み〜あろっく   作:幽霊部In

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なんか……止まらなかったわ……(勢いってスゲー!)




Q.可愛い子を家に招き入れてやること

 

 わたしが思うに。

 

 バンドとして必要なリズム感や合わせのタイミングは人と合わせて弾く以上の練習法は無い。

 

 中にはソロを極め過ぎた結果、人と合わせるという行為そのものを否定するような個人対個人のバッチバチのバンドもあるのだけれど、それは努力以上に才能によるものの方が多い。

 

 技術に対して技術が上手く調和しているからまとまって見えるだけで、本質は逆も逆だ。アレが出来るのは中々居ないし、ボーカル、ギタリスト、ドラムにベースと四人全てが集まらなくても個人でも音楽で食えるってぐらいの実力者に限る話だ。*1

 

 ひとりちゃんにそれはまだまだ難しいだろうし、そもそもそれは結束バンドでやりたい音楽じゃないよね。

 

 だったら最初の話に戻って人と合わせて弾くことになる、これに勝る事は、やっぱり無いと思う。

 

「だからわたしとセッションしよう」

 

「ヒェ」

 

 お寿司さんを後にしてわたしの家に移動中に一通りその話をしたら、ひとりちゃんが固まってしまった。そんなに?

 

 まあ、本音の六割はわたしがひとりちゃんのギターを聴きたいだけだ。聴き心地がいいからね、それと少し人とギタリストと合わせて弾きたい。

 

 わたしの友人って言えるバンドマンは、一応酔いどれベーシスト廣井ちゃんぐらいで、他は殆ど縁を絶っている。

 

 ……縁を絶つ、っていうのとは少し違うか、もうだいぶ昔から関わらなくなっただけで、多分連絡はつく、たまに見るSNSで活躍しているのも知っている。

 

 結局、怖いんだろうな、だから逃げている。でもだからって今のわたしを、あの時のわたしを知っている人にあまり知られたく無い。

 

「わたしと弾くのは嫌?」

 

「そっそんな事は」

 

「ひとりちゃんと演奏したいんだ、ダメかな」

 

「いっいっいえ、うれしいです……!」

 

 こういう風に聞くのは少しずるいかな、ごめんねずるい大人で。

 

「着いたよ」

 

「ウオァ……た、タワーマンション……‼︎⁈」

 

「そっちじゃないよ、こっち」

 

「えっ、あっごめんなさいごめんなさい……!」

 

 ひとりちゃんにはわたしがタワーマンションに住むような女だって見えてるのか、それは……喜ぶべきなのか?どっちなんだ、お金持ってるって思われるのは、まあ嫌じゃ無いんだけど。

 

 ごめんねタワーマンションじゃなくて、防音性を取るとどうしても音楽制作目的の賃貸で一番適しているにはやっぱり一戸建てになる。

 

 鉄筋コンクリートで造られていても同じ住宅にいる以上響く音は出る、それによるトラブルは最初から起こすだけ無駄だし、気にしたく無いから念入りに探して貸してもらっているのだ。

 

 まあ、流石に金管楽器と電子ドラムじゃないフルセットのドラムは置けなかった*2けど、それはまあ……仕方ないよね。

 

「どうぞ」

 

「あっ、お、おじゃまします……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 わたしの家は、楽器を弾かない人にはさぞ退屈だろうなって家だと思う。

 

 普通の平屋の2LDKで間取りも普通、寝室はそのままで1番広いLDKの所に楽器を配置してパソコンを置たりしてぶちライブハウスみたいにして、後から出来る限り防音性を高める為に、壁とかカーテンとか工夫している。

 

 全体的に暗い雰囲気になっているのはそれのせいだけれど、わたしはそれがちょうど良い。

 

「す、すごいお家ですね……」

 

「嬉しいこと言ってくれるね、ひとりちゃん」

 

「あぅあぅ……ゥ!」

 

 よしよしとちょうど撫でやすい位置にいたひとりちゃんの頭を撫でてみると、数秒も照れの後にふにゃふにゃになって液状化してしまった。

 

 なんてことだ、ひとりちゃんは猫だったのか?*3

 

 スライムになってしまったひとりちゃんはとりあえず置いておいて、わたしは冷蔵庫に入れてある飲み物を取り出して、コップに入れる。

 

 普通のぶどうジュースだ、こんなの買ってたっけ……まあいっか。賞味期限切れって訳じゃ無いし。

 

「どうぞ」

 

「あっ、ありがとうございます」

 

