み〜あろっく   作:幽霊部In

2 / 14
今更になりますが、ガッツリではないけど普通にアニメの先の内容に触れていくんでそういうの無理って人は今すぐに原作を買ってアニメの続きを読もうね〜〜〜!(なお品薄、電子書籍で買おう!)
前書き終わり!



バンドで一番大事なのは何?

 

 電車のアナウンスが目的地に着いたことを告げて、携帯を弄るのを止める。

 

 電車に乗ったの久しぶり、長い間乗ってないと少しだけ人目を気にしたり、空いてる席に座るのもなんだか、って思って寄りかかれるところに寄っかかったりしてた。

 

 ちょっと疲れちゃったし座ればよかったなあ、ってちょっと後悔している。

 

 今日はひとりちゃんのバンド、結束バンドのライブ日だ。

 

 関東には台風は来ないって天気予報だったけれど、当たっちゃったな。天気が悪いのは幸先が悪いけれど、台風なんて目でもないぐらいにがんばれって気持ちだ。

 

 気持ちだけじゃだめだね、せっかく連絡先も交換したから、一言ぐらい元気付ける言葉を送った方がいいかも。

 

 うーんでも、余計にひとりちゃんのプレッシャーになっちゃうかもな……なんて、悩んでたら背後から声をかけられた。

 

「あ!みあちゃ〜〜〜ん、一緒にいこぉ〜!」

 

 うわ。

 

 下北沢駅に降りたら早速酔っ払いさんに絡まれてしまった、降りる時間間違えたかな。

 

 でもまあ、そんなに嫌じゃないからいっか、お酒くさいのも許そう。

 

「酔っ払いさん、ベースと傘どこやったの?」

 

「あれぇ?あはは、入れてー」

 

「いいよ」

 

 仕方ないから同じ傘に入れてあげるとがっつり肩組まれた、濡れてるし……ていうかベースは?前みたいに居酒屋に置き忘れちゃったのかな、刹那に生きてるなあ。

 

 ベーシストはバランサーか頭のネジ飛ばした変人*1かのどっちかだから、バンドマンとしては正しいかもしれないけど。

 

 大人としては全然だめだめだけど。

 

「場所案内してよ、ここ(下北沢)久しぶりなんだ」

 

「いいよぉ〜〜あ、みあちゃんもお酒飲む?」

 

「後でね」

 

「にぇへへ〜!」

 

「そういえば名前なんて言うの?」

 

「あれぇ〜言ってなかったっけ、誰よりもベースを愛する天才ベーシストの廣井で〜す!ベースは昨日飲み屋に忘れました〜」

 

 なるほどこれが矛盾の作り方。

 

 まあ確かに、即興の他バンドの曲であれだけ出来るなら天才的だけど。自分で言う?いやバンドマンとしては正しいけど。

 

 ベーシストみんなこんな感じだし、わたしもそんな時期あったし偶に抜けきれてないかもだけど。

 

「鬼ころ五本分以上のライブ楽しみだねえ〜」

 

「……そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

「ぼっちちゃん来たよぉお〜〜〜〜〜!」

 

「あっお姉さん……」

 

「わたしもいるよ」

 

「みあさん……!」

 

 廣井ちゃんに案内されるがままライブハウスに辿りついた。

 

 ここ知ってるな、何をきっかけに来たかは直ぐには思い出せないけれど、来たことあると思う。

 

 それにしてもやっぱりそんなに人はいないね、オープンして1組目なのを加味してももう少し居ても良いけれど、台風だし仕方ないか。

 

 人気アーティストでも悪天候で箱を埋められない事がほとんどで、大抵の場合中止する。

 

 でもライブハウスを埋めるだけが全てじゃない、今ここに来ているお客さんを楽しめられることが出来るかどうか。

 

 その点少し心配だな、ひとりちゃんはまだしも……ひとりちゃんの近くにいる子たちはバンドメンバーかな、あの子たちの緊張の仕方は……良くない。

 

 悪い緊張の仕方と良い緊張の仕方の違いは、何かのきっかけで演奏のパフォーマンスが著しく下がる事だ。

 

「ね〜ね〜今日のライブの打ち上げするよね、居酒屋もう決めた?良いところ知ってますよぉ〜ねーねー、ねー」

 

「お前しばらく会わない内にめんどくさい奴になったな……」

 

 廣井ちゃんは飲み会覚えたての大学生みたいだよね。なおさらめんどくさい。

 

「飲み会覚えたての大学生に通ずるうざさがありますね」

 

 あ、同じ感想の人いる。ここのライブハウスのPAさんかな。廣井さんに話しかけられてる人がここのライブハウスの店長さんかな。

 

 ……ん、あれ?

