った。

 

「そっそうですよ!その人とこのド陰キャ少女が同一人物に見えますか!?」

 

 虹夏ちゃんが珍しくひとりちゃんを言葉の刃で傷つけている、そりゃそうだけれど、直接言っちゃだめだよ、あっほらひとりちゃんにド陰キャボルクが突き刺さっちゃった。

 

 あれ中々抜き難いらしいけれど大丈夫かな。

 

「星歌ちゃん、ギターヒーローって?」

 

「ん、ああ多分……これかな」

 

 わたしはギターヒーローなるものを知らないから、遠目から厳しい目でその様子を観察している星歌ちゃんに聞いてみると、パソコンで動画を見せてくれた。

 

 殺風景な背景を背にしてギターの弾いてみた動画を出している動画投稿者、ギターヒーロー。

 

 なるほど、たしかにこれはひとりちゃんだな。使ってるギター文化祭以前に使っているものだし。

 

 ……なるほど、ライターの子はネット上のひとりちゃんのファンなんだね。

 

「にしても虚言がひどいね」

 

「見る所そこかー?いやまあ、ひどいけど」

 

「概要欄の文よく思いつくなあ、ほら見てよ」

 

「うわっ、うわ。うわー……」

 

「承認欲求モンスター極まってるね」

 

「あっうっえっえ……きっきこえてますみあさん……あの、あの、あの……

 

 

 んーーー?なんだろうなーんにも聞こえないや、えへ。

 

 でもこの辺にしておこう、あんまりいじり過ぎると紙やすりじゃあ修正出来なくなっちゃうし、ひとりちゃんは条件が整ったら幽体離脱が出来るとんでもない能力者だしね。

 

 ひとりちゃんいじりタイムも終わったし、あのライターの子の目線が、一人にしか目が入ってないのも少し離れた場所で見ていてもわかるし。

 

 この後どうなるかも大体予想できる。

 

 

「星歌ちゃん、気づいてる?あの手の話の流れ、わたしは散々見てきたよ」

 

「ああ、ちょっと行ってくる」

 

「かっこいーねお姉ちゃん」

 

「何言ってんだ、ああいうのがライブハウスにいると敷居が下がるってだけだ」

 

 

 少し昔の事を思い出した。

 

 わたしのバンドの話じゃない、けれどわたしと同期だったバンドの話。

 

 そのバンドのドラムスはどんなテンポにも対応できて、ライブパフォーマンスもプロ顔負けって言えるぐらいにすごい子だった、だからか少し知名度が上がってきた頃。

 

 まだまだこれからだって時にその子はそのバンドから姿を消した。

 

 その時のわたしは、そのバンドとあんまり関わりは無かったけれど、同じバンドメンバーの一人が、少しだけ不満そうな顔で愚痴を溢していたのを覚えてる。

 

 バンドメンバーの入れ替えはそう珍しい話じゃない、引き抜かれたりするのだって地下ライブを活動拠点にしている世の中的には無名のバンドには、結構よくある話だ。

 

 ただ、程なくしてそれをきっかけにそのバンドはステージ上から姿を消した。

 

 その事だけがきっかけじゃないとは思う、でもその一つの亀裂がバンドの生命を絶つことは、思うより簡単に起こってしまう。

 

 

「……どう乗り越える?」

 

 

 星歌ちゃんがライターの子を対応しに行ったのを見届けながら、ふと口から溢れたその言葉。

 

 最終的にわたしのバンドは解散した、思い出の中に消えていって、きっと戻ることはない、人は過去を想うことは出来ても変えることは出来ないから。

 

 それは事実……だけどね、簡単に解散する程ヤワなバンドなんかじゃないのも確かだったんだよ。

 

 だからわたしは、結束バンドの子達も乗り越えられるって思っている。

 

 乗り越えて糧にする力を持っているとわたしは信じてる。

 

 

 それにしても。

 

 

 星歌ちゃんツンデレすぎウケる。

 

*1
界隈では有名なBLA◯E前酒場です





注釈の霊圧が消えた……?!
注釈ねーからここ意味わかんねーって思ったら言ってくださいね、やるのでʕ⁎̯͡

ところで。
ある日のハロウィンイベントに、その日のライブは仮装しよう!と虹夏ちゃんの提案によって、-名手-山田リョウによる匠の技で生まれ変わったぼっちちゃん吸血鬼衣装(ゴスロリ系)を見た喜多ちゃんが胸の高鳴りを自覚する夢を見たんだけど続きは???
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