 ひとりちゃんをソファーに案内して、わたしはパソコンの置いてあるゲーミングチェアの方に座る、ひとりちゃんは隣同士で座ると余計緊張するのは、さっきのお寿司屋さんで理解した。

 

 時刻はお昼過ぎ、まだまだ夕方には早い時間。社会人の人は頑張って働いてる時間で、学生は夏休みシーズン、バンドマンも大体はバイトとかの時間。

 

 そんな中、ここでやる事は何か。

 

 

「ひとりちゃん、何と合わせて弾きたい?」

 

「えっ」

 

「わたしはここに置いてある楽器なら一通りは出来るよ、ひとりちゃんが決めて良い、ドラムでもベースでも、ギターでも、他の楽器でも良いよ。どうする?」

 

「えっ、えっと……」

 

 

 ……って、急に言われても困るか。

 

 わたしはとりあえず、わたしが座っている位置から一番近い所に置いてあるギターを取って軽く音を鳴らす、その様子をひとりちゃんは暫くぼーっとみてたけど、直ぐに自分のギターを取り出した。

 

「流行りの曲は大抵弾けるんだっけ」

 

「あっはい、一応……」

 

「じゃあそうだね____うん、この5曲のセトリで行こう、ひとりちゃんはリードギターで固定。わたしは一曲ずつ別の楽器でやるね」

 

「えっ、あっはい」

 

「じゃあ弾くよ、好きに弾いてみて________」

 

 

 

 音を奏で始める。

 

 さて_______わたしとの演奏で、ひとりちゃんは何か掴んでくれると良いけれど、どうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「________っ、ふう。おつかれひとりちゃん」

 

「はっ……はい、あ、ありがとうございます……」

 

「何か分かった?」

 

「えっ、えっと……な、なんと、なく、は……ハイ」

 

 わたしと演奏することでひとりちゃんが上達するかと言われれば、一概にもそうと言えない。

 

 何故なら結局はひとりちゃんが弾いて魅せる場所は結束バンドの中で、結束バンドのギタリストとして上達するのなら、そのバンドのメンバーで練習する他無いからだ。

 

 ただ、人と合わせる事自体に少しでも慣れれば他人に合わせるやり方を少しは学べるはずだ。

 

 例えばひとりちゃんの出だしから完全に集中するまで弾く音が必要以上に大きい、リードギターとはいえ音が大き過ぎると他の楽器隊は自分の音に集中出来ないし観客もギター以外の音が聞こえなくてノリ辛い。

 

 それに自分の都合でテンポを変える癖もある、これは失敗を恐れて弾いている証拠だね、失敗なんて当然だっていう気持ちで弾くぐらいが丁度良いから、そうなるように頑張ってほしい。

 

 他人の演奏を聴けてはいるからそこは美点、周りを窺う事に長けている証拠。

 

 

 でも一番はやっぱり事前準備の足りなさ、これに尽きる、そしてそれは単純に人と合わせる事による引き出しの無さが原因だ。

 

 ソロで弾く楽器隊によくある事で、実際は引き出しはあっても咄嗟に出る判断が出来ないって言った方が正しい、だからワンテンポ遅れる時がある。

 

 

 それらを上手くカバーして弾ける人は限られる、天才ベーシストを自称する廣井ちゃんとかじゃ無いと難しいだろうし、わたしの知るかなり出来るドラマーさんだと、逆にリードされてしまう事になりそう。

 

 この課題の大抵は、セッションに慣れれば自ずと改善する内容だ、だからひとりちゃんが今一番必要なのは、どの曲でもある程度合わせられるようになる即興性だとわたしは考える。

 

 即興に一番必要なのは事前準備と心構えだとわたしは考える、ひとりちゃんの場合、基礎練はしっかり出来ているし技術もちゃんと付いているから、そこさえ直れば________面白い事になるんじゃないかな。

 

 

「そ、そのっ……み、みあさん、は……」

 

 

 と、取り敢えずわたしがぱって思ったひとりちゃんの改善点をパソコンで書いている最中に、静かで、震えていて、それでいて確かに何かを伝えようとするひとりちゃんの声が聞こえた。

 

 わたしがひとりちゃんの方に振り向いてみると、すごく言いづらそうにして、口を開けたり閉ざしたりしてる。

 

 ________ああ。

 

 まぁ、そっか。

 

 流石に5曲もセッションすれば、分かっちゃうか。

 

 

「良いよ、言って?」

 

 

「……Mia、なんですか……?」

 

 