 

「あの」

 

「おわっ」

 

「あ、ごめん……何処かで会いました?」

 

「えぇ〜〜なになにみあちゃんナンパ?ナンパなのぉ?ねええねえー」

 

「い、いや。無いと思うけど……こいつ(酒クズ)の知り合い?」

 

「ああ、うーん。えーと……路上で弾き合った程度の仲……?」

 

 知り合いと呼ぶには知らな過ぎるし、わたしがまだソロアーティストになる前にベースの使い方と存在感の出し方に覚えがあったから、何回か対バン*2した気がするけど、さっきまで名前も知らなかったし。

 

 でも何だか見覚えあるなこの店長さん、昔どこかで見たことあるんだよな、なんでだろ。前に活動していたバンドマンの人だったかも、そう考えるといたかもしれない、それぐらいしかわかんないな。

 

「そーだ、乾杯しよーよ〜!さっき言ってたじゃ〜ん!」

 

「言ったっけ……」

 

 まあ良いか、客として来てライブハウスでお酒飲むの久しぶりだな。此処で飲むお酒高いけど会場の熱に充てられていっぱい飲んじゃうんだよね、不思議な場所。

 

 ライブ前に千鳥足になるぐらいに飲んでる廣井ちゃんほどじゃないけど、ライブ前の居酒屋も楽しかったりするんだよな……打ち上げのお酒が一番美味しいけれど。

 

 あ、なんかひとりちゃんがおもしろい事してる、段ボール被ってる?写真撮りたいなあれ。

 

 路上ライブの時に掴んだファンの人と話してるのかな、もしかして始めてのファンなのかも。嬉しいよね、わかる。

 

「そろそろ始まりそうだね」

 

「だねえ_____懐かしいなぁ、あの感じ」

 

「わたしの時はもう少し人居たかな、廣井ちゃんは?」

 

「二人しかいなくて〜、パフォーマンスが怖かったからか逃げ出されちゃったんだよねぇ〜〜!」

 

 凄いな、そんなパフォーマンス観てみたかったかも、どんな事したんだろう?廣井ちゃんのこの感じを見るに口に含めた酒吹きかけたりしたのかな。

 

 サークル*3作って乱入でもした?なんちゃって、初ライブでそれが出来たら伝説になっても可笑しくないね。

 

 デスコアバンドとか戦争みたいなもの*4だし……いや初ライブでそれはどうなんだ?そう考えると思ったよりやべー人だな廣井ちゃん。

 

 さ、そろそろ始まるってそんな時、ふとわたしの耳に届いた言葉。

 

「一組目の結束バンドって知ってる?」

 

「知らない興味なーい」

 

「聞くのだるいね」

 

 そんな言葉が届いた、まあ隣の酔っ払いさんは聞こえてないみたいだけれど。人も少ないから、ステージの方に今の言葉届いちゃったかもな。

 

 ひとりちゃん含めた他の子たちに影響しないと良いけれど_____

 

「初めまして!結束バンドです今日はお足元の悪い中お越し頂きありがとうございます〜!」

 

「あはは喜多ちゃんロックバンドなのに礼儀正しすぎ〜!」

 

 うわあ台本丸出しすぎるMCだ……いやまあ、MC長過ぎていつまでも曲が始まらないアレ*5と比べたら、いやそれと比べる時点で結構酷いんだけれど。

 

 場数踏まないと上手くならないものだから仕方ないか、問題はそれよりこの後だ。

 

「あっうっ、じゃあ早速一曲目行きま〜す」

 

 始まる。

 

 ひとりちゃんの実力はこの前で大体わかった、人とやるのに慣れてないのは察していたから、何となく前回の様な弾き方をしないんだろうなって思ってた。

 

 それこそ廣井ちゃんみたいにその場で合わせられるぐらい土台が強くて我の高いベーシストじゃないと。

 

 ただそれを踏まえた上でも……さっきの言葉を引きずっちゃっているなってわかる。

 

 

 ひとりちゃん、気づいてるよね。

 

 君のバンドメンバーは、こんなもんじゃないでしょ?じゃあどうすれば良いかわかる筈。

 

 ひとりちゃんが一瞬だけ、顔を上げた。観客全体を見るように、前髪に隠れたその目が強い眼差しで見ていた。

 

「_________ッ!」

 

 演奏の安定感が上がる、あの時みたいに。その音色を中心に纏まっていく、ひとりちゃん演奏で、興味なんてないって言った観客も巻き込んでこの空間を結束バンドだけのモノにしていくように。

 

 それでいい、言葉なんかいらない。

 

 バンドマンなら、リードギターなら演奏で魅せればいい、才能と努力は継続した分だけしっかり付いてくるから。

 

 うん_________いい表情、ひとりちゃん。

 

 

 

 

 

 

 正直、バンドとしての完成度で言うと。

 

 ボーカルギターの子は荒削り過ぎる、多分まだ半年かそれぐらいしかギターに触れてないんだろうね。リズムギターだからって奏でる音が少ないならギターを持っていても意味なんてない、それならボーカルだけで良い。

 

 ドラマーのあの子も安定感が足りない、オリジナリティが少ないのは置いておくとしても曲の進行を一からずっと続けてリード出来ないと話にならない。

 

 ベーシストのあの子はあの中でもまだ出来る方だけど繋ぎ合わせた技術に任せ過ぎている、周りの音を聞いて合わせないとDI*6で調整したって音が被ればベースの音はかき消えるから、もっと聴かないとダメ。

 

 ひとりちゃんもそう、先行しがちだし目立ちたい欲が出過ぎて必要以上にソロプレイ以外がおざなり過ぎる、スリーピース*7ならそれでも良いかもしれないけれど、ボーカルの入ったバンドにそれは通用しない。

 

 

 なんて評論は、後付けでしかない。

 

 はじめっから完璧に出来るバンドなんていない、どれだけ上手くてもミスはするし、もたつく時はもたつく。

 

 ここの奏法は別の弾き方の方が適してるなんてよくある事だし、その日のその日で課題のない日なんてない。

 

 ひとりちゃんのギターをきっかけに彼女たちが纏まって、最後の一曲はライブハウスに来てくれたお客さんを楽しませる事ができた。

 

 わたしが思うバンドに一番必要な事は、熱意だ。

 

 ひとりちゃんのバンドに対する熱意が場を一新させた。

 

 この成功体験が全てだよ。

 

 

「いいものみれた……」

 

 なんて、しみじみ呟いちゃうのは自分が歳を取った証拠なのか、ちょっとだけ今のあの子達が羨ましいと思ってるからか。

 

 もう多分あの頃のように、なんて出来ないだろうし。

 

 ミュージシャンとして曲作りも出来ていない今の自分にはなおさら、眩しいものがある。

 

 でも来て良かった。毎回は流石に難しいかもしれないけれど、これからもひとりちゃんの応援は続けよう。

 

 すっかりわたしも、あの子のファンになっちゃった。

 

 

「見終わったし帰るよ、またね廣井ちゃん」

 

「あ、待って待ってみあちゃん!せっかくだし打ち上げいこ〜〜よぉ〜〜!」

 

「二人で?それはちょっとめんどくさいかも……」

 

「めんどくさいって言わないでよ〜〜違うよぉー、先輩と結束バンドのみんなとだよ〜」

 

「えぇ……?そういうの良くないと思うんだけど、わたしも廣井ちゃんも客として来てるだけでは?」

 

「細かいことを言うのはやめよう!」

 

 って言ってわたしの腕を引っ張る廣井ちゃん、わたしはされるがままにした、やぶさかではないし。

 

 にしても強引な人だなあ廣井ちゃんは、嫌いじゃないけどね、色んな世界を見に行かせてくれるから。

 

「迷惑そうにしてたら帰るからね」

 

「いや迷惑なんて思わないし寧ろ居てくれ……こいつの面倒を見たくない」

 

 わたしの呟きが聞こえていた店長さんにそんな風に言われてしまった、まあうん。確かにそれは同意するかも。

 

 わたしはこういう人慣れてるしわたし自身もたまにああなってる自覚あるから良いけど……うわあでも、そう考えるとなおさら行きたくなくなって来たなあ。

 

「お、奢りだから来てくれ」

 

「必死過ぎる……行くから、奢らなくていいよ」

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ気楽に楽しく活動しなよ、漠然と成功することばっか考えてると辛くなるよ」

 

「そうそう、夢をかなえてプロセスを楽しんでいくのが大事だからな」

 

「ですよね〜〜〜、みあちゃんもそう思うでしょ〜?」

 

「……ん?まあ、うん」

 

 酔いどれベーシスト廣井ちゃんの世話役(正直めちゃくちゃめんどくさい)としてこの打ち上げに参加させてもらった。

 