 ひとりちゃんが今感じている感情はわたしにはわからない、『Mia』に対してひとりちゃんがどう思っていたのか、その正体が今のわたしである事に、どう思っているのか。

 

「________う、嬉しいです……!」

 

 だから、続けて言われた言葉にわたしは心底驚いた。

 

 

「わ、わたしなんかがこうやって一緒に弾けて、生の『Mia』さんの音色に触れて、えっと……っ、うう、あの……っ!」

 

 『Mia』が今、半ば活動休止で何もしていないってことは知っている筈で、わたしはてっきりそれについて聞かれるのかと思ってた。

 

 でもそっか、ひとりちゃんはそれより、そんな事より、今いるわたしをちゃんと見てくれているんだね。

 

 多分、こういう所だ、こういうところが似ているんだ(・・・・・・)。性格も違うし年齢も違う、目指している夢も違うのに、わたしが惹かれたところは懐かしさを感じるぐらいに似ている。

 

 そっか____そ、っか。

 

 

「ひとりちゃん、じゃあ次はわたし(Mia)の曲、弾いてみる?」

 

「エッイエホンニンノマエデソンナむむむむりです」

 

「大丈夫出来る出来る、せっかくだしボーカルもやってみようよ」

 

「むむむ、む!むむりです、むむむむむ!むりですむりですぅ……!」

 

「あははっ……!ごめんごめん、わたしが歌うよ、それならどう?」

 

「ウェッえっえぁ……はっはい……」

 

 

 欠けた彩が蘇っていくのを感じる。

 

 まるでヒーローだ。

 

 もっと遊ぼう(奏でよう)よ、ひとりちゃん、時間が許すまでさ。

 

 

 

 

 

 

「き、今日はありがとうございました……!」

 

「こっちこそありがとう、途中まで送った方が良いかな」

 

「いっいえだだっ、大丈夫です」

 

 

 楽しい時間はあっという間で、直ぐに夜も更けてきた。夜ご飯は家族で食べるのは聞いていたから、もうお別れの時間だ。

 

 こんなにもたのしい演奏はそれこそこの前の即興路上ライブ振りだった、心が満たされているのを感じる。

 

 それに、ひとりちゃんとのセッションの中で凄くいいフレーズが浮かんだから、後で忘れないうちにメモらないとね。

 

「あっ、ひとりちゃん」

 

「はっはいっ」

 

「……また遊ぼうね」

 

「はっはい……!」

 

 お昼を外で外食して楽器演奏しただけの事を遊び、とは言えないかもだけれど、わたしとひとりちゃんにとっては、十分楽しめたと思うんだ。

 

 ひとりちゃんだけじゃない、多分今まで、わたしが知らない内に、見ないようにしていた世界に、ひとりちゃんみたいな子は居たかもしれない。

 

 でも、わたしを変えてくれるのは君だった、歳下とか関係ない、わたしはひとりちゃんのことがすっかり好きになっちゃったみたいだ。

 

「困った事があれば、言ってね」

 

「はい」

 

「それと……これ」

 

「はい……?」

 

 そんなわたしの好きなひとりちゃんに、わたしが物足りないと思った所と、こういう技術はつけたほうが良いって思った技術と、流石にこれは直したほうが良いっていう所とかのetcが書かれた改善案の紙をひとりちゃんに渡した。

 

 それを見たひとりちゃんがわたしと紙を交互に繰り返し見ながら何だか泣きそうな顔になってるのをみて、ちょっとうずうずしちゃう気持ちを抑える。

 

 何だろうなあ、かわいいんだよなあ……こういう所本当に……。

 

「がんばれひとりちゃん」

 

「ひゃ、ひゃい……」

 

 

 応援してるよ、本当に。また近い内にライブも見に行くね。

 

 だからさ、特等席じゃなくても良いから、ひとりちゃんが成長していく道を、旅をわたしにも見せてね。

 

 

 わたしも、自分の道を歩くこと……頑張って逃げないようにするから。

 

 

 

*1
リアルにいる、ゲ◯極とかその部類

*2
思ってる三倍ぐらい煩いですよ

*3
猫は液体





感想来た瞬間にコレなのでやはり感想は神、ありがとう〜ʕ•̫͡•

ところで。北に行くよこと喜多ちゃんがぼっちちゃんによかれと思って、一緒に遊ぶ約束をして偶然を装って学校内の友達も呼んで遊ぼうとするんだけど気付いたらぼっちちゃんが帰って上手くいかなくて曇る喜多ちゃんのイラストが頭に浮かんだんだけど、どこや?
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