 結束バンドの子たちは揃いも揃って面白い子だし、店長さんは案外優しい人だから、打ち解けるのもそう難しくはなさそうだ、とはいってもわたしは廣井ちゃんみたいに表舞台に立ってるバンドマンでもないから、ちょっと場違いに感じちゃうな。

 

 外を出る予定も殆ど無いから、貯金は溜まる一方だし定期的なサブスクの収入とか含めれば、多分このまま老後まで安泰出来るんだろうなあって、うつらうつら考えてたら。

 

 ふと、廣井ちゃんからそんな話をふられた。

 

「確かに、楽しまないと何も生まれないからそれはそうだね、夢に向かって進むのがミュージシャンだよ、いつまでって言われてもいつまでも夢を見続けて進める人は成功するよ、ちゃんとね」

 

「いいこというじゃ〜ん!もっと飲め飲め〜〜先輩の奢りだよ〜〜ゴクゴクッズビビ!」

 

「もう一回言うけどお前は自腹だよ」

 

「ていうかどうして先輩は_____」

 

 なんて言ってるけれど、この言葉を言えるほどの人かって言われると、難しいけれど。

 

 気楽に楽しく活動出来て、夢を叶えていくプロセスが大事だ。それすら出来なくなったら本当に、音楽が出来なくなる。

 

 わたしみたいにね……なんちゃって。

 

 こんな楽しい雰囲気を壊すような発言はしないよ。

 

 あれ、そういえば店長さんの妹って判明したドラムの子とひとりちゃんが居ないな、外に出て何か話してたりするのかな?似たようなシチュエーション、わたしにもあったしなあ。

 

 青春だなあ、あの頃話した事、今でも思い出せるよ、思い出したくないことの方が多いけれど、大事な思い出だから。

 

 廣井ちゃんが店長さんにダル絡みしているのを見つめながら、ふと視線の感じた方に顔を向ける。

 

 結束バンドのベース担当の子だ、山田リョウちゃんって紹介してもらった。なんだろう?じーっと見つめられてる、そんなに見つめられても、困っちゃうな。

 

「どーしたの?」

 

「聞いた事ある声だなって。好きなアーティストの声に、あの……もしかして_____」

 

「わたしの声が?嬉しいな、人違いだと思うけどありがとう」

 

「人違い……」

 

 少し、遮るようにして山田ちゃんが言い切る前に声を上げた。

 

 まあ、それは居るか。私が歌ってる声を知ってる人、この子耳良さそうだから、話し声だけでちょっとピンってきちゃったのかな。

 

 お酒入れたせいで意識して抑えてる声の出し方が無意識に出ちゃってたかも。

 

 ちょっと罪悪感、本当は人違いじゃないと思う。

 

 本当に人違いだったら、笑い話だね。

 

「みあさん。私のベース、どうでしたか」

 

「わたしに聞くより廣井ちゃんに聞いた方が……あー、うーん」

 

 ちらって見るの方を見るけれどあれはだめだめになってしまった、鬼ころモンスターだ、泣きながら今日の結束バンドの感想を話しながら昔話し始めた。

 

 酔っ払いが昔話を始めるともうダメなんだ、ちょっとどころじゃ無い呂律の回り方が始まったら終わりの合図なんだ。*8

 

 店長さんが助けを欲しそうにわたしを見ている、ごめんね店長さん、がんばれ……なんて、薄情にもなれないし……仕方ないから介抱手伝うか……。

 

 

「ベーシストでもああはなっちゃダメだよ」

 

「はい」

 

 

 素直に頷いてくれた、よろしい。

 

 

*1
6弦ベース普段使うような人

*2
同じライブハウスでの共演のこと

*3
円状に広がること

*4
流血はポピュラー、ファン同士の仲は良い

*5
とあるさだなんとかさんは一時間もMCした

*6
ダイレクトボックス、ライブする時特にベースはこれが無いと話にならない

*7
ボーカル入れてないバンド

*8
ノンフィクションです、気を付けよう!





脚注使ってみたけどいるかなこれ、邪魔になってたらすいません。

ところで。友達も出来て恋人も作って全てを手に入れた陽キャ中学二年生ふたりちゃんが「ギター教えて〜」って成人ギタリストひとりちゃんに言ってきて、超絶複雑そうな顔をしながらも姉としてギターを教えるって感じから始まるそこそこのドロドロ話を誰かが形にしてくれませんか?家族を人質に取られているんです!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。